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第172話 大成功
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英雄王ルーデウスが攻め寄せた敵達に怯む事なく、味方を鼓舞し戦った事を演者達が様々な小道具や演技で表現する。
特に、ルーデウスが民達や兵士達を安心させる為に、マリの姿に扮した場面では観客席から割れんばかりの黄色い声援が上がった。
恐らくは、マリの組織した構成員達が鼻血を吹き出しているのだろう。
王族専用の席からも黄色い声援が上がり、見てみると耳まで顔を赤くして手で隠すように覆うルーデウスの姿と両隣で興奮しているキャミ達の姿が見えた。
マリも大興奮で、劇に夢中になっており隣のヨハネは笑顔のマリを見てとても幸せそうだ。
そして、更に物語は紡がれる。
敵の卑劣な兵器により、甚大な被害を出したエントン王国軍。 ルーデウスも負傷し、王城へと運ばれた。 夢中になっている観客からは悲鳴が聞こえ、マリは演出も完璧だと感心する。
傷を負ったルーデウスはジャックから手紙を受け取り、それを見て奮起するシーンに移り、此処から一気に演出が盛り上がる。
『ウォンバット、直ぐに治療を受けなさい。 ルカさんの策を成功させなければ、私達に明日はありません』
『し、しかし殿下!』
ウォンバット役の演者が重傷の身体に見えるように全身包帯姿で抗議する。
ルーデウス役の演者は、普段の温厚なルーデウスを演じつつ、エントン王国を姉の代わりに守ろうとする王の勇猛さを観客達に見せつけた。
『くどい!! 姉上が覚悟を決めて身を差し出すのです! 私達が動かなければ姉上が望んだ明日は来ないのですよ? ジャック、共をお願いします。 まずは民達に、それから広場に向かいます』
『はっ! 仰せのままに!』
演技力の高さに観客席から感嘆の声が漏れる。
それから、ルーデウス役の演者は早着替えという技を見せつけ。 焼けてボロボロに見える服から一瞬で鎧姿に変わり更に観客を驚かせた。
残されたウォンバット役の演者がとても大袈裟に叫ぶ。
『ルーデウス殿下……ふふ、先王の様な顔つきが板についてきましたな。 分かりましたぞ、このウォンバット必ず生き残りルーデウス殿下をお支えしますぞぉぉぉ!』
観客席は笑いに包まれ、今の所は好評の様だ。
「うんうん、思ったよりもウケてるね。 この後が少し心配だけど……」
幕が閉じ、ステージの中では次の段取りを進めている。
「何が心配なんだい?」
「この後は、エントン王国に攻めてきた両国がゴルメディア帝国に国民全員を人質にされてたっていう場面なんだ。 観客の中には当然、身内の兵士が両国に殺されて恨んでる人も居ると思う……どんな反応が来るかちょっと怖い」
「つまり……これは全部マリが動いてやってるって事だね」
マリはようやくヨハネに説明していない事を思い出す。
「そうなんだ~。 アテスに劇場を建ててもらって衣装も作ってもらったの。 この劇は殆どを真実で作ってる。 だからこそ……恨みを持つ人や、悲しみにくれる人が希望や平和に付いて考えれる切っ掛けになったらいいなって。 ……女王としての最後の仕事だから」
マリの決意めいた表情を見て、ヨハネは微笑みながらマリの頭を撫でた。
「ふふ、きっと大丈夫さ。 マリが心を砕いてやって来た事は決して無駄にならない。 エントン王国の国民がさせない。 ほら、始めるよ」
「ありがとう……ヨハネ」
マリはヨハネの肩に身体を預け、そのまま劇の続きを見始める。
この催しが、弟ルーデウスの助けになると信じて。
◆◇◆
「皆、お疲れ様ーーー!」
マリは無事に今日の上演を終えた演者やスタッフ達を労っていた。
「「「「「「「凄く楽しかったです! 明日も頑張ります、陛下!」」」」」」」
初めての芝居、初めてのステージ、何もかもが初めての劇場は初日を大成功で終える事が出来ていた。
「陛下、各席にて情報を集めていたセヴンス達によると、殆どの観客は満足して帰られました」
「殆ど……って事は少しは不評だった?」
メリーの報告に、マリや他の演者達は暗くなる。
「いえ、残りの観客は攻めてきたキャット王国やドック王国にもやむを得ない事情があった事を知り冷静になれた方や、戦死した兵士の身内の方々が夫や息子は物語として紡がれる程の戦いで勇敢だったのだと涙していたとの事です。 決して、陛下の考えられた劇場が受け入れられなかったという事はございません」
「って事は……」
「はい、初日の公演は大成功でしょう」
「「「「「「「「「いやったーーーーー!!!」」」」」」」」」
ヨハネは、平民等お構い無しに演者やスタッフ達と一緒になって喜ぶ女王マリを見て好きになった相手がマリで良かったと心から思った。
特に、ルーデウスが民達や兵士達を安心させる為に、マリの姿に扮した場面では観客席から割れんばかりの黄色い声援が上がった。
恐らくは、マリの組織した構成員達が鼻血を吹き出しているのだろう。
王族専用の席からも黄色い声援が上がり、見てみると耳まで顔を赤くして手で隠すように覆うルーデウスの姿と両隣で興奮しているキャミ達の姿が見えた。
マリも大興奮で、劇に夢中になっており隣のヨハネは笑顔のマリを見てとても幸せそうだ。
そして、更に物語は紡がれる。
敵の卑劣な兵器により、甚大な被害を出したエントン王国軍。 ルーデウスも負傷し、王城へと運ばれた。 夢中になっている観客からは悲鳴が聞こえ、マリは演出も完璧だと感心する。
傷を負ったルーデウスはジャックから手紙を受け取り、それを見て奮起するシーンに移り、此処から一気に演出が盛り上がる。
『ウォンバット、直ぐに治療を受けなさい。 ルカさんの策を成功させなければ、私達に明日はありません』
『し、しかし殿下!』
ウォンバット役の演者が重傷の身体に見えるように全身包帯姿で抗議する。
ルーデウス役の演者は、普段の温厚なルーデウスを演じつつ、エントン王国を姉の代わりに守ろうとする王の勇猛さを観客達に見せつけた。
『くどい!! 姉上が覚悟を決めて身を差し出すのです! 私達が動かなければ姉上が望んだ明日は来ないのですよ? ジャック、共をお願いします。 まずは民達に、それから広場に向かいます』
『はっ! 仰せのままに!』
演技力の高さに観客席から感嘆の声が漏れる。
それから、ルーデウス役の演者は早着替えという技を見せつけ。 焼けてボロボロに見える服から一瞬で鎧姿に変わり更に観客を驚かせた。
残されたウォンバット役の演者がとても大袈裟に叫ぶ。
『ルーデウス殿下……ふふ、先王の様な顔つきが板についてきましたな。 分かりましたぞ、このウォンバット必ず生き残りルーデウス殿下をお支えしますぞぉぉぉ!』
観客席は笑いに包まれ、今の所は好評の様だ。
「うんうん、思ったよりもウケてるね。 この後が少し心配だけど……」
幕が閉じ、ステージの中では次の段取りを進めている。
「何が心配なんだい?」
「この後は、エントン王国に攻めてきた両国がゴルメディア帝国に国民全員を人質にされてたっていう場面なんだ。 観客の中には当然、身内の兵士が両国に殺されて恨んでる人も居ると思う……どんな反応が来るかちょっと怖い」
「つまり……これは全部マリが動いてやってるって事だね」
マリはようやくヨハネに説明していない事を思い出す。
「そうなんだ~。 アテスに劇場を建ててもらって衣装も作ってもらったの。 この劇は殆どを真実で作ってる。 だからこそ……恨みを持つ人や、悲しみにくれる人が希望や平和に付いて考えれる切っ掛けになったらいいなって。 ……女王としての最後の仕事だから」
マリの決意めいた表情を見て、ヨハネは微笑みながらマリの頭を撫でた。
「ふふ、きっと大丈夫さ。 マリが心を砕いてやって来た事は決して無駄にならない。 エントン王国の国民がさせない。 ほら、始めるよ」
「ありがとう……ヨハネ」
マリはヨハネの肩に身体を預け、そのまま劇の続きを見始める。
この催しが、弟ルーデウスの助けになると信じて。
◆◇◆
「皆、お疲れ様ーーー!」
マリは無事に今日の上演を終えた演者やスタッフ達を労っていた。
「「「「「「「凄く楽しかったです! 明日も頑張ります、陛下!」」」」」」」
初めての芝居、初めてのステージ、何もかもが初めての劇場は初日を大成功で終える事が出来ていた。
「陛下、各席にて情報を集めていたセヴンス達によると、殆どの観客は満足して帰られました」
「殆ど……って事は少しは不評だった?」
メリーの報告に、マリや他の演者達は暗くなる。
「いえ、残りの観客は攻めてきたキャット王国やドック王国にもやむを得ない事情があった事を知り冷静になれた方や、戦死した兵士の身内の方々が夫や息子は物語として紡がれる程の戦いで勇敢だったのだと涙していたとの事です。 決して、陛下の考えられた劇場が受け入れられなかったという事はございません」
「って事は……」
「はい、初日の公演は大成功でしょう」
「「「「「「「「「いやったーーーーー!!!」」」」」」」」」
ヨハネは、平民等お構い無しに演者やスタッフ達と一緒になって喜ぶ女王マリを見て好きになった相手がマリで良かったと心から思った。
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