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第75話 キャミの記憶
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「……はっ!? く、首首首首……良かったのじゃ、ついてるのじゃ。 でも、ここは何処なのじゃ?」
キャミは気絶から目覚め、自分の首が付いている事を確認し安堵する。 ベッドから起き上がり周囲を確認すると知らない部屋に居た。
家具や装飾品を見る限りは貴族が住むような豪華な部屋だ。
扉の向こうで足音が忙しなく聞こえており、恐らくエントン王国の王城にある一室に監禁されているのだろう。
キャミが恐る恐る扉に手を掛けると、信じられない事に鍵は空いていた。
「え……? 監禁されている訳ではないのじゃ?」
扉を開け、廊下を見渡すとメイドや執事達が物を運んだりと忙しなく働いていた。
1人のメイドがキャミに気付き、近づいてきたのを確認したキャミは慌てて扉を閉める。
「しまったのじゃ。 どうしよう……逃げようにもエントン王国からキャット王国までは遠すぎるのじゃ。 ぴっ?!」
部屋の中で右往左往していたキャミは扉を叩く音に驚き飛び跳ねた。
「失礼する。 目が覚めたようだね……キャット フォル キャミ王女」
入ってきたのは気絶する前に会った赤髪の恐ろしい騎士だ。
「あ、あ、ああ貴女は誰ですのじゃ……? まさか、やっぱり妾の首を!?」
慌てて寝ていたベッドに飛び込むキャミを見て、ルニアは苦笑いを浮かべた。
「ふふ、私はエントン王国のルニア辺境伯だ。 首は跳ねないから安心しなさい。 それに、その喋り方……間違いなくキャット王国女王の娘だね」
「え!? 貴女、妾の母上を知っているのじゃ?! 母上は、母上は生きているのですか?!」
キャミはベッドから顔を出し、母の無事を聞くが首を横に振るルニアを見て項垂れる。
「そ、そうですよね……攻めてきた敵国の女王が負けてなお生きてる筈は無いのじゃ」
「謝るつもりは無い。 こちらも多くの味方を殺されたからな。 だが、戦争は終わった……此処からは未来に向けて動かないといけない」
ルニアの言葉にキャミは心を抉られる。
母亡き今、戦争の責任を誰が果たすか……キャット王国全体で果たすか、王族が果たすかだ。
キャット王国全体で果たすとなれば……考え得る限り最悪なのは皆殺しか、全国民奴隷化だろう。
キャット王国の未来をどうするか、残された兵士達、民達の運命が全てキャミに伸し掛かっている。
しかし、キャミも王族の一員だ。
これまでも覚悟はしてきた。
キャット王国の為に、民達の為に王族はその命すら差し出さねばならない時があるのだ。
歯を食いしばり、ベッドから飛び出した。
「妾はキャット フォル キャミ! 女王亡き今、後継者は妾だけなのじゃ! キャット王国の未来の為なら、この首を差し出しますのじゃー!!」
ポロポロと泣きながらキャミはルニアに首を差し出す。
「いや、だから……跳ねないってば。 も~……私じゃダメだ。 おーい、誰かルーデウス殿下を連れて来てくれー!」
◆◇◆
「キャミ王女、落ち着きましたか?」
あれから号泣するキャミを宥める為にルーデウスは呼ばれ、キャミの口にクッキーを差し出し機嫌を取っていた。
「……ふぁぃ、ありがとうございますのじゃ」
キャミは顔を真っ赤にしながらクッキーを口で受け取る。
「ふふ、それは良かった。 では改めて、私はエントン王国の第1王子エントン フォル ルーデウスと申します。 手荒な真似で拉致して来た事、事情が事情ではありますが……すみませんでした」
名乗ったイケメンがエントン王国の第1王子である事を知ったキャミは驚愕するが、それ以上に驚いたのは被害者なのはエントン王国なのに謝られた事だ。
「め、滅相も無いのじゃ。 悪いのは……妾の王国とドック王国なのじゃ」
本当に申し訳ない気持ちでキャミはいっぱいだった。深くは事情は知らないがキャット王国内にもゴルメディア帝国の派閥が存在し、その派閥がゴルメディア帝国の命令を嬉々として受け入れ戦争の切っ掛けとなったそうだ。
「いえ、悪いのはゴルメディア帝国です。 キャット王国とドック王国の女王を討ったルニア辺境伯から聞いております。 ゴルメディア帝国の約束を違えば、エントン王国の代わりに2カ国の民達が奴隷にされると……」
ルーデウスはゴルメディア帝国に王族調停として向かった姉マリを思い怒る。
王族調停等と聞こえは良いが、要は人質だ。
優しげなルーデウスの表情が変わった事にキャミは怯えた。
「ル、ルーデウス様。 妾は……妾は、何をしたら良いのですか? 妾が死ねば、キャット王国の民達は助けて下さるのですか?」
震えるキャミの頭を優しくルーデウスは撫でた。
「大丈夫ですよ、キャミ王女。 誓って、貴女とキャット王国に酷い事はしません。 それはドック王国の王女にも先程伝えました」
「え……? 何故、其処までこんなに酷い事をしたのにこんなにも優しくして下さるのですか? それに、ドック王国の王女……ドーラも居るのですか!?」
「ええ、キャミ王女と同じく手荒な真似をしましたが、エントン王国に来て頂いております」
ルーデウスが部屋の扉前で待機していたメイドに合図をすると、ドック王国の王女 ドック フォル ドーラが入ってきた。
「キャミ! 良かった……無事だったのね」
ドーラはキャミを抱きしめた。
2人の王女が抱き合っているのをルーデウスは微笑みながら見ていたが、後から入ってきたメイドからの報告にため息を吐く。
「……やはり、2人の死を願う者が出たか」
ルーデウスの呟いた言葉がドーラと抱き合うキャミの耳にはしっかり届いていた。
キャミは気絶から目覚め、自分の首が付いている事を確認し安堵する。 ベッドから起き上がり周囲を確認すると知らない部屋に居た。
家具や装飾品を見る限りは貴族が住むような豪華な部屋だ。
扉の向こうで足音が忙しなく聞こえており、恐らくエントン王国の王城にある一室に監禁されているのだろう。
キャミが恐る恐る扉に手を掛けると、信じられない事に鍵は空いていた。
「え……? 監禁されている訳ではないのじゃ?」
扉を開け、廊下を見渡すとメイドや執事達が物を運んだりと忙しなく働いていた。
1人のメイドがキャミに気付き、近づいてきたのを確認したキャミは慌てて扉を閉める。
「しまったのじゃ。 どうしよう……逃げようにもエントン王国からキャット王国までは遠すぎるのじゃ。 ぴっ?!」
部屋の中で右往左往していたキャミは扉を叩く音に驚き飛び跳ねた。
「失礼する。 目が覚めたようだね……キャット フォル キャミ王女」
入ってきたのは気絶する前に会った赤髪の恐ろしい騎士だ。
「あ、あ、ああ貴女は誰ですのじゃ……? まさか、やっぱり妾の首を!?」
慌てて寝ていたベッドに飛び込むキャミを見て、ルニアは苦笑いを浮かべた。
「ふふ、私はエントン王国のルニア辺境伯だ。 首は跳ねないから安心しなさい。 それに、その喋り方……間違いなくキャット王国女王の娘だね」
「え!? 貴女、妾の母上を知っているのじゃ?! 母上は、母上は生きているのですか?!」
キャミはベッドから顔を出し、母の無事を聞くが首を横に振るルニアを見て項垂れる。
「そ、そうですよね……攻めてきた敵国の女王が負けてなお生きてる筈は無いのじゃ」
「謝るつもりは無い。 こちらも多くの味方を殺されたからな。 だが、戦争は終わった……此処からは未来に向けて動かないといけない」
ルニアの言葉にキャミは心を抉られる。
母亡き今、戦争の責任を誰が果たすか……キャット王国全体で果たすか、王族が果たすかだ。
キャット王国全体で果たすとなれば……考え得る限り最悪なのは皆殺しか、全国民奴隷化だろう。
キャット王国の未来をどうするか、残された兵士達、民達の運命が全てキャミに伸し掛かっている。
しかし、キャミも王族の一員だ。
これまでも覚悟はしてきた。
キャット王国の為に、民達の為に王族はその命すら差し出さねばならない時があるのだ。
歯を食いしばり、ベッドから飛び出した。
「妾はキャット フォル キャミ! 女王亡き今、後継者は妾だけなのじゃ! キャット王国の未来の為なら、この首を差し出しますのじゃー!!」
ポロポロと泣きながらキャミはルニアに首を差し出す。
「いや、だから……跳ねないってば。 も~……私じゃダメだ。 おーい、誰かルーデウス殿下を連れて来てくれー!」
◆◇◆
「キャミ王女、落ち着きましたか?」
あれから号泣するキャミを宥める為にルーデウスは呼ばれ、キャミの口にクッキーを差し出し機嫌を取っていた。
「……ふぁぃ、ありがとうございますのじゃ」
キャミは顔を真っ赤にしながらクッキーを口で受け取る。
「ふふ、それは良かった。 では改めて、私はエントン王国の第1王子エントン フォル ルーデウスと申します。 手荒な真似で拉致して来た事、事情が事情ではありますが……すみませんでした」
名乗ったイケメンがエントン王国の第1王子である事を知ったキャミは驚愕するが、それ以上に驚いたのは被害者なのはエントン王国なのに謝られた事だ。
「め、滅相も無いのじゃ。 悪いのは……妾の王国とドック王国なのじゃ」
本当に申し訳ない気持ちでキャミはいっぱいだった。深くは事情は知らないがキャット王国内にもゴルメディア帝国の派閥が存在し、その派閥がゴルメディア帝国の命令を嬉々として受け入れ戦争の切っ掛けとなったそうだ。
「いえ、悪いのはゴルメディア帝国です。 キャット王国とドック王国の女王を討ったルニア辺境伯から聞いております。 ゴルメディア帝国の約束を違えば、エントン王国の代わりに2カ国の民達が奴隷にされると……」
ルーデウスはゴルメディア帝国に王族調停として向かった姉マリを思い怒る。
王族調停等と聞こえは良いが、要は人質だ。
優しげなルーデウスの表情が変わった事にキャミは怯えた。
「ル、ルーデウス様。 妾は……妾は、何をしたら良いのですか? 妾が死ねば、キャット王国の民達は助けて下さるのですか?」
震えるキャミの頭を優しくルーデウスは撫でた。
「大丈夫ですよ、キャミ王女。 誓って、貴女とキャット王国に酷い事はしません。 それはドック王国の王女にも先程伝えました」
「え……? 何故、其処までこんなに酷い事をしたのにこんなにも優しくして下さるのですか? それに、ドック王国の王女……ドーラも居るのですか!?」
「ええ、キャミ王女と同じく手荒な真似をしましたが、エントン王国に来て頂いております」
ルーデウスが部屋の扉前で待機していたメイドに合図をすると、ドック王国の王女 ドック フォル ドーラが入ってきた。
「キャミ! 良かった……無事だったのね」
ドーラはキャミを抱きしめた。
2人の王女が抱き合っているのをルーデウスは微笑みながら見ていたが、後から入ってきたメイドからの報告にため息を吐く。
「……やはり、2人の死を願う者が出たか」
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