[完結]転生したのは死が間近の女王様！？ ~超可愛い弟が王になれるよう平凡な女王が抗う奮闘記~

第217話 マリVSルミニス

　ジャックが急いで大破した車両の中へと向かうと、マリが自身の黒い触手と殴り合っていた。

　「この！　よくも皆を酷い目にあわせたな！　おりゃおりゃおりゃおりゃ！！」

　「『なんで生きてるのよぉ！　私が殺して吸収した筈でしょぉ？！』」

　マリの口からは2人の声が発されており、ジャックは本物のマリがルミニスと戦っていると確信した。

　「マリ様！」

　ジャックは直ぐに加勢しようとしたが、触手を操るマリは制止した。　

　「ジャック来ないで！！　今の私の身体は何をしても倒せないんでしょ？　なら、動けない様にしないと！　車両の中に小さな冷蔵庫が無いか探して！　早く！！」

　「『無駄よぉ！　私にはどんな攻撃も効かないんだからぁ！　今、マリがしてるのも無駄無駄無駄ぁ！』」

　暴れるルミニスをマリは数本の黒い触手で押さえ付け、空いている触手で殴り続ける。

　「分かりました、直ぐに！」

　ジャックが急いで車両の中を探していると、ファーストとセカンドもやって来た。

　「ジャック殿、状況は！」　

　「マリ様とルミニスが戦ってます！　マリ様の指示で冷蔵庫を探してるのですが、何処にあるのか」

　「冷蔵庫？　あ！　私、分かりますわよ！」

　セカンドが大破した運転席に潜り込み、黒い箱を取り出してきた。

　「ありがとうございます！　マリ様、ありました！」

　「『ぬぐぁぁぁ！　鬱陶しいわね！　マリ分かってんのぉ？　これはお前の身体でもあるのよぉ？！』」

　「ナイス！　中の瓶を投げて！」

　「はい！」

　ジャックは冷蔵庫を開け、中に入っていた瓶を投げた。　黒い触手がソレをキャッチし、蓋を開けてマリの口に突っ込む。

　「『んぐっ？！　んぐぐぐぐ！？　ぐぅぅぅぅっ！』」

　「んぐんぐんぐんぐ！　ぷはぁっ！　キンキンに冷えてやがるー！　最高ー！」

　小型冷蔵庫で冷え切った女王殺しを飲んだマリの身体は痙攣し、顔を真っ赤に染める。

　「『うげぇ？！　何コレ！？　何を飲ませたのよぉぉぉ！　ひくっ、あぇぇ？　世界が、世界が回るぅぅぅ？！』」

　「あはは！　これでもう身体は動かないわよ？　この女王殺しはドワーフ達が私を酔い潰す為に開発した最高のお酒だからね～！　もう一口……最高ーー！」

　「『いや、コレ猛毒並みに酷いわよぉ！？　普通の人間なら即死レベルじゃなぁぁい！　ひくっ、止めてぇもう……き、気持ち悪いぃぃぃ！　……かはっ』」

　黒い触手に無理矢理飲まされるマリの身体は泥酔し、ピクリとも動かない。　しかも、毒では無い為ルミニスの光魔法で回復も出来なかった。

　そのままルミニスは耐え切れずに気絶し、マリの身体の所有権が一時的に本来の持ち主に戻る。

　「ジャック、ファースト、セカンド、この身体が動けない内に地面に縫い付けちゃって！　鎖でも何でも良いから」

　「了解ですマリ様！」　「マリ様の無事を知ったら隊長が喜びますわ！」

　ファーストとセカンドにマリは微笑む。　そして、涙を流して喜ぶジャックを見てマリは胸が痛んだ。

　「マリ様！　マリ様にまたお会いできるとは……会いたかったです」

　「ずっと見てたよ……ジャック。ごめんね、本当に……ごめんね。　あ……私も意識飛ぶから、お願いね」

　「マリ様！？　マリ様！！」

　マリは叫ぶジャックの声が遠くなるのを感じ、そのまま意識を手放した。

　◆◇◆

　次の瞬間には真っ黒の部屋に飛ばされ、其処では怒り狂った顔のルミニスが待ち構えていた。

　『覚悟は出来てるんだよねぇぇ！　マリぃぃぃ！』

　「そっちこそ覚悟しろ！　言っておくけど、私は絶対にお前なんかに怯まないから！」

　気怠い身体に鞭を打ち、マリは襲い掛かるルミニスを迎え撃つのであった。