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番外編
番外編 スチル回収(強制)1
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ここ数日、ペコラの背中にニナがひっついていた。
「……ニナちゃん、本当にどうしたの?」
神殿内で栽培しているキノコの載るザルを持ちながら振り返ると、彼女はもぞりと動いた。
コアラ状態にくっついているニナは精霊の力によるものか重くはない。四六時中この状態なので何度か理由を聞いているのだが。
「……ちょっと怖い夢を見まして」
「! うん」
「ペコラ様がここに存在していることを確認させてくださいぃ」
「そ、それは、構わないけど」
ちなみにニナの背中には、同じようにダンゴムシの精霊がくっついている。
――キュウ
(うん、心配だね)
ようやく聞けた内容を踏まえ、ダンゴムシと心の中で会話した。
よほど怖い夢だったのだろう。家族と離れて久しいし、甘えたい気分なのかもしれない。
その夢が前世、ゲームで見たペコラのバッドエンドだったとは知らない彼女はそう結論づけた。
「あの……」
そこで恐る恐るというように神殿の神官が声をかけた。
「に、ニナ様……そろそろ依頼のほうがたまっているのですが……」
「シャーッ」
「ひっ」
「ニナちゃん威嚇しないの」
泣きそうな顔の神官が助けを求めるようにペコラを見る。この目も数日で何度見たことか。
「あの、一緒に行くよ? できることあるなら手伝うし」
「太ったお貴族様のどうでもいい依頼にペコラ様が付き合うことはないです」
背中のニナがしっしと神官に手を振った。
「私、時間あるし」
「街の皆さんに配るキノコとか世話してるでしょう、そっちの方が大事です」
ペコラは待っているザルを見て、コアラ状態のニナをうかがう。
できることが多いから、ニナへの依頼はひっきりなしだ。ここしばらくまともに休みも取れない状態が続いていた。
(よし)
ザルを置いてペコラが両手を前に広げると、背中のニナがよじよじと横に移動してきてだっこの状態になった。
その身体を抱きしめる。頑張り屋の女の子はなんだか甘い匂いがした。
「ニナちゃん、気分転換しよう。私でできることなら何でも協力するよ」
「……っ」
ニナがようやく顔を見てくれた。
「何でも?」
「う、うん、……できることなら……」
彼女の目が怪しく光ったのを見て思わずへっぴり腰になる。
少し考える様子の彼女はふいと視線をそらした。
「……いえ、さすがにちょっと目の前でしてもらうのは年齢制限がゴニョゴニョ」
何をさせる気だろう。
「……待てよ、あれで……よし」
ニナが軽やかに地面に降りた。そしてキラキラした目で手を組んだ。
「ペコラ様、リベリオ様を呼んでいただけますか!」
「え」
嫌な予感がする。
だが神官にも同じように両手を組まれて祈られ、逃げ場のないペコラは気後れしつつ、うなずいた。
「……ニナちゃん、本当にどうしたの?」
神殿内で栽培しているキノコの載るザルを持ちながら振り返ると、彼女はもぞりと動いた。
コアラ状態にくっついているニナは精霊の力によるものか重くはない。四六時中この状態なので何度か理由を聞いているのだが。
「……ちょっと怖い夢を見まして」
「! うん」
「ペコラ様がここに存在していることを確認させてくださいぃ」
「そ、それは、構わないけど」
ちなみにニナの背中には、同じようにダンゴムシの精霊がくっついている。
――キュウ
(うん、心配だね)
ようやく聞けた内容を踏まえ、ダンゴムシと心の中で会話した。
よほど怖い夢だったのだろう。家族と離れて久しいし、甘えたい気分なのかもしれない。
その夢が前世、ゲームで見たペコラのバッドエンドだったとは知らない彼女はそう結論づけた。
「あの……」
そこで恐る恐るというように神殿の神官が声をかけた。
「に、ニナ様……そろそろ依頼のほうがたまっているのですが……」
「シャーッ」
「ひっ」
「ニナちゃん威嚇しないの」
泣きそうな顔の神官が助けを求めるようにペコラを見る。この目も数日で何度見たことか。
「あの、一緒に行くよ? できることあるなら手伝うし」
「太ったお貴族様のどうでもいい依頼にペコラ様が付き合うことはないです」
背中のニナがしっしと神官に手を振った。
「私、時間あるし」
「街の皆さんに配るキノコとか世話してるでしょう、そっちの方が大事です」
ペコラは待っているザルを見て、コアラ状態のニナをうかがう。
できることが多いから、ニナへの依頼はひっきりなしだ。ここしばらくまともに休みも取れない状態が続いていた。
(よし)
ザルを置いてペコラが両手を前に広げると、背中のニナがよじよじと横に移動してきてだっこの状態になった。
その身体を抱きしめる。頑張り屋の女の子はなんだか甘い匂いがした。
「ニナちゃん、気分転換しよう。私でできることなら何でも協力するよ」
「……っ」
ニナがようやく顔を見てくれた。
「何でも?」
「う、うん、……できることなら……」
彼女の目が怪しく光ったのを見て思わずへっぴり腰になる。
少し考える様子の彼女はふいと視線をそらした。
「……いえ、さすがにちょっと目の前でしてもらうのは年齢制限がゴニョゴニョ」
何をさせる気だろう。
「……待てよ、あれで……よし」
ニナが軽やかに地面に降りた。そしてキラキラした目で手を組んだ。
「ペコラ様、リベリオ様を呼んでいただけますか!」
「え」
嫌な予感がする。
だが神官にも同じように両手を組まれて祈られ、逃げ場のないペコラは気後れしつつ、うなずいた。
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