[完結]転生したのは死が間近の女王様!? ~超可愛い弟が王になれるよう平凡な女王が抗う奮闘記~

秋刀魚妹子

文字の大きさ
上 下
187 / 231

第185話 いざ北へ

しおりを挟む
 「それじゃあ、行ってくるね皆ー!」

 マリは貨物列車から手を振り、見送りに集まった亜人達に別れを告げていた。

 「マリ族長行ってらっしゃーい!」 「ロキの兄貴、マリ族長を頼みましたよー!」 「お気をつけてー!」 「「「「アオーーーン!」」」」

 「マリ様! アテスさん! お気をつけてー!」

 「皆ありがとー! アマンダもお腹の子を大事にねー!」

 こうして、大勢の亜人達に見送られたマリ達が乗る貨物列車は北へ向けて出発した。

 「あ、でもアテス。 道ないよね? この貨物列車で行けるの?」

 「ふふん、勿論さ。 車両の先頭には木の精霊や石の精霊、土の精霊も入ってるからね。 ほら、見ててよ~」

 アテスが運転席のレバーを引くと、先頭車両の先端が光りだし前方の木々が自ら避け、石は土の中に埋もれ道が出来上がる。

 速度は王都から亜人共有領土に向かう時よりも遅いが、それでも馬車に比べたら格段に早い。

 「すっごーーい! ねぇ、これで魔族の国までどれぐらい掛かるの?」

 「いやぁ、流石に分からないよ。 亜人達が魔族の国まで行ったことは歴史上無いからね~」

 「そっか~……あ! ちょっとメリーさんに聞いてくるね!」

 マリは運転席の横から離れて、豪華な車両の後方へと向かう。

 「口に含んで、楽になったら吐き出せ」   

 「はい……あ! 本当に楽になりました! ありがとうございます、ラガンさん」

 後方では、メリー達がまたもや乗り物酔いでダウンしていたが獣人ラガンに渡された酔い冷ましの実を口に含んでいる所だった。

 「ラガンさん、ありがとうね。 メリーさん大丈夫?」

 「はい、ラガンさんのお陰で楽になりました」

 ファースト達も口に含み、顔色がみるみる良くなっていく。 

 「いや、大丈夫だ。 それより、マリ。 俺の族長でもあるんだから、呼び捨てでいい」

 「えっと……そっか、分かったよラガン。 酔い冷ましの実には私も何度か助けられたからね~。 最近は……もう大丈夫になったけど」 

 「いや、昨夜ベロベロに酔っぱらっておったじゃろうに……」 

 ファースト達を診ていたルルは呆れ顔で笑う。

 「あはは……面目ないです。 あ! そうだ、メリーさん。 此処から、魔族の国までどれぐらい掛かるかな」

 「そうですね……道無き道を歩いて数ヶ月は掛かりましたから、この速度であれば一週間ぐらいだと思いますよ」

 「流石隊長っすね。 自分はもう忘れたっす」 

 フィフスの発言に他のメイド部隊も頷いており、メリーの有能さを物語っている。

 「そっか~、ありがとうー! じゃあ、途中で野営も考えないとね」

 マリは運転席に座るアテスの下へと向かった。

 「のう、メリーよ。 魔族の見張りはどのあたりから居る?」

 「昔の記憶ですから、今は分かりませんが……5日経った頃から警戒すべきだとは思います」

 「うむ、了解じゃ。 何事も無く終われたらいいのじゃがな……」

 ルルの呟きに、メリーも黙って頷いた。

 ◆◇◆

 空が暗くなるまで貨物列車は道無き道を広げながら進み、見つけた川の側で野営する事になった。

 しかし、野営と言ってもテントを張るわけでは無い。 

 「出来たよ~! 此方が女性用の家で、隣が男用だよ~ん」

 ドワーフ族の英雄という、建築チート筆頭のアテスが居るのだ。 あっという間に一軒家を建ててしまい、野営も糞もない。

 「相変わらず……凄いね」

 「はい……そうですね」

 マリ達は三階建の立派な家を見上げて呆然とする。 

 ファースト達は既に中に入り、ベットメイキングや食事の準備を始めている。

 「ふ~! ちょっと内装に凝りすぎたかな~。 あ、勿論キッチンも使えるし、ウォッシュレット付きトイレにジャグジー付きお風呂も使えるからね~」

 とりあえずの野営に建てた一軒家とは思えない充実ぶりに、マリは苦笑しながら呟いた。

 「あはは……ありがとうアテス。 野営って……何だっけ」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...