15 / 231
第15話 亜人解放 その1
しおりを挟む
辺境伯爵と密談を終えたマリは客室で泥の様に眠り、朝になり館の外に出るとマリに向かって駆けてくる2人の姿があった。
「マリ様……おはよう」
猫耳獣人のミケルがペコリとお辞儀をする。 その愛くるしい姿に、マリの頬はゆるゆるだ。
「ちょっ……妹がすみません、マリ陛下。 おはよう……ございます」
まだ辿々しい鬼人のルキも可愛らしくて堪らない。
「おっはよーーー! 2人共、朝から可愛いねぇーーー!!! ぎゅー! むぎゅー! おめかしして、とっても可愛いし、格好いいわよ!」
マリは可愛い服を着たミケルとスーツを着たルキを抱きしめて頬擦りする。
「ふふ……マリ様、くすぐったい」
「ちょっ!? 待っ!! 許してー!」
喜ぶ妹と照れて逃げようとする兄を優しく撫でる。
「いよいよ今日だね~、長旅で疲れてると思うけど……もうすぐ家に帰れるからね」
「マリ様……さみしい?」
「勿論さみしいよ? でも、それより2人が亜人の皆が家に帰れる方が嬉しい」
「ミケル、陛下を困らしたらダメだぞ? それに、俺だって……」
ルキが何かを言い掛けていたが、メリーが来たことで会話は途切れてしまった。
「マリ陛下、おはようございます。 皆の準備が出来ました。 参りましょう」
「おはようメリーさん。 じゃあ、2人はキサラギさん達と居てね? 直ぐに出発するからね~」
昨晩、キサラギは亜人達の元から動く事は無かった。
まだ朝の挨拶も交わしておらず、遠目で亜人達を纏めてる恋人を少し寂しげにマリは見つめる。
(そっか……エルフの奴隷も沢山居たんだもんね。 知ってるエルフもそりゃ居るか……)
エルフの女性達と話すキサラギを見ると、何故か胸が痛んだ。
「陛下……?」
メリーに話し掛けられ、現実に引き戻される。
「んあ? あ、ごめんごめん。 行こっか」
マリはキサラギを目で追いながら、メリーと共に砦へと向かう。
長砦の向こう側、亜人達の領域に向けて。
◆◇◆
「マリ陛下、おはようございます。 昨晩は楽しい時間を下さり、感謝申し上げる」
砦には、鎧姿のルニア辺境伯爵が多くの兵達と待っていた。
「おはよう、ルニア辺境伯。 こちらこそありがとう、楽しかったわ。 ジャックもおはよう、準備は出来てる?」
「はっ! おはようございます陛下。 抜かり無く、亜人側へ送る宝等も運び込んでおります」
跪き報告をするジャックを一瞥し、伯爵や兵士達を見回す。
「ありがとうジャック。 では、これより亜人解放作戦を実行します。 亜人側の皆さんが警戒しない様に、ルニア辺境伯と兵達は砦で待機。 何があっても動かないこと」
「なっ!? マリ陛下?! それはなりませぬ! もし、陛下の身に何かあれば王国がゆらぎます」
ルニアが止めるが、マリの意思は固かった。
「ありがとう、ルニアさん。 でもね、ここが正念場なの。 長年、家族を友人を……奴隷にしてきた王国が許しを懇願できる……最初で最後のチャンスなの。それなら、私の命を掛けるだけの価値があるわ」
「マリ陛下は私とメリーが必ず守ります。 辺境伯爵殿は、どうか待機を」
マリの左右にジャックとメリーが並ぶ。
「ふふ、そうですわ。 必ずお守り致します。 私達の命に代えても」
「ぬぐ……了解した。 マリ陛下、昨晩の話を私はお受けします。 なので……無事でお戻りを」
「ありがとう、ルニアさん。 メリーさんとジャックもありがとう。 2人が一緒なら怖くないよ」
メリーとジャックの手を取り、マリは覚悟を決める。
(亜人側には、主人公の逆ハーレムに加わる4人の亜人がいる。 エルフ、鬼人、獣人、ドワーフ……英雄と呼ばれる4人の不評を買わなければ殺されはしない筈……大丈夫。 これを乗り切らないと、王国に未来は無い)
微かに震える手を、メリーとジャックは優しく握っていた。
◆◇◆
先頭をマリ、メリー、ジャック、後方に多くの亜人達を連れて長砦を抜ける。
その先の広場には、既に多くの亜人達が待ち構えていた。
以前から通達はしていたので、戦争にはならない筈だが亜人側には武装した兵士が大勢見える。
「ふー……メリーさん、ジャック。 先に伝えとくね……もし、私が危害を加えられても……手は出さないでね」
「「ダメです」」
即答で断られ、マリは目が点になる。
「ふえ……? え? いや、ダメだって」
「「いえいえ、ダメです」」
「えええぇぇー? だから、もしそれで亜人側と更に険悪になったらダメじゃん!」
マリが抗議するが、メリーとジャックは前を向いたまま淡々と答える。
「ですから、私とジャックは手出しはしません」
「そうです。 ですが、陛下が刺されるなら私が刺されます」
「マリ陛下が虐げられるなら、私が虐げられます」
マリは悟った。 2人は仕える主が酷い目に合うなら、執事長とメイド長の我等が受けるつもり等だと。
2人の固い意思にマリは困惑するばかりだった。
亜人側に大分近付いた時、メリーの元に1人のメイドが駆けてくる。
マリの知らない顔だ。
メリーに何か報告した後、煙の様に消えてしまった。
(え……!? 忍者? 忍者メイドなの!?)
マリが目を開いていると、メリーが深刻な顔でマリに話す。
「マリ陛下……報告です」
マリとジャックは身構えてメリーの言葉を待った。
「キサラギが消えました。 私のメイド暗部部隊が見失うとは……申し訳ございません」
メリーの言葉に、ジャックもマリも酷く驚いた。
「なっ!? メリーさん……メイド暗部部隊って何? え? そんなのあったの!?」
「「そっち!?」」
「マリ様……おはよう」
猫耳獣人のミケルがペコリとお辞儀をする。 その愛くるしい姿に、マリの頬はゆるゆるだ。
「ちょっ……妹がすみません、マリ陛下。 おはよう……ございます」
まだ辿々しい鬼人のルキも可愛らしくて堪らない。
「おっはよーーー! 2人共、朝から可愛いねぇーーー!!! ぎゅー! むぎゅー! おめかしして、とっても可愛いし、格好いいわよ!」
マリは可愛い服を着たミケルとスーツを着たルキを抱きしめて頬擦りする。
「ふふ……マリ様、くすぐったい」
「ちょっ!? 待っ!! 許してー!」
喜ぶ妹と照れて逃げようとする兄を優しく撫でる。
「いよいよ今日だね~、長旅で疲れてると思うけど……もうすぐ家に帰れるからね」
「マリ様……さみしい?」
「勿論さみしいよ? でも、それより2人が亜人の皆が家に帰れる方が嬉しい」
「ミケル、陛下を困らしたらダメだぞ? それに、俺だって……」
ルキが何かを言い掛けていたが、メリーが来たことで会話は途切れてしまった。
「マリ陛下、おはようございます。 皆の準備が出来ました。 参りましょう」
「おはようメリーさん。 じゃあ、2人はキサラギさん達と居てね? 直ぐに出発するからね~」
昨晩、キサラギは亜人達の元から動く事は無かった。
まだ朝の挨拶も交わしておらず、遠目で亜人達を纏めてる恋人を少し寂しげにマリは見つめる。
(そっか……エルフの奴隷も沢山居たんだもんね。 知ってるエルフもそりゃ居るか……)
エルフの女性達と話すキサラギを見ると、何故か胸が痛んだ。
「陛下……?」
メリーに話し掛けられ、現実に引き戻される。
「んあ? あ、ごめんごめん。 行こっか」
マリはキサラギを目で追いながら、メリーと共に砦へと向かう。
長砦の向こう側、亜人達の領域に向けて。
◆◇◆
