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第191話 魔王の責務
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魔王ダイは広間を出てから廊下を進み執務室へと向かっていた。
「陛下、メリー様とお客人達で夕食会をすると大臣殿から連絡があったのですが?」
すると、1人の魔族が頭を下げながらダイに小言を言ってきた。
「何が不満だ。 料理長」
「いえ、何も。 ただ、もう長い間料理を作っておりませんので……些か無理難題かと。 食材等、一欠片も残ってはいないのですよ?」
「大丈夫だ。 メリーの連れて来た客人が、何やら美味い物を作って食わせてくれるらしい。 お前は伝えられた通り、厨房を貸してやれ」
「……畏まりました」
この城唯一のシェフと別れ、ダイは廊下ですれ違うメイド達に城の入口にある荷物を持ち込むのを手伝うように指示をする。
そして、執務室に入ると部屋の中では穏やかな光の玉が待っていた。
「……っ!? どうされたのですか、神殿から出てこられるとは」
ダイは一瞬身構えるが、直ぐに跪く。
『ねぇ、どういうつもりだい? 何故あの場で話しを聞き、取り引きに応じて女を殺さなかった。 言った筈だよ? 取り引きに応じて速やかに殺せと』
穏やかな光の玉が激怒している事に、ダイは眉をひそめる。
「分かっております。 ですが、その結果何が起こるか……容易に想像出来ると思うのですが?」
穏やかな光の玉は赤く点滅し始めた。
『そんな事はどうでも良いんだよ! 僕に言われた通りにお前は動け。 魔族に自由を与えるチャンスをあの御方がお許しになったんだ。 女を殺した後に、君が自害でもして和解すればいいだろ? 僕としては、そんな取り引きに応じる時間すら無いと考えてる。 だが、あの御方の言葉は絶対だ』
「……何故、其処までマリを殺したいのですか? 少なくとも、平和の為に訪れた彼女を殺す事に私は反……ぬっ?!」
『黙れ』
穏やかな光の玉が低い声で呟くと、ダイの首に黒い輪っかの光が絡みつき締め上げた。
「ぐっ! ……がはっ」
『何故、魔族如きに事情を説明しないといけないのかな? いいから、とにかく、早く、速やかに、あの女を殺せ。 さもなくば、取り返しがつかなくなるよ? 話は以上だ。 この後の夕食会とやらで、君が魔族の王としての務めを果たす事を期待する。 もし、出来なければ……空の結界は消え去るだろう』
穏やかな光の玉は言いたいことを述べると、煙の様に消え去った。 そして、ダイの首を締めていた光も消える。
「ぬぅっ?! かはっ! はぁはぁはぁ……脅しか」
解放されたダイは床に倒れ、己の無力さに打ちひしがれる。
「魔族を守る為なら……殺すのが正解か。 その後に、許されるなら命を絶ち償おう……。 我等の祖先が余計な事をしたせいで魔族達がこんな目に……糞が」
1人、執務室で倒れ呟くダイの独り言を聞く者はいなかった。
◆◇◆
「よーし! 運んで運んで~!」
その頃、マリ達は広場へ戻り運んできた食材を城の中へと移動させていた。
「マリ様!? こんな事は私達がしますから!」
「大丈夫だよメリーさん。 私はお酒しか運んでないから!」
メリーに止められながらも、マリは意気揚々と酒瓶が入った箱を運ぶ。
「ふふ、マリは本当にお酒が好きだね」
「私にとって、お酒は命の水だからね~。 あ、手伝いに来てくれたメイドさん。 お酒って何処に運べば良いかな?」
マリは1人で案内された場所へ箱を運び込み、誰も側に居ない事を確認してから座り込んだ。
「うぁ……頭、いったぁ……。 何で? この城に近付いてから、偏頭痛がヤバい……。 ダメダメ! しっかりしないと! 今日の夕食会で、魔王様達と仲良くなって争いの元を消し去るんだ! いたた……く~、お酒の飲み過ぎなのかなぁ~」
マリは運んだ部屋で頭を抱えていたが、痛みを我慢し部屋を出る。
その部屋にあった鏡に写る自身の顔をマリは見逃していた。 痛みに呻くマリを見つめる、頬まで裂けた口で笑うマリの姿を。
「陛下、メリー様とお客人達で夕食会をすると大臣殿から連絡があったのですが?」
すると、1人の魔族が頭を下げながらダイに小言を言ってきた。
「何が不満だ。 料理長」
「いえ、何も。 ただ、もう長い間料理を作っておりませんので……些か無理難題かと。 食材等、一欠片も残ってはいないのですよ?」
「大丈夫だ。 メリーの連れて来た客人が、何やら美味い物を作って食わせてくれるらしい。 お前は伝えられた通り、厨房を貸してやれ」
「……畏まりました」
この城唯一のシェフと別れ、ダイは廊下ですれ違うメイド達に城の入口にある荷物を持ち込むのを手伝うように指示をする。
そして、執務室に入ると部屋の中では穏やかな光の玉が待っていた。
「……っ!? どうされたのですか、神殿から出てこられるとは」
ダイは一瞬身構えるが、直ぐに跪く。
『ねぇ、どういうつもりだい? 何故あの場で話しを聞き、取り引きに応じて女を殺さなかった。 言った筈だよ? 取り引きに応じて速やかに殺せと』
穏やかな光の玉が激怒している事に、ダイは眉をひそめる。
「分かっております。 ですが、その結果何が起こるか……容易に想像出来ると思うのですが?」
穏やかな光の玉は赤く点滅し始めた。
『そんな事はどうでも良いんだよ! 僕に言われた通りにお前は動け。 魔族に自由を与えるチャンスをあの御方がお許しになったんだ。 女を殺した後に、君が自害でもして和解すればいいだろ? 僕としては、そんな取り引きに応じる時間すら無いと考えてる。 だが、あの御方の言葉は絶対だ』
「……何故、其処までマリを殺したいのですか? 少なくとも、平和の為に訪れた彼女を殺す事に私は反……ぬっ?!」
『黙れ』
穏やかな光の玉が低い声で呟くと、ダイの首に黒い輪っかの光が絡みつき締め上げた。
「ぐっ! ……がはっ」
『何故、魔族如きに事情を説明しないといけないのかな? いいから、とにかく、早く、速やかに、あの女を殺せ。 さもなくば、取り返しがつかなくなるよ? 話は以上だ。 この後の夕食会とやらで、君が魔族の王としての務めを果たす事を期待する。 もし、出来なければ……空の結界は消え去るだろう』
穏やかな光の玉は言いたいことを述べると、煙の様に消え去った。 そして、ダイの首を締めていた光も消える。
「ぬぅっ?! かはっ! はぁはぁはぁ……脅しか」
解放されたダイは床に倒れ、己の無力さに打ちひしがれる。
「魔族を守る為なら……殺すのが正解か。 その後に、許されるなら命を絶ち償おう……。 我等の祖先が余計な事をしたせいで魔族達がこんな目に……糞が」
1人、執務室で倒れ呟くダイの独り言を聞く者はいなかった。
◆◇◆
「よーし! 運んで運んで~!」
その頃、マリ達は広場へ戻り運んできた食材を城の中へと移動させていた。
「マリ様!? こんな事は私達がしますから!」
「大丈夫だよメリーさん。 私はお酒しか運んでないから!」
メリーに止められながらも、マリは意気揚々と酒瓶が入った箱を運ぶ。
「ふふ、マリは本当にお酒が好きだね」
「私にとって、お酒は命の水だからね~。 あ、手伝いに来てくれたメイドさん。 お酒って何処に運べば良いかな?」
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「うぁ……頭、いったぁ……。 何で? この城に近付いてから、偏頭痛がヤバい……。 ダメダメ! しっかりしないと! 今日の夕食会で、魔王様達と仲良くなって争いの元を消し去るんだ! いたた……く~、お酒の飲み過ぎなのかなぁ~」
マリは運んだ部屋で頭を抱えていたが、痛みを我慢し部屋を出る。
その部屋にあった鏡に写る自身の顔をマリは見逃していた。 痛みに呻くマリを見つめる、頬まで裂けた口で笑うマリの姿を。
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