[完結]転生したのは死が間近の女王様!? ~超可愛い弟が王になれるよう平凡な女王が抗う奮闘記~

秋刀魚妹子

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第142話 聞き耳を立てるのはダメ

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 「ヨ、ヨハネ!? 急にどしたの?」

 マリのお腹にヨハネは抱きつき、そのまま頭を埋めて動かなくなった。

 マリが訪ねても動かないので、頭を優しく撫でながらお酒の続きを飲み始める。     

 「私は……長く生きてきた」

 「ん~? そうだね」

 ぽつりぽつりと喋りだしたヨハネをマリは黙って受け入れる。 優しく、優しく頭を撫で続けた。

 「大切な友を何人も見送った。 戦争、病、寿命。 それでも平常心を欠く事は無かった。 なのに……君を失うかもしれないと思った時、心臓が千切れる程に苦しかった……」

 「うん」

 「君が処刑される寸前、もし私だけだったら間に合っていなかった! ジャックがいなければ……今、マリは此処に居なかっただろう。 そんな私に、君の恋人を名乗る資格があるのだろうか……」

 マリの腕の中で、ヨハネは泣いた。

 亜人の英雄と呼ばれ、幾多の戦場を乗り越え、幾多の友を同胞を失っても泣く事の無かった英雄が泣いた。

 長いエルフ生で初めて愛した人を、愛する資格があるのかと苦しみそれでも限界まで耐えた。

 感情を抑えきれずに泣くのを誰が責められるだろう。

 「ひくっ……ねぇ、ヨハネ。 前にした取り引き覚えてる?」

 「……勿論さ」

 「私ね。 ヨハネやジャックと生きたくなっちゃったんだ~。 ひくっ、ぜーんぶ終わらして、ルーたんを王様にしたらさ……一緒に暮らそ?」

 「マリ……」

 ヨハネのマリを抱く手に力が入る。

 「前まではさ、運命は変えられないって思ってて……それで、ルーたんの幸せだけを考えてた。 ひくっ、でも、運命は変えられる。 だから、私の運命も何とかなる! する!」

 「ふふ、君は……強いね」

 「私だけだと……無理だよ? だから、側に居てヨハネ」

 「あぁ、約束する。 君の側から永遠に離れない」

 顔を上げたヨハネとマリは見つめあい、愛を確かめ合う様に口づけを交わす。 そして、2人はそのまま愛し合う為にソファへと倒れていった。

 ◆◇◆

 マリの部屋の前には、4人の人影が中の音を必死に聞こうと聞き耳を立てていた。

 「ちょっ! 待てよ押すなよ!」

 「お前が押してる。 俺押してない」

 「2人共黙るのじゃ! 今、良い所なんじゃぞ!」

 「あはは……ヨハネ兄に怒られるよ~?」

 「ええ、そうですね」

 「あぁ、確かにな」

 4人の言葉に合わせるように、キレたメリーとジャックが後ろから現れ蹴り上げた。

 「「「「……あ」」」」

 ドッバァァァァンッ!

 扉を吹き飛ばし、4人は部屋へと転がり込む。

 「ちょっ!? 何事!! 待って、ヨハネ誰か入って来たから、お願い、待って、んっ」

 マリは飛び起きたが、ヨハネは既にスイッチが入っており止まらない。

 「はいはい、其処まで! 陛下、お邪魔してしまい申し訳ありません」

 だが、半脱ぎのヨハネをメリーが捕まえ引き剥がした。

 「う……うん」

 少し衣服の乱れたマリが顔を赤くしながらそそくさと乱れを直す。

 「そんなぁー、離してくれよメリー!」

 「さて、ヨハネ。 念の為に確認するが、この4人が何で此処に居るんだ?」

 「へ? あれ? ロキ、ラガン、姉上にアテス! どうして此処に?」

 ジャックに捕まり大人しく座っているのは、鬼人の英雄ロキ、獣人の英雄ラガン、エルフの族長ルル、ドワーフの英雄アテス達4人だった。

 「そうか、やはり知らないなら侵入者だな。 こいつ等、扉に張り付いて聞き耳を立てていたぞ。 マリ様、打ち首にしましょう」

 「ぎゃー! おい、待てよ!」 「マリから良い匂いする」
 「阿呆、今は止めとくのじゃラガン」 「あはは、ごめんねマリ陛下にヨハネ兄。 僕は止めたんだけどね~」

 「あはは、皆元気そうね。 ジャック、ダメだよ? でも……ありがとう。 私は大丈夫だから」

 「……了解しました」

 マリの許しを得て、ジャックは4人を解放した。

 「ははは……流石に笑えないよ? ねぇ? 姉上、皆」

 しかし、ヨハネがブチ切れているのを見て4人は再度戦々恐々とする事になる。
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