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第13話 旅と恋と不穏の目
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マリは馬車に揺られながら、呆然と景色を見つめる。
(な……なんでか分からないけど、最低なお願いをしたら恋人が出来てしまった……)
キスをされた後、あまりの衝撃で赤面したままマリはベットに倒れてしまった。
マリは薄れる意識の中、血相を変えた部屋ジャック達が入って来る所で気絶したのだ。
(はぁー! どうしよう、なんであんな事に? いや、私があんなお願いをしたのが悪いんだけどね!? でも、まさか……でもでも私にはルーたんという推しが居るし……でも、キサラギさんイケメンなんだよなー! )
両手で顔を隠し、悶えるマリをメリーは冷静に見つめていた。
「マリ陛下、本当にお身体は大丈夫なのですか? 昨日目覚めた後に、また気絶されてるのですよ? 一度、ゆっくり休まれては……」
「くーーー!! え? あぁ……大丈夫だよメリーさん。 それに、3日も遅れてる。 早く皆を国に返してあげなきゃ」
マリの返答にメリーはため息を吐く。
「ちなみにマリ陛下、何度も聞きますが本当にキサラギが何かした訳では無いのですね?」
「えぇっ!? うん、キサラギさん。 うん、そうだね……大丈夫。 何も……何も無かった……よ?」
明らかにキョドるマリを見て、メリーは頭を抱える。
「分かりました……。では、もう何も聞きません。 ジャックにも……そう伝えておきますね」
メリーの口からジャックの名を聞くと、何故かマリの胸に痛みが走る。
(……っ!? あれ……なんで? なんで……ジャックには知られたくないって思った??)
全く身に覚えの無い感情に襲われる。
(昨日の……キス、ジャックには見られて無いよね……? ん? なんで気にする? ん~……なんかモヤモヤして気持ち悪い)
顔色の悪いマリをメリーが受け止めた。
「陛下っ!? 馬車を止めて! 今すぐに!!」
メリーは馬車を止めさせ、直ぐに簡易テントを張らせる。
マリが乗っていた馬車の後ろには、多くの兵と馬車が連なっていた。
そう、今は亜人達を奴隷から解放し故郷の国に返還しに向かっている道中なのだ。
亜人の国々とエントン王国の境界にある長砦、ガルーダ フォル ルニア辺境伯爵の領地へと向かっていた。
王都から辺境までは7日掛かり、中々の長旅だ。
まだ始まって1日目にして、女王の体調が優れないのを皆心配していた。
「マリ陛下! メリー、大丈夫か?!」
メリーが馬車から簡易テントへマリを移していると、後方からジャックとキサラギが走ってきた。
「我が主!! メリー、これを。 エルフの飲み薬です。 弱った身体に活力が戻ります」
「ジャック静かに、キサラギ感謝します。 陛下、飲めますか? 」
横たわるマリは、笑うが元気は無い。
「あはは……大丈夫だよ皆。 大袈裟だなぁ~……」
瓢箪に入れられた薬を含み飲み込む。
「これ、おいしっ!! ありがとうキサラギさん、ちょっと元気出たかも」
「それは良かった……無理をしないでくれ我が主」
イケメンエルフのキサラギがマリの頬を撫でる。
「ぴゃっ!?」
マリの顔が真っ赤に染まり、すかさずメリーとジャックがキサラギを引き離した。
「キサラギ! 本当に貴方は!!」
「おい、税務管殿。 次、気安く陛下に触れたらその首を跳ばすからな?」
メリーは怒り、ジャックに至っては殺気を放ちながらキサラギを睨み付ける。
「ちょっ、2人とも怖いよー? 大丈夫だからね? キサラギさんのお陰で元気になったんだから! もう平気……ありがとう」
「ふふ……お役に立てて何よりだよ」
見つめ合う2人を、メリーとジャックは怪訝な顔で見ていた。
◆◇◆
旅を再開して7日が経ち、ようやく目的地の辺境へと辿り着いた。
道中、マリの不調で休みながらであったが無事に着きメリー達は安堵する。
「なぁ、メリー。 マリ陛下は本当に大丈夫なのか?」
ルニア辺境伯爵の館へとマリの荷物を運びながら、ジャックがメリーに問う。
「私が診ている限り、問題は無い筈なの。 でも、陛下の体調は安定しない……本当なら王城から出ない方が良かったのよ……」
メリーは悲痛な顔で館を見やる。
今頃、マリはルニア伯爵の歓待を受けている事だろう。
「ここは俺がやる。 メリーは陛下の側に頼む。 それに、あの税務管殿も見張っておかないとな……」
「えぇ、お願いジャック。 キサラギは悪いエルフではない。 でも……陛下の心を乱すなら、少し考えないといけないわね……」
2人の視線の先には、他の亜人達と話すキサラギの姿があった。
もうすぐ家に帰れると説明をしているのだろう。まだ、解放された亜人達は人間を信用していない。
当然な事では有るが、亜人には亜人のキサラギが接するのが妥当なのだ。
「もし……陛下の体調が悪化し、黒確定したら……俺が始末をつける」
「そうね、その時は……お願いねジャック。 全てはマリ陛下の為に」
「陛下の為に」
マリは知らない。
自分の願いで恋人になったキサラギが、同じく大切なメリーとジャックに敵視され始めている事を。
(な……なんでか分からないけど、最低なお願いをしたら恋人が出来てしまった……)
キスをされた後、あまりの衝撃で赤面したままマリはベットに倒れてしまった。
マリは薄れる意識の中、血相を変えた部屋ジャック達が入って来る所で気絶したのだ。
(はぁー! どうしよう、なんであんな事に? いや、私があんなお願いをしたのが悪いんだけどね!? でも、まさか……でもでも私にはルーたんという推しが居るし……でも、キサラギさんイケメンなんだよなー! )
両手で顔を隠し、悶えるマリをメリーは冷静に見つめていた。
「マリ陛下、本当にお身体は大丈夫なのですか? 昨日目覚めた後に、また気絶されてるのですよ? 一度、ゆっくり休まれては……」
「くーーー!! え? あぁ……大丈夫だよメリーさん。 それに、3日も遅れてる。 早く皆を国に返してあげなきゃ」
マリの返答にメリーはため息を吐く。
「ちなみにマリ陛下、何度も聞きますが本当にキサラギが何かした訳では無いのですね?」
「えぇっ!? うん、キサラギさん。 うん、そうだね……大丈夫。 何も……何も無かった……よ?」
明らかにキョドるマリを見て、メリーは頭を抱える。
「分かりました……。では、もう何も聞きません。 ジャックにも……そう伝えておきますね」
メリーの口からジャックの名を聞くと、何故かマリの胸に痛みが走る。
(……っ!? あれ……なんで? なんで……ジャックには知られたくないって思った??)
全く身に覚えの無い感情に襲われる。
(昨日の……キス、ジャックには見られて無いよね……? ん? なんで気にする? ん~……なんかモヤモヤして気持ち悪い)
顔色の悪いマリをメリーが受け止めた。
「陛下っ!? 馬車を止めて! 今すぐに!!」
メリーは馬車を止めさせ、直ぐに簡易テントを張らせる。
マリが乗っていた馬車の後ろには、多くの兵と馬車が連なっていた。
そう、今は亜人達を奴隷から解放し故郷の国に返還しに向かっている道中なのだ。
亜人の国々とエントン王国の境界にある長砦、ガルーダ フォル ルニア辺境伯爵の領地へと向かっていた。
王都から辺境までは7日掛かり、中々の長旅だ。
まだ始まって1日目にして、女王の体調が優れないのを皆心配していた。
「マリ陛下! メリー、大丈夫か?!」
メリーが馬車から簡易テントへマリを移していると、後方からジャックとキサラギが走ってきた。
「我が主!! メリー、これを。 エルフの飲み薬です。 弱った身体に活力が戻ります」
「ジャック静かに、キサラギ感謝します。 陛下、飲めますか? 」
横たわるマリは、笑うが元気は無い。
「あはは……大丈夫だよ皆。 大袈裟だなぁ~……」
瓢箪に入れられた薬を含み飲み込む。
「これ、おいしっ!! ありがとうキサラギさん、ちょっと元気出たかも」
「それは良かった……無理をしないでくれ我が主」
イケメンエルフのキサラギがマリの頬を撫でる。
「ぴゃっ!?」
マリの顔が真っ赤に染まり、すかさずメリーとジャックがキサラギを引き離した。
「キサラギ! 本当に貴方は!!」
「おい、税務管殿。 次、気安く陛下に触れたらその首を跳ばすからな?」
メリーは怒り、ジャックに至っては殺気を放ちながらキサラギを睨み付ける。
「ちょっ、2人とも怖いよー? 大丈夫だからね? キサラギさんのお陰で元気になったんだから! もう平気……ありがとう」
「ふふ……お役に立てて何よりだよ」
見つめ合う2人を、メリーとジャックは怪訝な顔で見ていた。
◆◇◆
旅を再開して7日が経ち、ようやく目的地の辺境へと辿り着いた。
道中、マリの不調で休みながらであったが無事に着きメリー達は安堵する。
「なぁ、メリー。 マリ陛下は本当に大丈夫なのか?」
ルニア辺境伯爵の館へとマリの荷物を運びながら、ジャックがメリーに問う。
「私が診ている限り、問題は無い筈なの。 でも、陛下の体調は安定しない……本当なら王城から出ない方が良かったのよ……」
メリーは悲痛な顔で館を見やる。
今頃、マリはルニア伯爵の歓待を受けている事だろう。
「ここは俺がやる。 メリーは陛下の側に頼む。 それに、あの税務管殿も見張っておかないとな……」
「えぇ、お願いジャック。 キサラギは悪いエルフではない。 でも……陛下の心を乱すなら、少し考えないといけないわね……」
2人の視線の先には、他の亜人達と話すキサラギの姿があった。
もうすぐ家に帰れると説明をしているのだろう。まだ、解放された亜人達は人間を信用していない。
当然な事では有るが、亜人には亜人のキサラギが接するのが妥当なのだ。
「もし……陛下の体調が悪化し、黒確定したら……俺が始末をつける」
「そうね、その時は……お願いねジャック。 全てはマリ陛下の為に」
「陛下の為に」
マリは知らない。
自分の願いで恋人になったキサラギが、同じく大切なメリーとジャックに敵視され始めている事を。
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