55 / 231
第53話 アマンダ陥落
しおりを挟む
「ご、ご馳走さまでした~」
朝食のサンドイッチを完食したアマンダは正気を取り戻し、足早に牢屋から飛び出し鍵を掛けた。
それから直立不動でマリ達の見張りを再開したが、残念ながら色々と手遅れである。
昨日は飲酒を囚人として泥酔。 更にその場で熟睡し、起きたら牢屋の中へと招かれて朝食を平らげる。 もし、近衛師団の上司にこの様な失態が見付かれば今度こそアマンダはクビだ。
「だ、大丈夫、大丈夫、大丈夫よアマンダ。 バレなければいいのよ、落ち着いてー」
必死に深呼吸をして自らを落ち着かせようとしているのを、マリとメリーは何とも言えない顔で見ていた。
「あはは……良い人なのは分かるんだけど、私の見張りを任せて大丈夫だったのかな?」
「昨日……衛兵の雑談で少し耳にしましたが、どうやらアマンダはドワーフ工房の見張りだったのを左遷されて陛下の見張りを命令された様ですね」
「ふーん……じゃあ、昨晩話した通りアマンダさんは此方側に引き込んだ方が良いよね?」
メリーが頷くのを確認したマリは格子に近付き、計画を開始する。
「アマンダさん、朝食のサンドイッチは美味しかった?」
「は、はい! 人生で一番美味しいサンドイッチでした」
「それなら良かった。 今日も特に何もないならお喋りに付き合ってくれる?」
アマンダは周囲を確認し、格子へと近づく。
「も、勿論です! 他に所望される物がございましたら何でもお申し付け下さい」
それからマリはアマンダとの交流を深めた。
◆◇◆
暫く2人が雑談をしていると、地下牢へと降りてくる足音が聞こえる。
「不味いかも、アマンダさん見張りに戻って」
「は、はい!」
アマンダが直立不動の体勢に戻ると同時に1人の兵士が食料を運んで来た。
「おい、アマンダ技師。 ちゃんと不眠不休で見張ってんだろうな? もし、寝てたらぶん殴ってやるからな」
その兵士のアマンダへの態度は非常に悪意があり、マリは腹が立つ。
(はー? こいつ……見張りがアマンダさんだけなのは変だと思ってたけど、まさか……嫌がらせの為に? いじめ?)
「は、はい! 勿論不眠不休であります!」
この兵士が来てからのアマンダは力一杯に直立不動で緊張しているのが見てとれる。
すると、アマンダの足下に朝食という名の蒸した芋が転がされた。
「おい……アマンダ。 俺の目がおかしいのか? その辺の貴族の部屋より立派な牢屋が見えるんだが」
兵士は手に持っていた芋を床に落とし、両目を何度も擦って確認するが現実は変わらない。
「あ~……メリーさん、ヤバくない?」
「少しやり過ぎましたね~」
マリは顔をひきつらせ、メリーはのほほんと笑ってすませる。
「す、すみません!! 私がやりました!」
すると、アマンダが自分のせいだと言い始める。 これには、マリもメリーを驚き目を見開いた。
「あん? どういう事だ? お前、何をした!」
「い、いえ! 私はエントン王国の女王陛下が所望した物を手配する様に命じられていましたので! め、命令の通りに実施しました!」
兵士に凄まれても、アマンダは決して引かない。
「……ちっ、ならいい。 でもな、敵国の女王だぞ? 何でもかんでも聞いてんじゃねぇぞ、この役立たずが!」
兵士はアマンダの頬を籠手を装備したまま殴る。
「ぐっ! ……も、申し訳ありません」
倒れたアマンダの下敷きになった蒸した芋が無惨にも潰れる。
それを見た兵士は更に苛立つ。
「てめぇ……! 折角、俺が持って来てやった飯を! アマンダ、お前の飯な今日1日それだけだ! 必ず食え「おい、お前!!」
兵士がニヤニヤしながらアマンダの顔を踏みつけていると、背後から怒号がとんだ。
「はぁ? 何だよ、敵国の女王へい……ひっ?!」
兵士は顔面蒼白になり、身体をガタガタと震わせる。
その様子をアマンダは不思議に思い顔を上げると、牢屋の格子に鬼の形相でしがみつくマリの姿があった。
「おい、よく聞けよ? 其処のアマンダさんは、敵国の女王である私に凄く良くしてくれてるんだよ! それを何なんだお前は? メリーさんに頼んでその首切り落としてやろうか? あぁん!?」
目が金色に光り、華奢な小女と思えない殺気を放つマリに兵士は恐れおののきその場で崩れ落ちた。
横を見れば、さっきまで牢屋に入っていた筈のメイドが笑顔で立っている。
「ひ、ひぃぃぃ! わ、悪かったよ! くそ、二度とこんな所来ねぇからな! 飯は自分で何とかしろよ!」
兵士は這いながら階段を駆け上がっていく。 その様子をマリは獰猛な獣の様に唸りながら睨んでいた。
「二度と来るなよ! この三下がぁー!」
「陛下、落ち着いて下さい。 アマンダさんが驚かれてますよ?」
メリーに宥められ、マリは深呼吸する。
「はー、ふー、アマンダさん!」
「は、はいっ!」
マリに呼ばれたアマンダは急いで立ち上がり、マリの前で直立不動となる。
「私の王国に来ない?! めちゃくちゃ優遇するし、私の王国で働いて欲しい」
いきなりのスカウトにアマンダは驚くが、やんわりと首を横にふる。
「お、お気持ちはとても嬉しいです。でも、私何か迷惑かけるばかりだと思います。 す、すみません」
「ダメ! さっき雑談の時に言ってたじゃん! 天涯孤独何でしょ? 近衛師団に入れる力があるんでしょ? 何より、貴女は私達を守ろうとさっき庇ってくれた。 だから、貴女が欲しい」
マリは、同性のアマンダが赤面する程に口説くがまだアマンダの心を動かせる程では無い。
しかし、メリーが止めをさす。
「アマンダさん、ちなみにですが……エントン王国に来れば先程の様な食事が普通に食べれますよ?」
「い、行きます! お世話になりますマリ陛下!! 私の忠誠を全て捧げます!」
アマンダのあまりの変わりようにマリは苦笑いを浮かべた。
朝食のサンドイッチを完食したアマンダは正気を取り戻し、足早に牢屋から飛び出し鍵を掛けた。
それから直立不動でマリ達の見張りを再開したが、残念ながら色々と手遅れである。
昨日は飲酒を囚人として泥酔。 更にその場で熟睡し、起きたら牢屋の中へと招かれて朝食を平らげる。 もし、近衛師団の上司にこの様な失態が見付かれば今度こそアマンダはクビだ。
「だ、大丈夫、大丈夫、大丈夫よアマンダ。 バレなければいいのよ、落ち着いてー」
必死に深呼吸をして自らを落ち着かせようとしているのを、マリとメリーは何とも言えない顔で見ていた。
「あはは……良い人なのは分かるんだけど、私の見張りを任せて大丈夫だったのかな?」
「昨日……衛兵の雑談で少し耳にしましたが、どうやらアマンダはドワーフ工房の見張りだったのを左遷されて陛下の見張りを命令された様ですね」
「ふーん……じゃあ、昨晩話した通りアマンダさんは此方側に引き込んだ方が良いよね?」
メリーが頷くのを確認したマリは格子に近付き、計画を開始する。
「アマンダさん、朝食のサンドイッチは美味しかった?」
「は、はい! 人生で一番美味しいサンドイッチでした」
「それなら良かった。 今日も特に何もないならお喋りに付き合ってくれる?」
アマンダは周囲を確認し、格子へと近づく。
「も、勿論です! 他に所望される物がございましたら何でもお申し付け下さい」
それからマリはアマンダとの交流を深めた。
◆◇◆
暫く2人が雑談をしていると、地下牢へと降りてくる足音が聞こえる。
「不味いかも、アマンダさん見張りに戻って」
「は、はい!」
アマンダが直立不動の体勢に戻ると同時に1人の兵士が食料を運んで来た。
「おい、アマンダ技師。 ちゃんと不眠不休で見張ってんだろうな? もし、寝てたらぶん殴ってやるからな」
その兵士のアマンダへの態度は非常に悪意があり、マリは腹が立つ。
(はー? こいつ……見張りがアマンダさんだけなのは変だと思ってたけど、まさか……嫌がらせの為に? いじめ?)
