Blood Of Universe

さがみ十夜

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  Chapter.3:
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フォメロスから十二万光年程離れた場所にある、採掘し尽くされ、打ち捨てられた星…

資源衛星SR-66。

もう誰もいなくなったはずのその星に、漆黒の大型艦が停泊していた。
船体には徽章一つなく、広域波…一般に紋状波と呼ばれるものも発していない。
息を潜めるように静かに、艇はただそこに在った。
船外の誘導燈も定点燈も今は闇に呑まれ、SR-66に程近い光速航路『古の廻廊』からでもこの艇を見つけ出すのは至難の技だ。

「ルィ坊!ちょっといいか?」

そんな艇の中、脳天気な声が響いた。
艇内の通路は意外にも照明がついていて明るく、暗い室内から通路側を見たルィラは、ひどく眩しく感じて目を細めた。

「なぁに?」

ちゃぷん…と、水音が続く。
ディッセは扉を半分閉め、大きなタオルを手に取る。

「もう一時間くらい入ってるっつぅぅの。のぼせんじゃん」

少し怒ったように言うと、ルィラは無言で立ち上がった。

暗闇の中でも、白いルィラの姿はよく見える。
ましてディッセは夜目がきく。
だから、ルィラが不機嫌になったことも、渋々ながら浴槽を出た事も、ディッセには見えていた。
見えてはいたが気にすることはなく、ルィラを丸ごと包めそうなほど大きなタオルで豪快に水分を拭き取ってゆく。
最後に、比較的やんわりと髪を拭いてやりながら、ようやくディッセは口を開いた。

「怒んなっつぅぅの」

…沈黙。

ルィラが手早く服を身に着ける間、再び沈黙が続く。
ようやく振り向いたルィラは、のぼせたのか怒っているのか、仄かに紅い顔をしていた。
無言で伸ばされたルィラの手を掴み、ディッセは小さな体を抱えあげる。
右腕に腰掛け、細い両腕をディッセの首に回してから、ルィラもようやく口を開く。

「頭くらくらする」
「だぁぁからのぼせるじゃんってぇぇの!」
「うん…のぼせた、みたい…」
「風呂好きなのは知ってるけどなぁぁ…ルィ坊が倒れたら…」

大股にズカズカと通路を進みながら、ディッセは大きな溜め息をつく。

「みぃぃんな心配するっつぅぅの!」

照れているのか視線を逸らして言われた言葉に、ルィラの笑顔が戻ってくる。
それを見て安心したのか、ディッセもまた口元だけで笑いながら抱えたルィラを覗き込んだ。

「平気かぁ?ドロップに行く手もあるってぇぇの」
「大丈夫。それに、ドロップは今メンテナンス終わったばっかりだしね」
「じゃ、格納庫でいいかぁ?見てほしいものが…あるってぇぇか…」

大きな溜め息をつくディッセを見て、ルィラは首を傾げた。

「何かあった?」
「や、俺怪我したじゃん。実は【墓場漁りのカラス】とやり合ってさぁぁ」
「!!!」

瞬間、僅かにルィラの顔が硬直する。
だがすぐに表情は崩れ、今度は苦々しいものになっていった。

「カラス…特務隊か。ホント、彼らは邪魔ばかりするね」

ルィラの右手が、ゆっくりとディッセの肩をなぞる。
先日怪我をした場所だ。
今は服に隠れているが、なぞってみればくっきりとエイドスティックの形がわかる。

「僕たちは、帝国を壊したいワケじゃないのに」

ルィラの瞳が、剣呑な光を帯びる。
だが…

「まぁ、そう言うなってぇぇ。俺は無事だったんだしぃ…ゲームにはライバルがいたほうが盛り上がるし」

と、明るく笑いながら頭を撫でられた瞬間、また普段の表情に戻った。
そのまましばらく歩くと、通路の終わりが見えてくる。

…終わり、とはいえ、壁ではない。

全てを遮るかのように、巨大で重厚な扉が通路を塞いでいた。

「…先に言っとくっつぅぅの。ごめん!」
「え?」

手前に設置されていたセンサーが微かな電子音をたて、ゆっくりと扉が開き始める。

「見て欲しいモノってのはぁぁ…コレ!!」

ディッセの指さす先には、鈍く輝く戦闘艇の姿があった。
彼らのいる大型艦同様に黒い装甲。
人が1人ようやく乗り込めるほどの超小型宙間戦闘艇“ヴァンラッシュ”……
ディッセ専用艇だ。

宇宙空間での戦闘を目的とし、機動性・スピードに特化した機体である。
ぎりぎりまでの小型化に成功したヴァンラッシュは、本来あらゆる抵抗を受けないよう優美な流線型をしている。
だが今、ルィラの目の前に現れた機体は、左翼上方が爛れ落ちていた。
コックピットの風防には一筋大きな亀裂が入っている。

「……何コレ」
「だから言ったろ、ごめんて」
「ひどいよ、何コレ」
「ごめんってぇぇぇの!」

ヴァンラッシュの後ろには少し型の異なる小型戦闘艇が整然と並んでいる。
それがあまりにも整っているためか、余計に損傷が無残に映るのだ。
むぅ、と頬を膨らませると、ルィラは半眼になってディッセを睨んだ。

「こんな状態でよく帰って来れたね」
「そっこはさすが俺だっつぅぅの♪カラスにもちゃんと損害与えてるしな!」

ディッセは誤魔化すように笑いながらルィラを床に降ろした。

この大型艦…グレイブヤードの母艦“ネルガル”は、ルィラの居住空間として機能している。
戦闘にかり出されることは少なく、移動することも希だ。
居住が目的なので、地表と同じ重力設定にされている。
彼らが専ら使用している銀色の小型艦“シルバードロップ”ではブリーフィング・ルームにしか重力が設定されていないが、ネルガルはほぼ全区画に重力が存在する。
そのため、ルィラの足は重く床を踏みしめた。
慣れない重みにふらつき、靴音が高い天井に反響する。
しばらくして体を安定させたルィラは、少し考えこむような仕草をしてからディッセを見上げた。

「大きな作戦を控えてるもんね…3時間ちょうだい?」
「おう!!…3時間で終わるか??」
「もちろん完璧にね」

ルィラの頬に不敵な微笑みが浮かぶ。
それは幼く甘えん坊な少年でも、艶然と微笑む支配者でもない…

自分の腕に自信を持つ、一流のメカ・エンジニアの顔だった。

見る間に取り付けられていくスキャナチップと接続端子。
真剣な目をしたルィラの指が、ディッセにとっては有り得ないようなスピードでキーボードを叩いていく。
次々に開く画面、下から上へと止まることなく消えて行く数字の羅列。
目が回りそうだな、と思いながら眺めていると、視線はモニターに固定したままルィラがにこやかに喋り始めた。

「今ね、破壊された自己修復機能を再構築してるんだよ。半分以上飛んじゃってるけど基本的な頭脳は生きてるから…まずは頭を作るの。そうやって一通り中身を整えてあげれば、外装はヴァンラッシュが自分で修理するよ」

ルィラとしては、不思議そうに見ているディッセにもわかるようにとの気遣いのつもりで説明を始めたのだろう。
だが、説明をしてもディッセの顔は益々訝しげなものになるばかりだ。

ディッセは純血の犬族で、身体能力が高いことを売りにしている。
実際、肉弾戦・宙戦とも優秀で、いつだってルィラの作戦を完璧にこなしてきたのだ。

だが、彼は機械が苦手だった。

戦闘機は誰よりも上手に操るくせに、なぜか機械音痴なのだ。
ハッキングなどお手の物、ジャンクから新しい兵器を造り上げてしまえるが身体が弱い、というルィラとは正反対だ。

「ディッセも、覚えたらいいのに。そうしたら、ちょっと壊れちゃっても安心じゃなぁい?」

からかいのつもりでそう話かけたのに、

「壊れてもルィ坊がいるからいぃぃよ」

と満面の笑みで返されてしまい、ルィラは呆れたように息をはいた。
けれど、

「…他力本願」

そう呟いた顔は嬉しさを隠しきれずにいる。
近すぎて画面を隠しているディッセの頭を、笑いながら押し退けようとした…その瞬間。

「ルィラ!」

重低音と、響き渡る靴音。
扉が開くのを待ちきれないように白銀の髪をなびかせて入ってきたのは、怒り心頭、といった顔をしたドゥーテだった。

「ルィラ…!!なぜこんな場所にいる!」

突然の剣幕に、先程までの雰囲気はどこへやら、ルィラは冷や汗をかいた。
怒られる理由は…わかっているのだ。

「湯浴みが済んだら部屋に戻るように言ったはずだ」

ドゥーテの全身から怒気が立ち上ぼっている。
格納庫の床に直接胡座をかき座っているルィラからすると、ドゥーテは立っているだけで充分威圧感がある。

普段でも充分すぎるほど威圧感があるのに、今、彼の頭はドゥーテの膝あたりなのだ。
助けを求めて横を見やれば、ディッセは助けるどころか必死に顔を背けていた。
耳が真っ赤なあたり、怯えているわけではないのだろうが…
頼りにならないことは間違いない。

「大体そんな床に座って!汚いし体が冷えるだろう!」

彼女は、ディッセに見向きもしない。
元々、彼女の目にはルィラしか映っていないのだから当然だ。
首をすくめながらも、ルィラが反論を試みようと口を開く。
ドゥーテはその言葉を聞き取ろうと、腰を曲げて上半身をぐっと乗り出した。
と、その瞬間…

「だあぁぁぁ!お前!なんでそんなカッコで来んだぁぁ!」

ディッセがキれた。

「なんだ。うるさいぞディッセ」

その体勢のまま視線だけを彼に送ると、彼はこれでもかというほど赤くなる。

「うがぁぁぁ!この…露出魔ー!!」

指先まで赤く染めながら、ディッセが吠える。
キョトンとしているルィラの肩に顔を埋め、ディッセは頑なにドゥーテから視線を逸らした。

「何を言っている?大体ディッセ、貴様がルィラを連れ出したことはわかって…」
「いいから部屋に帰れ!恥を知れ!この…破廉恥女!!」

いっそ泣き出しそうな声で怒鳴られ、さすがにドゥーテも口を噤んだ。
ルィラがふと見上げて、納得したようにクスクスと笑い始める。

そう…ドゥーテは大柄なのだ。
すらりと伸びやかな肢体を覆うのは、黒く艶やかな肌。
筋肉質だが、女性らしいラインは失われていない…というより、ボリュームのあるバストとヒップに対して腕も腰も脚も引き締まっている、メリハリボディの持ち主だ。
緩やかにうねる白銀の髪が、さらに体のラインを引き立たせている。
さらには切れ長な瞳と薄い唇が、野蛮な、獣のような妖艶さを演出するワイルドな女性…。
それが、ドゥーテ。

だが彼女は自分の容姿に無頓着だ。
男の目を引くかもしれないなどと、考えた事もないのだろう。
より獣に近い種族、ヴィダル。
星を離れてなお、その民族性を体現したような女性だった。

当然、文化的な、装飾華美な服よりも、動きやすいシンプルなものを好む。
その結果…
今着ているものは、極端に布の面積が狭いタンクトップに黒のスパッツ。
スパッツは、暗い格納庫内では肌と同化するほど薄手の、ぴったりとしたタイプのものだ。
緑色のタンクトップにしても、色が暗いので暗い室内では目立たない。おまけに非常に丈が短いそれは、下から見上げると服の役割を成していなかった。

「せめて下着は着けろっつぅぅの…」

ルィラにしがみついたまま弱々しく抗議する。
その言葉でようやく事態を把握したらしいドゥーテは、湯気を立てて怒りだした。

「き…貴様は!何を見ている、この変態!」
「なっ…!!?変態は、お、俺かぁぁ?見たくて見たんじゃねぇっつぅぅの!!」

言返しながら思わず顔を上げたディッセは、すぐに自分の迂闊さを呪った。

このままでは埒が明かないと判断したのか、顔の下半分を大きな掌で覆いながら勢いよく立ち上がった。
そのまま部屋を飛び出してしまう。

「もぅ、俺は部屋に戻る!変態となんか一緒にいられるかっつぅぅの!!」

だが、一応怒り心頭のドゥーテのもとにルィラを置き去りにする罪悪感は感じたらしく、一瞬だけ振り向き

「…ルィ坊…ごめんな!」

と泣きそうな目で叫び、また脱兎の如く走り出してしまった。
置き去りにされたルィラはと言えば、お腹を抱えて笑い転げている。

「あはは!ディッセ、女の子は好きなのに…青春だねっ」

笑いながら言われたルィラの台詞に、紅潮した顔をわざとしかめながらドゥーテが咳払いをする。

「まったく、下らないことを…さぁルィラ、部屋に戻って…」
「ヴァンラッシュを修理しているんだよ。来たるべき日に向けて…ね」

口調はいつもと変わらない。
笑顔も浮かべている。
けれど…
来るべき日にかける想いは、どれほどだろう…
そう思い、ドゥーテはルィラの小さな頭を抱き寄せた。
黒く長い指が愛しそうに少年の髪を梳く。

「私の可愛いルィラ。この世の全てはルィラのものだ…」

陶然と囁かれた言葉は暗闇に霧散し、艶然と笑んだ唇が白い頬に小さな痕をつけた。
そして、恥ずかしがるルィラを手放し、微笑んで言う。

「あぁ…そうだルィラ…フォメロスの蛇、ウィッツ・ロベラからメールがきている。だから探していたんだ」

その言葉に、ルィラの顔が明るくなった。

「ホント!!?じゃあ早く見なきゃ!」

ヴァンラッシュの調整をしながら、新たなウィンドウを開く。
端末からでも艇のコンソールからでも、同じものを見ることができる。
アクセスすれば、確かにメールがきていた。

気付かなかった…と、唇を尖らせながらメールを開く。
すると即座に、モニター上空へウィッツの顔が映し出された。
至近距離から撮っているのか、大きく映し出された顔しか見えない。

その顔が、楽しそうにニヤリと笑った。

『ハロハロ♪♪甘党な蛇お届けにあがったっす~!!…あれ?あがるっす、かな?』

楽しげに囁くその声は、密やかに続けられる。

『えぇっと…洞穴の中は快適みたいっすよ~!』

周りが見えるようにか、カメラがわずかに動かされる。
だが、周囲は暗闇に包まれているため、結局ウィッツがどんな場所から通信しているのかは判別できなかった。

『アンタの可愛がってる蛇はおかげで元気っすよ~』
「あはっ順調みたいだね」
「まったく…この男は軽薄にすぎるな」

ドゥーテが辛辣な感想を言う。
勿論この意味不明なメールの理由は、ドゥーテもわかっているのだが。
いつメールを横取りされてもいいようにすること。
それが【GRAVEYARD】の常識なのだ。

『鱗にも傷一つないし。心配しなくて万事オッケー!』

満面の笑みでVサインを送ると、じゃあまたねっというふざけた挨拶で画像が消えた。

「ふんっ可愛がっているなどと図々しい」
「まぁまぁ、そう言わないで。僕ウィッツ好きだよ?面白いもん」

ルィラが笑うと、ドゥーテは溜め息。

「さて、蛇は順調らしいし…こっちも仕上げちゃお!」

少年は言うなり凄まじい速さでキーボードやモニタを操り始める。
常人では有り得ないようなスピードだ。

一度瞬きをすれば、流れゆくデータに追いつかず数値調整が不可能となるような。

こうなると、余程興味のある事でなければ彼は反応しない。
少し寂しげに、そして誇らしげに笑みを浮かべたドゥーテは、物音もたてずそっと格納庫を後にした。

………やがて。

ルィラはそこから一時間と待たずに、ヴァンラッシュを完成させた。

優美な流線形をした、最高の耐久度を誇る戦闘艇。
グレイブヤードの誇る、死神の鎌。

その雄姿を嬉しそうに見下ろすと、ルィラもまた格納庫の扉を開いた。

「出番まで、おやすみ…ヴァンラッシュ♪」

あどけない声が黒い船体に吸い込まれる。
光が閉ざされ、格納庫は暗澹たる闇に沈む。

…誰もいないその空間に、微かな電子音が響いていた。
ヴァンラッシュを始めとする、戦闘艇の知能中枢が休む間もなく働いているのだ。
より強い装甲へ、より速く宙を翔るように自らをメンテナンスしていく。

まるで、祭りが近い事を知っているかのように働き続ける。

だが、彼らは数分働くと自発的に活動を停止した。
ルィラの調整が機械並みの精度で、いじる場所など残されていなかったのだ。


…今度こそ完全な眠りに落ちた格納庫。
墓場の中、亡者達が騒ぎ出す。








彼らが目覚める祭りは
もう、すぐそこに…。


To be continue……
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