28 / 35
番外編
番外編 カフェと天罰
しおりを挟む
テーブルの上に並んだケーキにシュークリーム、マカロン、スコーン、クリームにジャム。
それをリベリオがたいらげていく姿をペコラは正面に座って見ていた。
「……改めて、リベリオさんは普通のものも食べるんですね」
「身体は人間ですから」
専属騎士として日々を過ごしている邪神は言う。
いつもなにかと忙しい巫子のおしごと。珍しく休暇日でペコラは街に買い物に出ていた。
もちろんリベリオはついてきて、小物や神殿にいるニナにお土産を買って、リベリオに連れられてカフェで一休みしているところである。
簡素ではあるがいつもの巫子のローブではなくワンピースを着ているペコラの正面には、同じくふつうの服を着たリベリオ。
(デートみたいだ……!)
まさか邪神がカフェでケーキを食べているとは街の人も思っていないだろう。
リベリオの食べっぷりを見ながらペコラもチョコレートケーキにフォークを入れた。
「はい」
そこでずいっと一口大のケーキを差し出される。
嬉しそうに目を細めてリベリオが言う。綺麗な赤い髪がさらりと風になびいた。
「ペコラ様、あーん」
(――スチルで見た!!!!!!)
「え、えええと」
周りの人目もあるし恥ずかしいが、あーんの欲求には勝てず差し出されたフォークに恐る恐る口を近づける。
そこで。
「食い逃げだ!」
カフェの誰かが叫んだ。はっとしてそちらを見たペコラが立ち上がるのと、店員を押しのけて一人の男が外に出るのが同時だった。
「大変」
精霊を使役しようとしたペコラをリベリオが止める。
彼は座ったまま指を回した。
するとどこからかバケツが飛んできて男の頭に当たった。どこからか犬がやってきて足に噛みつき、一瞬でどしゃぶりの雨が降り出したかと思うと、彼に大量の鳥が群がった。
「……そのへんで」
「わかりました。ペコラ様、そんなことよりほら」
ひとつうなずいたリベリオがケーキのフォークを揺らす。
道路に倒れた男を、店員が哀れな表情で見るのを確認して席に座る。
口を開けて、あっさりした味の生クリームを頬ばった。
「美味しいです」
「最近有名なお店らしくて」
「……もしかして調べたんですか」
「ええ」
邪神が。美味しいお店を。
そのようすを想像するとなんだか可愛くて、笑ってしまった。
それをリベリオがたいらげていく姿をペコラは正面に座って見ていた。
「……改めて、リベリオさんは普通のものも食べるんですね」
「身体は人間ですから」
専属騎士として日々を過ごしている邪神は言う。
いつもなにかと忙しい巫子のおしごと。珍しく休暇日でペコラは街に買い物に出ていた。
もちろんリベリオはついてきて、小物や神殿にいるニナにお土産を買って、リベリオに連れられてカフェで一休みしているところである。
簡素ではあるがいつもの巫子のローブではなくワンピースを着ているペコラの正面には、同じくふつうの服を着たリベリオ。
(デートみたいだ……!)
まさか邪神がカフェでケーキを食べているとは街の人も思っていないだろう。
リベリオの食べっぷりを見ながらペコラもチョコレートケーキにフォークを入れた。
「はい」
そこでずいっと一口大のケーキを差し出される。
嬉しそうに目を細めてリベリオが言う。綺麗な赤い髪がさらりと風になびいた。
「ペコラ様、あーん」
(――スチルで見た!!!!!!)
「え、えええと」
周りの人目もあるし恥ずかしいが、あーんの欲求には勝てず差し出されたフォークに恐る恐る口を近づける。
そこで。
「食い逃げだ!」
カフェの誰かが叫んだ。はっとしてそちらを見たペコラが立ち上がるのと、店員を押しのけて一人の男が外に出るのが同時だった。
「大変」
精霊を使役しようとしたペコラをリベリオが止める。
彼は座ったまま指を回した。
するとどこからかバケツが飛んできて男の頭に当たった。どこからか犬がやってきて足に噛みつき、一瞬でどしゃぶりの雨が降り出したかと思うと、彼に大量の鳥が群がった。
「……そのへんで」
「わかりました。ペコラ様、そんなことよりほら」
ひとつうなずいたリベリオがケーキのフォークを揺らす。
道路に倒れた男を、店員が哀れな表情で見るのを確認して席に座る。
口を開けて、あっさりした味の生クリームを頬ばった。
「美味しいです」
「最近有名なお店らしくて」
「……もしかして調べたんですか」
「ええ」
邪神が。美味しいお店を。
そのようすを想像するとなんだか可愛くて、笑ってしまった。
0
お気に入りに追加
611
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。
鯖
恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。
パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。