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第187話 北の荒野
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亜人共有領土の都市を出発し、5日目。
亜人の森を抜け、見渡す限りの荒野までマリ達はやって来ていた。
「ふぇ~……メリーさん。 あの紫色のでっかい膜みたいなの……何?」
「あれが、魔族の国を覆っている魔力です。 魔族はあの中に居れば、ほぼ飲食無しでも生きられます。 ですが、外に一歩踏み出せば飢餓に襲われ食べる物が少ない荒野では瞬く間に餓死してまうのです」
「え~……怖っ。 だから昔は亜人の森を攻めてたのか……」
貨物列車は紫色の膜へと真っ直ぐ向かう。
全員が紫色の膜を見ようと、運転席の側で景色を見つめていた。
「ねぇ、このまま突っ込んで大丈夫なのかな~? って、後ろ!」
運転席からアテスが顔を出し、マリ達の方を振り向くと同時に大声を上げた。
「ヨハネ、メリー、マリ様を!」
アテスが叫んだ瞬間、ジャックが一番に振り返り豪華な車両の後方に現れた4人の侵入者へ拳を構える。
ヨハネはマリを庇い、ロキ達も戦闘態勢に入った。
「待って下さい! 大丈夫です、恐らく魔王である兄上からの迎えでしょう……そうですよね? 魔王軍四天王の皆さん」
メリーがジャックの前へと立ち塞がり、問うと4人の侵入者達は被っていたフードを外し笑う。
「ふっ、お久しぶりですね。 メリー王女殿下」
赤髪の魔族が跪くと、残りの金髪、青髪、緑髪の魔族達も跪いた。
「ふぅ……肝を冷やさないで欲しいのじゃ。 まさか、見張りに高名な四天王を配置するとは……」
「ふっ、ご冗談を。 この奇抜な乗り物に乗った瞬間に気持ち悪くなった我等が、亜人の英雄方に勝てる訳……うっぷ!!」
「いや、メリーさんに跪いた訳じゃなくて乗り物酔いかーい!」
マリの鋭いツッコミか炸裂し、緊張感は消え去り皆苦笑いだ。
「あはは、ラガン。 酔い冷ましの実をくれるかい?」
ヨハネが笑いながら酔い冷ましの実を魔族達に含ませると、四天王の顔色は直ぐに良くなりメリー達は同胞の無事に安堵した。
「はぁはぁはぁ……すみません、殿下。 久し振りの再開なのに……」
「いえ、私達もこの乗り物に乗った時は酷かったですから。 気絶までしたんですよ?」
「ま、まさか、亜人達の文明がこんなに進んでいたとは……。 この灼炎、完敗です」
「いや、無敗の四天王が認めた敗北が乗り物酔いとか後世に残せんから勘弁して欲しいのじゃ」
メリーと四天王灼炎の会話に、ルルは思わず割って入る。
「あはは、凄く怖い人達を想像したけど……案外メリーさん達とそんなに変わんないね」
「いえ、マリ様。 油断はされませんように」
「ジャック、私達は争いを無くしにも来てるんだよ? 警戒し過ぎると、相手に不信感を与えてしまう。 そうだろ? マリ」
「そうだよ。 闇の精霊も探さないといけないけど、1番は魔族と亜人の争いを終わらせる事だからね」
マリは、メリー達と話す四天王を見て予想より平和を勝ち取るのは夢では無い事を期待する。
絶対に、正史の様な道は魔族達に歩ませないと心に誓って。
◆◇◆
ゴルメディア帝国の帝城には今日も悲鳴が木霊していた。 逃げようとする民は、即時に精霊人形に殺され。 抵抗しない者は、帝城で生きたまま精霊人形に改造される。
マリが去ってから、ゴルメディア帝国の帝都は地獄と化していた。 街には精霊人形達で溢れ、まだ生きている人間を捕えては帝城へと引きずるのだ。
「あははははは! ねぇ、クロモト。 今の戦力はどれぐらいなの?」
「ははぁっ! 現在の戦力は、自動精霊兵器2000台、精霊人形5万体でございます!」
「順調ねぇ、でも精霊人形の製造速度が遅すぎるわ。 精霊人形を作る為の精霊工作人形を増やしなさい! もっともっと増やすの! 後少し、後少しで準備が終わるわ! それに……蕾も、もうすぐ花開く! 楽しみ、何もわからないけど……きっと凄く素敵な花が咲くわ。 楽しみしててねぇぇぇマリぃぃぃぃぃ!」
皇帝の玉座に座る、小柄なルミニスは頬まで裂けた口で笑っていた。
亜人の森を抜け、見渡す限りの荒野までマリ達はやって来ていた。
「ふぇ~……メリーさん。 あの紫色のでっかい膜みたいなの……何?」
「あれが、魔族の国を覆っている魔力です。 魔族はあの中に居れば、ほぼ飲食無しでも生きられます。 ですが、外に一歩踏み出せば飢餓に襲われ食べる物が少ない荒野では瞬く間に餓死してまうのです」
「え~……怖っ。 だから昔は亜人の森を攻めてたのか……」
貨物列車は紫色の膜へと真っ直ぐ向かう。
全員が紫色の膜を見ようと、運転席の側で景色を見つめていた。
「ねぇ、このまま突っ込んで大丈夫なのかな~? って、後ろ!」
運転席からアテスが顔を出し、マリ達の方を振り向くと同時に大声を上げた。
「ヨハネ、メリー、マリ様を!」
アテスが叫んだ瞬間、ジャックが一番に振り返り豪華な車両の後方に現れた4人の侵入者へ拳を構える。
ヨハネはマリを庇い、ロキ達も戦闘態勢に入った。
「待って下さい! 大丈夫です、恐らく魔王である兄上からの迎えでしょう……そうですよね? 魔王軍四天王の皆さん」
メリーがジャックの前へと立ち塞がり、問うと4人の侵入者達は被っていたフードを外し笑う。
「ふっ、お久しぶりですね。 メリー王女殿下」
赤髪の魔族が跪くと、残りの金髪、青髪、緑髪の魔族達も跪いた。
「ふぅ……肝を冷やさないで欲しいのじゃ。 まさか、見張りに高名な四天王を配置するとは……」
「ふっ、ご冗談を。 この奇抜な乗り物に乗った瞬間に気持ち悪くなった我等が、亜人の英雄方に勝てる訳……うっぷ!!」
「いや、メリーさんに跪いた訳じゃなくて乗り物酔いかーい!」
マリの鋭いツッコミか炸裂し、緊張感は消え去り皆苦笑いだ。
「あはは、ラガン。 酔い冷ましの実をくれるかい?」
ヨハネが笑いながら酔い冷ましの実を魔族達に含ませると、四天王の顔色は直ぐに良くなりメリー達は同胞の無事に安堵した。
「はぁはぁはぁ……すみません、殿下。 久し振りの再開なのに……」
「いえ、私達もこの乗り物に乗った時は酷かったですから。 気絶までしたんですよ?」
「ま、まさか、亜人達の文明がこんなに進んでいたとは……。 この灼炎、完敗です」
「いや、無敗の四天王が認めた敗北が乗り物酔いとか後世に残せんから勘弁して欲しいのじゃ」
メリーと四天王灼炎の会話に、ルルは思わず割って入る。
「あはは、凄く怖い人達を想像したけど……案外メリーさん達とそんなに変わんないね」
「いえ、マリ様。 油断はされませんように」
「ジャック、私達は争いを無くしにも来てるんだよ? 警戒し過ぎると、相手に不信感を与えてしまう。 そうだろ? マリ」
「そうだよ。 闇の精霊も探さないといけないけど、1番は魔族と亜人の争いを終わらせる事だからね」
マリは、メリー達と話す四天王を見て予想より平和を勝ち取るのは夢では無い事を期待する。
絶対に、正史の様な道は魔族達に歩ませないと心に誓って。
◆◇◆
ゴルメディア帝国の帝城には今日も悲鳴が木霊していた。 逃げようとする民は、即時に精霊人形に殺され。 抵抗しない者は、帝城で生きたまま精霊人形に改造される。
マリが去ってから、ゴルメディア帝国の帝都は地獄と化していた。 街には精霊人形達で溢れ、まだ生きている人間を捕えては帝城へと引きずるのだ。
「あははははは! ねぇ、クロモト。 今の戦力はどれぐらいなの?」
「ははぁっ! 現在の戦力は、自動精霊兵器2000台、精霊人形5万体でございます!」
「順調ねぇ、でも精霊人形の製造速度が遅すぎるわ。 精霊人形を作る為の精霊工作人形を増やしなさい! もっともっと増やすの! 後少し、後少しで準備が終わるわ! それに……蕾も、もうすぐ花開く! 楽しみ、何もわからないけど……きっと凄く素敵な花が咲くわ。 楽しみしててねぇぇぇマリぃぃぃぃぃ!」
皇帝の玉座に座る、小柄なルミニスは頬まで裂けた口で笑っていた。
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