230 / 231
最終回 最後の選択
しおりを挟む
―――――と云う事があって、私は最後ルミニスの足止めが出来たんです。 これまでに出会った、本編ではモブとされる人々も強く、逞しく生きているんです! エナさんや、ヨハネ達が素晴らしいのには変わりません。 ですが、それと同じく尊い人々が確かにあの世界には居るんです! お願いです、ナバレスト様……エナさんや、妖精達に向けるような慈しみを、他の人々にも向けて下さい。 お願いします……」
マリは長々と、これまで乙女小説の資料として創られた世界であったことや出会った人々の事を全て話した。
女神ナバレストは終始笑顔でマリの話しを聞いていたが、マリの真意が何処まで伝わったかは分からない。
マリは大切な人達が生きている世界がこの後、ナバレストによってどうなるかある程度予想していた。
すると、側で聞いていた妖精達が泣き出し床を濡らす。
「ティナ、ティナかわいそう」 「ティナ、最後の最後に力を振り絞ったんだー」 「ナバレスト様が世界をあんな風に創ったからー」
「「そうだそうだ、ナバレスト様が悪いー!」」
号泣する妖精達に頭をポカポカと叩かれ、ナバレストは困った様に笑った。
「なはは……そうだね。 私は……本当に酷い女神だ。 真理さん、ありがとう。 確かに、君の言う通り私は……いつもその世界を見る時は主人公達ばかりに目がいっていた。 反省すべき何だろうね……」
「女神様に私如きが差し出がましい事を言って申し訳ありません……。 それでも、知っていて欲しかったのです」
「うん、君らしいなぁ。 でもね、この世界にはもう主人公が居ない。 世界のループを阻んだ妖精も居ない。 だから、この世界はまたやり直すべきだと思ってる……。 ごめんね、本当は君が地球に蘇ってからやる予定だったから、真理さんには教えないつもりだったんだ。 でも、言わないのは違うのかなって思った」
予想通りのナバレストの返答に、真理は本を守るように抱きしめて叫んだ。
「私の! 私の褒美として、この世界をこのままにしておいてはもらえないでしょうか! お願いです、この世界には私の大切な人々が生きてるんです!」
「ねぇ、落ち着いて真理さん。 その世界を愛してくれるのは嬉しいよ? でも、君の世界は地球の日本の筈だ。 小説の資料の為に創られた世界じゃない……分かるよね」
ナバレストから笑みが消え、真理は鼓動が早くなる。
「お願いです。 私は消えても構いません! この世界を、もう……消さないで下さい。 やっと、やっと平和を手に入れたんです! お願い……お願いだから!」
本を抱きしめたまま、マリの頬を涙が伝う。
冷徹な表情のナバレストが立ち上がり、マリは本を守る為に後ずさりしていた。
すると、その様子を見ていた妖精達が激怒する。
「あれー? ナバレスト様いじめてるー?」 「ほんとだ、良い子なのにいじめてるー!」 「ティナの友達いじめるなら、私達の敵だー!」
「「かかれー!」」
マリへと迫っていたナバレストの顔へと妖精達が掴み掛かり、頭をポカポカと叩く。
「わわ!? こら、分かったよ! 分かった分かった! 私の負けさ。 はぁ……せっかく先輩に土下座したのにな~。 まぁ、それが君の選択なら良いのかなぁ……」
両手を上げて降参のポーズをとったナバレストは妖精達に解放され、椅子へと座り直した。
「す、すみません……ナバレスト様」
「別に良いよ。 なはは……本当に君らしい選択だな~。 それでこそ、あんなに良い同人誌が書けるんだろうね」
ナバレストは先程までの表情とは打って変わり、優しい瞳でマリを見つめた。 その瞳は慈愛に満ちている。
「あ、ありがとうございます」
「最後の確認だよ? 君は……地球での人生では無く、その世界の存続を選ぶんだね? 本当に後悔はしない?」
ナバレストの問いに、マリは間髪入れずに頷いた。
「はい! この世界には恋人も、大切な人達も、そして……私の推しが生きてるんです。 だから、お願いします」
「分かった。 約束しよう、二度とその世界をやり直す事はしない。 創造の女神ナバレストの名の下に宣言する、龕灯真理の褒美として資料として創造したこの世界を永遠のものとする。 以上をもって、君への褒美は終了だ」
ナバレストが宣言し終えると、マリの持つ本が光り始め、古い本の見た目から装飾のされた高級感溢れる本へと変化した。
そして、マリの姿も光り少しづつ消え始める。
「ナバレスト様……無理を言って本当にごめんなさい。 でも、ありがとうございます」
「さっきも言ったよ~? 別に良いよ。 そうだ、一応聞くね? 君の望むハッピーエンドってどんなの?」
「えっと……ふふ、そうですね。 小説としては駄作かもしれませんが、悪人以外の人々がみーんな不思議な力で蘇って笑って泣いて幸せに暮らしましたとさ。 とかですかね」
「なはははは! 確かにそれは駄作だね! ありがとう、参考にするよ」
「あはは、大好きな小説の原作者である乙姫先生にそう言ってもらえたら光栄です。 ……皆をお願いします」
「ん~、任せて。 ありがとう、私の世界を愛してくれて」
「ありがとー!」 「ティナの想いを継いでくれてありがとうー!」 「またねー! 元気でねー!」
マリは、ナバレストや妖精達に手を振りながら掻き消えた。
「ふ~……さて、やるかね」
マリが消えた直後、ナバレストはそそくさと変化した本を拾い上げ創造の女神としての力を行使し始めた。
「あれー?」 「ナバレスト様何してるのー?」 「その世界どうするのー? マリとの約束はー?」
「分かってるよ。 ちょっとね……私からの特別なサプライズってヤツさ。 これでよし、この本を動かしたらいけない本棚にしまっておいてくれる?」
「はーい」 「いいよー」 「あれー? でも、この本タイトルが無いよー」
「あ~……そっか。 ちょっと待ってて……うん、いい名前だ」
ナバレストが本の表紙を指でなぞると、文字が浮かび上がった。
「どうだい? 転生したのは死が間近の女王様!? ~超可愛い弟が王になれるよう平凡な女王が抗う奮闘記~ なはははは! きっと、君にピッタリのタイトルだよマリさん」
ナバレストは消えたマリがどうなったか想像しながら笑った。
◆◇◆
――そして、時は流れて十年後。
マリは長々と、これまで乙女小説の資料として創られた世界であったことや出会った人々の事を全て話した。
女神ナバレストは終始笑顔でマリの話しを聞いていたが、マリの真意が何処まで伝わったかは分からない。
マリは大切な人達が生きている世界がこの後、ナバレストによってどうなるかある程度予想していた。
すると、側で聞いていた妖精達が泣き出し床を濡らす。
「ティナ、ティナかわいそう」 「ティナ、最後の最後に力を振り絞ったんだー」 「ナバレスト様が世界をあんな風に創ったからー」
「「そうだそうだ、ナバレスト様が悪いー!」」
号泣する妖精達に頭をポカポカと叩かれ、ナバレストは困った様に笑った。
「なはは……そうだね。 私は……本当に酷い女神だ。 真理さん、ありがとう。 確かに、君の言う通り私は……いつもその世界を見る時は主人公達ばかりに目がいっていた。 反省すべき何だろうね……」
「女神様に私如きが差し出がましい事を言って申し訳ありません……。 それでも、知っていて欲しかったのです」
「うん、君らしいなぁ。 でもね、この世界にはもう主人公が居ない。 世界のループを阻んだ妖精も居ない。 だから、この世界はまたやり直すべきだと思ってる……。 ごめんね、本当は君が地球に蘇ってからやる予定だったから、真理さんには教えないつもりだったんだ。 でも、言わないのは違うのかなって思った」
予想通りのナバレストの返答に、真理は本を守るように抱きしめて叫んだ。
「私の! 私の褒美として、この世界をこのままにしておいてはもらえないでしょうか! お願いです、この世界には私の大切な人々が生きてるんです!」
「ねぇ、落ち着いて真理さん。 その世界を愛してくれるのは嬉しいよ? でも、君の世界は地球の日本の筈だ。 小説の資料の為に創られた世界じゃない……分かるよね」
ナバレストから笑みが消え、真理は鼓動が早くなる。
「お願いです。 私は消えても構いません! この世界を、もう……消さないで下さい。 やっと、やっと平和を手に入れたんです! お願い……お願いだから!」
本を抱きしめたまま、マリの頬を涙が伝う。
冷徹な表情のナバレストが立ち上がり、マリは本を守る為に後ずさりしていた。
すると、その様子を見ていた妖精達が激怒する。
「あれー? ナバレスト様いじめてるー?」 「ほんとだ、良い子なのにいじめてるー!」 「ティナの友達いじめるなら、私達の敵だー!」
「「かかれー!」」
マリへと迫っていたナバレストの顔へと妖精達が掴み掛かり、頭をポカポカと叩く。
「わわ!? こら、分かったよ! 分かった分かった! 私の負けさ。 はぁ……せっかく先輩に土下座したのにな~。 まぁ、それが君の選択なら良いのかなぁ……」
両手を上げて降参のポーズをとったナバレストは妖精達に解放され、椅子へと座り直した。
「す、すみません……ナバレスト様」
「別に良いよ。 なはは……本当に君らしい選択だな~。 それでこそ、あんなに良い同人誌が書けるんだろうね」
ナバレストは先程までの表情とは打って変わり、優しい瞳でマリを見つめた。 その瞳は慈愛に満ちている。
「あ、ありがとうございます」
「最後の確認だよ? 君は……地球での人生では無く、その世界の存続を選ぶんだね? 本当に後悔はしない?」
ナバレストの問いに、マリは間髪入れずに頷いた。
「はい! この世界には恋人も、大切な人達も、そして……私の推しが生きてるんです。 だから、お願いします」
「分かった。 約束しよう、二度とその世界をやり直す事はしない。 創造の女神ナバレストの名の下に宣言する、龕灯真理の褒美として資料として創造したこの世界を永遠のものとする。 以上をもって、君への褒美は終了だ」
ナバレストが宣言し終えると、マリの持つ本が光り始め、古い本の見た目から装飾のされた高級感溢れる本へと変化した。
そして、マリの姿も光り少しづつ消え始める。
「ナバレスト様……無理を言って本当にごめんなさい。 でも、ありがとうございます」
「さっきも言ったよ~? 別に良いよ。 そうだ、一応聞くね? 君の望むハッピーエンドってどんなの?」
「えっと……ふふ、そうですね。 小説としては駄作かもしれませんが、悪人以外の人々がみーんな不思議な力で蘇って笑って泣いて幸せに暮らしましたとさ。 とかですかね」
「なはははは! 確かにそれは駄作だね! ありがとう、参考にするよ」
「あはは、大好きな小説の原作者である乙姫先生にそう言ってもらえたら光栄です。 ……皆をお願いします」
「ん~、任せて。 ありがとう、私の世界を愛してくれて」
「ありがとー!」 「ティナの想いを継いでくれてありがとうー!」 「またねー! 元気でねー!」
マリは、ナバレストや妖精達に手を振りながら掻き消えた。
「ふ~……さて、やるかね」
マリが消えた直後、ナバレストはそそくさと変化した本を拾い上げ創造の女神としての力を行使し始めた。
「あれー?」 「ナバレスト様何してるのー?」 「その世界どうするのー? マリとの約束はー?」
「分かってるよ。 ちょっとね……私からの特別なサプライズってヤツさ。 これでよし、この本を動かしたらいけない本棚にしまっておいてくれる?」
「はーい」 「いいよー」 「あれー? でも、この本タイトルが無いよー」
「あ~……そっか。 ちょっと待ってて……うん、いい名前だ」
ナバレストが本の表紙を指でなぞると、文字が浮かび上がった。
「どうだい? 転生したのは死が間近の女王様!? ~超可愛い弟が王になれるよう平凡な女王が抗う奮闘記~ なはははは! きっと、君にピッタリのタイトルだよマリさん」
ナバレストは消えたマリがどうなったか想像しながら笑った。
◆◇◆
――そして、時は流れて十年後。
14
お気に入りに追加
204
あなたにおすすめの小説
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる