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第146話 戦争終結
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アーサー城の広間に多くの王族達や貴族達が、縛り上げたゴルメディア帝国の宰相ブラックを円で囲み最後の仕上げを行っていた。
円状に並べられた椅子の1つに座るのはエントン王国の女王マリである。
「えっと……久し振りブラックさん」
「はっ……貴様のせいで、私は散々だよ」
苦笑いするマリが挨拶をするが、ブラックの態度は冷たい。
「おい、お前……一応忠告だ。 次、陛下に舐めた口を聞いたら命は無いぞ」
そんなブラックの頬を同じく冷たい剣先が撫で、殺気を放つルニア侯爵が脅す。
「ぐっ……そもそも、何故だ。 何故……エントン王国が滅びていないのだ! キャット王国、ドック王国の将兵! 答えろ!」
ブラックの矛先は、唯一王族が来ていないキャット王国とドック王国の将兵に向けられた。
「ふん! 知れたことよ! お前達ゴルメディア帝国に脅され、エントン王国に攻め込んだ結果……負けたからだ」
「ふふ、そうです。 その上で、エントン王国の代理国王さんは我等と共に生きる事を選択して下さいましたの。 脅すだけのお前達とは違うのです!」
「な……馬鹿な! そ、それにお前達小国群の女王達が何故エントン王国等に与する! 我等ゴルメディア帝国に逆らう事がどれ程愚かな事すらも分からなくなったか!」
ブラックは縄で縛られ、動くに動けないが身体をよじり囲む他国の王族を見渡す。
「だまれ! 貴様等が行った所業を知って、エントン王国の味方をせぬ方が愚か者じゃ! その喉元食い千切ってやろうかっ?!」
最初に怒号を放ったのはウルフ王国の代理国王だ。
初老とは思えない気迫にブラックはたじろぐ。
「あっはははは! おいおい、さっきの大敗北をもう忘れたかい? 数は同等ぐらいだったのに、私等には被害0。 わかるか? お前等帝国の時代は終わったんだよ雑魚」
レオン王国の女王が腹を抱えて笑う。
「あらあら弱い者いじめはダメよ? 事実とはいえ……余りにも可哀想じゃない。 散り散りになったご自慢の兵達は皆、死ぬか降伏してしまいこの場に居る帝国の将はこの老人だけなのですから」
ウッド王国の女王も微笑みながらもブラックを煽る。
「ぐっ……貴様等ぁ! 真実を知らぬ愚か者共めが! ならば聞けぇ! 其処の我等を欺いたエントン王国の女王は、我等人間族の宿敵魔族をメイドとして囲っているのだぞ! 同じ人間族であるならば、魔族達を滅ぼそうと動いていてるゴルメディア帝国の味方をするべっ?! がはぁっ?!」
マリの隣に立つメリー睨みながら、ブラックがメリーの正体を告発し帝国の正義を示そうとしたがピッグ共和国の女王によって思いっ切りぶん殴られた。
「おでは、この見た目で差別されてきた。 だから、種族だなんだと言う奴が大嫌いだ! もし、其処のメイドさんが魔族だとしてそれがどうした! 帝国にまで付いて行き、命を掛けて主を守ろうとする気高いのが魔族で小国を奴隷にすると脅すお前等が人間族ならおでは、魔族の味方だ!」
ピッグ共和国の女王が放った言葉に、メリーは密かに涙を流す。
「良かったね、メリーさん。 ピッグ共和国の女王陛下、私の大切な友人にして最高のメイド長を褒めて下さりとても嬉しいです。 ありがとうございます」
マリに頭を下げられ、ピッグ共和国の女王は照れながら大きな身体を揺らし椅子に戻った。
「がはっ……くそぉ……何故だぁ、何故分からん! そ、其処の亜人達! お前達なら魔族の恐ろしさ、脅威が分かるだろ? 魔族に攻められたお前達ならわかる筈だ!」
今度はルル達に向けて叫ぶが、反応は冷たいものだった。
