[完結]転生したのは死が間近の女王様!? ~超可愛い弟が王になれるよう平凡な女王が抗う奮闘記~

秋刀魚妹子

文字の大きさ
上 下
56 / 231

第54話 昼食と進展

しおりを挟む
 アマンダを味方に引き入れたマリは、牢屋の中で唸りながら目に力を入れていた。

 「戻りました陛下、進歩はいかがですか? 」

 見張りのアマンダが味方になった事で、昼間も堂々と城を探索していたメリーが戻って来る。

 「んー? お帰りなさいメリーさん。 あんまり良くないかな。 さっき目が金色になってたみたいだし、いけると思ったんだけどね」

 そう、マリは暇潰しにも兼ねて未来を見ようと試行錯誤していたのだ。

 しかし、結果は著しくないようだ。

 「あ、あの! メリーさん、マリ陛下は先程から何を?」

 事情を知らないアマンダが疑問に思うのも当然だが、流石にまだ教えていいものかマリは判断に悩んでいた。

 「あはは~……ちょっとね」

 「陛下の行動は気にされなくても大丈夫ですよ? アマンダさんも陛下の部下となったのです……直ぐに馴れますよ」

 「メリーさん!? それ良い意味だよね? 奇行に馴れるとかそんな意味じゃないよね?!」

 何処か遠い瞳でアマンダを諭すメリーに、マリは掴みかかる勢いで抗議する。

 「そんな事より陛下、問題発生です」

 「そんな事じゃないもん! 」

 祖国を裏切ったアマンダは、二人のやり取りを見ながら本当にこの選択で良かったのか不安に思うのであった。

 ◆◇◆

 「ふーん、やっと明日会談なのね。 でも、その場で打ち首とかは流石に無いよね?」

 メリーが出した昼食を食べながら3人は話し合う。

 「そうですね。 ルカの計画では、陛下は1ヶ月程で処刑される予定ですね」

 「しょ、処刑!? マリ陛下は、王族調停をしに来られているのですよね? なのに処刑されるのですか?! でむあむむむぐぐ!」

 アマンダが驚愕するが、喋りながら口にビーフシチューをたらふく頬張っている所を見るに新たな主君への心配よりも美味な昼食が勝ったようだ。

 「あはは、アマンダさんリスみたい」

 「やれやれ……沢山有りますから落ち着いて食べて下さいね」

 「んぐ! す、すみません! それで……マリ陛下は大丈夫なのですか?」

 胸を叩きながら急いで飲み込んだアマンダは、主君を心配する。

 色々と既に手遅れだが、苦笑いしながらマリはアマンダに優しく語りかける。

 「あはは……う~ん、大丈夫では無いけど神童と呼ばれる大臣がうちには居るからね。 私はその大臣の計画を信じるよ。 それに、死ぬ予定ならアマンダさんをエントン王国にスカウトしたりしないよ」

 「そうですね~、ルカの読みが当たるのを祈るばかりではありますが。あ、今日の夕方に恐らく明日の会談予定の知らせがアマンダさんに届くでしょう。初めて聞いた感じでお願いしますね?」

 「ふぁい! む、むがぜでぐぬぬい!」

 メリーにお願いされたアマンダの頬は相変わらずリスの様に一杯であった。

 「あはは……アマンダさんがうちに来たら食費がヤバそうだね」

 マリの言葉にアマンダは真っ赤になり、耳の先まで赤く染めた。

 ◆◇◆

 夕方になり、メリーの予想通りアマンダが上に呼ばれ見張りを離れた。

 代わりの見張りをする兵士は豪華な牢屋に顔を引き攣らせながらも黙って任務に準じている。

 「メリーさん、今日の収穫は? お願いしてた事はわかった?」

 「勿論でございます、陛下。 この奥の牢屋に捕まっている囚人達に何故見張り等の看守が居ないか……陛下の予想通りでした」

 2人は味方では無い見張りに聞かれない様に小声で話す。

 「んー……そっか、まぁ当たって欲しく無かったんだけどね」

 マリは険しい顔でこめかみを抑える。

 メリーから奥の牢屋に多くの強面の囚人達が入れられていると聞かされた時から、マリは嫌な予感がしていた。

 気になり、メリーにそれとなく調べる様に命じていたが結果は最悪だった。 

 「あの囚人達に看守が居ないのは、死ぬまで放置だからですね。 脱獄も厳しいですし……一般人なら一週間も保たずに死ぬでしょう」

 メリーの無慈悲な言葉にマリは身震いする。
 メリーからは助けるつもりは無いと態度から発せられていた。

 「因みに……罪状は?」

 「殺人、強盗、強姦、窃盗、誘拐、犯罪の展覧会ですね~。 残念ですが、彼等が投獄されているのは自業自得かと」

 「あ~……それは死刑だね」

 無実の罪で投獄されているのではとマリは心配していたが、どうやら死んで当然の連中だったようだ。

 「ありがとうメリーさん、不必要な仕事頼んでごめんね」

 「いえ、それほど手間ではございませんでしたから。 それより、ドワーフ工房の事で進展が」

 「お! 流石メリーさんだね、どんな進展?」

 マリの問にメリーは微笑む。

 「アマンダさんの協力があれば、ドワーフ達を説得できるかもしれません。 ただ、ドワーフ達に恨まれるかもしれませんが……」

 「うーん……とりあえず聞こっか」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...