見えざる者

※冒頭抜粋

 ワタシには霊感があるらしい。「あるらしい」と、忌避感のある言い回しで、明文化を避けるのには訳がある。鏡越しに自分の姿を手取り足取り、他人と共有するような手軽さに欠ける霊という存在は、舌先三寸でいくらでも飾り立てることが出来るからだ。つまり、真偽を叩き台に上げて舌鋒鋭く言い合うだけの徒労なる時間が待ち受けており、幼少期から今日に至るまで建設的な意見の交わし合いに発展したことが一度たりともなく、苦渋を飲んでばかりの経験から、自ら率先して霊の存在を発信することがなくなった。だからワタシは、怪談話の中心となる「霊」について悍ましげに語られた瞬間、さめざめとした眼差しを向けがちだ。
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