102 / 231
第100話 メリーの正体
しおりを挟む
「あの~? 牢屋って地下だよね? なして……ずっと廊下を進むの?」
絶賛連行中のマリは何故か牢屋では無く、長い廊下を歩かされていた。
両サイドの近衛兵は無機質に歩き続ける。
暫く歩いた先の部屋で近衛兵は止まり、黙って扉を開けた。
そして、部屋の様相を見たマリは気付く。
この扉の先の部屋はクロモトの工房だと。
「うわ~……良い予感はしないね。 ごめん、因みに誰かお酒持ってない? 緊張ほぐしたいんだけど」
残念ながら、マリを連行した近衛兵から酒が出されることはない。
ただ、黙々と部屋の奥へと進む。
マリと衛兵達が近付くと隠し扉が開き薄暗い更に奥へと進んだ。
明るい部屋に到着すると、椅子に座っていた老人が立ち上がる。
「ひゃひゃひゃひゃ、ようこそぉ! 待っていたぞ~お嬢ちゃん」
クロモトが両手を広げマリを歓迎する。
最悪なのは、クロモトの後ろに1体の不気味な人形が待機している事だ。
強いファーストすら死を覚悟する相手なのだ。
マリなら数秒と保たずに死ぬだろう。
「げっ、やっぱりか……ねぇ、メリーさんは無事なの?」
「ひゃひゃひゃひゃ、あの御方から殺すなと厳命されておるからな。 可愛い人形ちゃん達、連れておいで」
いやらしく笑うクロモトに問うと、隣の部屋から2体の人形に両手を引きずられたメリーが連れて来られた。
「マリ……陛下、何故……何故戻って来たのですかっ!」
マリの前に降ろされたメリーが叫ぶが、マリはそれどころでは無い。
メリーの身体はズタズタだった。
ほんの数時間前に別れた時には傷一つ無かった美しいメリーが。
「……ごめんね、メリーさん」
「陛下の……せいではございませんっ! ぐっ?! はぁ……はぁ……早く、早くお逃げ下さい!」
謝るマリを逃がそうと、メリーは震える足を無理矢理立たせ人形達に対峙しようとする。
「いいの。 私がメリーさんに無理なお願いしたんだから……それに皆にも頼まれたんだ~」
マリはメリーを落ち着かせるように後ろから抱きしめる。
「陛下……?」
「ねぇ、クロモト。 私が来たら、メリーさんは解放してくれるんだよね?」
メリーの目が見開き、傷だらけの身体に力を込めたせいで様々な所から血が吹き出る。
「ダメです、ダメです陛下! 貴女にはやるべき事がある筈です!」
「大丈夫、大丈夫だよメリーさん。 落ち着いて、大丈夫」
マリは優しく微笑み、メリーを宥める。
「ひゃひゃひゃひゃ、あの御方から言われているからのぉ。 目的のお嬢ちゃんが来たなら解放するようにと」
クロモトが後ろに控えさせた人形を四つん這いにさせ、その上に腰掛ける。
悪趣味な光景だが、マリは嫌悪するのを必死に我慢した。
「そっか、本当に私の首がティナの目的に必要なんだね。 それなら早く解放してあげてくれない? メリーさん凄く痛そうだから」
「勿論じゃよ。 傷は……どうせ直ぐ治るんじゃろ? のぉ……化け物よ」
クロモトがジロリとメリーを睨む。
しかし、マリはメリーの前に立ち後ろに隠した。
「気になってたんだけど、何でメリーさんの事を化け物なんて言うのかな? もしかして、クロモトって鏡見たこと無いの? 分かった! 目が腐ってるんだ!」
怒りが限界に達し始めたマリの侮辱にクロモトは顔を顰めたが、直ぐに嫌な笑みに戻る。
「ひゃひゃひゃひゃ、口が達者なお嬢ちゃんじゃなぁ。 そうじゃ! 解放する前に、冥土の土産としてお嬢ちゃんにその化け物の正体を教えてやろう!」
クロモトの発言に、メリーは見るからに動揺し始めた。
「陛下、陛下お願いです……。 聞かないで下さい!」
メリーの懇願虚しく、クロモトが高らかに叫んだ。
「ひゃひゃひゃひゃひゃ! そのピンクの化け物の正体は魔族じゃよ! 太古の昔、世界を滅ぼそうとした悪しき種族! 御伽話等では無く、実在する人間の敵! 滅ぼさねばならぬ化け物なんじゃよ! ひゃひゃひゃひゃひゃ!」
秘密を知られたメリーは膝から崩れ落ち、マリの反応に怯えた。
「え? それだけ? じゃあ、早くメリーさん解放してくれるかな」
しかし、マリの反応は凄まじくあっさりとしており。これには、クロモトもメリーも呆気にとられた。
「いや、メリーさん凄い顔してるけど。 普段の何でも有りな所見てたらむしろ納得だからね? 逆に私、何で今まで気付かなかったのかなって自分に驚いてるよ!」
絶賛連行中のマリは何故か牢屋では無く、長い廊下を歩かされていた。
両サイドの近衛兵は無機質に歩き続ける。
暫く歩いた先の部屋で近衛兵は止まり、黙って扉を開けた。
そして、部屋の様相を見たマリは気付く。
この扉の先の部屋はクロモトの工房だと。
「うわ~……良い予感はしないね。 ごめん、因みに誰かお酒持ってない? 緊張ほぐしたいんだけど」
残念ながら、マリを連行した近衛兵から酒が出されることはない。
ただ、黙々と部屋の奥へと進む。
マリと衛兵達が近付くと隠し扉が開き薄暗い更に奥へと進んだ。
明るい部屋に到着すると、椅子に座っていた老人が立ち上がる。
「ひゃひゃひゃひゃ、ようこそぉ! 待っていたぞ~お嬢ちゃん」
クロモトが両手を広げマリを歓迎する。
最悪なのは、クロモトの後ろに1体の不気味な人形が待機している事だ。
強いファーストすら死を覚悟する相手なのだ。
マリなら数秒と保たずに死ぬだろう。
「げっ、やっぱりか……ねぇ、メリーさんは無事なの?」
「ひゃひゃひゃひゃ、あの御方から殺すなと厳命されておるからな。 可愛い人形ちゃん達、連れておいで」
いやらしく笑うクロモトに問うと、隣の部屋から2体の人形に両手を引きずられたメリーが連れて来られた。
「マリ……陛下、何故……何故戻って来たのですかっ!」
マリの前に降ろされたメリーが叫ぶが、マリはそれどころでは無い。
メリーの身体はズタズタだった。
ほんの数時間前に別れた時には傷一つ無かった美しいメリーが。
「……ごめんね、メリーさん」
「陛下の……せいではございませんっ! ぐっ?! はぁ……はぁ……早く、早くお逃げ下さい!」
謝るマリを逃がそうと、メリーは震える足を無理矢理立たせ人形達に対峙しようとする。
「いいの。 私がメリーさんに無理なお願いしたんだから……それに皆にも頼まれたんだ~」
マリはメリーを落ち着かせるように後ろから抱きしめる。
「陛下……?」
「ねぇ、クロモト。 私が来たら、メリーさんは解放してくれるんだよね?」
メリーの目が見開き、傷だらけの身体に力を込めたせいで様々な所から血が吹き出る。
「ダメです、ダメです陛下! 貴女にはやるべき事がある筈です!」
「大丈夫、大丈夫だよメリーさん。 落ち着いて、大丈夫」
マリは優しく微笑み、メリーを宥める。
「ひゃひゃひゃひゃ、あの御方から言われているからのぉ。 目的のお嬢ちゃんが来たなら解放するようにと」
クロモトが後ろに控えさせた人形を四つん這いにさせ、その上に腰掛ける。
悪趣味な光景だが、マリは嫌悪するのを必死に我慢した。
「そっか、本当に私の首がティナの目的に必要なんだね。 それなら早く解放してあげてくれない? メリーさん凄く痛そうだから」
「勿論じゃよ。 傷は……どうせ直ぐ治るんじゃろ? のぉ……化け物よ」
クロモトがジロリとメリーを睨む。
しかし、マリはメリーの前に立ち後ろに隠した。
「気になってたんだけど、何でメリーさんの事を化け物なんて言うのかな? もしかして、クロモトって鏡見たこと無いの? 分かった! 目が腐ってるんだ!」
怒りが限界に達し始めたマリの侮辱にクロモトは顔を顰めたが、直ぐに嫌な笑みに戻る。
「ひゃひゃひゃひゃ、口が達者なお嬢ちゃんじゃなぁ。 そうじゃ! 解放する前に、冥土の土産としてお嬢ちゃんにその化け物の正体を教えてやろう!」
クロモトの発言に、メリーは見るからに動揺し始めた。
「陛下、陛下お願いです……。 聞かないで下さい!」
メリーの懇願虚しく、クロモトが高らかに叫んだ。
「ひゃひゃひゃひゃひゃ! そのピンクの化け物の正体は魔族じゃよ! 太古の昔、世界を滅ぼそうとした悪しき種族! 御伽話等では無く、実在する人間の敵! 滅ぼさねばならぬ化け物なんじゃよ! ひゃひゃひゃひゃひゃ!」
秘密を知られたメリーは膝から崩れ落ち、マリの反応に怯えた。
「え? それだけ? じゃあ、早くメリーさん解放してくれるかな」
しかし、マリの反応は凄まじくあっさりとしており。これには、クロモトもメリーも呆気にとられた。
「いや、メリーさん凄い顔してるけど。 普段の何でも有りな所見てたらむしろ納得だからね? 逆に私、何で今まで気付かなかったのかなって自分に驚いてるよ!」
17
お気に入りに追加
204
あなたにおすすめの小説
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる