[完結]転生したのは死が間近の女王様!? ~超可愛い弟が王になれるよう平凡な女王が抗う奮闘記~

秋刀魚妹子

文字の大きさ
上 下
139 / 231

第137話 花咲く乙女と花咲かない乙女

しおりを挟む
 「メリーさん……ヨハネ。 何時から其処に……?」

 「勿論、マリがジャックに聞いて欲しいって照れながら話し掛けた所からさ!」

 マリの問いにヨハネは満面の笑顔のまま答えた。

 「すみません陛下……キサラギに止められまして。 盗み聞きするつもりでは……。 それより、ジャック!!」

 メリーはマリに申し訳なさそうにした後、ジャックに怒鳴る。

 「は、はい!」

 「陛下が本気で想いを伝えてくれたのなら、貴方はその場で答えるべきでしょうが! 何年片想い拗らせてんのか、分かってるの?!」

 予想外の方向で叱られたジャックは面を食らう。

 「いや、だが……陛下にはヨハネが」

 メリーはヨハネを2人の前に叩き落とす。

 「ぐえっ! あはは……ジャック、マリと別れた後に話した事を覚えているかい? あの時から、早くマリに告白すれば良いと言った筈だよ。 友である君が、同じ女性を好きだなんて……それは凄く素敵だと思う」 
 
 ヨハネの言葉に感動したジャックは友であるヨハネを見つめた。

 「ヨハネ……お前」

 笑うヨハネはマリにも優しく語り掛ける。

 「それと、マリ。 君は最低なんかじゃないよ? 私は、君がジャックに無意識に好意を抱いているのを知っていた。 ジャックが君を好きなのもね。 なのに、私はあの取り引きに乗ったんだ。 最低なのは私だろう」

 マリは首を振り、ジャックの隣にベットから降りる。

 「ヨハネ、そんな事無い。 私は確かにジャックが好き、でもヨハネの事も好きなの。 そんなのおかしいよ」

 「え? 何処がだい? マリは王族でしかも女王だろ? 夫の数人は普通じゃないのかい?」

 ヨハネは振り返り、メリーに問う。

 「はい。 陛下も女王教育の一環として勉強された筈ですが、一般的に王族や貴族は一妻多夫制が当たり前です。 敢えて、国を乱さない様に伴侶を1人だけにするのも珍しくはありません。 なので、陛下がジャックとキサラギの2人と交際、もしくは結婚しても何ら問題は有りませんよ」

 「つまり……私のこの気持ちはおかしくないの?」

 マリは前世の日本での常識に囚われているが、この異世界では当たり前の事らしい。

 そもそも、マリは忘れているが乙女小説の世界では主人公のエナが逆ハーレムを築くのだ。

 マリが何人の男を好きになり、逆ハーレムを作っても何ら問題は無いのだ。

 「だから、ジャック。 マリの気持ちに答える番だよ」

 ヨハネに言われ、ジャックはマリの手を握ったまま近付く。

 「陛下……いえ、マリ様」

 「は、はい!」

 緊張するマリをジャックは優しく抱きしめ、想いを今度こそ伝える。

 「貴女の事を子供の頃から、ずっとずっとずっと愛しています。 どんな時も、何を言われても、何をしても、私は貴女を変わらず愛しています。 この愛を受け入れて下さいますか……?」

 「……はい。 受け入れます」

 マリの返事を聞いたジャックはマリをしっかりと抱きしめ、固い口づけを交わした。

 「うんうん、良かったね~! じゃあ、ちょっとマリの容態を診たいからベットに横になってくれるかい?」

 「す、すまないヨハネ。 あ、手はもう離しても大丈夫なのか?」

 ヨハネは片時も離さないジャックの手を見て思い出す。

 「あ~! あれ嘘だから、離しても大丈夫だよ」

 「……え?」

 ジャックが固まるが、ヨハネはあっさりと真実を告げた。

 「いやぁ、こうでもしないと君はマリに本心を伝えないかな~って思ってさ」

 「き、貴様! よくもー! 感謝して良いのか悪いのか分からんじゃないかー!」

 ジャックに首を締められたヨハネは楽しそう笑う。

 そんな2人を見て、幸せそうにマリも笑う。

 生まれてこの方、恋愛どころか一方的な失恋しか経験の無いメリーだけは虚無の目で見ていたが。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

恐怖体験や殺人事件都市伝説ほかの駄文

高見 梁川
エッセイ・ノンフィクション
管理人自身の恐怖体験や、ネット上や読書で知った大量殺人犯、謎の未解決事件や歴史ミステリーなどをまとめた忘備録。 個人的な記録用のブログが削除されてしまったので、データを転載します。

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

【完結】ええと?あなたはどなたでしたか?

ここ
恋愛
アリサの婚約者ミゲルは、婚約のときから、平凡なアリサが気に入らなかった。 アリサはそれに気づいていたが、政略結婚に逆らえない。 15歳と16歳になった2人。ミゲルには恋人ができていた。マーシャという綺麗な令嬢だ。邪魔なアリサにこわい思いをさせて、婚約解消をねらうが、事態は思わぬ方向に。

短い怖い話 (怖い話、ホラー、短編集)

本野汐梨 Honno Siori
ホラー
 あなたの身近にも訪れるかもしれない恐怖を集めました。 全て一話完結ですのでどこから読んでもらっても構いません。 短くて詳しい概要がよくわからないと思われるかもしれません。しかし、その分、なぜ本文の様な恐怖の事象が起こったのか、あなた自身で考えてみてください。 たくさんの短いお話の中から、是非お気に入りの恐怖を見つけてください。

【完結】立場を弁えぬモブ令嬢Aは、ヒロインをぶっ潰し、ついでに自分の恋も叶えちゃいます!

MEIKO
恋愛
最近まで死の病に冒されていたランドン伯爵家令嬢のアリシア。十六歳になったのを機に、胸をときめかせながら帝都学園にやって来た。「病も克服したし、今日からドキドキワクワクの学園生活が始まるんだわ!」そう思いながら一歩踏み入れた瞬間浮かれ過ぎてコケた。その時、突然奇妙な記憶が呼び醒まされる。見たこともない子爵家の令嬢ルーシーが、学園に通う見目麗しい男性達との恋模様を繰り広げる乙女ゲームの場面が、次から次へと思い浮かぶ。この記憶って、もしかして前世?かつての自分は、日本人の女子高生だったことを思い出す。そして目の前で転んでしまった私を心配そうに見つめる美しい令嬢キャロラインは、断罪される側の人間なのだと気付く…。「こんな見た目も心も綺麗な方が、そんな目に遭っていいいわけ!?」おまけに婚約者までもがヒロインに懸想していて、自分に見向きもしない。そう愕然としたアリシアは、自らキャロライン嬢の取り巻きAとなり、断罪を阻止し婚約者の目を覚まさせようと暗躍することを決める。ヒロインのヤロウ…赦すまじ!  笑って泣けるラブコメディです。この作品のアイデアが浮かんだ時、男女の恋愛以外には考えられず、BLじゃない物語は初挑戦です。貴族的表現を取り入れていますが、あくまで違う世界です。おかしいところもあるかと思いますが、ご了承下さいね。

お人好し底辺テイマーがSSSランク聖獣たちともふもふ無双する

大福金
ファンタジー
次世代ファンタジーカップ【ユニークキャラクター賞】受賞作 《あらすじ》 この世界では12歳になると、自分に合ったジョブが決まる。これは神からのギフトとされこの時に人生が決まる。 皆、華やかなジョブを希望するが何に成るかは神次第なのだ。 そんな中俺はジョブを決める12歳の洗礼式で【魔物使い】テイマーになった。 花形のジョブではないが動物は好きだし俺は魔物使いと言うジョブを気にいっていた。 ジョブが決まれば12歳から修行にでる。15歳になるとこのジョブでお金を稼ぐ事もできるし。冒険者登録をして世界を旅しながらお金を稼ぐ事もできる。 この時俺はまだ見ぬ未来に期待していた。 だが俺は……一年たっても二年たっても一匹もテイム出来なかった。 犬や猫、底辺魔物のスライムやゴブリンでさえテイム出来ない。 俺のジョブは本当に魔物使いなのか疑うほどに。 こんな俺でも同郷のデュークが冒険者パーティー【深緑の牙】に仲間に入れてくれた。 俺はメンバーの為に必死に頑張った。 なのに……あんな形で俺を追放なんて‼︎ そんな無能な俺が後に…… SSSランクのフェンリルをテイム(使役)し無双する 主人公ティーゴの活躍とは裏腹に 深緑の牙はどんどん転落して行く…… 基本ほのぼのです。可愛いもふもふフェンリルを愛でます。 たまに人の為にもふもふ無双します。 ざまぁ後は可愛いもふもふ達とのんびり旅をして行きます。 もふもふ仲間はどんどん増えて行きます。可愛いもふもふ仲間達をティーゴはドンドン無自覚にタラシこんでいきます。

侯爵夫人の手紙

桃井すもも
恋愛
侯爵夫人ルイーザは、王都の邸を離れて湖畔の別荘にいた。 別荘は夫の祖父が終の棲家にしていた邸宅で、森と湖畔があるだけの静かな場所だった。 ルイーザは庭のブランコを揺らしながら、これといって考えることが何もないことに気が付いた。 今まで只管忙しなく暮らしてきた。家の為に領地の為に、夫の為に。 ついつい自分の事は後回しになって、鏡を見る暇も無かった。 それが今は森と湖畔以外は何もないこの場所で、なんにもしない暮らしをしている。 何故ならルイーザは、家政も執務も社交も投げ出して、王都の暮らしから飛び出して来た。 そうして夫からも、逃げ出して来たのであった。 ❇後半部分に出産に関わるセンシティブな内容がございます。関連話冒頭に注意書きにて表記をさせて頂きます。苦手な方は読み飛ばして下さいませ。 ❇例の如く、鬼の誤字脱字を修復すべく公開後に激しい修正が入ります。 「間を置いて二度美味しい」とご笑覧下さい。 ❇登場人物のお名前が他作品とダダ被りしておりますが、皆様別人でございます。 ❇相変わらずの100%妄想の産物です。妄想なので史実とは異なっております。 ❇妄想遠泳の果てに波打ち際に打ち上げられた妄想スイマーによる寝物語です。 疲れたお心とお身体を妄想で癒やして頂けますと泳ぎ甲斐があります。 ❇座右の銘は「知らないことは書けない」「嘘をつくなら最後まで」

元婚約者は戻らない

基本二度寝
恋愛
侯爵家の子息カルバンは実行した。 人前で伯爵令嬢ナユリーナに、婚約破棄を告げてやった。 カルバンから破棄した婚約は、ナユリーナに瑕疵がつく。 そうなれば、彼女はもうまともな縁談は望めない。 見目は良いが気の強いナユリーナ。 彼女を愛人として拾ってやれば、カルバンに感謝して大人しい女になるはずだと考えた。 二話完結+余談

処理中です...