「は、はい! 勿論不眠不休であります!」
この兵士が来てからのアマンダは力一杯に直立不動で緊張しているのが見てとれる。
すると、アマンダの足下に朝食という名の蒸した芋が転がされた。
「おい……アマンダ。 俺の目がおかしいのか? その辺の貴族の部屋より立派な牢屋が見えるんだが」
兵士は手に持っていた芋を床に落とし、両目を何度も擦って確認するが現実は変わらない。
「あ~……メリーさん、ヤバくない?」
「少しやり過ぎましたね~」
マリは顔をひきつらせ、メリーはのほほんと笑ってすませる。
「す、すみません!! 私がやりました!」
すると、アマンダが自分のせいだと言い始める。 これには、マリもメリーを驚き目を見開いた。
「あん? どういう事だ? お前、何をした!」
「い、いえ! 私はエントン王国の女王陛下が所望した物を手配する様に命じられていましたので! め、命令の通りに実施しました!」
兵士に凄まれても、アマンダは決して引かない。
「……ちっ、ならいい。 でもな、敵国の女王だぞ? 何でもかんでも聞いてんじゃねぇぞ、この役立たずが!」
兵士はアマンダの頬を籠手を装備したまま殴る。
「ぐっ! ……も、申し訳ありません」
倒れたアマンダの下敷きになった蒸した芋が無惨にも潰れる。
それを見た兵士は更に苛立つ。
「てめぇ……! 折角、俺が持って来てやった飯を! アマンダ、お前の飯な今日1日それだけだ! 必ず食え「おい、お前!!」
兵士がニヤニヤしながらアマンダの顔を踏みつけていると、背後から怒号がとんだ。
「はぁ? 何だよ、敵国の女王へい……ひっ?!」
兵士は顔面蒼白になり、身体をガタガタと震わせる。
その様子をアマンダは不思議に思い顔を上げると、牢屋の格子に鬼の形相でしがみつくマリの姿があった。
「おい、よく聞けよ? 其処のアマンダさんは、敵国の女王である私に凄く良くしてくれてるんだよ! それを何なんだお前は? メリーさんに頼んでその首切り落としてやろうか? あぁん!?」
目が金色に光り、華奢な小女と思えない殺気を放つマリに兵士は恐れおののきその場で崩れ落ちた。
横を見れば、さっきまで牢屋に入っていた筈のメイドが笑顔で立っている。
「ひ、ひぃぃぃ! わ、悪かったよ! くそ、二度とこんな所来ねぇからな! 飯は自分で何とかしろよ!」
兵士は這いながら階段を駆け上がっていく。 その様子をマリは獰猛な獣の様に唸りながら睨んでいた。
「二度と来るなよ! この三下がぁー!」
「陛下、落ち着いて下さい。 アマンダさんが驚かれてますよ?」
メリーに宥められ、マリは深呼吸する。
「はー、ふー、アマンダさん!」
「は、はいっ!」
マリに呼ばれたアマンダは急いで立ち上がり、マリの前で直立不動となる。
「私の王国に来ない?! めちゃくちゃ優遇するし、私の王国で働いて欲しい」
いきなりのスカウトにアマンダは驚くが、やんわりと首を横にふる。
「お、お気持ちはとても嬉しいです。でも、私何か迷惑かけるばかりだと思います。 す、すみません」
「ダメ! さっき雑談の時に言ってたじゃん! 天涯孤独何でしょ? 近衛師団に入れる力があるんでしょ? 何より、貴女は私達を守ろうとさっき庇ってくれた。 だから、貴女が欲しい」
マリは、同性のアマンダが赤面する程に口説くがまだアマンダの心を動かせる程では無い。
しかし、メリーが止めをさす。
「アマンダさん、ちなみにですが……エントン王国に来れば先程の様な食事が普通に食べれますよ?」
「い、行きます! お世話になりますマリ陛下!! 私の忠誠を全て捧げます!」
アマンダのあまりの変わりようにマリは苦笑いを浮かべた。
17
お気に入りに追加
204
あなたにおすすめの小説
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる