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番外編

番外編 ダンゴムシくんのなやみ

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 ――キュウ……

 彼が植木鉢の寝床で目を覚ましたのは、まだ朝も早い時間だった。

「ん……」
 薄暗い部屋の中、小さく彼の愛し子の声がする。
 質素倹約を良しとする巫子の部屋。綺麗な白い髪をベッドに広げて、彼女は静かに寝息を立てていた。

 植木鉢から降りた彼は床をととととと、とドアのほうに移動した。
 精霊なので飛べるのだが、やはり地面の属性なので地を行くほうが落ち着く。

 この時間に起きたのは、日課の特訓のため。
 今はまだしがない一精霊だが、いつかもっと強くなって、邪神のリベリオからペコラを取り戻すのだ。
 そう決意してにょきっとドアを通り抜け――廊下の壁にリベリオがもたれて立っているのに気づき、彼はびくっと震えた。

「……」
 ――キュ……

 不機嫌そうな人型のリベリオと目が合う。

 ――……

 半分扉から身体を出していた彼は、何も気づかなかったことにしてそっと部屋に後退しようとした。そこで素早く身体を掴まれた。

 ――キュー! キュー!!

 じたばたと宙ぶらりんで暴れるが掴む力は強くてびくともしない。
「なんでお前は夜も自由に入れるのに、俺は追い出される」

 ――キュ
 それは勝手にベッドに入り込んで、寝ているペコラの身体を触ろうとするからでは。

 それを素直に申告すれば、リベリオが片眉を上げた。早朝から朝餉の支度をしている厨房の方角を見る。
「……茹でるか」
 ――キュキュキュキュ……!!!
 ぷるぷると震えつつ半泣きになりながら高速で首を振る。そこで。

「朝から何を騒いで……」
 目をこすりながらペコラが扉を開けた。ふわふわの白い髪に寝癖をつけた彼女は、自分の部屋の前にいるリベリオたちを見た。

 何度かまばたきをした彼女は真顔になり、泣いている彼をそっとリベリオから取り返して抱きしめる。
 そのまま部屋の中に下がった。

 閉じようとしたその扉をリベリオが押さえる。

「おはようございますペコラ様」
「ま、まだ、夜です……!」
「朝と自分で言いましたよね? つまりもう部屋に入っていいと」
「まだ寝たいので……! それはそれとして笑顔がまぶしい!」

 抵抗するペコラをリベリオが抱き上げる。
 ペコラの腕の中で、彼女の髪や頬に嬉しそうに口付ける邪神を見上げ、彼は愛し子が改めてとんでもない存在に目をつけられたものだと小さく鳴き声を上げた。
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