[完結]転生したのは死が間近の女王様!? ~超可愛い弟が王になれるよう平凡な女王が抗う奮闘記~

秋刀魚妹子

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第198話 魔族亜人連合結成

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 ヨハネが再起し、それを見たロキ達もポーションを一気飲みした。

 「おっしゃぁ! くよくよしてらんねぇな!」 

 「マリの想い、俺も守りたい」

 「亜人総族長に手を出した事、必ず後悔させてやるよ」

 「その通りじゃ。 儂が口出しする必要も無かったの。 立ち止まれば全てを失う……昔からそういうものじゃ」

 ルルが立ち上がり、ダイ達の下へと歩む。

 「のぉ、魔王ダイ殿。 お主、初めから闇の精霊にマリを殺す様に命令されておったのじゃろ? 何故……変わる前に殺さなかったのじゃ?」

 ダイは眉をひそめながら答える。

 「我が妹メリーが信頼し、主と呼ぶ者を殺したく無かった……いや、違うな。 それ以上にこの殺伐とした世界で、平和への希望となる者を殺せる筈が無い」

 「成る程の。 それで、罰は魔力障壁の消失かの?」

 「……恐らくな。 俺も長年仕えたが、闇の精霊より上の者が指示をしている様だ。 俺達魔族が生きるも死ぬも……その御方とやら次第になる」

 ルルは顎に手を当て考える。

 「正直に言おう……この土地はもう無理じゃ。 魔力障壁の維持には膨大な力が必要になっておる筈じゃ。 多分じゃが、消費されている力はこの北の大地から吸い取っておるんじゃろ」

 「だろうな。 井戸は全て枯れ、残存していた生き物は全て死に絶えた」

 「なら、取り引きしようでは無いか」

 「……何だ」

 「ルミニスを止めるのに魔族達の力を貸して欲しいのじゃ。 儂等亜人と魔族とで手を取り合い、人間達とも手を組み、そしてマリが守ろうとしていた物を守る為に共に戦って欲しいのじゃ。 変わりに亜人の森を全て魔族にやろう」

 ダイに取り引きを持ち掛けたルルの瞳からはポロポロと涙が溢れる。 ルルが提示した報酬は、長年亜人達が守り住んでいた亜人の森全土という破格の条件であった。

 「頼むのじゃ……。 マリは、マリは……儂の大切な妹だったのじゃ。 気付いてやれなかった駄目な姉なりに、妹の想いを守ってやりたいのじゃ」

 ダイは拳を握り締め、集まっている四天王や上級魔族達に命令する。

 「元よりそのつもりだ。 我が同胞よ、聞け! 我等魔族はこれより、亜人及び人間達と手を組む。 全ての民に通達せよ! 戦だ! 奪う為ではなく、守る為に戦うぞ!」

 「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉっ!」」」」」

 魔王ダイの命令に上級魔族達は歓喜し、雄叫びを上げる。

 「はぁ……すみませんね皆さん。 魔族は脳筋が多いのです。 マリ殿の事をとやかく言ってはおりましたが、素直に認めれなかっただけで多くの食料に感謝していたのですよ?」

 ルル達に大臣レーヨンがため息交じりに教える。

 「ふっ、知っておるよ。 魔族とは何度も殺り合ってきた仲じゃからの」

 「姉上、闇の精霊が戻って来ました」

 ヨハネに言われ、天井を見ると穏やか光が点滅しながら降りてきた。

 『いったぁぁぁぁい! どうして僕が拳骨喰らわないといけないのさ! はぁ……やぁ、お待たせ。 さて、先に伝えとく。 あの御方、いや……もう許可が出たのか。 この世界を創造された女神ナバレスト様よりの伝言だ。 一度しか言わないから良く聞いてくれよ』

 闇の精霊が放った発言に一同は驚愕し、固まった。

 そして、闇の精霊の言葉に耳を傾ける。

 『私が創った世界だが、どうするかはその世界で生きる者達が決めなさい。 滅びるか、抗うか。 貴方達次第です。 それと、魔族達……古代の時代に犯した罪を全て赦しましょう。 これからは、好きに生きなさい。 以上だよ』

 女神ナバレストからの伝言を伝えた闇の精霊はフワフワと浮きながらヨハネの目の前へと移動する。

 『僕の力を使えれるのは、君だけだ。 良いかい? 現状は一番最悪の事態を回避出来ただけで、まだ最悪なのには変わりない。 僕と光の精霊は世界の均衡を保つ為に、必ず一定の距離は離れていないといけない。 太陽と月が同時に空へ浮かばないのと同じさ』

 「私が知ってる限りだが、光の精霊と闇の精霊が混じり合う時世界が終わる……だったっけ? 姉上」

 「良くそんな大昔の伝承を覚えておるの、ヨハネ。 そう伝わってはおるが……まさか、事実なのじゃ?」

 『そうだよ。 だから、監視役だった筈の妖精ティナ様と光の精霊が混じり合っても僕の所に近づく事は出来なかった。 女神ナバレスト様が近付けないように強い反発の魔法を掛けて下さったからね。 でも、状況が大きく変わったのさ。 ルミニスが掛けた呪いの副産物として、ルミニスの小さな闇がマリの頭の中に住み着いた結果……彼女はルミニスに殺され乗っ取られた』

 ヨハネとジャックが顔を顰める。

 『そして、彼女には僕達に本来作用する反発の力が作用しない。 つまり……』

 「ルミニスはマリの身体を使えば、ゴルメディア帝国の国境から北の大地まで来れる……って事だね」

 『その通り。 だから、僕は此処から動く事は出来ない。 エルフの君に力を貸してあげるから、直接ルミニスと対峙できれば何とかなるかもだけど……急がないとルミニスが先に攻めて来るだろう。 此処からの距離を考えたら、ルミニスの準備が終える前にエントン王国とやらに帰るのは間に合わない。 諦めて、亜人の森で迎え撃つのをお薦めするよ』

 闇の精霊からの現実的な提案に答えず、ヨハネはアテスの方を見た。

 「アテス、出来るか?」

 「ふふ、任せてよヨハネ兄。 世界が吹っ飛ぶ程に早い列車を作って見せるよ」

 アテスは獰猛に笑い、ヨハネ達も笑った。

 『え? 何、急に怖いんですけど』
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