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借金勇者

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まさかの展開に耳を疑う俺は、恐る恐るその金額を聞いた。

「べ、弁償って……おいくらほど……?」

「扉の修理で10万ゴールド、水晶は30万ゴールドなので、合わせて40万ゴールドになります」

「ですってよカノンさんwww頑張って返しましょwwwおほほwwww」

「なんでわた、あ、いや、扉は私か……くっ……!」

稼ぎに来たら逆に負債を負うことになるとは思わず、何だか妙なテンションになってしまった。
返済方法は、期間内に依頼をこなした際の報酬から引いていく方式と、即金のどちらかという事だった。

「期限は半月以内となります。カルラ様並びにカノン様の実力を考慮し此方から依頼を纏めて提示させていただきました」

受付にて弁償金の書類を書かされた後、依頼書の束が出される。
報酬が高くて大変なものが多く、その殆どが危険なモンスターの駆除を目的とした討伐系のものだそう。字も読めないしモンスターの知識も無いから丸投げするしかないんですけども。

「カノンさんに任せますwww最短でいきましょwww」

「うーん、そうね……どれも難易度が最高クラスだけど……最短で返済しようとするとこの3つかしら」

カノンさんセレクトの依頼書を手に取るプリムさんは、目を通しながら内容を読み上げていく。
その表情はとても妥当な組み合わせを選んだ相手にするものではない様な、苦い顔をしておられる。

「討伐依頼が【黒眼緑蛇・ディノスダイナ】と【白翼天鴉・クロウルジョーラ】、採取依頼が【ディアウル鉱石】20kgの納品、で宜しいですね?」

「難しい名前、いっぱい」

「結構キツくない?シャルは考えただけで溜息でちゃうんだけど」

「半月以内なら何とかなるわ……多分」

「ブラック労働デスマーチの予感www」

現地人のカノンさんとシャルは既に疲れた顔をしており、いかにターゲットがハードなのか教えてくれた。

「まずディノスダイナだけど、一言でいえば巨大な蛇の魔物ね。鱗も硬いし、毒の息や巨体を活かした出鱈目な攻撃を仕掛けてくる。並の武器じゃ傷一つ付けられないわ」

「クロウルジョーラは人間くらいの大きさの鳥の魔物だよ~。真空波飛ばしてきたり高速で飛び回ったりしてくるやつ」

「あ、この依頼ランバットさんからだわ。ディアウル鉱石なんて希少鉱石をこんなに依頼してくるなんて……」

「ランバット氏wwwwww前途多難ってやつですねwww」

「イヴ、こういうの知ってる。えらいこっちゃっていう」

ひとまず情報の整理もついたところで、優先順位を決めることにした。

「今日は復興作業を手伝って、明日から本気出すって方針でいいかな?数少ない知り合いの様子も気になるし」

「そうね。私もそれでいいと思うわ」

「じゃあとりあえず街に出よ~♪」

「でよ~」

食料の在庫はまだ余裕があるし、元の目的を果たさず終いでは街の人達にも申し訳ない。
その日、俺達は街に出てできる限りの手伝いをこなしていった。

そして日も暮れてきた頃、ランバット氏の工房にて武器の進捗を覗きに来たところだ。
ちなみにイヴ達女性陣は、食堂で休憩中である。

「おお、カルラ。何しに来た」

「明日、ディアウル鉱石採取の依頼受けて取りに行くんだけど、俺の頼んだ武器はどんな感じかなーってwww」

「なるほどな。幸いウチの工房は大して損傷してねぇから、あとはその鉱石待ちってとこだ」

彼はそう言うと、奥から一丁の大型拳銃を持ってきた。
全長35cm、グリップから上は12cm。このサイズ感だけでもうかっこいい。

「ファッ?!もう完成じゃないんすかこれwww」

「こいつはガワだけの試作品だ。多分一発撃ったら壊れる。威力は保証するがな」

黒いのカラーリングに回転式弾倉、そして最大の拘りポイントである西洋の棺を彷彿とさせる六角形の銃身。細かい装飾は端折っているが、完成したらこれ以上の厨二心鷲掴み武器になること間違いなし。

「かっけぇええええwwwwww」

「もう一丁の方は展示にさせてもらうが、ソイツはやるよ。撃って壊しても構わねぇぞ」

「貰っていいのんすか?!ひょえーwww」

そう言って、受付の上部を指差した先には、シルバーの片割れが飾られていた。
こっちは墓石をイメージした、先端部が丸みを帯びた長方形の銃身だ。

展示品だからか彫金もされていて、より一層やる気が掻き立てられる。

「使用する火薬の量と威力から見ても、ディアウル鉱石以外にソイツの土台は無理って結論が出てな。採取が終わるまでは作業は打ち止めなんだ。早く欲しけりゃしっかり頼むぜ」

「任せろ旦那wwwオラワクワクすっぞwww」

「ははっ、まぁ張り切りすぎて死ぬなよ」

まさかのお土産にルンルン気分で3人の元へ帰ると、俺達は別荘に帰宅した。明日に備えて早く寝るwww

「おかえりなさいませカルラ様。お食事はいかがなさいますか?」

「もう寝るよ。皆も食べてきたみたいだし」

「承知致しました。あの、リンドウ様が朝から籠もってお見えになりませんが……大丈夫なのでしょうか?飲食をしている形跡があまりにも無くて……」

「あー……了解、ちょっと邪魔してきますwww」

メイドさんに余計な心配かけるとはけしからんでござるwwww
まぁそれも彼女の仕事といえばそうなのかもしれないが、とりあえず奴が引き籠もっている部屋前に立つと、しつこくノックをしてやった。

──ココココン!ココンコンココン!

4連射からの、止めにターミネーター風に5回。暫くすると、細く扉が空いた。

「静かにしたまえ、私は忙しいんだ」

「ちゃんとメシ食ってるかwwwちくしょうやっぱ言えねぇやwwww」

青山テルなんとかさんの曲のラップパートで安否確認をすると、うんざりしたような顔で言葉が返ってくる。

「朝食と、あとは水とサプリメントで事足りている」

「朝から引き籠もって何してんだよwww明日は採掘ツアーに行くんだがアンタはどうする?興味あるかと思って一応教えておいてやるよwww」

「魔族はとても興味深い生物だからね。調べれば調べる程様々な実験をしてみたくなってしまう故に、サンプルが足りていない……と、そうだね、それには同行させてもらうよ」

ファンタジー世界の住人も、この変態焼きそば男くんにかかればただの珍しいモルモットでしかないの怖すぎる。
ともあれ、俺も軽くシャワーを浴び終え寝ることにした。

だが、

「カルラ様♡」

「またなのかサキュバスよ」

「何がー?」

「積極的な女性が大好きです。だけどまだ色々経験するわけにはいかない」

シャルが一糸纏わぬというかハナから纏う気がありませーんwwwピッピロピーwwwみたいな態度で当たり前のように俺のベッドでスタンバってました。
ダメだこいつ早くなんとかしないと。

「なんでぇ?カルラ様って本気で好きな人としかしたくないタイプ?童貞のくせに」

「やかましいわ。いいかいシャルさんや、こんな歳まで童貞だと、徹底的に拘り抜いたシチュで致したい訳だよ。例えば昔好きだったお姉さんが未来から来た俺の彼女で小さい頃に結婚の約束をしてて合法的におっぱいを揉む的な」

「ふんふん」

「だから駄目ですwww」

そう言って、シャルには備え付けの寝間着を無理矢理着せて追い出した。

「えーん!添い寝だけでもぉ!」

「添い寝だけじゃ済まないだろwwwwww」

「まぁいいや、夢の中でお邪魔しちゃうもんね。いつか理性が持たなくなってカルラ様から手を出すように仕向ける方針にする~」

「んんんwwwそういうアプローチも嫌いといえば嘘になるwwww」

その晩、とんでもなくエロい夢を見ました。
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