[完結]転生したのは死が間近の女王様！？ ~超可愛い弟が王になれるよう平凡な女王が抗う奮闘記~

第138話 花咲かない乙女は居ない

　「別に良いんですよ私なんか。　昔からサードにも早く彼氏を作れ彼氏を作れって言われてましたけど、そもそも私を好きになる男が居ないのですから作りようが無いんですよ。　それに、サードはもう居なくなっちゃいましたしもう私に彼氏を作れって言う人も居ませんし？　なら別に無理に恋人を作る必要なんて無いんですよ。　第一、サードだって魔族の国に住んでた時にちょっと恋人が居た期間が有ったからってマウント取り過ぎだったんですよ。　それにブツブツブツブツブツブツ

　幸せそうな3人を見ながらメリーは虚無の目をしながら呪詛の様な呟きをしていた。

　「メリーさーん？！　しっかりして！　そうだよね、大切な仲間を失ったばっかりなのに私空気読めてなかったよね！　本当にごめんなさい！　だから、しっかりして！　メリーさーん！」

　異変に気付いたマリがメリーの肩を揺らし、必死に現実に戻そうとするがメリーの瞳は虚ろだ。

　「ジャックだって、私が育てのに直ぐにマリ様マリ様言い始めるし。　キサラギだってそうよ、私の方が先に出会った……まぁ、捕らえたんですけども。　別に良いんですよ、私の幸せは陛下の幸せですから」

　虚ろのままメリーは喋り続ける。

　「メリーさーん？！」

　ジャックとヨハネもどうしたら良いか分からず戸惑っていた。

　「失礼します！　大丈夫ですか！？」

　騒がしくしていた為、誰かが部屋を訪ねてきた。

　入ってきたのは、この城の主であるアーサー子爵だ。

　ルーデウスと同年代の少年だったが、度重なる修羅場を生き残ったせいか一気に大人びてきていた。

　「アーサー君！　戻って来たんだね。　ごめん、ちょっと今は……それは？」

　マリはアーサーが持つ物に気が付いた。

　「えっ、あ……これは、その……メリー殿に」

　アーサーは咄嗟に後ろに隠したが、どうやら花束の様だ。

　「え？　私に……ですか？」

　再起動したメリーがアーサーの方へと振り向く。

　「その……合流したメリー殿の部下さん達に聞きました。　凄く、大切な仲間を失ったと。　気休めにもなるか分かりませんが……この花は大切な人を失った相手に送る花なのです」

　花束を受け取ったメリーは、青い花の匂いを嗅ぐ。

　「すー……ふふ、優しい甘い匂い。　これは、この地方で咲く鎮魂の花ですね。　アーサー子爵、心遣い感謝します」

　メリーは優しい微笑みで綺麗な花束を抱きしめた。

　「さ、流石メリー殿。　ご存知でしたか……」

　「勿論です。　おや……？　この真ん中の花は……？」

　メリーは花束の真ん中に赤い花が1輪だけ入っているのに気付く。

　「それは……その……ご存知無いですか？」

　「すみません、勉強不足でした。　鎮魂の花に組み合わせる花が有ったでしょうか？」

　「い、いえ！　ご存知で無ければ良いのです！　すみません、私はこれで失礼します！　陛下、ご無事で本当に安心しました！　失礼します」

　顔を真っ赤にしたアーサーはメリーやマリに頭を下げた後に、そそくさと退散する。

　「……何だったのでしょう？　でも……ふふ、嬉しいですね。　きっとサードも喜ぶでしょう」

　「良かったね、メリーさん」

　メリーの様子が元に戻り、マリが安心しているとヨハネがやって来て爆弾を落とした。

　「おや？　あはは、メリー……その花束の意味を教えてあげよう。　鎮魂の花だけなら、残された貴女と失った魂に平穏を願う。　鎮魂の花の真ん中に情熱の花を1輪だけ入れると、失った魂に変わり貴女を生涯愛し守りますという誓いに変わるんだ」

　ヨハネの説明を聞いたメリーは、目を見開き顔を真っ赤に染めた後……完全に停止した。