[完結]転生したのは死が間近の女王様!? ~超可愛い弟が王になれるよう平凡な女王が抗う奮闘記~

秋刀魚妹子

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第41話 決戦前夜

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 ジャックとルーデウスが到着した時には、広場は地獄と化していた。

 兵士が次から次に空へと吹き飛び、地面には大斧や大剣で斬られた兵士達で溢れていた。

 「ぬはははははは! 血が騒ぐのぉ! そりゃそりゃそりゃそりゃぁぁ!」

 当然、吹き飛ぶ兵士達は敵ばかりである。 元重近衛団の老兵士達が小枝の様に振り回すのは大人程の大きさが有る大剣や大斧だ。 人間かどうかも怪しい。

 「ちょっ!? ジャックはん、あのお爺達はなんなん!? いきなり来たと思ったら劣勢だった状況を一瞬で塗り替えたんやけど?!」

 2人に気付いたメル子爵がパニクりながら聞いてくる。

 「「ははは……」」

 しかし、返ってきた返答は乾いた笑いだけだった。

 ◆◇◆

 「ぬはははは! それ! 逃げた犬や猫共を城壁の外まで追いやるぞ! 続けぇぇぇぇぇ!!」

 押し込まれ気味だった戦局は、たったの数時間で逆転した。

 元重近衛団の隊長は今や総大将の様に兵士達を引き連れ、西と東に別れ逃げ惑う敵を追い始めている。

 「本当に……凄まじいですね」

 ルーデウスが呟くと、周囲に立つ女貴族達が頷く。

 「まさか、エントン王国にまだこんな戦力が隠されていたとは……。 ですが、これなら立て直せるのでは?」

 ジャックの問いに返事をするのはメル子爵だ。

 「せやな~。 殿下のお話しが事実なら、明日まで堪えたら勝てるやろね。 でも……ホンマにええんですか? ルーデウス殿下」

 メル子爵が言いたい事は周囲の女貴族達が思う事だ。 こんなに圧倒的に押し返せたのなら、例えゴルメディア帝国が参戦しても援軍が来るまで何とかなるのではと思うのも無理は無い。
 
 「……姉上を信じましょう。 姉上がお考えの改革には、どのみちゴルメディア帝国に行かねばならぬそうですから」

 ルーデウスの確たる意思を確認したメル子爵は笑顔で頷く。 

 「……わかりましたわ。 ほな、私らも城壁まで押し返して敵を蹴落としに行きましょか~」

 メル子爵は女貴族達や傭兵達を連れて東の城壁に向かって走り出す。夜の篝火に照らされ、 傷だらけの黄金の鎧はまだ輝いていた。

 「まだ無理をさせますが、どうかよろしくお願いします」

 背中越しにメルは手を振って答える。

 「ルーデウス殿下、少しよろしいですか?」

 メル子爵達に頭を下げるルーデウスに話し掛けたのはイサミ子爵だ。

 「はい、なんでしょうイサミ子爵」

 「……ゴルメディア帝国に陛下が行けば、生きて帰れる可能性はほぼ皆無と思いますが」

 「失礼……。 イサミ子爵殿は何か御存知で?」

 話しに割って入ってきたジャックにイサミ子爵は眉をひそめるが、溜め息を漏らした後に口を開いた。

 「ふぅ……あの国は住む者にとっては良い国です。 しかし、余所者には地獄でしょう。 少なくとも、全てが上手く行った上で……陛下を救出するのは厳しいと思います。 先程のお話しに出ていたルカ大臣とやらが考えた計画は楽観視な所があります。 ゴルメディア帝国は皆さんが思っているよりも分厚く、そして強いです」

 イサミ子爵は片腕を強く掴み、うつむきながら早口に喋る。何処か後ろめたいものをルーデウスは感じていた。

 「ありがとうございます、イサミ子爵。ですが、決定は覆りません。 例えゴルメディア帝国が想定より強くとも為さねば成りません」

 ルーデウスの固い意思を確認したイサミ子爵はそれ以上何も反論はしなかった。

 「出過ぎた真似をしました、申し訳ありません。 それでは、私も西の城壁へと参ります。 いくら、あのご老人達が強くとも何か出来る事があるでしょうから」

 「進言感謝します、イサミさん。 後一晩、どうかよろしくお願いします」 

 一礼したイサミはその場に残っていた者達を連れて西の城壁へと向かっていった。

 残されたのはルーデウスとジャックのみだ。

 「殿下、予想外でしたが戦線を押し戻せましたな。 この後はいかがしますか?」

 ジャックの問いにルーデウスは南を真っ直ぐ見やり、返答する。

 「当然、南の城壁に向かいます。 其処で孤軍奮闘する騎士団が居る筈ですから。行きましょうジャック!」

 「御意」

 2人は広場から南の城壁へと向かう。

 今度は女王の影武者では無く、エントン王国の王子として。
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