191 / 231
第189話 大臣レーヨン
しおりを挟む
「それでは、我等は魔王城の守護に戻りますね」
「道中で食べさせて下さった料理、私の魔族生で最高の思い出となりました! 感謝します、マリ殿」
「ありがとう、灼炎と青燕。 きっと、きっと今の暮らしより良くなる様にしますから」
「そうだよ。 メリーさんの言う通り! 期待しててね」
「「はっ!」」
魔王城の門を潜ったマリ達は、四天王の灼炎と青燕に別れを告げ遂に城の広場に到着した。
貨物列車を停車させ、マリは魔王城の広場へと降り立つ。
「此処がメリーさんの実家か~。 しかも、メリーさん王女様でしょ? あ! なら、私がメイド長しようか?」
「ふふ、マリ様。 本当に勘弁して下さいませ」
メリーの本気の目見て、マリは引き下がる。
「ひぇっ……す、すみませんでした~」
「マリ様、メリーはメイド長である事に誇りを持っていますので……」
「あはは! さっきのメリーは怖かったね、おいでマリ」
マリはそそくさとヨハネとジャックの後ろに隠れた。
「隊長、私達は荷下ろしを致します」
「その後は、サードの恋人探しに行っても良いっすか?」
ファーストとフィフスがメリーに指示を仰ぐのを聞きながら、マリは魔王城を見上げる。
後ろでは豪華な車両に残っていたルル達が出て来た。
「ロキ、ラガン、アテス。 マリが攻撃されない限り動くでないぞ?」
「分かってるよ、ババァ」
「俺はマリを守る。 それだけだ」
「誰がババァじゃ! まぁ、分かっておるんなら良いのじゃ。 アテス? どうしたのじゃ」
「え……うん。 ごめん、何でも無いよ」
魔王城を見上げていたアテスは、ルルに話し掛けられている事に気付き返事をした。 しかし、その顔色は悪い。
「アテス……何に気付いたんじゃ」
ルルにこっそり聞かれたアテスは、小声で答える。
「上で何かが見てきてる。 でも……姿は見えないね」
「警戒すべきじゃな……」
ルル達は得体のしれない存在に警戒する。
「ねぇ、ヨハネ。 結構、魔王城って古いんだね」
「そうだね。 街の建物も古かった。 きっと……何かを造ったり直したりする余裕が魔族達の心には無いのかもね」
「マリ様、ヨハネ……誰かが出てきたようです」
魔王城の大きな扉が開き、中から1人の魔族が出て来た。 金髪で肌が浅黒い、男の魔族だ。
「メリー王女殿下、いや……元王女殿下ですかな? お久しぶりでございます」
魔族はメリーの前まで歩き、深々とお辞儀をした。
「久し振りですね、大臣レーヨン。 兄上は……魔王陛下はお元気ですか?」
「陛下は何時でもお元気ですよ? それより、共に出た同胞以外の者達が多い様ですが?」
「私がお仕えしているエントン フォル マリ様です。 亜人総族長にして、元エントン王国の女王陛下です。 決して失礼の無い対応をお願いします」
マリは紹介された為、仕方無くヨハネとジャックの間から前へと出てお辞儀をする。
「よろしくお願いします!」
マリが挨拶した直後、異変に気付いたジャックとヨハネはマリを後ろへと下げる。 ルル達も、直ぐ様マリの周囲に展開した。
「ふふふふふ、人間ですか。 なのに、亜人の総族長ですと? メリー様はご冗談が上手くなりましたな。 そうでないと、おかしいですよね? 其処に居るのはエルフの英雄ヨハネ! ドワーフの英雄、鬼人の英雄、獣人の英雄が勢揃いだ! 陛下がメリー様が直に戻ると言われるから、四天王にわざわざ国境沿いに待機させて迎えたのが……敵達だと? ふざけるなよっ!! 我等同胞を裏切ったのか!」
大臣レーヨンから膨大な殺気が漏れたと同時に、メリー達の周囲に武装した黒ずくめの魔族達が何処からともなく出現し包囲する。
「どぇぇぇ!? 何事!?」
マリは周りを一瞬で仲間達に囲われ、何が起きたか分からずに狼狽えた。 怒れるレーヨンの額からは角が生え、身体からは黒い炎がチリチリと舞い始める。
「レーヨン、それ以上のマリ様への無礼。 例え、貴様と云えど許しませんよ!」
メリーやファースト達も角を生やし、戦闘態勢に入った。 空気がピリ付き、一触即発の事態になってしまったマリは必死にどうするべきか頭を回転させた。
「あ~……えっと、ご飯にしませんか? めちゃくちゃ美味しい料理が食べられますよ? あの、えっと……四天王の皆さんも凄く喜んでくれたんです! 後、お酒も有りますよ~? ……ダメです?」
場の空気を和ませようと、必死に明るく声を張るマリを見てレーヨンは吹き出した。 ちなみに、ヨハネも肩を震わせて笑いを堪えている。
「ふふ……ふははははっ! すみません、皆さん。 冗談ですよ、陛下からは誰が来ようと歓迎する様に言われております。 皆、下がって良いですよ」
レーヨンの合図で、黒ずくめの魔族達は影に溶け込むように消えた。
「さぁ、どうぞお入りください。 それと……マリ殿。 先程仰ってた料理とお酒、楽しみにしてますよ?」
ウィンクされたマリは苦笑いで答える。
「あはは……勿論です。 良かったぁ~」
「すみません、マリ様。 またキツく言っておきますので」
マリ達はようやく魔王城の中に入るのであった。
