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番外編
神の庭の昼下がり 2
しおりを挟むまさかその頃から、神の領域に馴染ませるために少しずつ眷属化が進んでいたとは思わなかった。
しかもペコラだけ変えて妙に疑われても面倒だからと、神殿の皆にも少しずつ術をかけて外見があまり変わらないようにしていたという力の入れよう。
(その、気遣いを、何故、私に!)
「どうかしました?」
「い、いえ」
数週間に及ぶ睦みあいを終えて、ひさしぶりに外の散歩に出た。
リベリオの領域は広い神殿と草原で成り立っている。向こう側が霞むくらいの広さの草原にはいつ見ても花が咲いていた。
(邪神の居住地ってもっとおどろおどりしいかと)
「綺麗でしょう、ペコラのために整えましたから」
「心を読まないでください」
神殿も空も日によって色を変える。
ここに来た時は黒だったが、今日のように青い空の下、外にピクニックに出れば遠くに白い神殿が見えた。時間の流れもないのかぽかぽかと日差しが差し込んでいる。
勝手に改造されたが、それでもペコラがいいよと言うまで人間の世界に居させてくれたのは邪神の優しさだろうか。
ペコラは草で冠をつくりながらそっと傍らを見た。
安心しきった様子で大きな大きな黒い竜が寄り添って寝ていた。ペコラなど彼の手より小さい。
ここはリベリオの領域らしく、たまにこうして本性を現しているのだが……。
「ニナちゃんたち、どうしてるかな」
散々お別れを言って……おそらく彼女自身も務めを終えれば精霊たちの力によってこちらに来るだろうと言っていたが、地上ではどれくらい経ったのだろう。
「帰りたいですか」
竜のリベリオが目を開ける。
少し不安そうな顔にふるふると首を振った。
「じゃあ、壊したいものとか」
「……」
「ペコラ様が望むなら、地上のものなんでも壊しますが」
「いえ」
リベリオの頬に身を横たえた。
「こうして、リベリオさんとのんびりできたら幸せです」
そんなことを言って己に身を寄せる愛しい妻を、竜姿のリベリオはそっと尻尾でくるむ。
唯一の存在を無くしてしまわないように、彼は優しくペコラに顔を擦り寄せた。
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