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第118話 見えない襲撃
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「もうそろそろ最後尾が見える頃でさぁ!」
黒騎士達の先導で大砦に向かうマリ達は514名誰一人欠ける事無く関所を後にしていた。
「陛下大丈夫ですか? 今でしたら休憩も可能かと」
「んーん、ありがとうメリーさん。 大丈夫」
ジャックの膝の上に帰ってきたマリは疲れからか顔色が悪い。
「色々あったから少し疲れただけだと思う……大丈夫だよ」
「……分かりました。 大砦が味方の手に落ちれば休む時間もあるでしょう。 今暫しのご辛抱下さい」
「陛下の事は任せてくれ。 先頭の黒騎士の所へ頼む」
ジャックにも言われ、メリーは先頭へと移動する。
今は前も後ろも黒騎士達が警戒しながら馬を進めてくれている為、メリー達は列の中心でひと息つきながら移動出来ていた。
「マリ様は大丈夫ですかい?」
「処刑される寸前でしたから……疲労困憊なのは当然です。 あの陛下が一度もお酒を飲みたいと言いませんでした。 ……急いだ方がいいです」
「分かりやした。 もう少し速度を上げやしょう」
この隊の指揮官である黒騎士は部下達に指示を飛ばし、馬を早めた。
◆◇◆
暫く進むと、前方に大勢の民達が黒騎士達に護衛されエントン王国に向けて逃げている列に追い付いた。
「お!? 副団長どうしたんですかい!?」
列の後ろに居た黒騎士が馬を走らせ此方にやって来た。
どうやら決死の防衛戦をしようとしていた隊の指揮官は黒騎士団の副団長だったようだ。
「はっはっは! 色々あってな。 マリ様の恩情で防衛戦は中止にされちまったのさ。 関所はエルフの旦那が見事な魔法で馬鹿でかい山にしてくれたから、当分追手の心配はねぇとよ!」
「じゃあ、残った奴等は全員?」
「あぁ、無事だ。 おいおい何だよ泣くなよ、最強の黒騎士団の名が泣いてんぞぉ」
もう会えないと覚悟した仲間達に再開出来たからか、合流した黒騎士達は涙を流していた。
ジャックに持たれ掛かった状態のマリはその光景を見て、自分の判断がきっと間違っていなかったと噛みしめる。
(うん、やっぱり止めて良かったなぁ。 ん~? やっぱり何かおかしいな……身体から力が抜けてる……?)
「陛下!? マリ様?! メリー! メリー来てくれ!」
突然意識を失ったマリをジャックは慌てて抱きとめメリーを呼んだ。
黒騎士達もざわめき、メイド暗部部隊達は敵襲かと周囲の警戒にあたる。
「陛下どうされましたか!? ……これは、何?」
ジャックがマリを馬から下ろし、メリーが直ぐ様駆け付けマリの状態を確認する。
すると、意識の無いマリの瞳が黒く光始める。
マリの額には滝のような汗が流れ、明らかに異常事態だ。
メリーとジャックは理由が分からず慌てていると、ヨハネも馬から降りて走ってきた。
「マリ!! これは……!? メリー、帝都で何があったんだい?」
「キサラギ、陛下に何が起きているのか分かるのですか!?」
「原因は分からないが、これは呪いだよ。 それもかなり強い……堕ちた精霊の強い呪いだ」
ジャックには思い当たる節はないが、メリーにはあった。
「キサラギ、信じるかどうかは別として聞いて下さい。 陛下はゴルメディア帝国に連れられた際に、大砦に幽閉されていたエナという少女から未来を見る目の力を受け継ぎました」
「……その少女は?」
「陛下に未来を託した後に息を引き取りました」
メリーの悲痛な顔を見る限り事実なのだろうとヨハネは何故か残念そうな顔をした。
「そうか……それで?」
「帝都には妖精が居たのです」
メリーの言葉を聞き、ヨハネの顔色が変わる。
「まさか、伝説の妖精ティナかい?!」