「人間の老人よ。 お前が思うよりも長生きなエルフである儂が答えよう。 そもそも勘違いをしておるぞ? 魔族は別に悪しき種族では無いし、はるかの昔に土地の事で諍いが起きたのは事実じゃがそれは生きる為じゃ。 奴等も好きで攻めて来た訳では無い。 儂やヨハネも魔族との戦争は何度も経験した……だからこそ叶うなら魔族達とも手を取り合いたい。 それが、今の儂等亜人の総意じゃ」
「……は? 何を言って……ルミニス様はそんな事は」
「ルミニスとは、妖精と光の精霊が混ざった存在じゃな? ブラックとやら、信じる相手を間違えたの……哀れな」
「嘘だ、私は……帝国の為に。 人間族の為に……嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だぁぁぁぁぁ!」
ルルの言葉に愕然としたブラックは、そのまま床へと座り込んでしまう。
「ブラックさん、私達は帝国の滅亡を望んでいる訳ではありません。 お願いです、停戦に合意して下さい」
マリは各王国の女王達から同意のサインを貰った羊皮紙をブラックの前に差し出す。
「……停戦に際し、何も求めない……? 正気かね……君は」
羊皮紙に目を通したブラックは余りの内容に冷静さを取り戻した。
「停戦に際し、我等小国群連合及び亜人連合軍が貴国に求めるのは何も無い。 ただし、次に何処かの小国もしくは亜人の領域に攻め入れば直ちに全兵力を持って滅ぼす……か。 ははは……受け入れるしか無いじゃないか、こんなの」
上記の事が書かれた羊皮紙を読み上げたブラックは、何処かスッキリした顔でマリを見た。
「エントン王国女王よ、貴女が帝国に来たことが良き事かは分からない。 そちらのエルフが述べた事実が真実かも分からない。 だが……受けよう。 我等ゴルメディア帝国は貴国等との停戦に合意する」
こうして、ブラックは停戦合意の羊皮紙にサインし解放された。
因果な事に、先の戦闘で降伏した歩兵達は誰一人として帝国に帰りたがらずブラックはたった1人で馬に乗り国境を越えて帰っていった。
長く続いたエントン王国の戦災はようやく終わりを告げた。
それが、一時の平和だとしても……。
円状に並べられた椅子の1つに座るのはエントン王国の女王マリである。
「えっと……久し振りブラックさん」
「はっ……貴様のせいで、私は散々だよ」
苦笑いするマリが挨拶をするが、ブラックの態度は冷たい。
「おい、お前……一応忠告だ。 次、陛下に舐めた口を聞いたら命は無いぞ」
そんなブラックの頬を同じく冷たい剣先が撫で、殺気を放つルニア侯爵が脅す。
「ぐっ……そもそも、何故だ。 何故……エントン王国が滅びていないのだ! キャット王国、ドック王国の将兵! 答えろ!」
ブラックの矛先は、唯一王族が来ていないキャット王国とドック王国の将兵に向けられた。
「ふん! 知れたことよ! お前達ゴルメディア帝国に脅され、エントン王国に攻め込んだ結果……負けたからだ」
「ふふ、そうです。 その上で、エントン王国の代理国王さんは我等と共に生きる事を選択して下さいましたの。 脅すだけのお前達とは違うのです!」
「な……馬鹿な! そ、それにお前達小国群の女王達が何故エントン王国等に与する! 我等ゴルメディア帝国に逆らう事がどれ程愚かな事すらも分からなくなったか!」
ブラックは縄で縛られ、動くに動けないが身体をよじり囲む他国の王族を見渡す。
「だまれ! 貴様等が行った所業を知って、エントン王国の味方をせぬ方が愚か者じゃ! その喉元食い千切ってやろうかっ?!」
最初に怒号を放ったのはウルフ王国の代理国王だ。
初老とは思えない気迫にブラックはたじろぐ。
「あっはははは! おいおい、さっきの大敗北をもう忘れたかい? 数は同等ぐらいだったのに、私等には被害0。 わかるか? お前等帝国の時代は終わったんだよ雑魚」
レオン王国の女王が腹を抱えて笑う。
「あらあら弱い者いじめはダメよ? 事実とはいえ……余りにも可哀想じゃない。 散り散りになったご自慢の兵達は皆、死ぬか降伏してしまいこの場に居る帝国の将はこの老人だけなのですから」
ウッド王国の女王も微笑みながらもブラックを煽る。
「ぐっ……貴様等ぁ! 真実を知らぬ愚か者共めが! ならば聞けぇ! 其処の我等を欺いたエントン王国の女王は、我等人間族の宿敵魔族をメイドとして囲っているのだぞ! 同じ人間族であるならば、魔族達を滅ぼそうと動いていてるゴルメディア帝国の味方をするべっ?! がはぁっ?!」
マリの隣に立つメリー睨みながら、ブラックがメリーの正体を告発し帝国の正義を示そうとしたがピッグ共和国の女王によって思いっ切りぶん殴られた。
「おでは、この見た目で差別されてきた。 だから、種族だなんだと言う奴が大嫌いだ! もし、其処のメイドさんが魔族だとしてそれがどうした! 帝国にまで付いて行き、命を掛けて主を守ろうとする気高いのが魔族で小国を奴隷にすると脅すお前等が人間族ならおでは、魔族の味方だ!」
ピッグ共和国の女王が放った言葉に、メリーは密かに涙を流す。
「良かったね、メリーさん。 ピッグ共和国の女王陛下、私の大切な友人にして最高のメイド長を褒めて下さりとても嬉しいです。 ありがとうございます」
マリに頭を下げられ、ピッグ共和国の女王は照れながら大きな身体を揺らし椅子に戻った。
「がはっ……くそぉ……何故だぁ、何故分からん! そ、其処の亜人達! お前達なら魔族の恐ろしさ、脅威が分かるだろ? 魔族に攻められたお前達ならわかる筈だ!」
今度はルル達に向けて叫ぶが、反応は冷たいものだった。
「人間の老人よ。 お前が思うよりも長生きなエルフである儂が答えよう。 そもそも勘違いをしておるぞ? 魔族は別に悪しき種族では無いし、はるかの昔に土地の事で諍いが起きたのは事実じゃがそれは生きる為じゃ。 奴等も好きで攻めて来た訳では無い。 儂やヨハネも魔族との戦争は何度も経験した……だからこそ叶うなら魔族達とも手を取り合いたい。 それが、今の儂等亜人の総意じゃ」
「……は? 何を言って……ルミニス様はそんな事は」
「ルミニスとは、妖精と光の精霊が混ざった存在じゃな? ブラックとやら、信じる相手を間違えたの……哀れな」
「嘘だ、私は……帝国の為に。 人間族の為に……嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だぁぁぁぁぁ!」
ルルの言葉に愕然としたブラックは、そのまま床へと座り込んでしまう。
「ブラックさん、私達は帝国の滅亡を望んでいる訳ではありません。 お願いです、停戦に合意して下さい」
マリは各王国の女王達から同意のサインを貰った羊皮紙をブラックの前に差し出す。
「……停戦に際し、何も求めない……? 正気かね……君は」
羊皮紙に目を通したブラックは余りの内容に冷静さを取り戻した。
「停戦に際し、我等小国群連合及び亜人連合軍が貴国に求めるのは何も無い。 ただし、次に何処かの小国もしくは亜人の領域に攻め入れば直ちに全兵力を持って滅ぼす……か。 ははは……受け入れるしか無いじゃないか、こんなの」
上記の事が書かれた羊皮紙を読み上げたブラックは、何処かスッキリした顔でマリを見た。
「エントン王国女王よ、貴女が帝国に来たことが良き事かは分からない。 そちらのエルフが述べた事実が真実かも分からない。 だが……受けよう。 我等ゴルメディア帝国は貴国等との停戦に合意する」
こうして、ブラックは停戦合意の羊皮紙にサインし解放された。
因果な事に、先の戦闘で降伏した歩兵達は誰一人として帝国に帰りたがらずブラックはたった1人で馬に乗り国境を越えて帰っていった。
長く続いたエントン王国の戦災はようやく終わりを告げた。
それが、一時の平和だとしても……。
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