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第131話 再開

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 大砦での防衛戦が始まって4日目の夜。

 「陛下見えました、アーサー殿の城ですよ」

 マリは馬車に揺られ、ようやくアーサー子爵の城まで戻って来ていた。

 国境で待機した本隊に先行していたファーストがマリの無事を伝え、騎士団長ボルガス率いるエントン王国キャット王国ドック王国の連合軍が本格的に動き出しゴルメディア帝国の国境を越えて亡命する民達の護衛に向かった。

 マリも国境でアマンダや他の皆を待つと頑なだったが、重傷から治ったばかりのヨハネの体調も有り渋々アーサーの城まで来たのだ。

 「ありがとうジャック。 ねぇ、メリーさん。 大砦に戻ったファーストや他のメイド暗部部隊の皆は本当に大丈夫なのかな……それに、アマンダやドワーフ達だってまだ到着してないし」

 「大丈夫です陛下。 彼女達には本当の力を使う許可は出しました。 それに、アマンダ達が国境を越えるまでの時間稼ぎに集中すれば残った味方は必ず全員生きて帰還します」

 馬車の中でメリーは断言する。
 それでもマリの不安は終わらない。

 「でも……あの大砦に精霊人形達やルミニスが襲来したらいくらデランさんやファースト達が守ってても厳しいんじゃ……」

 マリは意識が無かったとは云え、黒騎士達やルニア達を大砦に残してエントン王国に帰還した事を心苦しく思っており。

 意識を取り戻してからずっと眠れぬ夜を過ごしていた。

 「信じましょう。 陛下、今は信じて休むべきです。 やっと、やっと帰って来れたんですから」

 「そうだよ、マリ。 それに、大砦にはルニア辺境伯殿が居るんだろ? 大丈夫さ」

 「ありがとうメリーさん、ヨハネ。 うん、今は信じて待つべきだよね」

 拳に力が入るマリの手をヨハネが優しく握り、安心させる。

 「税務官殿。 ルニア殿は辺境伯では無く侯爵に奨爵されている。 間違えないように気を付けたまえ!」

 しかし、馬車を操作しているジャックからすかさずヨハネへの小言が飛び出した。


 ◆◇◆

 「姉上! 姉上ーー!!」

 アーサー城の前に着くと、馬車目掛けて走ってくる者の姿があった。

 「ルーたん?! ルーたんだ! 会いたかったよーー!!」

 ルーデウスに気付いたマリは馬車から駆け下り、ルーデウスの下へと走る。

 マリはルーデウスを受け止め、しっかりと抱き締めた。

 「姉上、良くぞ……良くぞご無事で……何よりでずーー!」

 ルーデウスは大好きな姉との再開を噛み締める。
 それまで耐えていた心の感情が決壊し、ルーデウスはマリの胸でわんわんと泣いた。

 「よしよし、聞いたよ~。 ルーたん、凄く凄く頑張ってくれたんだよね。 エントン王国が生き残れたのはルーたんや皆のおかげだよ~」

 マリはルーデウスを優しく撫でる。

 久し振りに会えた推しは、エントン王国を守る為にきっと凄まじい重圧に耐えていたのだろう。

 メリーからの報告でも、キャット王国とドック王国との戦争では勇敢に戦い民を鼓舞したと聞いていた。

 最後に会ったルーデウスは少年らしい姿だった。

 でも、今は少し大人びて凛々しい青年に見える。 
 成長せねばならない程に極限な状況が続いたからだ。

 「もう……会えないかと思ってました。 最後に会話したのが、喧嘩別れだなんて……絶対に嫌でした! 会いたかった、会いたかったです姉上」

 それでも、今だけは姉を慕う少年に戻るのを咎めれる人間は居ないだろう。

 「私もルーたんと喧嘩別れ何て絶対に嫌だったんだ~。 だから、またルーたんに会えて凄く凄く嬉しいよ」

 姉弟の再開にメリーとヨハネは涙を流し、ジャックは嗚咽する程に号泣していた。  

 「ジャック、流石に落ち着きたまえ」

 「うるさい! これが、これが泣かずにいられるか!」

 「ふふ、2人もお静かに」

 この日の夜、マリはルーデウスと共のベットで久し振りに眠りについた。
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