[完結]転生したのは死が間近の女王様!? ~超可愛い弟が王になれるよう平凡な女王が抗う奮闘記~

秋刀魚妹子

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第156話 農業地帯視察とイサミ伯爵

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 立派な城壁を抜けると、拍子抜ける程の穏やかな景色が広がっていた。

 「うわ~! メリーさん、見て! 凄い広い畑だー!」

 「先の戦争でかなり荒らされたと聞きましたが、もう此処まで畑を整えたとは。 流石、イサミ伯爵ですね」

 先の戦争の被害は見る影も無く、多くの農民達が畑に種を蒔いている。 幾人かは見覚えがあるので、イサミの下に就かせた女貴族達も農業に汗水たらしているようだ。

 「良かった、おかしいのは城壁だけで他の家や館は普通だね」

 「陛下が釘を刺して下さったのと、イサミ伯爵の手腕かと。 イサミ伯爵は現実主義者ですから」

 「うん、凄く冷静で頼りになるんだよね。 あ、例の物持ってきてる?」

 「勿論です。 どうぞ」

 マリはメリーから受け取った羊皮紙を懐に入れ、イサミ伯爵の館に到着するのを待った。

 ◆◇◆

 「陛下、到着致しました」

 馬車が止まり、マリが降りると館の前にはイサミ伯爵と女貴族達が待っていた。

 「はるばる王都よりお越しいただき、ありがとうございます陛下。 帰還、心よりお祝い申し上げます」

 イサミ伯爵が頭を下げると、後ろの者達も一斉に頭を垂れる。

 「ありがとう、イサミ伯爵。 他の皆もありがとう。 これからイサミ伯爵と今後の打ち合わせするから、仕事に戻っていいよ~」

 「心遣い感謝します。 皆、仕事に戻っていいわよ」

 イサミの案内で館に入る。

 館の見た目は質素だが、調度品は豪華な所をみるとやはりドワーフ謹製なのだろう。

 職人気質のドワーフ達が色々必死に我慢しながら作っているのを想像してマリは苦笑いした。

 「此方へどうぞ。 陛下の心遣いで派遣して下さったドワーフの皆さんのおかげでようやく落ち着く事が出来ました。 本当にありがとうございます」

 因みにドワーフ達の姿は無く、短時間で館に家々を建て更に城壁を建てた後は逃げるように王都に帰ったらしい。

 「うん、いいよ~。 まぁ、城壁の事はびっくりしたけどね。 あはは……それに、この場は公式じゃないからもっと柔らかく話していいよ?」

 「えっと……その、はい。 ありがとうございます。 城壁は私もびっくりしました。 アテスさんという、ドワーフのリーダーに森から猪等の害獣が出るから柵をお願いしたら……あっという間にあんな物が」

 既にメル伯爵の所で目の当たりにしているマリとメリーは苦笑いだ。

 復興計画以外の仕事を頼まれ、テンションが上がり過ぎたのだろう。

 「あはは……まぁ、無いよりはいいんじゃないかな?」

 「そ、そうですよ。 それより、陛下……打ち合わせの方を」

 「そうだね。 イサミ伯爵、まずはコレとコレね。 リストに載ってる農作物と種を10台の荷馬車に積めて欲しい。 何時出来るかな?」

 イサミはマリに渡された羊皮紙の束を素早く確認する。

 「承りました。 2ヶ月は必要になりますね」

 「うん、じゃあお願い。 それと、同盟国の貿易リストね。 珍しい野菜や果物があるから、メル伯爵から届いたら育ててみて」

 メルは更に積まれた羊皮紙を嫌な顔一つせずに手早く分けて確認していく。

 「分かりました。 セバス! コレとコレを開発担当者に渡して」

 部屋で待機する執事が羊皮紙を受け取り、早々に退出する。

 「うんうん、イサミ伯爵は本当に頼りになるね。 だから、下にいる人達も真面目なのかな」

 「ふふ、お褒めの言葉ありがとうございます。 ですが、私だけの力では無理です。 皆の頑張りがあっての農業地帯ですから」

 「そうだね。 あ、そうだ先の戦争での事で個人的にご褒美を贈りたいんだけど何がいい?」

 マリの言葉にイサミは目を見開き硬直する。

 「……イサミ伯爵?」

 「す、すみません! まさか、陛下からそのような事を言って頂けるとは」

 「あはは……ずっと会えてなかったからね。 怖いイメージが強かった?」

 「恐れながら……そうですね。 それと、私個人では何も必要ございません。 何かを頂けるなら、農業地帯全体の為になる事でお願い致します」

 イサミの返答にマリは悩む。

 「ん~……じゃあ、働いてる女貴族達と農民達のお給金増やしとくね。 メリーさんお願い」

 「畏まりました」

 「ありがとうございます、陛下。 皆、喜ぶと思います」

 「ん、じゃあ……ちょっと相談があるんだけど良いかな?」

 打ち合わせも終わり、話が一段落した所でマリはイサミに選挙の事を説明した。

 しかし、イサミ伯爵は渋い顔で答える。

 「お話は分かりましたが、申し訳ありません陛下。 私はエントン王国の支配者は女王陛下がされるのがよろしいかと思います」

 「それは……何でかな?」

 「陛下のされた改革で皆の考え方は確かに変わりました。 先の戦争での活躍でルーデウス代理国王陛下の名声が高まったのは確かです。 しかし、男が国を統治するというのはリスクが高いかと思います。 今は良くても他国がどう考え行動を起こすか未知です」

 「ふむふむ、メリーさん他国の皆から貰った承認状頂戴」

 「はっ此方です」

 メリーが出した羊皮紙を読み、イサミ伯爵は驚愕する。

 「な、凄い。 ウッド王国、レオン王国、ウルフ王国、ピッグ共和国、亜人連合。 ゴルメディア帝国以外の主だった国がルーデウス代理国王が正式な国王となる事を承認したのですか!? これは……歴史が変わりますよ!」

 「うんうん、そうだね。 因みに、メル伯爵からは協力を約束してもらった。 主要な貴族である、イサミ伯爵も協力してくれると嬉しいんだけどな~」

 「で、ですが……国民が本当はどう思っているか分かりませんし」

 マリは懐に入れていた羊皮紙を差し出す。  

 「協力してくれるなら……コレ、あげるけど?」

 その羊皮紙を見たイサミは顔色を変え答えた。

 「協力します! 絶対にします! ルーデウス代理国王陛下を正式な国王にしましょう! 絶対しましょう! ふわわわわーーーー! 可愛いーー!」

 イサミ伯爵の協力を得ることに成功した。

 「流石……ルーたんの女装姿の似顔絵。 効果抜群だったね」
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