65 / 231
第63話 マリの独壇場
しおりを挟む
「はぁ……そうなんですね。 あぁ、なんてこと~! 私の~王国が滅びたなんてー! あぁぁぁ~!」
突然始まったマリの棒読み演技に周囲の者達は固まる。もしメリーがこの場に居たら即刻クビにされる演技力だ。 因みに、偽の知らせを聞いた時用の台詞はこれだけだ。 メリーが何度も唸って考えたが、これだけで限界だと判断したのである。
当の本人は不服そうだったが。
「……は? いや、その……うん。それで、マリよ。 王族調停は既に不可能となった。 お前はこれからどうしたいのだ? 私は当初と違いお前の豪胆さを気に入っている。 もし、滅びた王国と共に死にたいのなら今度こそ処刑してやるが?」
キャベルはマリの目の前に立ち、真っ直ぐに見つめる。マリが死を望めば即座に叶うだろう。
「亡き王国で最後まで戦った者達の為に、出来る限り精一杯生き延びたいと思います」
棒読みの演技からいきなり冷静に受け答えをするマリを見てキャベルはニヤリと笑った。 周囲の女貴族達や兵士達は何が起きたのかわからずにいる。
「そうか……ふむ、どうしたものか。 確かキャット王国からもドック王国からも、お前の引き渡し要請は知らせには書いて無かったな。 つまり、煮るも焼くも好きにしろ……か」
キャベルがマリを見つめながら思考に耽っていると、後ろから近衛師団団長カエサルが進言した。
「キャベル女皇帝陛下、恐れながら申し上げます。 その小娘は即刻処刑すべきです! 生かせば女貴族達や将兵からの不満の種となりましょう」
「カエサル……誰が発言を許可した?」
キャベルの低い声にカエサルは爽やかイケメンの笑顔を引きつらせた。
「も、申し訳ございません!」
必死に頭を下げるカエサルを無視し、キャベルは周囲の者達を見回す。
「デラン……忠臣であるお前の意見が聞きたい。 道中、お前はこのマリに何を思った」
キャベルに問われ、デランは臣下の礼をしながら答える。
「はっ! マリ女王陛下は私の配下の者達とすら数日で打ち解け、下の人間を大切にする慈悲深きお方だと思いました。 また、途轍もない酒豪です」
デランの返答にキャベルは驚きの声をあげた。
「マリ……その見た目で酒飲みなのか?」
マリは2人の様子を見て違和感を感じたが、キャベルに話し掛けられていると気付き咄嗟に答える。
「え? あ~……黒騎士団の皆を酔い潰すぐらいには?」
マリの返答にキャベルは目を丸くした後に笑い始めた。 話したデランでさえ微かに笑っている。
この世界では男より女の方が偉いとされている。その基準で考えると、小国といえど一国の女王が戦働きしか能のない男達と野営で酒を飲むなど言語道断であり酔い潰す等あり得ない事だ。 しかも、相手は攻めてきた敵の兵士達なのだから。
「はっはっはっ! 面白い、本当にお前は面白いな! よし、決めた。 勝負だマリ、酒飲み比べでお前が勝てば生かせてやる。 負ければ……そうだな、確か女王を失ったばかりの小国があったな。 其処に売り飛ばすか」
(そうきたか……う~ん、負けないとは思うけど負けたらルカの計画が台無しになるしな。 どうしよっかなー……ちなみにお酒どんなのが出るんだろ。 もしかして飲んだ事の無いお酒とか出るのかな……うん!受けても良いよね!)
マリは一時考えたが、直ぐに決断した。
酒が飲めるなら万々歳だと。
「その勝負受けます! そうですね、私が勝てば暫くこのお城にご厄介になりましょうか」
一応負ける気の無いマリは、当初の目標を果たすべく条件を提示した。
「よし! おい、酒を持って来い!! マリには悪いが戦勝祝いだ皆も飲め!」
大広間にメイドが大勢入って来て戦勝祝いの準備を始める。
女貴族達や将兵達は、自分の王国を滅ぼした戦勝祝いをするという状況にマリが流石にショックを受けているだろうと高を括っていたが。
当の本人は準備される酒の品々に小躍りして喜んでいた。隣のキャベルは面白い余興だとマリの隣で笑っている。
意気揚々で戦勝祝いの宴を待つ姿を見て女貴族達や将兵達は余りの衝撃に固まり、近衛師団の兵士達や団長カエサルですら口を大きく空けて放心した。
そして、黒騎士団の団長デランとマリの酒好きを身を以て知っている兵士達は笑っていた。
突然始まったマリの棒読み演技に周囲の者達は固まる。もしメリーがこの場に居たら即刻クビにされる演技力だ。 因みに、偽の知らせを聞いた時用の台詞はこれだけだ。 メリーが何度も唸って考えたが、これだけで限界だと判断したのである。
当の本人は不服そうだったが。
「……は? いや、その……うん。それで、マリよ。 王族調停は既に不可能となった。 お前はこれからどうしたいのだ? 私は当初と違いお前の豪胆さを気に入っている。 もし、滅びた王国と共に死にたいのなら今度こそ処刑してやるが?」
キャベルはマリの目の前に立ち、真っ直ぐに見つめる。マリが死を望めば即座に叶うだろう。
「亡き王国で最後まで戦った者達の為に、出来る限り精一杯生き延びたいと思います」
棒読みの演技からいきなり冷静に受け答えをするマリを見てキャベルはニヤリと笑った。 周囲の女貴族達や兵士達は何が起きたのかわからずにいる。
「そうか……ふむ、どうしたものか。 確かキャット王国からもドック王国からも、お前の引き渡し要請は知らせには書いて無かったな。 つまり、煮るも焼くも好きにしろ……か」
キャベルがマリを見つめながら思考に耽っていると、後ろから近衛師団団長カエサルが進言した。
「キャベル女皇帝陛下、恐れながら申し上げます。 その小娘は即刻処刑すべきです! 生かせば女貴族達や将兵からの不満の種となりましょう」
「カエサル……誰が発言を許可した?」
キャベルの低い声にカエサルは爽やかイケメンの笑顔を引きつらせた。
「も、申し訳ございません!」
必死に頭を下げるカエサルを無視し、キャベルは周囲の者達を見回す。
「デラン……忠臣であるお前の意見が聞きたい。 道中、お前はこのマリに何を思った」
キャベルに問われ、デランは臣下の礼をしながら答える。
「はっ! マリ女王陛下は私の配下の者達とすら数日で打ち解け、下の人間を大切にする慈悲深きお方だと思いました。 また、途轍もない酒豪です」
デランの返答にキャベルは驚きの声をあげた。
「マリ……その見た目で酒飲みなのか?」
マリは2人の様子を見て違和感を感じたが、キャベルに話し掛けられていると気付き咄嗟に答える。
「え? あ~……黒騎士団の皆を酔い潰すぐらいには?」
マリの返答にキャベルは目を丸くした後に笑い始めた。 話したデランでさえ微かに笑っている。
この世界では男より女の方が偉いとされている。その基準で考えると、小国といえど一国の女王が戦働きしか能のない男達と野営で酒を飲むなど言語道断であり酔い潰す等あり得ない事だ。 しかも、相手は攻めてきた敵の兵士達なのだから。
「はっはっはっ! 面白い、本当にお前は面白いな! よし、決めた。 勝負だマリ、酒飲み比べでお前が勝てば生かせてやる。 負ければ……そうだな、確か女王を失ったばかりの小国があったな。 其処に売り飛ばすか」
(そうきたか……う~ん、負けないとは思うけど負けたらルカの計画が台無しになるしな。 どうしよっかなー……ちなみにお酒どんなのが出るんだろ。 もしかして飲んだ事の無いお酒とか出るのかな……うん!受けても良いよね!)
マリは一時考えたが、直ぐに決断した。
酒が飲めるなら万々歳だと。
「その勝負受けます! そうですね、私が勝てば暫くこのお城にご厄介になりましょうか」
一応負ける気の無いマリは、当初の目標を果たすべく条件を提示した。
「よし! おい、酒を持って来い!! マリには悪いが戦勝祝いだ皆も飲め!」
大広間にメイドが大勢入って来て戦勝祝いの準備を始める。
女貴族達や将兵達は、自分の王国を滅ぼした戦勝祝いをするという状況にマリが流石にショックを受けているだろうと高を括っていたが。
当の本人は準備される酒の品々に小躍りして喜んでいた。隣のキャベルは面白い余興だとマリの隣で笑っている。
意気揚々で戦勝祝いの宴を待つ姿を見て女貴族達や将兵達は余りの衝撃に固まり、近衛師団の兵士達や団長カエサルですら口を大きく空けて放心した。
そして、黒騎士団の団長デランとマリの酒好きを身を以て知っている兵士達は笑っていた。
18
お気に入りに追加
204
あなたにおすすめの小説
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる