彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。

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彼はまた間違える

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ホームルーム前の待ち時間。

とりあえず机に詰め込んだプリントをカバンに突っ込んでいた。

うわ、赤点のテストまである…。

懐かしいなぁ…。

よし、これは後でこっそり捨てておこう…。

机の中がだいぶ片付いたところで、どこからか視線を送られている事に気付いた。

振り向くと未だに隣同士の瀬川宏美がこちらを遠慮がちに見ていた。

「汚いね。」

「うっせ、ほっとけ。」

コイツ……わざわざ嫌味を言う為に話しかけて来たのだろうか。

そう思ったがどうやらそうではないらしく、躊躇いがちにまた口を開く。

「ねぇ、最近金澤さんと仲が良いの…?」

意図の分からない質問だった。

「だったらなんだよ?」

「その、やめといた方が良いんじゃないかな…?」

「は?」

急に何を言い出すのか。

いや、言葉の意味は理解してるし、なんでそんな事を言うのかも理屈としては分かってる。

だってあれ(志麻)だもんなぁ……。

でも、だ。

「なんでお前がそんな事言うんだよ?」

「っ…!」

俺の言葉を受けて、宏美は確かに動揺して心苦しそうな表情をする。

なんでそんな顔するんだよ…。

「もう俺達の関係は前までと違うんだって言っただろ?

だから変に干渉してくんのはやめろ。」

「そうか…そうだよね…。」

言葉でそう返しながらも、その表情はまだ暗い。

「なんだよ…?」

「ゆ…三澄君ってさ、本当はそんな風に思ってる事を話せるんだね。」

「っ!?」

彼女にそんな呼ばれ方をされたのは初めてだった。

SNSで出会った時はそもそもニックネームだし、実際に会うようになってからも、当然付き合うようになってからもそんな呼び方をされた記憶はない。

これが本来あるべき姿なのは分かっているし、こうなろうと思って行動していたのは事実だけど。

でも実際にその結果がこうもハッキリと目の前に突き付けられると、確かなショックを受けている自分がいた。

「分かってるよ、三澄君は優しいからいつも私に合わせてくれてたんだなって。

でももしあの時もそんな風に思ってる事をちゃんと言ってくれてたら、何か違ってたのかもしれないね。 」

そう言われて俺は何も言えなかった。

そうして黙ってる内に、宏美は教室を出て行ってしまう。

「結局俺が悪いのかよ…。」

ボヤいてみても、本人はもう居ない。

「悠太さん、大丈夫ですか? 」

見かねたリオが声をかけてくる。

「そう見えるか…?」

「いえ、疲れた顔してますよ。」

「だよな。」

理屈としては正解を選んだ筈だ。

お互いにとってこれが今出来る一番の選択だった筈なのに。

「なんでこんなに虚しいんだろうな。」

いや分かってるんだ。

本当ならこんな気なんて遣わずに何気ない日常を笑って過ごしていたかっただけなのに。

お互いが幸せになる為に気遣い合ってた筈なのに、今はお互いがこれ以上傷つかない為に気を使って立ち回ろうとしている。

本当、なんでこんな事しなくちゃいけないんだ。

「やっぱ俺が悪いんだよな。

なんでこんなに上手く行かないんだろう。

何度も間違えて、その度に正しくしようとして、でも大事な物は結局守れなくて。

今だってもう遅いのに正しくいなきゃって思ってこんな事してさ。

それを何度も繰り返して、本当、馬鹿みたいだよな。」

「悠太さん……。」

「どうしたら良かったんだろうな……?」

「……人間と言うのはどうして正解や間違いと言った答えを決めたがるのでしょうか。」

「……そう言えばお前天使だったっけ?」

「わざと言ってませんか!?

コホン、だってそうでしょう。

あなたが今したのは理屈に基く行動ですよね。

その理屈を守らない事で何が悪いんですか?」

「それは……。」

「世間体とかそう言う話でしょ?

どうして個人の行動の成否をそんな物差しで決める必要があるんですか。

解釈次第で良くも悪くもなるような物なら答えなんて自分で決めれば良いじゃないですか。」

「簡単に言うなよ。

確かにお前の言う事も一理あるかもしれないけど。

でもさ、人間には感情がある。

善し悪しだって決めたくもなる。」

口に出してみて、ならいっその事感情なんて無ければ良かったのだろうかとも思う。

そうすれば傷付く事も、こうして思い悩む事も無いのだろうから。

でも感情が無くなれば、人生はただ同じ事を繰り返すだけの作業になってしまうだろう。

「そんな物ですかね。」

「それに、アイツと俺はもう終わったんだよ。

これからアイツと俺が仲良く過ごす未来なんてない。

これは世間体よりも俺とあいつの為だ。」

「お互いの為に、ね。

なら何故二人はあんなに傷付いた表情をしていたんですか?

今だって悠太さん、とても辛そうです。」

「っ……! ?」

「まだ彼女に未練があるのではないですか?」

「そりゃ……全くないとは言えないけど。 」

何しろ転生したとは言え、彼女と別れてから体感的に数日と経っていない。

失恋と向き合うより先に俺は一度死んでしまった。

なのに今は普通に隣の席にいて、話しかけてきたりもして。

気持ちの整理をつけるには圧倒的に時間が足りない。

「けど?」

「けど無理だ。

俺がどう思っていても、アイツはもう俺を好きじゃないんだから。

もう嫌なんだよ、こんなの。

今苦しいだけなら良い。

どうせその内忘れるから。

でもこれからもこんな事をずっと繰り返すくらいならもう俺は恋愛なんてしない。」

「悠太さんの考えは分かりました。

でもあまり悲観的にならないでください。

あなたにはあなたの魅力に気付いて支えてくれる仲間がいるじゃないですか。」

「それは……まぁ。」

リオは思った。

恋愛の傷は恋愛でしか癒せないとは言うが、彼は必要以上にそれを重ねてしまった。

結果自己肯定感も欠如し、恋愛その物を恐怖の対象としてしか見れなくなってしまっている。

そんな姿は、見ているだけでとても痛々しい。

今自分は彼の為に何が出来るのだろう。

それは分からない。

でもこんな傷だらけのまま、消えていく彼を見ているだけなんて私には耐えられない。

出来るなら幸せになってほしい。

これまでの不幸もその為にあったと思える程に。

そうでなくては、この世界に生まれ変わった意味も無くなってしまう。

負けないでくださいね……悠太さん。

小さくそう願う。






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