「道中で食べさせて下さった料理、私の魔族生で最高の思い出となりました! 感謝します、マリ殿」
「ありがとう、灼炎と青燕。 きっと、きっと今の暮らしより良くなる様にしますから」
「そうだよ。 メリーさんの言う通り! 期待しててね」
「「はっ!」」
魔王城の門を潜ったマリ達は、四天王の灼炎と青燕に別れを告げ遂に城の広場に到着した。
貨物列車を停車させ、マリは魔王城の広場へと降り立つ。
「此処がメリーさんの実家か~。 しかも、メリーさん王女様でしょ? あ! なら、私がメイド長しようか?」
「ふふ、マリ様。 本当に勘弁して下さいませ」
メリーの本気の目見て、マリは引き下がる。
「ひぇっ……す、すみませんでした~」
「マリ様、メリーはメイド長である事に誇りを持っていますので……」
「あはは! さっきのメリーは怖かったね、おいでマリ」
マリはそそくさとヨハネとジャックの後ろに隠れた。
「隊長、私達は荷下ろしを致します」
「その後は、サードの恋人探しに行っても良いっすか?」
ファーストとフィフスがメリーに指示を仰ぐのを聞きながら、マリは魔王城を見上げる。
後ろでは豪華な車両に残っていたルル達が出て来た。
「ロキ、ラガン、アテス。 マリが攻撃されない限り動くでないぞ?」
「分かってるよ、ババァ」
「俺はマリを守る。 それだけだ」
「誰がババァじゃ! まぁ、分かっておるんなら良いのじゃ。 アテス? どうしたのじゃ」
「え……うん。 ごめん、何でも無いよ」
魔王城を見上げていたアテスは、ルルに話し掛けられている事に気付き返事をした。 しかし、その顔色は悪い。
「アテス……何に気付いたんじゃ」
ルルにこっそり聞かれたアテスは、小声で答える。
「上で何かが見てきてる。 でも……姿は見えないね」
「警戒すべきじゃな……」
ルル達は得体のしれない存在に警戒する。
「ねぇ、ヨハネ。 結構、魔王城って古いんだね」
「そうだね。 街の建物も古かった。 きっと……何かを造ったり直したりする余裕が魔族達の心には無いのかもね」
「マリ様、ヨハネ……誰かが出てきたようです」
魔王城の大きな扉が開き、中から1人の魔族が出て来た。 金髪で肌が浅黒い、男の魔族だ。
「メリー王女殿下、いや……元王女殿下ですかな? お久しぶりでございます」
魔族はメリーの前まで歩き、深々とお辞儀をした。
「久し振りですね、大臣レーヨン。 兄上は……魔王陛下はお元気ですか?」
「陛下は何時でもお元気ですよ? それより、共に出た同胞以外の者達が多い様ですが?」
「私がお仕えしているエントン フォル マリ様です。 亜人総族長にして、元エントン王国の女王陛下です。 決して失礼の無い対応をお願いします」
マリは紹介された為、仕方無くヨハネとジャックの間から前へと出てお辞儀をする。
「よろしくお願いします!」
マリが挨拶した直後、異変に気付いたジャックとヨハネはマリを後ろへと下げる。 ルル達も、直ぐ様マリの周囲に展開した。
「ふふふふふ、人間ですか。 なのに、亜人の総族長ですと? メリー様はご冗談が上手くなりましたな。 そうでないと、おかしいですよね? 其処に居るのはエルフの英雄ヨハネ! ドワーフの英雄、鬼人の英雄、獣人の英雄が勢揃いだ! 陛下がメリー様が直に戻ると言われるから、四天王にわざわざ国境沿いに待機させて迎えたのが……敵達だと? ふざけるなよっ!! 我等同胞を裏切ったのか!」
大臣レーヨンから膨大な殺気が漏れたと同時に、メリー達の周囲に武装した黒ずくめの魔族達が何処からともなく出現し包囲する。
「どぇぇぇ!? 何事!?」
マリは周りを一瞬で仲間達に囲われ、何が起きたか分からずに狼狽えた。 怒れるレーヨンの額からは角が生え、身体からは黒い炎がチリチリと舞い始める。
「レーヨン、それ以上のマリ様への無礼。 例え、貴様と云えど許しませんよ!」
メリーやファースト達も角を生やし、戦闘態勢に入った。 空気がピリ付き、一触即発の事態になってしまったマリは必死にどうするべきか頭を回転させた。
「あ~……えっと、ご飯にしませんか? めちゃくちゃ美味しい料理が食べられますよ? あの、えっと……四天王の皆さんも凄く喜んでくれたんです! 後、お酒も有りますよ~? ……ダメです?」
場の空気を和ませようと、必死に明るく声を張るマリを見てレーヨンは吹き出した。 ちなみに、ヨハネも肩を震わせて笑いを堪えている。
「ふふ……ふははははっ! すみません、皆さん。 冗談ですよ、陛下からは誰が来ようと歓迎する様に言われております。 皆、下がって良いですよ」
レーヨンの合図で、黒ずくめの魔族達は影に溶け込むように消えた。
「さぁ、どうぞお入りください。 それと……マリ殿。 先程仰ってた料理とお酒、楽しみにしてますよ?」
ウィンクされたマリは苦笑いで答える。
「あはは……勿論です。 良かったぁ~」
「すみません、マリ様。 またキツく言っておきますので」
マリ達はようやく魔王城の中に入るのであった。
17
お気に入りに追加
204
あなたにおすすめの小説
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる