50 / 231
第48話 ゴルメディア帝都到着
しおりを挟む
大砦を出発し早2日が経った。
多くの黒騎士団に守られたマリ達一行は、盗賊等に襲われる事も無く無事に帝都へと到着した。
道中、幾つかの村や町に寄ってから帝都に到着したマリの機嫌は最悪だ。
「ねぇ、メリーさん。 帝都は凄く活気があるんだね」
「左様ですね、陛下。 道中の村や町の人々は……まるで奴隷の様に働いていのに」
メリーの顔も歪む。
「やはり……また腐敗しましたか」
メリーがぼそりと呟いた言葉は、街並みを傍観するマリの耳には届かなかった。
馬車の窓から見えるゴルメディア帝国の帝都は分厚い黒檀の壁で囲まれており、中で住む帝国民達は平和に暮らせている様だ。 石造りの家々が並び、広場に続く石畳の道には露天や多くの市場で溢れていた。
帝国民達は皆笑顔だ。
綺麗な服を着て、楽しそうに買い物や仕事をしている。
道中の村や町の悲惨振り等、自分達には関係無いと言わんばかりの光景にマリは歯ぎしりをした。
「陛下、歯が傷みますよ?」
「うん、そうだね」
(なんだろう、この気持ち悪さは。 乙女小説で読んだ時はこんな落差が有る帝国とは描写されて無かったのに。 いや……エナさんとヘタレ皇子が帝国を奪い取る迄はこんな感じだったのかな)
もし、そうであればこの光景は変わらないだろう。 もうエナはこの世に居ないのだから。
馬車が暫く帝都を進むと、黒檀を惜しみ無く使用した立派な城が見えてきた。
実際は帝都に到着して、正門を過ぎた時点で遠くに見える程に大きかったのだがマリは町と帝都の落差でそれどころでは無かったのだ。
帝城の入り口に到着し、マリ達は馬車を降りる。 周囲には黒騎士団達と団長デランが待機していた。
デランが改まり、マリに初対面の時とは裏腹に優しい瞳で話し掛ける。
「到着早々でありますが、自分は先に向かい報告して参ります。 これよりは、帝城を守る近衛師団に護衛の任を任せないといけません。 私達がお守りするのは此処までとなりますが、道中女王陛下の護衛が出来た事光栄でした! 王族調停……ご武運をお祈りします。 皆、マリ女王陛下に敬礼!」
「「「「また飲みましょう!」」」」
デランが畏まった敬礼をするが、残念ながらこの道中で飲み仲間になってしまった黒騎士団達はマリに親しい友人の様な挨拶をした。
数千の黒騎士達と毎日飲み明かしたのはマリの良い思い出だ。
「おい?! お前達!! すみません……」
団長の命令を無視されマリに頭を下げるデランを見て、メリーは苦労人だなぁと少し優しい瞳で哀れむ。
「ふふ、ありがとう皆! また必ず飲もうね! デランさんも本当にありがとう、頑張るね!!」
マリは笑顔で黒騎士達に別れを告げ、報告を受けた近衛師団に連れられ帝城へと入っていった。
◆◇◆
「で……何でまた牢屋に?」
「何故でしょうか……? まだあのヘタレ皇子は到着してない筈ですし……」
何故かマリとメリーは帝城の牢屋に入れられていた。
最初は別々の牢屋に入れられていたのだが、メリーが普通に抜け出しマリの牢で何処からか出したテーブルや椅子等で牢屋を模様替えしている真っ最中である。
「メリーさんが色々と出すのに馴れてきてる自分がちょっと怖いかも。 あ、この紅茶美味しい」
「ふふ、それはようごさいました。 何でも馴れれば気にならないものです。 あ、絨毯を敷きますので足をすみません」
マリが両足を上げると、真っ黒の床がふわふわの赤い絨毯に変わる。
「なんと言う事でしょう! 匠の手により、無骨で固い石畳がふわふわの絨毯にー!」
「ふふ、それは何ですか? 面白い話し方ですね」
メリーはマリの笑顔に安堵する。
マリのこんな調子を見るのは本当に久し振りだ。 多くの貴族を処刑し、改革のせいで戦争まで起きた時のマリは……壊れない様に必死に作った女王を演じていた様にメリーは感じていた。
実際はその通りである。
エナの件からマリの精神は安定した。
エナに肯定された事、エナが己の命すら捨ててマリが目指す未来の方が幸せだと言ってもらえた事が起因している。
当然、エナを死なせてしまった事がマリの心を苦しめるが、エナの為にもルーデウスの為にも王国の為にも立ち止まっている暇等無いのだ。
「あはは、なんだろね~」
マリとメリーの穏やかな時間を、止める事も出来ずに見ていた、見張りの近衛師団の兵が声を荒げる。
「な、ななな、なぁ!? 一体何が起きたの?! 一瞬で黒檀の牢屋が豪華な部屋に!? 待って、そのシャンデリアは何処から出したの!?」
白い鎧を身に纏った女性の兵士が牢屋の柵にしがみつき、驚愕の声を上げた。
「お姉さん、お名前は?」
マリに問われ、一瞬警戒した女性は佇まいを直し名乗る。
「じ、自己紹介が遅れ申し訳ない!わ、私はマリ女王陛下が滞在中、この牢屋の見張りを命じられた近衛師団所属のユーリア フォル アマンダと申します! 滞在中、何かご所望が有れば何でも申し受ける様言われております!」
白兜を被っている為に顔がはっきり確認できなかったが、兜の隙間から茶髪が見えた。
(ふむ……陛下への扱いは最悪ですか、一応の配慮はして下さるのですね)
メリーに品定めされる様に見られているアマンダは身震いをする。
「初めまして、アマンダさん! エントン フォル マリです。 こっちのスーパーメイドはメリーさんです。 よろしくね!」
明るい笑顔でマリは牢屋越しにアマンダへ握手を求めた。
「は、はい。 よ、よろしくお願いします」
アマンダは心中でマリの狙いを考えていた。 この最悪で最低な扱いを受けて怒らない王族等居る筈が無いからだ。
(もしや……私と親密になって牢屋から普通の部屋に変えさせようと? いや、私の様な下っ端と仲良くなっても無理ですよ?!)
アマンダが狼狽えながらもマリと握手をすると、マリが笑顔のまま言う。
「アマンダさん、早速所望したいんだけど……いいかな!?」
「は、はい! な、なんでしょう……」
「この帝都で一番美味しいお酒とカステラを下さい!!」
「む、むり……はい?」
アマンダの呆けた顔に思わずメリーは苦笑したのであった。
多くの黒騎士団に守られたマリ達一行は、盗賊等に襲われる事も無く無事に帝都へと到着した。
道中、幾つかの村や町に寄ってから帝都に到着したマリの機嫌は最悪だ。
「ねぇ、メリーさん。 帝都は凄く活気があるんだね」
「左様ですね、陛下。 道中の村や町の人々は……まるで奴隷の様に働いていのに」
メリーの顔も歪む。
「やはり……また腐敗しましたか」
メリーがぼそりと呟いた言葉は、街並みを傍観するマリの耳には届かなかった。
馬車の窓から見えるゴルメディア帝国の帝都は分厚い黒檀の壁で囲まれており、中で住む帝国民達は平和に暮らせている様だ。 石造りの家々が並び、広場に続く石畳の道には露天や多くの市場で溢れていた。
帝国民達は皆笑顔だ。
綺麗な服を着て、楽しそうに買い物や仕事をしている。
道中の村や町の悲惨振り等、自分達には関係無いと言わんばかりの光景にマリは歯ぎしりをした。
「陛下、歯が傷みますよ?」
「うん、そうだね」
(なんだろう、この気持ち悪さは。 乙女小説で読んだ時はこんな落差が有る帝国とは描写されて無かったのに。 いや……エナさんとヘタレ皇子が帝国を奪い取る迄はこんな感じだったのかな)
もし、そうであればこの光景は変わらないだろう。 もうエナはこの世に居ないのだから。
馬車が暫く帝都を進むと、黒檀を惜しみ無く使用した立派な城が見えてきた。
実際は帝都に到着して、正門を過ぎた時点で遠くに見える程に大きかったのだがマリは町と帝都の落差でそれどころでは無かったのだ。
帝城の入り口に到着し、マリ達は馬車を降りる。 周囲には黒騎士団達と団長デランが待機していた。
デランが改まり、マリに初対面の時とは裏腹に優しい瞳で話し掛ける。
「到着早々でありますが、自分は先に向かい報告して参ります。 これよりは、帝城を守る近衛師団に護衛の任を任せないといけません。 私達がお守りするのは此処までとなりますが、道中女王陛下の護衛が出来た事光栄でした! 王族調停……ご武運をお祈りします。 皆、マリ女王陛下に敬礼!」
「「「「また飲みましょう!」」」」
デランが畏まった敬礼をするが、残念ながらこの道中で飲み仲間になってしまった黒騎士団達はマリに親しい友人の様な挨拶をした。
数千の黒騎士達と毎日飲み明かしたのはマリの良い思い出だ。
「おい?! お前達!! すみません……」
団長の命令を無視されマリに頭を下げるデランを見て、メリーは苦労人だなぁと少し優しい瞳で哀れむ。
「ふふ、ありがとう皆! また必ず飲もうね! デランさんも本当にありがとう、頑張るね!!」
マリは笑顔で黒騎士達に別れを告げ、報告を受けた近衛師団に連れられ帝城へと入っていった。
◆◇◆
「で……何でまた牢屋に?」
「何故でしょうか……? まだあのヘタレ皇子は到着してない筈ですし……」
何故かマリとメリーは帝城の牢屋に入れられていた。
最初は別々の牢屋に入れられていたのだが、メリーが普通に抜け出しマリの牢で何処からか出したテーブルや椅子等で牢屋を模様替えしている真っ最中である。
「メリーさんが色々と出すのに馴れてきてる自分がちょっと怖いかも。 あ、この紅茶美味しい」
「ふふ、それはようごさいました。 何でも馴れれば気にならないものです。 あ、絨毯を敷きますので足をすみません」
マリが両足を上げると、真っ黒の床がふわふわの赤い絨毯に変わる。
「なんと言う事でしょう! 匠の手により、無骨で固い石畳がふわふわの絨毯にー!」
「ふふ、それは何ですか? 面白い話し方ですね」
メリーはマリの笑顔に安堵する。
マリのこんな調子を見るのは本当に久し振りだ。 多くの貴族を処刑し、改革のせいで戦争まで起きた時のマリは……壊れない様に必死に作った女王を演じていた様にメリーは感じていた。
実際はその通りである。
エナの件からマリの精神は安定した。
エナに肯定された事、エナが己の命すら捨ててマリが目指す未来の方が幸せだと言ってもらえた事が起因している。
当然、エナを死なせてしまった事がマリの心を苦しめるが、エナの為にもルーデウスの為にも王国の為にも立ち止まっている暇等無いのだ。
「あはは、なんだろね~」
マリとメリーの穏やかな時間を、止める事も出来ずに見ていた、見張りの近衛師団の兵が声を荒げる。
「な、ななな、なぁ!? 一体何が起きたの?! 一瞬で黒檀の牢屋が豪華な部屋に!? 待って、そのシャンデリアは何処から出したの!?」
白い鎧を身に纏った女性の兵士が牢屋の柵にしがみつき、驚愕の声を上げた。
「お姉さん、お名前は?」
マリに問われ、一瞬警戒した女性は佇まいを直し名乗る。
「じ、自己紹介が遅れ申し訳ない!わ、私はマリ女王陛下が滞在中、この牢屋の見張りを命じられた近衛師団所属のユーリア フォル アマンダと申します! 滞在中、何かご所望が有れば何でも申し受ける様言われております!」
白兜を被っている為に顔がはっきり確認できなかったが、兜の隙間から茶髪が見えた。
(ふむ……陛下への扱いは最悪ですか、一応の配慮はして下さるのですね)
メリーに品定めされる様に見られているアマンダは身震いをする。
「初めまして、アマンダさん! エントン フォル マリです。 こっちのスーパーメイドはメリーさんです。 よろしくね!」
明るい笑顔でマリは牢屋越しにアマンダへ握手を求めた。
「は、はい。 よ、よろしくお願いします」
アマンダは心中でマリの狙いを考えていた。 この最悪で最低な扱いを受けて怒らない王族等居る筈が無いからだ。
(もしや……私と親密になって牢屋から普通の部屋に変えさせようと? いや、私の様な下っ端と仲良くなっても無理ですよ?!)
アマンダが狼狽えながらもマリと握手をすると、マリが笑顔のまま言う。
「アマンダさん、早速所望したいんだけど……いいかな!?」
「は、はい! な、なんでしょう……」
「この帝都で一番美味しいお酒とカステラを下さい!!」
「む、むり……はい?」
アマンダの呆けた顔に思わずメリーは苦笑したのであった。
18
お気に入りに追加
204
あなたにおすすめの小説
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる