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番外編
邪神の正体 2
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ニナの帰りを待つ間に眠ってしまったらしい。
(あれ?)
ベッドの上で起き上がる。しょぼしょぼする目を擦って顔を上げると……目の前に、大きく開けられた口があった。
「……ひっ!」
ペコラの肩まで一口で食べられそうだ。赤い口内に二股になった舌があり、触っただけで切れそうな牙がずらりと並んでいた。
突然の光景に固まるペコラを前にそれはすっと閉じられた。
「ちっ……おはようございます」
「舌打ちやめてください!」
「やだな冗談ですよ?」
ミニチュアではなく、全長二メートルほどの大きさになっているリベリオが竜のままの姿でべろりとペコラの頬を舐めた。
「た、たた食べる気ですか!」
「まだ食べません」
「まだ!」
頭からぱくりといかれる寸前だった身からすると、冗談では済まされない。
本来の竜の姿のままのリベリオは起き上がったペコラの身体をぐるりと一周して囲むように身体を横たえ、膝に頭を乗せた。
見た目に反して重くはない。そもそも重さという概念はないのかもしれないが。
「……触ってみても?」
「どうぞ」
膝枕されたままリベリオが答える。
そろりと撫でると、うろこはかたくて冷たいがなめらかな手触りだ。そっと頬をくっつけてみたり、頬やツノのようなところも撫でてみる。
(もしかしてこれは贅沢な状況なのでは)
わさわさわさと触っても止められなかったので、思う存分竜の手触りを堪能して手を離した。
「ありがとうございます」
「気は済みました?」
「はい」
そこで邪竜が伸び上がった。
「じゃあ今度は俺のお願いを聞いてくれますよね」
「……え」
ペコラより大きい竜が身体に絡む尻尾の力を強くする。ぎしっと身体が軋んで、いやな予感に背中に冷や汗が流れた。
「この姿でやってみても?」
「何を?」
「……」
その問いには応えずにリベリオが目を細める。
つまりは、竜と。
「ーー獣姦反対!」
「気にしないでください、どちらの姿も俺ですから」
「ま、まま待って」
竜のリベリオが顔を近づけてペコラの胸元から舌を差し入れる。
冷たい感覚にびくりと震えると、いつもと同じ緑の目がこちらを見た。
「あ、あのっ」
勿体ぶるように肌を大きな舌が這うと胸の愛し子の印がちりっと疼いて……。
ーーキューキュッキュッ
そこでにょきっと窓から修行帰りのダンゴムシ精霊が現れた。彼は、半泣きのペコラと、その身体に大蛇のように巻きついて口を開ける邪竜を見て。
ーーキュー!!!
悲鳴を上げた。
ーーキューキュー!
泣きながらぽかすかと邪竜を殴っている。
「ダンゴムシくん落ち着いて! リベリオさんの悪ふざけだから……たぶん!」
ーーキュ……
抱きかかえたダンゴムシと二人でがたがた震える。
その様子を前にリベリオは竜の姿のまま楽しそうに見下ろして……しばらくして満足したのか変化を解いた。
人間の姿で後ろから抱きつく。
「まぁ、たまには邪神の恐ろしさも思い出してもらわないと」
「すみません、十分わかりました!」
これからは安易なことは言わないようにしようと、ペコラは決意を新たにしたのだった。
(あれ?)
ベッドの上で起き上がる。しょぼしょぼする目を擦って顔を上げると……目の前に、大きく開けられた口があった。
「……ひっ!」
ペコラの肩まで一口で食べられそうだ。赤い口内に二股になった舌があり、触っただけで切れそうな牙がずらりと並んでいた。
突然の光景に固まるペコラを前にそれはすっと閉じられた。
「ちっ……おはようございます」
「舌打ちやめてください!」
「やだな冗談ですよ?」
ミニチュアではなく、全長二メートルほどの大きさになっているリベリオが竜のままの姿でべろりとペコラの頬を舐めた。
「た、たた食べる気ですか!」
「まだ食べません」
「まだ!」
頭からぱくりといかれる寸前だった身からすると、冗談では済まされない。
本来の竜の姿のままのリベリオは起き上がったペコラの身体をぐるりと一周して囲むように身体を横たえ、膝に頭を乗せた。
見た目に反して重くはない。そもそも重さという概念はないのかもしれないが。
「……触ってみても?」
「どうぞ」
膝枕されたままリベリオが答える。
そろりと撫でると、うろこはかたくて冷たいがなめらかな手触りだ。そっと頬をくっつけてみたり、頬やツノのようなところも撫でてみる。
(もしかしてこれは贅沢な状況なのでは)
わさわさわさと触っても止められなかったので、思う存分竜の手触りを堪能して手を離した。
「ありがとうございます」
「気は済みました?」
「はい」
そこで邪竜が伸び上がった。
「じゃあ今度は俺のお願いを聞いてくれますよね」
「……え」
ペコラより大きい竜が身体に絡む尻尾の力を強くする。ぎしっと身体が軋んで、いやな予感に背中に冷や汗が流れた。
「この姿でやってみても?」
「何を?」
「……」
その問いには応えずにリベリオが目を細める。
つまりは、竜と。
「ーー獣姦反対!」
「気にしないでください、どちらの姿も俺ですから」
「ま、まま待って」
竜のリベリオが顔を近づけてペコラの胸元から舌を差し入れる。
冷たい感覚にびくりと震えると、いつもと同じ緑の目がこちらを見た。
「あ、あのっ」
勿体ぶるように肌を大きな舌が這うと胸の愛し子の印がちりっと疼いて……。
ーーキューキュッキュッ
そこでにょきっと窓から修行帰りのダンゴムシ精霊が現れた。彼は、半泣きのペコラと、その身体に大蛇のように巻きついて口を開ける邪竜を見て。
ーーキュー!!!
悲鳴を上げた。
ーーキューキュー!
泣きながらぽかすかと邪竜を殴っている。
「ダンゴムシくん落ち着いて! リベリオさんの悪ふざけだから……たぶん!」
ーーキュ……
抱きかかえたダンゴムシと二人でがたがた震える。
その様子を前にリベリオは竜の姿のまま楽しそうに見下ろして……しばらくして満足したのか変化を解いた。
人間の姿で後ろから抱きつく。
「まぁ、たまには邪神の恐ろしさも思い出してもらわないと」
「すみません、十分わかりました!」
これからは安易なことは言わないようにしようと、ペコラは決意を新たにしたのだった。
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