「当初は陛下に友好的だった筈です。 私の事も……陛下の側に居る事を許してくれました。 それに、陛下曰く未来を見るのを手伝ってくれてたそうです」
メリーはマリとの会話を思い出しながら話す。
「ですが、突然陛下が妖精ティナは敵だったと言ってました。 実際に私も見えない存在に襲われ拉致されています。 声を聞く限りは妖精ティナでしたが、その声には悪意が満ちていて……」
「世界の均衡を守る伝説の妖精とは思えなかったって事だね?」
頷くメリーを見てヨハネは頭を回転させる。
「あの処刑台にいた精霊が混じった存在が……妖精ティナだった? 何があったかは分からないが、すべき事はわかったよ」
「本当ですか!? 陛下は助かりますよね?!」
メリーの問いにヨハネは笑う。
「この呪いは術者が側で術を掛け続けなければならないのさ。 つまり……近くに居るって事だね」
ヨハネの言葉にメリーとジャックは周囲を見渡す。
「あはは、無理だよ。 私にしか見つけられないだろう……マリを頼む。 ジャック、メリー」
「ヨハネ……? 貴様、何を言っている」
「マリに怒られるかもしれないけど、このままだと数時間もすればマリは死んでしまう」
「ならば、私達メイド暗部部隊も戦います」
「ダメだよ。 すまない、精霊との戦いに君達は足手まといになる」
ヨハネは苦しむマリの頬を優しく撫でてから立ち上がり、馬に騎乗した。
「できる限り術者を足止めする。 メリー達は急いで大砦に向かってくれ。 離れたら状態は良くなる筈だ。 ……マリを頼んだよ」
「ヨハネ、必ず生きて帰れ。 陛下は貴様の死を望んでいない!」
「キサラギ……どうか、お願い」
「任せてくれ。 それに、死ぬつもりは無いさ。 やっと最愛の人に再開出来たんだからね」
ヨハネは来た道を1人戻る。
明らかに罠だと知りながら、長い人生で1番大切だと思える恋人を助ける為に。
黒騎士達の先導で大砦に向かうマリ達は514名誰一人欠ける事無く関所を後にしていた。
「陛下大丈夫ですか? 今でしたら休憩も可能かと」
「んーん、ありがとうメリーさん。 大丈夫」
ジャックの膝の上に帰ってきたマリは疲れからか顔色が悪い。
「色々あったから少し疲れただけだと思う……大丈夫だよ」
「……分かりました。 大砦が味方の手に落ちれば休む時間もあるでしょう。 今暫しのご辛抱下さい」
「陛下の事は任せてくれ。 先頭の黒騎士の所へ頼む」
ジャックにも言われ、メリーは先頭へと移動する。
今は前も後ろも黒騎士達が警戒しながら馬を進めてくれている為、メリー達は列の中心でひと息つきながら移動出来ていた。
「マリ様は大丈夫ですかい?」
「処刑される寸前でしたから……疲労困憊なのは当然です。 あの陛下が一度もお酒を飲みたいと言いませんでした。 ……急いだ方がいいです」
「分かりやした。 もう少し速度を上げやしょう」
この隊の指揮官である黒騎士は部下達に指示を飛ばし、馬を早めた。
◆◇◆
暫く進むと、前方に大勢の民達が黒騎士達に護衛されエントン王国に向けて逃げている列に追い付いた。
「お!? 副団長どうしたんですかい!?」
列の後ろに居た黒騎士が馬を走らせ此方にやって来た。
どうやら決死の防衛戦をしようとしていた隊の指揮官は黒騎士団の副団長だったようだ。
「はっはっは! 色々あってな。 マリ様の恩情で防衛戦は中止にされちまったのさ。 関所はエルフの旦那が見事な魔法で馬鹿でかい山にしてくれたから、当分追手の心配はねぇとよ!」
「じゃあ、残った奴等は全員?」
「あぁ、無事だ。 おいおい何だよ泣くなよ、最強の黒騎士団の名が泣いてんぞぉ」
もう会えないと覚悟した仲間達に再開出来たからか、合流した黒騎士達は涙を流していた。
ジャックに持たれ掛かった状態のマリはその光景を見て、自分の判断がきっと間違っていなかったと噛みしめる。
(うん、やっぱり止めて良かったなぁ。 ん~? やっぱり何かおかしいな……身体から力が抜けてる……?)
「陛下!? マリ様?! メリー! メリー来てくれ!」
突然意識を失ったマリをジャックは慌てて抱きとめメリーを呼んだ。
黒騎士達もざわめき、メイド暗部部隊達は敵襲かと周囲の警戒にあたる。
「陛下どうされましたか!? ……これは、何?」
ジャックがマリを馬から下ろし、メリーが直ぐ様駆け付けマリの状態を確認する。
すると、意識の無いマリの瞳が黒く光始める。
マリの額には滝のような汗が流れ、明らかに異常事態だ。
メリーとジャックは理由が分からず慌てていると、ヨハネも馬から降りて走ってきた。
「マリ!! これは……!? メリー、帝都で何があったんだい?」
「キサラギ、陛下に何が起きているのか分かるのですか!?」
「原因は分からないが、これは呪いだよ。 それもかなり強い……堕ちた精霊の強い呪いだ」
ジャックには思い当たる節はないが、メリーにはあった。
「キサラギ、信じるかどうかは別として聞いて下さい。 陛下はゴルメディア帝国に連れられた際に、大砦に幽閉されていたエナという少女から未来を見る目の力を受け継ぎました」
「……その少女は?」
「陛下に未来を託した後に息を引き取りました」
メリーの悲痛な顔を見る限り事実なのだろうとヨハネは何故か残念そうな顔をした。
「そうか……それで?」
「帝都には妖精が居たのです」
メリーの言葉を聞き、ヨハネの顔色が変わる。
「まさか、伝説の妖精ティナかい?!」
「当初は陛下に友好的だった筈です。 私の事も……陛下の側に居る事を許してくれました。 それに、陛下曰く未来を見るのを手伝ってくれてたそうです」
メリーはマリとの会話を思い出しながら話す。
「ですが、突然陛下が妖精ティナは敵だったと言ってました。 実際に私も見えない存在に襲われ拉致されています。 声を聞く限りは妖精ティナでしたが、その声には悪意が満ちていて……」
「世界の均衡を守る伝説の妖精とは思えなかったって事だね?」
頷くメリーを見てヨハネは頭を回転させる。
「あの処刑台にいた精霊が混じった存在が……妖精ティナだった? 何があったかは分からないが、すべき事はわかったよ」
「本当ですか!? 陛下は助かりますよね?!」
メリーの問いにヨハネは笑う。
「この呪いは術者が側で術を掛け続けなければならないのさ。 つまり……近くに居るって事だね」
ヨハネの言葉にメリーとジャックは周囲を見渡す。
「あはは、無理だよ。 私にしか見つけられないだろう……マリを頼む。 ジャック、メリー」
「ヨハネ……? 貴様、何を言っている」
「マリに怒られるかもしれないけど、このままだと数時間もすればマリは死んでしまう」
「ならば、私達メイド暗部部隊も戦います」
「ダメだよ。 すまない、精霊との戦いに君達は足手まといになる」
ヨハネは苦しむマリの頬を優しく撫でてから立ち上がり、馬に騎乗した。
「できる限り術者を足止めする。 メリー達は急いで大砦に向かってくれ。 離れたら状態は良くなる筈だ。 ……マリを頼んだよ」
「ヨハネ、必ず生きて帰れ。 陛下は貴様の死を望んでいない!」
「キサラギ……どうか、お願い」
「任せてくれ。 それに、死ぬつもりは無いさ。 やっと最愛の人に再開出来たんだからね」
ヨハネは来た道を1人戻る。
明らかに罠だと知りながら、長い人生で1番大切だと思える恋人を助ける為に。
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