[完結]転生したのは死が間近の女王様!? ~超可愛い弟が王になれるよう平凡な女王が抗う奮闘記~

秋刀魚妹子

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第169話 復興祭前夜と最後の想い

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 遂に復興祭の前日となり、マリは多忙な準備の日々を終えようとしていた。

 「よし! 全部終わったねー! 皆ありがとう、お陰で間に合ったよ~!」

 マリはくたくたの身体に鞭を打ち、執務室に並ぶファースト達に礼を言う。 この1ヶ月間、ファースト達はほぼ休みなく働いていた筈なのだが、誰一人として疲れを見せず。 流石は魔族という事なのだろう。

 「お疲れ様でした、陛下。 この後は皆を自由にさせてもよろしいのですか?」

 「メリーさんもありがとうね。 勿論だよ! それと、お礼になるか分からないけど隣の会議室に私が考案した屋台料理の試食が出来るから皆で仲良く食べてみてね~」

 マリの言葉にファースト達は色めき立つ。 見ているだけで美味しそうだった未知の料理が食べれると皆大喜びだ。

 「「「「「「「「「ありがとうございます、陛下!」」」」」」」」」

 ファースト達は嬉しそうに隣の会議室へと向かう。 前世の日本で祭りの際の定番屋台料理を作らせたので、まず間違いなく美味いだろう。

 「喜んでもらえて良かった~。 あ、メリーさん劇場の方も大丈夫かな」

 「勿論でございます。 本日も張り切ってリハーサルを入念にしていましたよ」

 「そっかぁ、任せっきりでごめんね。 本当にありがとう! 明日か~、皆楽しんでくれると良いなぁ~」

 マリは執務室の窓から街を見渡す。

 明日から1週間続く、エントン王国の歴史上で初めての復興祭が始まるのだ。 空は既に暗くなりつつあるのに、街には明かりが灯り屋台の準備やイベントの準備で多くの民達がまだ作業しているのが見える。 

 マリはこの準備の為に1ヶ月間味わった地獄の日々を思い出し、激しい頭痛が襲う。

 「うわぁ~、また偏頭痛だ。 ん~、メリーさん私は今日もう休むね。 メリーさんも好きにしちゃって~」

 マリは背伸びをしながら、机の上の羊皮紙を棚にしまう。

 「よろしいのですか? ですが、体調が優れないのでしたら……私がお側に居たほうが……」

 「ダーメ! 今日、アーサー君王城に来てるんでしょ? 言っておいで。 代わりに、ジャックかルキ呼んでおいて。 私は自室に居るから~」

 「ありがとうございます。 畏まりました」

 頬を赤く染めたメリーは、マリの心遣いに感謝し執務室を退出した。

 「あぁ~! 疲れたー! この前の同人誌即売会も何故か大事にならなかったみたいだし。 良かった良かった。 さて、部屋に戻ってジャックかルキにお酌してもらうんだ~」

 マリは上機嫌で自室へと向かった。

 ◆◇◆

 「失礼致します、マリ様」

 マリの自室にジャックが訪れ、夜食を酒場のカウンターに並べる。

 「ありがとうジャック~! ひくっ、おー! 焼き鳥に唐揚げ棒! お酒のオツマミに最適だ~! ひくっ、流石はジャック、分かってるね~」

 既に出来上がったマリは恋人であり執事のジャックに感謝する。

 「陛下が考案された屋台料理という物はお酒を飲まれる方々から好評と聞きました。 なので、恐らく既に飲まれているであろうマリ様にはこのメニューが良いかと思いまして……喜んで頂けて何よりです」

 マリは嬉しそうに焼き鳥を頬張りながら、グラスを空にする。

 ジャックはカウンターに入り、マリのお酌を始めた。

 「マリ様、この1ヶ月間本当にお疲れ様でした。 今日の夜はゆっくりお休み出来るのですか?」

 「えへへ~……ありがとう、ジャック。 ひくっ、うん出来る事は全部したからね。 ひくっ、後は明日から1週間を無事に乗り切って、投票の結果を見るだけなんだ~」

 マリはお酌された酒を飲みながらツマミを食べる。

 「それは良かったです。 そういえば、頭痛がしていたとメリーから聞いたのですが体調は如何ですか?」

 「んー? ひくっ、今は平気かな。 結構無理したからね、そりゃ頭も痛くなるよ。 ひくっ、特に最近酷いんだよね~」

 マリは自身の頭を揉みながら答える。

 「そうですか……医者に診て頂きますか?」

 「いや、そこまでは大丈夫と思うから良いよ。 ひくっ、心配してくれてありがとう」

 マリは注がれる酒を見ながら、気持ち良く飲んでいた。

 『ねぇ、ちょっと変わりなさいよ』

 すると、頭の中のもう一人のマリが突如として喋りだす。

 「ふえ?! あ……やば」

 マリは突然の事に驚き、椅子から落ちそうになった。

 「マリ様!!」

 しかし、身軽なジャックが颯爽とマリを抱き止め事なきを得た。 ジャックにお姫様抱っこをされたマリは頬を赤くしながら俯く。

 「ありがと……ジャック。 ねぇ、このまま……もう少しいさせて」

 入れ替わったもう一人のマリは、ジャックの首に手を回し抱き着いた。

 「わ、分かりました。 大丈夫ですか? マリ様」

 動揺するジャックを見ながらマリは微笑む。

 「ねぇ、ジャック……私の事好き?」

 「勿論です。 ずっとずっと前から好きです」

 「それはさ……つまり、昔約束した時もって事よね?」

 「え? あ……はい。 あの頃より、ずっとお慕いしておりました」

 マリは嬉しそうに笑った。 その笑顔はとても幸せそうで、ジャックは心臓の鼓動が早くなる。

 「そっか。 嬉しい、ありがとう。 後さ、面倒臭い事聞くわよ? 小さな頃の私と今の私、どっちの方が愛してる?」

 「マリ様……酔われてますね? 幼い頃のマリ様も、今のマリ様もとても魅力的でどちらか選べない程に同じぐらい愛しています」

 顔を赤面させたマリは、ジャックの頬を触り自身の唇へと誘導させた。

 とても静かな口づけを交わす。

 長く、これまでの気持ちを確かめる様にマリはジャックと長く長くキスをした。

 「ねぇ……ベットに連れてってよ」

 「やれやれ、何だか今のマリ様は昔の頃の様で、とても愛らしいですね」

 ジャックはマリをお姫様抱っこしたままベットへと連れて行き、優しく下ろした。

 「ジャック……大好きだよ」

 「私も、大好きですマリ様」

 「ダメ、やり直し。 様は要らない」 
 
 何時もと違うマリの雰囲気にジャックは戸惑い笑った。

 「大好きだよ、マリ」

 マリはジャックの手を引き、ベットへと2人で倒れ込む。
 鼻が付くほどに密着したマリはジャックに伝える。 最後の想いを。

 「ずっと、ずっと一緒だから。 私はずっと貴方の側に居るから」

 「マリ……? なんの話だ?」

 少し泣きそうになっているマリをジャックは心配したが、マリは直ぐに笑顔に変わった。

 「ふふ、何でも無い。 ねぇ、まさか恋人とベットに入ってそのまま出ないわよね?」

 「良いのです……いや、良いんだな?」

 「……良いよ。 どうせこの先アイツは山程、貴方に愛されるんだから最初ぐらい譲ってくれるわ」

 「……? 分かった。 マリ、凄く可愛いよ……愛してる」

 密着する2人の鼓動は重なり、そのまま身体も重なり合った。
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