21 / 25
外伝 大和撫子は泥中の蓮に抱かれる。【コミカライズ版発売記念】
尋問、身元引受人。
しおりを挟む
「……で、お嬢さん? 君はどうやって、ここに忍び込んだのかな?」
「わかりません」
「へえ……」
なにやら金髪に眼鏡をかけたインテリ美青年に楽しげに返されました。
青年の眼鏡が陽光にきらりと光っています。
目が痛くなるくらいの美形ですが視線は逸らしません。逸らしたら負けです。
現在、私は尋問されている真っ最中なので……!
なぜかお風呂からカラフル男子に囲まれる事態になり、パニックで気絶し知らない場所で起きた後。
私はまたまた先程とは全く違う場所におりました。
簡単に言えば広めのダンスホール……な感じでしょうか。
床は白い大理石で、紺色に月と星の柄が入った壁紙は横一面に、その上には等間隔に並ぶ縦長の格子窓がずらーっと続いていて、真っ黒なビロードのカーテンが個々の窓にハの字に掛かってます。居るだけで背筋が伸びる感じです。
さておき、説明をしてくれた人曰く、ココは『宵の士隊宿舎』だそうで。
宵の士隊というのはこの国、西の王国イゼルマールにある騎士組織の事らしいです。
いや、騎士って時点でもう……ファンタジーですよね本当。
一瞬中世のフランスかどっかにでもタイムスリップしちゃったのかと思ったものの、にしては国の名前も全く聞き覚えが無いし、何よりも頭! 頭がカラフル過ぎる!
というわけで、『彼』に言われた「ここは―――君が生きていた世界ではない。つまり、別の世界だ」な台詞を信じることにしたわけであります。
なんだかもの凄く事後報告になっておりますが!
だって彼に言われたんだもの!
『君はこれから尋問を受けることになる。下手な事は言わないように。悪いようにはしない』って!
普段なら信じられるか! な話ではあれど、何しろこれは現実。
下手を打って成敗されました、なんて事にもなりかねないわけで。
私は仕方なく、知らぬ間にネグリジェ着せられていた事に文句を垂れつつ了承したのでした。
で、ただいま尋問の真っ最中です。左右にやっぱりカラフルカラーの男性達が並んでいます。皆さん騎士だそうですが、総じて雰囲気ちょっと暗いというか、妙にぞわつく感じなのはどうしてでしょう。一先ず見ない振りをしておきます。
今度は服着てるからちょっと強気です! もう気絶しないもんね!
「ロータス、報告を」
「はい」
金髪美形の声に一人の青年がレインボー列の中から一歩踏み出した。
青や緑、金や銀色の中でも目立つ彼の色は黒。長い前髪で片目が隠れているが、見えている左目も黒である。私と、同じ色だ。
名はロータス=カイザ。
私に最初に説明をしてくれた『彼』である。
「……不審な所はありません。仕込み武器等も皆無です。毒体検査も陰性でした」
「そうか」
「全くの一般人と変わりありません。例の件とは無関係かと」
「お前が断言するのは珍しいな」
「……いえ」
ロータス、と目覚めた時に名乗ってくれた人を見ながら私は……ん? と内心で首を傾げた。
今の説明に足りないところを発見したからだ。
先程彼は私にこの世界が異世界であると説明してくれた。だというのに、上司らしき人にそれを言うつもりはないのだろうか。
もしかして―――守ってくれてる?
私が、異世界人だと知られないように。
まさか、ね?
「ふむ……」
金髪の青年が眼鏡越しに湖色の瞳をすうっと細める。
ロータスはその視線をじっと受け止めていた。
暫し、場に沈黙が下りる。
けれど数秒の後に、金髪の青年が微笑を浮かべたことで視線の会話は中断となった。
「……たとえ丸腰の人間であれ、この宵の士隊の本部に突然現れた事については看過し難いね。ならば、暫しの監視役が必要だと僕は思うのだけど?」
金髪の青年の提案に、ロータスは隠れていない方の左目をふっと伏せ、その場で膝を折った。
「―――俺が、任を賜ります」
「だね。それじゃあ頼むよ。ロータス」
「御意」
口上を述べ頭を垂れたロータスに、金髪の青年は透明な硝子の眼鏡を陽に煌めかせながら満足げに頷いた。
こうして私は身元引受人となった彼―――ロータスの元で暮らすことになったのである。
「わかりません」
「へえ……」
なにやら金髪に眼鏡をかけたインテリ美青年に楽しげに返されました。
青年の眼鏡が陽光にきらりと光っています。
目が痛くなるくらいの美形ですが視線は逸らしません。逸らしたら負けです。
現在、私は尋問されている真っ最中なので……!
なぜかお風呂からカラフル男子に囲まれる事態になり、パニックで気絶し知らない場所で起きた後。
私はまたまた先程とは全く違う場所におりました。
簡単に言えば広めのダンスホール……な感じでしょうか。
床は白い大理石で、紺色に月と星の柄が入った壁紙は横一面に、その上には等間隔に並ぶ縦長の格子窓がずらーっと続いていて、真っ黒なビロードのカーテンが個々の窓にハの字に掛かってます。居るだけで背筋が伸びる感じです。
さておき、説明をしてくれた人曰く、ココは『宵の士隊宿舎』だそうで。
宵の士隊というのはこの国、西の王国イゼルマールにある騎士組織の事らしいです。
いや、騎士って時点でもう……ファンタジーですよね本当。
一瞬中世のフランスかどっかにでもタイムスリップしちゃったのかと思ったものの、にしては国の名前も全く聞き覚えが無いし、何よりも頭! 頭がカラフル過ぎる!
というわけで、『彼』に言われた「ここは―――君が生きていた世界ではない。つまり、別の世界だ」な台詞を信じることにしたわけであります。
なんだかもの凄く事後報告になっておりますが!
だって彼に言われたんだもの!
『君はこれから尋問を受けることになる。下手な事は言わないように。悪いようにはしない』って!
普段なら信じられるか! な話ではあれど、何しろこれは現実。
下手を打って成敗されました、なんて事にもなりかねないわけで。
私は仕方なく、知らぬ間にネグリジェ着せられていた事に文句を垂れつつ了承したのでした。
で、ただいま尋問の真っ最中です。左右にやっぱりカラフルカラーの男性達が並んでいます。皆さん騎士だそうですが、総じて雰囲気ちょっと暗いというか、妙にぞわつく感じなのはどうしてでしょう。一先ず見ない振りをしておきます。
今度は服着てるからちょっと強気です! もう気絶しないもんね!
「ロータス、報告を」
「はい」
金髪美形の声に一人の青年がレインボー列の中から一歩踏み出した。
青や緑、金や銀色の中でも目立つ彼の色は黒。長い前髪で片目が隠れているが、見えている左目も黒である。私と、同じ色だ。
名はロータス=カイザ。
私に最初に説明をしてくれた『彼』である。
「……不審な所はありません。仕込み武器等も皆無です。毒体検査も陰性でした」
「そうか」
「全くの一般人と変わりありません。例の件とは無関係かと」
「お前が断言するのは珍しいな」
「……いえ」
ロータス、と目覚めた時に名乗ってくれた人を見ながら私は……ん? と内心で首を傾げた。
今の説明に足りないところを発見したからだ。
先程彼は私にこの世界が異世界であると説明してくれた。だというのに、上司らしき人にそれを言うつもりはないのだろうか。
もしかして―――守ってくれてる?
私が、異世界人だと知られないように。
まさか、ね?
「ふむ……」
金髪の青年が眼鏡越しに湖色の瞳をすうっと細める。
ロータスはその視線をじっと受け止めていた。
暫し、場に沈黙が下りる。
けれど数秒の後に、金髪の青年が微笑を浮かべたことで視線の会話は中断となった。
「……たとえ丸腰の人間であれ、この宵の士隊の本部に突然現れた事については看過し難いね。ならば、暫しの監視役が必要だと僕は思うのだけど?」
金髪の青年の提案に、ロータスは隠れていない方の左目をふっと伏せ、その場で膝を折った。
「―――俺が、任を賜ります」
「だね。それじゃあ頼むよ。ロータス」
「御意」
口上を述べ頭を垂れたロータスに、金髪の青年は透明な硝子の眼鏡を陽に煌めかせながら満足げに頷いた。
こうして私は身元引受人となった彼―――ロータスの元で暮らすことになったのである。
1
お気に入りに追加
560
あなたにおすすめの小説
愛しき冷血宰相へ別れの挨拶を
川上桃園
恋愛
「どうかもう私のことはお忘れください。閣下の幸せを、遠くから見守っております」
とある国で、宰相閣下が結婚するという新聞記事が出た。
これを見た地方官吏のコーデリアは突如、王都へ旅立った。亡き兄の友人であり、年上の想い人でもある「彼」に別れを告げるために。
だが目当ての宰相邸では使用人に追い返されて途方に暮れる。そこに出くわしたのは、彼と結婚するという噂の美しき令嬢の姿だった――。
これは、冷血宰相と呼ばれた彼の結婚を巡る、恋のから騒ぎ。最後はハッピーエンドで終わるめでたしめでたしのお話です。
完結まで執筆済み、毎日更新
もう少しだけお付き合いください
第22回書き出し祭り参加作品
2025.1.26 女性向けホトラン1位ありがとうございます
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。