[完結]転生したのは死が間近の女王様!? ~超可愛い弟が王になれるよう平凡な女王が抗う奮闘記~

秋刀魚妹子

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第50話 情報収集

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 松明の灯りが届かない闇をメリーは音もなく進む。

 (この牢屋に亜人は閉じ込められていないようですね)

 マリ達が入れられた牢屋には多くの牢が有るが、収監されているのは犯罪者とおぼしき人間達だけだった。

 どの囚人も明らかに裏の人間の顔付きをしており、マリの味方になるとは到底思えなかった。

 (ふむ……悪人ばかりの様ですし、見捨てておいて良さげですね~。 では、帝城の中を探してみますか)

 地下牢から上に続く階段にするりと入り込み、足音を立てずに上がっていく。

 上がった先には当然見張りの兵士が立っているが、メリーに気付く事は無い。

 様子を見ていると、2人の見張りが雑談を始めた。

 「なぁ、聞いたか? エントン王国とやらの女王が自ら処刑されに来たらしい」

 「はぁ? いやいや、俺は王族調停をしに来たって聞いたぞ?」

 メリーは眉をひそめるが、黙して情報を集める。

 「おいおい、あの女皇帝陛下がノコノコと来た敵国の女王を生かして返すかよ」

 「それもそうか……無謀だよなぁ。あ、そう言えば見張りにあのアマンダが任命されたらしいぞ」

 「おー、あのドワーフ工房から左遷された近衛師団の兵士だろ? あいつ変人だよな」

 アマンダの話しになり、メリーは更に聞き耳を立てた。

 「そうそう、ドワーフ工房の見張りだったのに中のドワーフ達と仲良くなったとかで女皇帝陛下の怒りを買ったらしい」

 「馬鹿だよなー、近衛師団に折角入れたのに。俺達衛兵何か、何処其処の入り口の見張りばっかりで給金も安い中遣り繰りして暮らしてんのに……近衛師団の給金めちゃくちゃ良いらしいぞ?」

 (ふむ、ドワーフ工房……其処に集められているのでしょうか? そろそろ進みますか)

 其処からは他愛も無い雑談だった為、メリーは先程話しに出たドワーフ工房を探しに上へと向かう。

 見張りの兵士達は天井を音もなく走るメリーに気付くことは最後まで無かった。

 ◆◇◆

 「あへー……も、もぉむりでずー」

 マリの後ろにメリーが居ない事に気付かなかったアマンダは、遂に酔い潰れてその場で寝てしまった。

 冷たい石畳が鎧に伝わって気持ちいいのか、とても健やかな寝顔でアマンダは眠っている。

 「ひくっ、あちゃ~風邪引かないかな? 大丈夫かな? 」

 マリが牢屋の中でアマンダを心配しながら酒を飲み続けていると、1時間程前に抜けたメリーが音もなく帰ってきた。

 「あらあら、流石に風邪を引きますよ? 」

 フリフリのメイド服のスカートから取り出した布をアマンダに掛けてやり、まるで自室の様にするりと牢屋の中へと入り込む。

 「ひくっ、うん……馴れって本当に大事だねメリーさん。 あ、あとお帰りなさい」

 もう何でもありのメリーにマリは諦めに似た心中を吐露する。

 「ただいま戻りました陛下」

 そんな事を気にも止めず、テキパキとマリが飲み干した酒瓶を片付ける。

 「ひくっ、どうだった? 亜人のドワーフさん達は見つかった? 」

 「はい、勿論です。 ただ、色々と問題が発生しました」

 メリーが胸元から羊皮紙を取り出し、マリへと見せる。 その時、マリの視線が肩へと向けられているのをメリーは不思議に思ったが直ぐに視線が羊皮紙に向けられたので気に止めなかった。

 「んー? え!? 何で? 奴隷……何だよね?」

 「だからこそ……という事でしょう」

 マリが凝視する羊皮紙にはドワーフが書いた遺言と思える文が綴られていた。

 『エントン王国の女王殿へ。 僕達ドワーフを救いにゴルメディア帝国まで足を運んでくれた事、本当に感謝するよ。 でも、ごめんなさい。 僕達はもう……祖国に帰る事は出来ません。 来てくれたメリー殿には伝えましたが、可能であれば僕達を殺して欲しい。 理由は言えません。でもそれだけの事をしたのです。 アテス兄様宛にエントン王国を許す様、手紙を書きました。 それを見せれば禍根を無くせるでしょう。 ありがとう、次にメリー殿が来た時は死ねる事を願います。  ルーフ』

 「うーん……死ぬだけの事か。 因みにそれって聞いてもいい?」

 「申し訳ございません、幾ら問いただしても話してくれませんでした。流石に陛下の指示を仰がすドワーフ達を殺める訳にもいかず……」

 申し訳なさそうに謝るメリーをマリはきょとんとした顔で見た。

 「あ、ごめんごめんメリーさん。 私が聞いたのは、メリーさんの肩に座ってる小さな女の子にだよ」

 「……はぃ?」

 マリが指を差すが、メリーの肩には何も居ない。

 「陛下……? 何のお話を……!? 陛下、瞳が!」

 「ひくっ、貴女……妖精だよね?」

 そう再度メリーの肩に問い掛けたマリの瞳は金色に輝いていた。
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