上 下
25 / 132
File_2

アドヴァンス

しおりを挟む
話し掛けてきたのは、跳ね毛の目立つ茶髪タレ目の男。立ち襟の白いジャケットに身を包んだソイツは、気怠そうに俺に話しかけてきた。

「やっぱりか。いや、俺も実は別の国で召喚されたんだけどさぁ。北大陸の方で」

「んんwww何サラッと勇者宣言してるのwww」

「あぁ違う違う。勇者召喚はされたが、俺にはその資格が無いとか言われて、この世界でスローライフ志望なんだよ」

「だからサラッととんでもないんよwwwwww」

勇者召喚は各国で行われている。本来なら召喚された人間には特別な力が宿っているか、その資格である聖剣が現れるとの事だったが、彼にはそのどちらも無かったのだという。

「俺は【タカト・サカキ】ってんだ。歳は17。アンタは?」

「カルラ・オオカミっすwww19だおwww」

歳が近いこともあり、何やかんやで意気投合した。ちなみにタカトの飲んでいたものは普通にお茶だったらしい。
ショットグラスで飲むなよwwwwww

「それにしても、何も無かったなんて言って異世界に放り出すなんて薄情な国だなwww」

「最初は困ったけど、エルダーの街でのんびりやってるぜ。今じゃギルドの【アドヴァンス】だしな」

「何だそれ?ゲームボーイ?」

「ギリ世代じゃねぇわ。そうじゃなくて、ギルドで一定以上の活躍するとアドヴァンスっていうランクに分類されるんだ。普通の会員じゃ受けられない制度と依頼がメインの特典だな」

勇者の資格がないとされた一般人がそんな地位まで登り詰めたのなら、こいつも相当強い筈だろう。オラわくわくすっぞwwwwww

「そんな制度あんのか、いいなそれ」

「お前ならいけんじゃね?勇者ってことは特別な力とかあるんだろ?」

「まぁしがないサイボーグやってますけどもwww」

「サイボーグ?!ロケットパンチとか加速装置あんの?!仮面のライダー?!」

テンション上がりすぎワロタwww
俺の身の上話をすると、タカトは目を丸くした。現代の日本では考えにくい出来事だったから、俺もたまに自覚してないときあるし。

「ってことは聖剣は現れなかったのか……エクスカリバー的な」

「え?エクスブイモン?」

「ちげぇから!」

「スティングモ゛ン゛ッ!」

「ジョグレス進化やめろ」

「デン!デン!デン!デン!ddddddddデンデンデンデン!wwwwwwていうか何で知ってんだwww」

「昔DVD借りて見てたからな」

その後もアニメ談義に花が咲いた。もうイヴもカノンさんもシャルもそっちのけだ。
たった数日見なくなっただけでこんなに恋しくなるなんて、やはり漫画やアニメは素晴らしい。

「いやめっちゃ有意義でしたわwwwまた話付き合ってくれwww」

「俺も久しぶりに楽しかった。お前もアドヴァンスに上がったら、一緒にクエスト受けれるかもな」

「カルラ、そろそろかえろ」

「アンタ、ご飯も食べずによく話し続けたわね」

「ご主人様ぁ、シャルもう歩けなぁい♡」

酔っ払いシャルを背負ってタカトに別れを告げると、俺達は竜胆への夜食を購入して集合場所へ戻ってきた。背中から伝わる柔らかな感触は、俺のポジトロンレーザー(誇張)をいきり立たせる。
日も落ちて長いこと経ったけど、人口が多いからか賑やかさもまだある。

「丁度いいタイミングだね諸君さぁ、帰ろうか」

「何か機嫌良さそうだな竜胆」

「はかせ、嬉しそう」

「いい事あったの?リンドウ」

「まぁね。この世界に合わせた兵器の開発が進みそうで嬉しい限りだよ」

そんなことを呟く竜胆は、外で過ごした時間が長かったからか多少の疲労感を漂わせている。
案の定、馬車では俺とカノンさん以外は寝てしまった。

「イヴちゃん、ぐっすり寝てるわね」

「寝顔is天使www撮影をせねばwww」

「やめなさいよ……」

「んぅ……ごはん」

さっき食べたばっかなのにご飯の話してる。可愛い。

そんなこんなで別荘へ帰還し各々フラフラで寝床へ就いた訳で、俺も深淵からの呼び声(眠気)に導かれるまま、その身を堕とした。

のだが。どのくらい寝ていたのかは分からないが、耳元で声がする。

「かるら」

体が揺れる。このか細くて幼さの残る声はイヴだ。

「かるら」

夜に訪ねてくるなんてシャルくらいのものだと思ってたのに、まさかイヴまでも。発情期かな????

「どしたん……イヴっち」

「血、たりない」

「あ……?パックしてもらったやつ、もう無くなっちゃったのか……」

「ない」

寝惚けながら何とか意識を覚醒させると、超至近距離でイヴが俺の腕に抱きついているではありませんか。
呼吸は少し乱れ、彼女の体温が肌を通じて俺に伝わってくる。なにこのエロい展開wwwwww

「そ、そそそそれはwww大変っ、でっすなwwwしばし待たれwwwおっふwwww」

「はやくぅ……」

普段のイヴっちとは全然雰囲気が違う。耳弱いんすよ俺wwwwらめぇwww三半規管が妊娠しちゃうのぉwwwwww

「ちょ、離れないとあげれないwww」

「すぐほしい」

「いやだからっつwww」

「あむっ」

噛まれましたねwwww
刺すような僅かな痛みと熱が肩に走ると、彼女はひたすらそこを舐め回しておりまして、当たり前のようにムラムラしましたが俺はシャル対策にオナキン・誓いウォーカーになっていたので事なきを得た。早くもダークサイドに堕ちてしまいたい気分ですが我慢wwwwww

「おいしかった」

「良かったwwwまた竜胆にパック頼んどくわ」

やっと満足したのか、柔らかい唇が傷口を離れていく。なんか名残惜しいのは俺が美少女に血を吸われてキモティ良くなってしまった変態だからだ。

「ううん、こっちのが美味しい」

「俺が近くに居なかったら困るじゃん」

「なら、離れない」

「呪いの装備かお前は」

「おやすみ」

マイペース爆発してる。
カノンさん辺りに変な言いがかりを受けないために、そして明日は大型モンスターの討伐なのでしっかり鋭気を養うと共に、後回しにしていた戦闘技術の書き込みをしながら就寝した。

そして翌朝、ターニャさんに起こしてもらって皆で朝食を摂っている。

「竜胆は今日どうするんだ?モンスター討伐だけど」

「大変興味深いが私は今忙しい。絶命した対象から骨、鱗、皮、肉、内臓、血液を採取してきてくれると助かるそれから、全体図と切り開いた際の画像データも頼むよ」

「注文多いなwww」

竜胆はそう言いながらデジカメを渡してきた。こっちに持ち込んだ物の一つだろう。

「リンドウ、今は魔族の研究どのくらい進んだの?」

「現在の機材で出来る事は全てやったよ。もっと専門的な知識が無いとこれ以上は進まないだろう。それと並行し魔道具と術式を用いた兵器の開発も始めるつもりだ」

そう言うと、食事もそこそこに竜胆は自室へ戻っていった。
俺は出された食事は残さず食べることを信条としているので、しっかり完食してついに出発の時が来た。

「シャル、何かあったら召喚するけど、留守番よろしく」

「はいはーい♪いってらっしゃい♡」

「いってきます」

「あとはよろしくお願いします、ターニャさん」

シャルを連れて行くと俺の股間が爆発する恐れがあるので置いていくことにした。
そんな感じで、3人で馬車に乗り込んで目的の森へ向かう。

「イヴちゃん、危なくなったらすぐ逃げるのよ?」

「わかった」

「お弁当係だから安全が最優先なwww」

西の森へは人の手の入った道が延びており、その辺の草原を走るより遥かに乗り心地が良かった。
道中トラブルは無く、20分ほどかけてついに目的地へと到着した。馬車から降りると、試作品の銃を腰のホルダーに差し込んで、気を引き締める。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

エンシェントソルジャー ~古の守護者と無属性の少女~

ロクマルJ
SF
百万年の時を越え 地球最強のサイボーグ兵士が目覚めた時 人類の文明は衰退し 地上は、魔法と古代文明が入り混じる ファンタジー世界へと変容していた。 新たなる世界で、兵士は 冒険者を目指す一人の少女と出会い 再び人類の守り手として歩き出す。 そして世界の真実が解き明かされる時 人類の運命の歯車は 再び大きく動き始める... ※書き物初挑戦となります、拙い文章でお見苦しい所も多々あるとは思いますが  もし気に入って頂ける方が良ければ幸しく思います  週1話のペースを目標に更新して参ります  よろしくお願いします ▼表紙絵、挿絵プロジェクト進行中▼ イラストレーター:東雲飛鶴様協力の元、表紙・挿絵を制作中です! 表紙の原案候補その1(2019/2/25)アップしました 後にまた完成版をアップ致します!

強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。

きゅりおす
SF
ハーレム主人公は元囚人?!ハーレム風SFアクション開幕! 突如として男性の殆どが消滅する事件が発生。 そんな人口ピラミッド崩壊な世界で女子生徒が待ち望んでいる中、現れる男子生徒、ハーレムの予感(?) 異色すぎる主人公が周りを巻き込みこの世界を駆ける!

処理中です...