「マリ陛下、おはようございます。 昨晩は楽しい時間を下さり、感謝申し上げる」
砦には、鎧姿のルニア辺境伯爵が多くの兵達と待っていた。
「おはよう、ルニア辺境伯。 こちらこそありがとう、楽しかったわ。 ジャックもおはよう、準備は出来てる?」
「はっ! おはようございます陛下。 抜かり無く、亜人側へ送る宝等も運び込んでおります」
跪き報告をするジャックを一瞥し、伯爵や兵士達を見回す。
「ありがとうジャック。 では、これより亜人解放作戦を実行します。 亜人側の皆さんが警戒しない様に、ルニア辺境伯と兵達は砦で待機。 何があっても動かないこと」
「なっ!? マリ陛下?! それはなりませぬ! もし、陛下の身に何かあれば王国がゆらぎます」
ルニアが止めるが、マリの意思は固かった。
「ありがとう、ルニアさん。 でもね、ここが正念場なの。 長年、家族を友人を……奴隷にしてきた王国が許しを懇願できる……最初で最後のチャンスなの。それなら、私の命を掛けるだけの価値があるわ」
「マリ陛下は私とメリーが必ず守ります。 辺境伯爵殿は、どうか待機を」
マリの左右にジャックとメリーが並ぶ。
「ふふ、そうですわ。 必ずお守り致します。 私達の命に代えても」
「ぬぐ……了解した。 マリ陛下、昨晩の話を私はお受けします。 なので……無事でお戻りを」
「ありがとう、ルニアさん。 メリーさんとジャックもありがとう。 2人が一緒なら怖くないよ」
メリーとジャックの手を取り、マリは覚悟を決める。
(亜人側には、主人公の逆ハーレムに加わる4人の亜人がいる。 エルフ、鬼人、獣人、ドワーフ……英雄と呼ばれる4人の不評を買わなければ殺されはしない筈……大丈夫。 これを乗り切らないと、王国に未来は無い)
微かに震える手を、メリーとジャックは優しく握っていた。
◆◇◆
先頭をマリ、メリー、ジャック、後方に多くの亜人達を連れて長砦を抜ける。
その先の広場には、既に多くの亜人達が待ち構えていた。
以前から通達はしていたので、戦争にはならない筈だが亜人側には武装した兵士が大勢見える。
「ふー……メリーさん、ジャック。 先に伝えとくね……もし、私が危害を加えられても……手は出さないでね」
「「ダメです」」
即答で断られ、マリは目が点になる。
「ふえ……? え? いや、ダメだって」
「「いえいえ、ダメです」」
「えええぇぇー? だから、もしそれで亜人側と更に険悪になったらダメじゃん!」
マリが抗議するが、メリーとジャックは前を向いたまま淡々と答える。
「ですから、私とジャックは手出しはしません」
「そうです。 ですが、陛下が刺されるなら私が刺されます」
「マリ陛下が虐げられるなら、私が虐げられます」
マリは悟った。 2人は仕える主が酷い目に合うなら、執事長とメイド長の我等が受けるつもり等だと。
2人の固い意思にマリは困惑するばかりだった。
亜人側に大分近付いた時、メリーの元に1人のメイドが駆けてくる。
マリの知らない顔だ。
メリーに何か報告した後、煙の様に消えてしまった。
(え……!? 忍者? 忍者メイドなの!?)
マリが目を開いていると、メリーが深刻な顔でマリに話す。
「マリ陛下……報告です」
マリとジャックは身構えてメリーの言葉を待った。
「キサラギが消えました。 私のメイド暗部部隊が見失うとは……申し訳ございません」
メリーの言葉に、ジャックもマリも酷く驚いた。
「なっ!? メリーさん……メイド暗部部隊って何? え? そんなのあったの!?」
「「そっち!?」」
17
お気に入りに追加
204
あなたにおすすめの小説
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる