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第11話 裏切り者に居場所は無いよ
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マリは、メリーを連れてリアン侯爵の待つ城の広場へとやって来た。
広場には、件の商人達がニヤニヤと笑いながら集まっておりマリは既に憂鬱であった。
(はぁ……してやったりって顔してるけど、君達の子供達皆死んでるんだよ?)
まだ商人達は知らない。
亜人達を輸送させ、帝国で安全に暮らさせようとした息子達が全員死亡している事を。
「女王陛下、ご苦労頂き感謝致します」
マリに気付いたリアン侯爵が跪き、臣下の礼を取る。
遠くで作業していた女爵達も、その場で跪き頭を垂れた。
商人達も跪き頭を垂れるが、その顔はにやけたままだ。
「王国の為に働いている者の為なら、苦労はありません。 ひくっ……それで? 命じた事に関して、報告を聞いても? リアン侯爵」
顔を上げるリアンは笑顔だ。
その笑顔が、商人達のしてきた事を知らない無知な笑顔だったら良かったが……現実は酷い。
「はっ! 此処に居る者達は、亜人を解放するのに反対だった者達でございますが私の説得により全ての亜人奴隷を解放する事となりました。 これにより、我が王国の奴隷は全て解放されたことになります」
リアンが報告をする最中、マリの心中はどんどん冷えていった。
冷酷に、ひたすら冷たく。
「そうですよね? 商人の皆さん!」
リアンの呼び掛けに、商人達は頭を垂れたまま返答する。
勿論ですと、直ぐに解放しますと。
(本当に……吐き気がしますね。 ルーたんが治める王国に、貴女達は必要ありません)
マリの覚悟が決まり、粛清が始まった。
◆◇◆
「成る程、良くやりましたねリアン侯爵。 はぁ……リアン侯爵……私にする報告はそれでいいのですね?」
褒められ、更に笑顔になったリアンの顔が凍りつく。
「ありがたき……え? あの、陛下。 どういう意味でしょうか……」
「これが最後です。 貴女が私にすべき報告は先程の内容で良いのですね?」
女王の冷たい声に、リアン侯爵は冷や汗を流す。
「……も、勿論でございます」
リアン侯爵の最後の返答を聞き、マリは羊皮紙をリアンの前に放る。
「こ、これは? ……なっ!?」
「メリー、衛兵達を動かしなさい」
「はっ……衛兵! この者達を捕らえよ!」
メリーの号令でリアンの城に隠れていた衛兵達が、商人達を捕らえる。
「リアン侯爵……いえ、リアン。 お前は長年、奴隷にされた亜人達を帝国に横流しをして財を成していましたね。 そして、息の掛かった其処の商人達!! お前達が手配し、帝国に送らせていた亜人達は全ての確保しました。 護衛の傭兵達も……お前達の息子達も全て死んだ。 この後、あの世で悔い息子達に謝るがいい!」
商人達から悲鳴が上がり、マリへの罵詈雑言を撒き散らす。
何故そんな酷い事をと。
自分達は、多くの亜人達を奴隷として売り捌いていた癖に。
マリの商人達を見る目は、冷えきっていた。
マリが宣言する中、リアンは崩れ落ちている。
まさか、長年隠し続けた己の悪しき所業をこんなボンボンの女王に見破られていたなんて……と。
「わ、私は長年! 王国の為に! ずっと、ずっと仕えて参りました。 どうか、どうか、私には御慈悲を!」
泣きながら叫ぶリアンに、マリは素っ気なく答えた。
「最初、貴女に会った時は……優しそうで仲良くできるかもって思ったわ。 でもね……この王国には裏切り者の居場所は無いよ」
「あ……あ……あぁぁぁ!」
叫ぶリアンを衛兵が連行していく。
「其処の女爵達、此方へ」
唐突の事に事態に戸惑っていた女爵達は、マリの前まで来て跪く。
「私のメイド長メリーから報告は受けています。 貴女達が不穏に感じた事をきちんと言ってくれたお陰で、多くの亜人の皆さんを助けれました。 本当にありがとう」
女王に頭を下げられて、パニックになる女爵達。 しかし、驚くには早かった。
「そして、此度の働きを評価し。 貴女達を子爵に陞爵します。 今までリアン元侯爵が治めていた領土を分け、統治なさい。 分からない事は、先達の貴族達に教わる事。 ただ、この城と付近の領土だけ王家が預かります。 以上! 頑張ってね!」
女爵からいきなり子爵に陞爵され、パニックは加速するがどの子爵達も笑顔だった。
本来、この世界の女爵は領土も与えられず名ばかりの貴族だった。
それが、突然仕事を与えられ。
必死に働くと陞爵される。
正に前代未聞の行いだった。
これにより、新たに子爵に陞爵された6名は長きに渡り王国へ忠誠を尽くすだろう。
特に、マリ女王に対する忠誠心は高まるばかりだ。
「じゃあ、またね~! 何かあったら、メリーさんや他の貴族にちゃんと言うんだよ~」
粛清が終わったマリはフレンドリーに子爵達に接しながら、リアンの城へと入っていった。
◆◇◆
「うぷ……はぁ、はぁ、はぁ……」
城に入るや否や、マリの精神状態は限界だった。
「陛下!? 大丈夫でございますか……? 本日はもう王城に戻られた方が良いのでは……」
メリーに心配されるが、マリは歩みを止めない。
「メリーさん……リアンの息子を連れてきて。 早く」
城の広間に有る城主の椅子に座り、項垂れる。
(はぁ……キツいなぁ。 でも、これも全てはルーたんが王になった時の為。 仕方ない、仕方ないの。 しっかりして、私。 推しの為に、可愛いルーたんの為に、血を流すって決めたでしょ?)
「女王陛下、リアンの息子アーサーを連れて参りました。 事情は……説明してあります」
思考に耽っていると、メリーがリアンと同じ金髪のアーサーを連れてきた。
年はルーデウスと同じ14ぐらいだ。
「女王陛下……御呼びとの事で参上、致しました」
容姿はイケメンだが、今は悲壮感でいっぱいだ。
「アーサー、堅苦しい挨拶は無しでいきましょう。 貴方の母が犯した罪、結末は聞きましたね?」
アーサーの肩が震える。
リアンが行った罪は、即死刑と成る程に重い。
共に暮らしていた家族は息子のアーサーだけで、死罪はその息子迄に及ぶ。
「……はい、甘んじで死刑を受けます」
「……分かりました。 ちなみに、ちなみに聞くけど先日私のルーデウスに会ったわよね? どう思った?」
急にフレンドリーなマリに、アーサーは面をくらい。
メリーは頭を抱えていた。
「え……? あ、はい……ルーデウス殿下は大変に聡明で判断力と意思の強さをとても感じました」
「うんうん、そっかそっか~。 だよね、分かる! それな! で、話し何だけど……この城と付近の領土を治める勉強しよっか」
「!? いえ、ですが私の母は……それに私は男です」
アーサーが戸惑うのも無理はない。
大罪を犯した母の息子であるアーサーが死刑どころか、男が居ない貴族にすると言うのだ。
「それはね、新しく男爵っていう爵位を作るから大丈夫。 貴方が汚名を注ぐ機会を与えます。 どうする? やるの? やらないの?」
「陛下……はぁ、お好きにされて下さいませ」
頭を抱えたメリーから許可も出た事で、マリは更にアーサーに決断を迫る。
「貴方が、この世界初の男爵になるの! アーサーは悪い事してないし、母親のしていた事を知らなかったんでしょ? やってみなよ! そして、いつか弟のルーデウスを支えて欲しい」
「マリ陛下……?」
反応するメリーを余所に、アーサーは決断をした。
「慈悲深き女王陛下、そのお話し慎んでお受け致します! 生涯を掛け、ダルナ家の名誉を取り戻し忠誠を尽くす事を誓います」
アーサーが跪き、誓いの宣言をする。
「その言葉が偽りでない事を願います。 もう……裏切らないでね? じゃあ、私はこれで帰るから。 領土を分けて統治する子爵達とも仲良くする事。 分からない事は、先達の貴族達に聞きなさい。 じゃあね」
跪くアーサーを置いて、マリ達は馬車に乗り込む。
「もう! マリ陛下、決めた計画を変えるのは控えて下さいませ。 流石の私も、手配が……陛下? マリ陛下!?」
メリーの問いにマリが返答する事は無かった。
マリは馬車に乗ると同時に意識を絶ってしまっていたのだ。
極度のストレスにより、マリの心は壊れ始める。
広場には、件の商人達がニヤニヤと笑いながら集まっておりマリは既に憂鬱であった。
(はぁ……してやったりって顔してるけど、君達の子供達皆死んでるんだよ?)
まだ商人達は知らない。
亜人達を輸送させ、帝国で安全に暮らさせようとした息子達が全員死亡している事を。
「女王陛下、ご苦労頂き感謝致します」
マリに気付いたリアン侯爵が跪き、臣下の礼を取る。
遠くで作業していた女爵達も、その場で跪き頭を垂れた。
商人達も跪き頭を垂れるが、その顔はにやけたままだ。
「王国の為に働いている者の為なら、苦労はありません。 ひくっ……それで? 命じた事に関して、報告を聞いても? リアン侯爵」
顔を上げるリアンは笑顔だ。
その笑顔が、商人達のしてきた事を知らない無知な笑顔だったら良かったが……現実は酷い。
「はっ! 此処に居る者達は、亜人を解放するのに反対だった者達でございますが私の説得により全ての亜人奴隷を解放する事となりました。 これにより、我が王国の奴隷は全て解放されたことになります」
リアンが報告をする最中、マリの心中はどんどん冷えていった。
冷酷に、ひたすら冷たく。
「そうですよね? 商人の皆さん!」
リアンの呼び掛けに、商人達は頭を垂れたまま返答する。
勿論ですと、直ぐに解放しますと。
(本当に……吐き気がしますね。 ルーたんが治める王国に、貴女達は必要ありません)
マリの覚悟が決まり、粛清が始まった。
◆◇◆
「成る程、良くやりましたねリアン侯爵。 はぁ……リアン侯爵……私にする報告はそれでいいのですね?」
褒められ、更に笑顔になったリアンの顔が凍りつく。
「ありがたき……え? あの、陛下。 どういう意味でしょうか……」
「これが最後です。 貴女が私にすべき報告は先程の内容で良いのですね?」
女王の冷たい声に、リアン侯爵は冷や汗を流す。
「……も、勿論でございます」
リアン侯爵の最後の返答を聞き、マリは羊皮紙をリアンの前に放る。
「こ、これは? ……なっ!?」
「メリー、衛兵達を動かしなさい」
「はっ……衛兵! この者達を捕らえよ!」
メリーの号令でリアンの城に隠れていた衛兵達が、商人達を捕らえる。
「リアン侯爵……いえ、リアン。 お前は長年、奴隷にされた亜人達を帝国に横流しをして財を成していましたね。 そして、息の掛かった其処の商人達!! お前達が手配し、帝国に送らせていた亜人達は全ての確保しました。 護衛の傭兵達も……お前達の息子達も全て死んだ。 この後、あの世で悔い息子達に謝るがいい!」
商人達から悲鳴が上がり、マリへの罵詈雑言を撒き散らす。
何故そんな酷い事をと。
自分達は、多くの亜人達を奴隷として売り捌いていた癖に。
マリの商人達を見る目は、冷えきっていた。
マリが宣言する中、リアンは崩れ落ちている。
まさか、長年隠し続けた己の悪しき所業をこんなボンボンの女王に見破られていたなんて……と。
「わ、私は長年! 王国の為に! ずっと、ずっと仕えて参りました。 どうか、どうか、私には御慈悲を!」
泣きながら叫ぶリアンに、マリは素っ気なく答えた。
「最初、貴女に会った時は……優しそうで仲良くできるかもって思ったわ。 でもね……この王国には裏切り者の居場所は無いよ」
「あ……あ……あぁぁぁ!」
叫ぶリアンを衛兵が連行していく。
「其処の女爵達、此方へ」
唐突の事に事態に戸惑っていた女爵達は、マリの前まで来て跪く。
「私のメイド長メリーから報告は受けています。 貴女達が不穏に感じた事をきちんと言ってくれたお陰で、多くの亜人の皆さんを助けれました。 本当にありがとう」
女王に頭を下げられて、パニックになる女爵達。 しかし、驚くには早かった。
「そして、此度の働きを評価し。 貴女達を子爵に陞爵します。 今までリアン元侯爵が治めていた領土を分け、統治なさい。 分からない事は、先達の貴族達に教わる事。 ただ、この城と付近の領土だけ王家が預かります。 以上! 頑張ってね!」
女爵からいきなり子爵に陞爵され、パニックは加速するがどの子爵達も笑顔だった。
本来、この世界の女爵は領土も与えられず名ばかりの貴族だった。
それが、突然仕事を与えられ。
必死に働くと陞爵される。
正に前代未聞の行いだった。
これにより、新たに子爵に陞爵された6名は長きに渡り王国へ忠誠を尽くすだろう。
特に、マリ女王に対する忠誠心は高まるばかりだ。
「じゃあ、またね~! 何かあったら、メリーさんや他の貴族にちゃんと言うんだよ~」
粛清が終わったマリはフレンドリーに子爵達に接しながら、リアンの城へと入っていった。
◆◇◆
「うぷ……はぁ、はぁ、はぁ……」
城に入るや否や、マリの精神状態は限界だった。
「陛下!? 大丈夫でございますか……? 本日はもう王城に戻られた方が良いのでは……」
メリーに心配されるが、マリは歩みを止めない。
「メリーさん……リアンの息子を連れてきて。 早く」
城の広間に有る城主の椅子に座り、項垂れる。
(はぁ……キツいなぁ。 でも、これも全てはルーたんが王になった時の為。 仕方ない、仕方ないの。 しっかりして、私。 推しの為に、可愛いルーたんの為に、血を流すって決めたでしょ?)
「女王陛下、リアンの息子アーサーを連れて参りました。 事情は……説明してあります」
思考に耽っていると、メリーがリアンと同じ金髪のアーサーを連れてきた。
年はルーデウスと同じ14ぐらいだ。
「女王陛下……御呼びとの事で参上、致しました」
容姿はイケメンだが、今は悲壮感でいっぱいだ。
「アーサー、堅苦しい挨拶は無しでいきましょう。 貴方の母が犯した罪、結末は聞きましたね?」
アーサーの肩が震える。
リアンが行った罪は、即死刑と成る程に重い。
共に暮らしていた家族は息子のアーサーだけで、死罪はその息子迄に及ぶ。
「……はい、甘んじで死刑を受けます」
「……分かりました。 ちなみに、ちなみに聞くけど先日私のルーデウスに会ったわよね? どう思った?」
急にフレンドリーなマリに、アーサーは面をくらい。
メリーは頭を抱えていた。
「え……? あ、はい……ルーデウス殿下は大変に聡明で判断力と意思の強さをとても感じました」
「うんうん、そっかそっか~。 だよね、分かる! それな! で、話し何だけど……この城と付近の領土を治める勉強しよっか」
「!? いえ、ですが私の母は……それに私は男です」
アーサーが戸惑うのも無理はない。
大罪を犯した母の息子であるアーサーが死刑どころか、男が居ない貴族にすると言うのだ。
「それはね、新しく男爵っていう爵位を作るから大丈夫。 貴方が汚名を注ぐ機会を与えます。 どうする? やるの? やらないの?」
「陛下……はぁ、お好きにされて下さいませ」
頭を抱えたメリーから許可も出た事で、マリは更にアーサーに決断を迫る。
「貴方が、この世界初の男爵になるの! アーサーは悪い事してないし、母親のしていた事を知らなかったんでしょ? やってみなよ! そして、いつか弟のルーデウスを支えて欲しい」
「マリ陛下……?」
反応するメリーを余所に、アーサーは決断をした。
「慈悲深き女王陛下、そのお話し慎んでお受け致します! 生涯を掛け、ダルナ家の名誉を取り戻し忠誠を尽くす事を誓います」
アーサーが跪き、誓いの宣言をする。
「その言葉が偽りでない事を願います。 もう……裏切らないでね? じゃあ、私はこれで帰るから。 領土を分けて統治する子爵達とも仲良くする事。 分からない事は、先達の貴族達に聞きなさい。 じゃあね」
跪くアーサーを置いて、マリ達は馬車に乗り込む。
「もう! マリ陛下、決めた計画を変えるのは控えて下さいませ。 流石の私も、手配が……陛下? マリ陛下!?」
メリーの問いにマリが返答する事は無かった。
マリは馬車に乗ると同時に意識を絶ってしまっていたのだ。
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