[完結]転生したのは死が間近の女王様!? ~超可愛い弟が王になれるよう平凡な女王が抗う奮闘記~

秋刀魚妹子

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第227話 女神の土下座

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 女神ナバレストは床に頭を擦り付け、綺麗な土下座でマリに謝った。

 その様子を、ナバレストの周囲を飛ぶ妖精達は笑って見ている。

 「ちょっ?! ナバレスト様!? 顔を上げて下さい、何が何だからさっぱり何ですけど?! ちゃんと説明して下さいよ」

 焦るマリは土下座するナバレストを起き上がらせ、椅子に座らせた。

 「いやぁ~……本当にごめんね。 真理さんをさ……トラックで跳ねたの私何だ~! なははは!」

 マリはナバレストの言葉を聞いて、呆気にとられた。

 「ひどーい」 「ナバレスト様、笑ってるー」 「人でなしー」

 頭を掻いて笑うナバレストの周りを妖精がクルクルと旋回し、抗議するのをマリは苦笑いで見つめる。

 「あはは……確かに、転生する前に轢かれた気が……え? じゃあ、ナバレスト様が運転してたって事ですか? 乙姫先生は作家ですよね?」

 「なはは~……実は、あの日の前に〆切が間に合わなくてね。 編集のめちゃくちゃ怖いお偉いさんに、刷った新作の小説を本屋に自分で配達しろってキレられてさ……。 それで、死ぬ気で配達してたら……真理さんがフラッと道路に倒れてきてそのまま……てへ」

 「ひどーい!」 「てへって言ったよこの女神様ー!」 「ひどーい!」

 「ええぃ、お前達は少し静かにしてな! それで~、轢いた相手を見たら私が大好きな同人誌作家のオシカツテイテイさんだったからさ~。 女神なのに、あの時ばかりは悲鳴上げたよね」

 マリは久し振りに前世のペンネームを聞き、思わず顔を赤面させる。

 「あはは……すみません、それなら私にも非があります。 あの日の夜は上司に無理矢理お酒を飲まされまして……」

 「あ! そうだったの?! いやぁ~……お酒好きで酔ってたのかと思って、転生させる時にギフトとして酒耐性上昇と肝臓無敵化付けたんだけど……要らなかったかな? なははは」

 マリは何故、現世で酒に強いのか理解し笑った。

 「ふふ、いえおかげで沢山美味しいお酒が飲めました。 ありがとうございます」

 「いやいや、私も狂い始めた世界をどうしようって悩んでてた時でさ。 君なら、何とかしてくれるかもって思ったんだ~」

 実際の所、ナバレストの判断は間違っていなかったのだろう。 しかし、マリの顔はまた暗くなってしまった。

 「ん~……そんな顔をしないでおくれ。 それより! 私の世界を救ってくれた真理さんに、ご褒美の時間さ! どんな願いでも1つだけ叶えて上げるよ~ん。 例えば~、日本に超大金持ちとして転生するとか! 他には~、健康で超モテまくる絶世の美女になって人生やり直すとか! 地球先輩にお願いして、どんな形でも蘇らせてもらえるからね!」

 「ナバレスト様、地球神様に超土下座してたよ~」 「創造神序列3位のめちゃくちゃ偉い女神なのにね~」 「ひどーい」

 「も~! 君達はまた好き勝手に言ってくれちゃうね~」

 ナバレストは妖精達を追い掛け始め、マリは唐突な褒美の話しに戸惑っていた。

 「私がまた……地球の日本に? 帰れる……」

 真理は動揺する。

 未練が無いと云えば嘘になる。 

 会いたい人、やりたい事、食べたい料理、もう叶わないと思っていた蘇りのチャンスに真理は考え込んだ。

 そして、ふと仲良く妖精達を追い掛け笑う女神ナバレストを見て真理は疑問に思った。

 (何故、女神ナバレストは私の居た世界にあんな非道な事が出来る? でも、主人公エナは大切に思ってるみたいだった。 おかしい……冷酷な女神なら、配下っぽい妖精達とあんなに仲良くする? 多分、違う……ナバレスト様は、乙姫先生はあの世界を愛してる。 でも、それは主人公達だけに向けられた愛なんだ。 エナさんが死んだら簡単にリセットするのは、モブと呼ばれる気にも止めない人々の事を知らないから?)

 思い付いたマリは立ち上がり、先程の本と水晶を持ってナバレストの下に向かった。

 「ナバレスト様! 私の話を聞いてくれますか?」

 「ふえ? うん、良いよ~。 あ、願い事は1つだけだからね~。 それで? どんな感じで生き返りたいの??」

 「違います。 聞いて欲しいんです! エナさんや、主要なメンバー以外の人々がどんな風に生きているか知って欲しいんです!」

 マリの必死な訴えに、ナバレストは苦笑いで頷いた。

 「分かった分かった、聞くよ~。 〆切もまだ先だし、尊敬する同人誌作家の真理さんの話だ。 色々参考になると思うしね~」

 真理は椅子に座り、本を開いて話し始めた。

 これまで、マリとして出会った掛け替えの無い人々との思い出を。
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