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第225話 消え行くマリと魔王
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「あ……ジャックだぁ……」
マリは何時の間にか精神の部屋から肉体へと意識が移っていた。
「マリ様! マリ様!!」
目を開けると、ボロボロと涙を流すジャックの顔が目の前にあり、涙を拭おうと手を上げたが既に砂と化し持ち上げる事は出来なかった。
「あ~……そっか。 もぉ、限界だったんだっけ……ジャック、泣かないで」
「マリ様、身体が! どうして、どうして! ヨハネ!! 早く来い! 早ぁぁぁぁくっ!」
ジャックが叫び、遠くからヨハネが駆けて来た。
「マリ! マリなのかい?! でも、どうして、どうして身体が砂に……ジャックなんでだ!」
「分からない! ルミニスは倒したんだろ?!」
「間違い無く倒した、闇の精霊にも確認したから間違い無い! だから……もう全部終わったのに……マリ」
「あはは……さすがだねぇヨハネ」
マリの両手と下半身は既に砂に変わってしまった。
「ジャック、ヨハネ……聞いて」
「ダメだ、ダメだよマリ! そうだ、ハイポーション! ハイポーションを探して」
「ヨハネ……お願い」
ジャックは立ち上がろうとするヨハネの腕を掴み、無理矢理座らせた。 ヨハネはそれに抵抗するが、ジャックは全く力を緩めない。
「ジャック! 何を……ぐ、でも、まだ何とか出来るかもしれないんだぞ!」
「ヨハネ、ヨハネ! お前が1番分かってるだろ! マリ様の、最後の話しを聞け! 頼む、頼むから……!」
血の涙を流し、留めるジャックを見てヨハネは観念したように座る。
「あはは……ありがとう、ジャック。 ごめんね……ヨハネ」
「マリ様……ルーデウス様にお伝えする事はございます……か?」
震える声でジャックは問う。
「そうだなぁ……ルーたんは、もう私から……巣立った立派な王様だからなぁ……。 奥さんを大事に……元気でって伝えて」
「必ず、必ずお伝えします」
「ありがとう……。 他の皆にも伝えたい事いっぱいあるけど……もぉ、時間無いやぁ……ジャック、ヨハネ……私を愛してくれてありがとう……」
マリの上半身も徐々に砂へと変わる。
その光景を声を押し殺しながら、涙を溢しながらファースト達は黙って見つめていた。
今だけは、この時間だけは2人のモノなのだから。
「マリ様……永遠に愛しております」
「マリ……私に恋を、愛を教えてくれてありがとう。 君の事を私は永遠に想うよ」
「ふふ……嬉しい。 でも、ダメだよぉ……平和になったらさ。 新しい恋をして、大切な人と幸せになって……。 ルキにもそう伝えて……愛してる、ごめんねって……」
ジャックとヨハネは一生分とも思える量の涙が頬を伝う。 そして、マリの身体は胸下まで砂と化した。
残された時間はほんの僅かだ。
「ルキにも、必ず……伝えます。 でも、私は……私は貴女だけを」 「私だってそうだ! 君以外と恋なんて……」
「もぉ……でも嬉しいなぁ。 もっと……皆と一緒に居たかったなぁ。 ふふ……この世界は作り物なんかじゃない。 皆、ちゃんと生きてて、泣いて、笑ってる。 私は……この世界が大好き……」
遂に、残されたのはジャックの腕の中に包まれる首のみとなった。
「マリ様……どうか、安らかに」
「マリ……お休み……良い夢を」
「う……ん。 おやすみ……ジャック、ヨハネ」
別れを告げたマリは、完全に砂となり消え去った。
◆◇◆
ジャックのヨハネを呼ぶ叫び声が聞こえた頃、全身から赤い霧を吹き出す魔王ダイは地面に膝をつき最後の時を迎えようとしていた。
「ぬぅ……メリーよ。 お前は行かなくて良かったのか?」
「はい……この姿をお見せすれば要らぬ心配をさせてしまいますから。 それに、兄上も最後がお一人なのはお嫌でしょう?」
両手が粉々に砕けたメリーは、膝をつくダイの目の前に座る。
「ふっ……本当に優しい主なのだな」
「えぇ……本当に。 兄上……魔族達に遺す言葉がお有りですか?」
「ふんっ、何も無い。 大臣レーヨンに、後のことは任せてある。 だが……マイにだけは伝言を頼む」
ダイは亜人の街に置いて来た専属メイドであり最愛の恋人であるマイの事だけが心残りであった。
「勿論です。 何をお伝えしますか……?」
「ぐふっ! はぁはぁはぁ……マイの腹には我との子が居るのだ。 男なら我の名を。 女ならマリと名付けよと……伝えてくれ。 お前の主と同じ名なら……きっと良き魔族となろうぞ」
「ふふ、分かりました……兄上。 必ず」
ダイの全身から吹き出る赤い霧が少なくなり、魔王の死が近い事を告げる。
「それと、メリー……」
「はい」
「お前は我の自慢の妹だ」
突然の言葉に、メリーは耐えていた気持ちが溢れ出し涙がボロボロと溢れる。
「……はい。 ありがとう、ございます兄上。 長い間、本当にお疲れ様でした。 どうか、安らかに……私達を見守っていて下さい」
「さらばだ……」
妹に看取られ、世界最強の魔王は息を引き取った。
こうして、多大な犠牲を払い世界は救われたのだ。
マリは何時の間にか精神の部屋から肉体へと意識が移っていた。
「マリ様! マリ様!!」
目を開けると、ボロボロと涙を流すジャックの顔が目の前にあり、涙を拭おうと手を上げたが既に砂と化し持ち上げる事は出来なかった。
「あ~……そっか。 もぉ、限界だったんだっけ……ジャック、泣かないで」
「マリ様、身体が! どうして、どうして! ヨハネ!! 早く来い! 早ぁぁぁぁくっ!」
ジャックが叫び、遠くからヨハネが駆けて来た。
「マリ! マリなのかい?! でも、どうして、どうして身体が砂に……ジャックなんでだ!」
「分からない! ルミニスは倒したんだろ?!」
「間違い無く倒した、闇の精霊にも確認したから間違い無い! だから……もう全部終わったのに……マリ」
「あはは……さすがだねぇヨハネ」
マリの両手と下半身は既に砂に変わってしまった。
「ジャック、ヨハネ……聞いて」
「ダメだ、ダメだよマリ! そうだ、ハイポーション! ハイポーションを探して」
「ヨハネ……お願い」
ジャックは立ち上がろうとするヨハネの腕を掴み、無理矢理座らせた。 ヨハネはそれに抵抗するが、ジャックは全く力を緩めない。
「ジャック! 何を……ぐ、でも、まだ何とか出来るかもしれないんだぞ!」
「ヨハネ、ヨハネ! お前が1番分かってるだろ! マリ様の、最後の話しを聞け! 頼む、頼むから……!」
血の涙を流し、留めるジャックを見てヨハネは観念したように座る。
「あはは……ありがとう、ジャック。 ごめんね……ヨハネ」
「マリ様……ルーデウス様にお伝えする事はございます……か?」
震える声でジャックは問う。
「そうだなぁ……ルーたんは、もう私から……巣立った立派な王様だからなぁ……。 奥さんを大事に……元気でって伝えて」
「必ず、必ずお伝えします」
「ありがとう……。 他の皆にも伝えたい事いっぱいあるけど……もぉ、時間無いやぁ……ジャック、ヨハネ……私を愛してくれてありがとう……」
マリの上半身も徐々に砂へと変わる。
その光景を声を押し殺しながら、涙を溢しながらファースト達は黙って見つめていた。
今だけは、この時間だけは2人のモノなのだから。
「マリ様……永遠に愛しております」
「マリ……私に恋を、愛を教えてくれてありがとう。 君の事を私は永遠に想うよ」
「ふふ……嬉しい。 でも、ダメだよぉ……平和になったらさ。 新しい恋をして、大切な人と幸せになって……。 ルキにもそう伝えて……愛してる、ごめんねって……」
ジャックとヨハネは一生分とも思える量の涙が頬を伝う。 そして、マリの身体は胸下まで砂と化した。
残された時間はほんの僅かだ。
「ルキにも、必ず……伝えます。 でも、私は……私は貴女だけを」 「私だってそうだ! 君以外と恋なんて……」
「もぉ……でも嬉しいなぁ。 もっと……皆と一緒に居たかったなぁ。 ふふ……この世界は作り物なんかじゃない。 皆、ちゃんと生きてて、泣いて、笑ってる。 私は……この世界が大好き……」
遂に、残されたのはジャックの腕の中に包まれる首のみとなった。
「マリ様……どうか、安らかに」
「マリ……お休み……良い夢を」
「う……ん。 おやすみ……ジャック、ヨハネ」
別れを告げたマリは、完全に砂となり消え去った。
◆◇◆
ジャックのヨハネを呼ぶ叫び声が聞こえた頃、全身から赤い霧を吹き出す魔王ダイは地面に膝をつき最後の時を迎えようとしていた。
「ぬぅ……メリーよ。 お前は行かなくて良かったのか?」
「はい……この姿をお見せすれば要らぬ心配をさせてしまいますから。 それに、兄上も最後がお一人なのはお嫌でしょう?」
両手が粉々に砕けたメリーは、膝をつくダイの目の前に座る。
「ふっ……本当に優しい主なのだな」
「えぇ……本当に。 兄上……魔族達に遺す言葉がお有りですか?」
「ふんっ、何も無い。 大臣レーヨンに、後のことは任せてある。 だが……マイにだけは伝言を頼む」
ダイは亜人の街に置いて来た専属メイドであり最愛の恋人であるマイの事だけが心残りであった。
「勿論です。 何をお伝えしますか……?」
「ぐふっ! はぁはぁはぁ……マイの腹には我との子が居るのだ。 男なら我の名を。 女ならマリと名付けよと……伝えてくれ。 お前の主と同じ名なら……きっと良き魔族となろうぞ」
「ふふ、分かりました……兄上。 必ず」
ダイの全身から吹き出る赤い霧が少なくなり、魔王の死が近い事を告げる。
「それと、メリー……」
「はい」
「お前は我の自慢の妹だ」
突然の言葉に、メリーは耐えていた気持ちが溢れ出し涙がボロボロと溢れる。
「……はい。 ありがとう、ございます兄上。 長い間、本当にお疲れ様でした。 どうか、安らかに……私達を見守っていて下さい」
「さらばだ……」
妹に看取られ、世界最強の魔王は息を引き取った。
こうして、多大な犠牲を払い世界は救われたのだ。
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