157 / 231
第155話 メル伯爵との打ち合わせと次の視察へ
しおりを挟む
「で~、これが祝勝会で同盟国から了承もらってる貿易リストね。 照らし合わせて、こっちが出せる物のリストをルーデウスに渡して」
マリはメル伯爵の自称館を訪れ、今後の打ち合わせを行っていた。
館に向かう途中、メルの下に就かせた女貴族達や慌ただしく働く商人達と出会い挨拶をしたが皆、様変わりしてしまった街に大混乱であった。
出来立てホヤホヤの新築だが、規模が当然ながらおかしい。
これはもう、巨大な木製の城だ。
この館に入る前に、館の主の筈であるメル伯爵が見上げながら「嘘ですやん……」 と呟いていた。
メイドや執事達も余りの広さにパニックを起こしている。
「ええですな、流石は女王陛下! 直ぐにこんなに美味しい話しを頂けるなんて! うち、感無量やー!」
メル伯爵はマリに渡された貿易リストを見て大興奮だ。
興奮し過ぎて敬語も忘れかけている。
「で、それと別に私から何かご褒美贈りたいんだけど……何がいい?」
「そうですな~、正直うちらの街をこないに大きくして頂いたので無いっていうのが本音ですかね。 でも、どうしてもって言うなら……亜人との貿易を進めて下さるとすっごく助かりますね!」
あくまでも商売を優先させるメルにマリは苦笑いで答える。
「あはは、分かったよ。 後、これは正式に降りてる許可ですが。 先の戦争で殆どの財産を傭兵に雇う為に使ったと聞きました。 なので、メル伯爵の財産が戦争前に戻るまでは利益をご自身の物にして下さい」
「えぇっ?! ホンマですか!? おおきに! めちゃくちゃ嬉しいですー!」
飛び上がり喜ぶメルに、マリは微笑みながら釘を刺す。
「うん、メル伯爵が喜んでくれて良かった。 でも……念の為に言っとくね? もし、ルーデウスをエントン王国を売るような事をしたら即刻その首を刎ねます。 なので、大きな街を手に入れたからといって……良からぬ事を考えないように」
酷く冷たい冷酷なマリの瞳を見たメルは一瞬で頭を冷やし、マリの目の前で跪いた。
「う、うちの忠誠は女王陛下をひいては、エントン王国に捧げております! 決して、決してその様な考えは持ちません!」
メルの様子を見て、マリは優しく笑う。
「ありがとう、信じてるからね。 それと、実は相談があってね。 1ヶ月後に弟のルーデウスと――――
マリはメルに選挙が何かを、どんな事をお願いしたいかを説明した。 その上で、メルはマリ側に付きルーデウスを国王にする為に動く事になる。
「それじゃあ、さっきお願いした事よろしくね」
「うちにお任せ下さい! 必ず陛下の望まれる様に致します!」
王都並の巨大な街を手に入れて浮かれていたメルは、すっかり牙を抜かれマリに深々と頭を下げる。
「ん、またね。 セヴンス、出してくれる? 次はこのまま農業地帯の視察に向かうから」
「はっ!」
マリとメリーは馬車に乗り込み、メルは馬車が消えるまで頭を下げ続けた。
「あはは……あかん、あの人は絶対に裏切りを許さない。 もし、本当に謀反を考えたと判断したら今頃うちの首は……」
顔を上げたメルは久し振りに会った女王の冷酷さを目の当たりにし、己の首を手でなぞった。
◆◇◆
暫く馬車を進め、農業地帯へと入った。
「お~、此処も初めてくるね。 メリーさん、復興計画書くれる?」
「はい、此方です陛下」
マリは受け取った羊皮紙を確認する。
「うんうん、そうだね。 やっぱり書いてないよね。 何で……王都並に高い城壁が農業地帯を囲ってるんだろうね」
「……恐らく、害獣避けの為でしょうか」
2人が馬車から顔を出し見上げるのは、高くそびえ立つ立派な城壁だ。
城壁には無駄に豪華な装飾品が等間隔で付けられている所を見るに、確実にドワーフの仕業だ。
「あぁ……頭痛い。 あれ? イサミ伯爵って、確か農業改革任せてたよね? 何、害獣と戦争でもするの?」
「とりあえず入りましょう、陛下。 はぁ……私も頭痛が」
2人が頭を抱えている間にも馬車は進み、鉄の立派な城門をくぐった。
マリはメル伯爵の自称館を訪れ、今後の打ち合わせを行っていた。
館に向かう途中、メルの下に就かせた女貴族達や慌ただしく働く商人達と出会い挨拶をしたが皆、様変わりしてしまった街に大混乱であった。
出来立てホヤホヤの新築だが、規模が当然ながらおかしい。
これはもう、巨大な木製の城だ。
この館に入る前に、館の主の筈であるメル伯爵が見上げながら「嘘ですやん……」 と呟いていた。
メイドや執事達も余りの広さにパニックを起こしている。
「ええですな、流石は女王陛下! 直ぐにこんなに美味しい話しを頂けるなんて! うち、感無量やー!」
メル伯爵はマリに渡された貿易リストを見て大興奮だ。
興奮し過ぎて敬語も忘れかけている。
「で、それと別に私から何かご褒美贈りたいんだけど……何がいい?」
「そうですな~、正直うちらの街をこないに大きくして頂いたので無いっていうのが本音ですかね。 でも、どうしてもって言うなら……亜人との貿易を進めて下さるとすっごく助かりますね!」
あくまでも商売を優先させるメルにマリは苦笑いで答える。
「あはは、分かったよ。 後、これは正式に降りてる許可ですが。 先の戦争で殆どの財産を傭兵に雇う為に使ったと聞きました。 なので、メル伯爵の財産が戦争前に戻るまでは利益をご自身の物にして下さい」
「えぇっ?! ホンマですか!? おおきに! めちゃくちゃ嬉しいですー!」
飛び上がり喜ぶメルに、マリは微笑みながら釘を刺す。
「うん、メル伯爵が喜んでくれて良かった。 でも……念の為に言っとくね? もし、ルーデウスをエントン王国を売るような事をしたら即刻その首を刎ねます。 なので、大きな街を手に入れたからといって……良からぬ事を考えないように」
酷く冷たい冷酷なマリの瞳を見たメルは一瞬で頭を冷やし、マリの目の前で跪いた。
「う、うちの忠誠は女王陛下をひいては、エントン王国に捧げております! 決して、決してその様な考えは持ちません!」
メルの様子を見て、マリは優しく笑う。
「ありがとう、信じてるからね。 それと、実は相談があってね。 1ヶ月後に弟のルーデウスと――――
マリはメルに選挙が何かを、どんな事をお願いしたいかを説明した。 その上で、メルはマリ側に付きルーデウスを国王にする為に動く事になる。
「それじゃあ、さっきお願いした事よろしくね」
「うちにお任せ下さい! 必ず陛下の望まれる様に致します!」
王都並の巨大な街を手に入れて浮かれていたメルは、すっかり牙を抜かれマリに深々と頭を下げる。
「ん、またね。 セヴンス、出してくれる? 次はこのまま農業地帯の視察に向かうから」
「はっ!」
マリとメリーは馬車に乗り込み、メルは馬車が消えるまで頭を下げ続けた。
「あはは……あかん、あの人は絶対に裏切りを許さない。 もし、本当に謀反を考えたと判断したら今頃うちの首は……」
顔を上げたメルは久し振りに会った女王の冷酷さを目の当たりにし、己の首を手でなぞった。
◆◇◆
暫く馬車を進め、農業地帯へと入った。
「お~、此処も初めてくるね。 メリーさん、復興計画書くれる?」
「はい、此方です陛下」
マリは受け取った羊皮紙を確認する。
「うんうん、そうだね。 やっぱり書いてないよね。 何で……王都並に高い城壁が農業地帯を囲ってるんだろうね」
「……恐らく、害獣避けの為でしょうか」
2人が馬車から顔を出し見上げるのは、高くそびえ立つ立派な城壁だ。
城壁には無駄に豪華な装飾品が等間隔で付けられている所を見るに、確実にドワーフの仕業だ。
「あぁ……頭痛い。 あれ? イサミ伯爵って、確か農業改革任せてたよね? 何、害獣と戦争でもするの?」
「とりあえず入りましょう、陛下。 はぁ……私も頭痛が」
2人が頭を抱えている間にも馬車は進み、鉄の立派な城門をくぐった。
17
お気に入りに追加
204
あなたにおすすめの小説
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる