67 / 231
第65話 会談終了
しおりを挟む
マリの頬は緩み、視線は目の前のグラスに注がれるドワーフしか飲めないとされる鬼殺しに釘付けだ。
女貴族達の顔は青ざめ、将兵達は大広間に広がる鬼殺しの酒気だけで立ち眩みに襲われていた。
流石のキャベルも唾を飲み込み、注がれたグラスに口を付けるのを躊躇った。
少量ですら、人間族が飲めば生死に関わると言われるドワーフ秘蔵の鬼殺し。 ゴルメディア帝国では猛毒酒と女貴族達の間では呼ばれている。
キャベルが意を決してグラスに少量入った鬼殺しを飲み干し、周囲からは称賛の声が上がる。
「流石、女皇帝陛下!」 「あの量を飲み干されるとは!」 「素晴らしいですわ!」
「ふはははは! おぉっ!? ふぅ……どうだ、マリよ。 この飲み比べ、我のか……ち?」
身体をふらつかせたキャベルは周囲の称賛に手を上げ応えた。 そして、勝利を確信したキャベルだがマリの方を見て唖然とした。
「んぐ、んぐ、んぐ、んぐ、ぷはぁー!」
ワイングラスに並々鬼殺しを注いで何度も飲み干すマリの姿があった。
キャベルに注目していた他の参加者達もマリに気付き顔を引き攣らせる。
「マ……マリ? 大丈夫か……?」
少量で生死に関わる鬼殺しをマリはメイドから瓶を奪い自らワイングラスに注いでいた。
「ふえ……? ひくっ、なにがでふか~? ひくっ、あははははは! 美味しい~、やっぱりドワーフさんの作るお酒が一番美味しい~! んぐ、んぐ、んぐ? ありゃ? 無くなっちゃった~!」
明らかに泥酔しているマリはまるで水を飲むかのように鬼殺しの一升瓶を飲み干してしまった。
「ふはは……まさか、勝負にすらならぬとは。 うぅっ、皆の者! 我とマリの飲み比べはマリの勝ちだ! よって、マリの滞在を許可する。 マリよ……うっぷ、すまんまた話そう! 誰か、マリを部屋に案内してやれ」
キャベルは女皇帝の威厳を保つ為に玉座に座り、必死に吐き気と戦っていた。
「えー? ひくっ、でもまだ飲みたいのー! ひくっ、キャベル女皇帝陛下~鬼殺しのお代わりを~」
「ふはははは! お前……凄いな。 おい、マリに一升瓶渡してやれ」
「わ~、ありがとうございますー!ひくっ!」
「マリ女王陛下、こちらでございます」
呆れたキャベルがメイドに指示をすると、1人のメイドが一升瓶を持ちマリを連れて退出した。
周囲の参加者達も、ようやく嵐の様な存在が消えたと食事や酒を飲んでいるとキャベルが玉座の後方にひっそりと合図を飛ばす。
するとキャベルの前に、近衛師団団長カエサルや先程まで姿を隠していたブラック宰相とアバン皇子が姿を現した。
「やれやれ……まさか、酒の強さがここまでとはな。 だが、分かった。 アレは、無能では無いが害の無い女よ。我が可愛い息子アバン、お前が敵視する必要は無いだろう」
「ですが……奴はエナを」
アバンは母親であるキャベルに反論しようとしたが、キャベルに睨まれ押し黙った。
「ブラック……お前はどう評価した」
キャベルに問われたブラック宰相は猛禽類の様な瞳を細ませ答えた。
「はっ、女皇帝陛下の仰った様に無能では無いようですが……たかが小国の元女王です。 ゴルメディア帝国に滞在しようが毒にも薬にもならないでしょう」
ブラック宰相の答えに満足そうに頷いたキャベルはカエサルを呼び、指示をした。
「カエサル、念の為に見張りを増やせ。 確か……今はアマンダ技師1人だったな。 見張りをいきなり増やしても怪しまれるだけだろう。 与える部屋に忍ばせろ。 もし、怪しい動きが有れば報告しな」
「はっ!」
マリが居なくなった後のキャベルは冷徹なゴルメディア女皇帝の顔になっていた。
「よし、とりあえず……私は部屋で寝る。 うっぷ、皆もご苦労! 明日は遅めに起こしてくれ」
口を抑えて退出するキャベルを周囲の参加者達は敬礼し見送る。
ブラック宰相だけは、横目で歯をくいしばり鬼の形相をしているアバン皇子と近衛師団団長カエサルの横顔を見ていた。
女貴族達の顔は青ざめ、将兵達は大広間に広がる鬼殺しの酒気だけで立ち眩みに襲われていた。
流石のキャベルも唾を飲み込み、注がれたグラスに口を付けるのを躊躇った。
少量ですら、人間族が飲めば生死に関わると言われるドワーフ秘蔵の鬼殺し。 ゴルメディア帝国では猛毒酒と女貴族達の間では呼ばれている。
キャベルが意を決してグラスに少量入った鬼殺しを飲み干し、周囲からは称賛の声が上がる。
「流石、女皇帝陛下!」 「あの量を飲み干されるとは!」 「素晴らしいですわ!」
「ふはははは! おぉっ!? ふぅ……どうだ、マリよ。 この飲み比べ、我のか……ち?」
身体をふらつかせたキャベルは周囲の称賛に手を上げ応えた。 そして、勝利を確信したキャベルだがマリの方を見て唖然とした。
「んぐ、んぐ、んぐ、んぐ、ぷはぁー!」
ワイングラスに並々鬼殺しを注いで何度も飲み干すマリの姿があった。
キャベルに注目していた他の参加者達もマリに気付き顔を引き攣らせる。
「マ……マリ? 大丈夫か……?」
少量で生死に関わる鬼殺しをマリはメイドから瓶を奪い自らワイングラスに注いでいた。
「ふえ……? ひくっ、なにがでふか~? ひくっ、あははははは! 美味しい~、やっぱりドワーフさんの作るお酒が一番美味しい~! んぐ、んぐ、んぐ? ありゃ? 無くなっちゃった~!」
明らかに泥酔しているマリはまるで水を飲むかのように鬼殺しの一升瓶を飲み干してしまった。
「ふはは……まさか、勝負にすらならぬとは。 うぅっ、皆の者! 我とマリの飲み比べはマリの勝ちだ! よって、マリの滞在を許可する。 マリよ……うっぷ、すまんまた話そう! 誰か、マリを部屋に案内してやれ」
キャベルは女皇帝の威厳を保つ為に玉座に座り、必死に吐き気と戦っていた。
「えー? ひくっ、でもまだ飲みたいのー! ひくっ、キャベル女皇帝陛下~鬼殺しのお代わりを~」
「ふはははは! お前……凄いな。 おい、マリに一升瓶渡してやれ」
「わ~、ありがとうございますー!ひくっ!」
「マリ女王陛下、こちらでございます」
呆れたキャベルがメイドに指示をすると、1人のメイドが一升瓶を持ちマリを連れて退出した。
周囲の参加者達も、ようやく嵐の様な存在が消えたと食事や酒を飲んでいるとキャベルが玉座の後方にひっそりと合図を飛ばす。
するとキャベルの前に、近衛師団団長カエサルや先程まで姿を隠していたブラック宰相とアバン皇子が姿を現した。
「やれやれ……まさか、酒の強さがここまでとはな。 だが、分かった。 アレは、無能では無いが害の無い女よ。我が可愛い息子アバン、お前が敵視する必要は無いだろう」
「ですが……奴はエナを」
アバンは母親であるキャベルに反論しようとしたが、キャベルに睨まれ押し黙った。
「ブラック……お前はどう評価した」
キャベルに問われたブラック宰相は猛禽類の様な瞳を細ませ答えた。
「はっ、女皇帝陛下の仰った様に無能では無いようですが……たかが小国の元女王です。 ゴルメディア帝国に滞在しようが毒にも薬にもならないでしょう」
ブラック宰相の答えに満足そうに頷いたキャベルはカエサルを呼び、指示をした。
「カエサル、念の為に見張りを増やせ。 確か……今はアマンダ技師1人だったな。 見張りをいきなり増やしても怪しまれるだけだろう。 与える部屋に忍ばせろ。 もし、怪しい動きが有れば報告しな」
「はっ!」
マリが居なくなった後のキャベルは冷徹なゴルメディア女皇帝の顔になっていた。
「よし、とりあえず……私は部屋で寝る。 うっぷ、皆もご苦労! 明日は遅めに起こしてくれ」
口を抑えて退出するキャベルを周囲の参加者達は敬礼し見送る。
ブラック宰相だけは、横目で歯をくいしばり鬼の形相をしているアバン皇子と近衛師団団長カエサルの横顔を見ていた。
18
お気に入りに追加
204
あなたにおすすめの小説
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる