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第8話 可愛い兄妹と初めての姉弟喧嘩
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「姉上! お怪我をされたと聞きました! 大丈夫ですか?!」
ルーデウスがエルフのキサラギと共に医務室へと駆けてきた。
マリの頭に巻かれた血の滲む包帯を見て、ルーデウスの血の気が引く。
「あはは、ルーたん大丈夫だよ~。 こんなの平気、ありがとう」
笑うマリにルーデウスは怒る。
「平気じゃないですよ! 急に王としての執務の勉強を始めさせたと思ったら、怪我をして帰ってくるなんて! 」
ルーデウスの初めて怒る顔を見て、さすがのマリも反省……
(くっふ! 推しの怒り顔貴重! 天然記念物に指定しなきゃ!!)
……していなかった。
「おいおい、我が主。 笑みがこぼれてるぞ?」
キサラギの指摘に、ルーデウスが更に顔を真っ赤にして激怒する。
「姉上ぇぇぇぇぇ!!?」
「ごめぇぇぇぇん!!」
2人のやり取りを、治療を受けていたミケルとその兄がなんとも言えない顔で見ていた。
◆◇◆
怒りの収まらないルーデウスが医務室を出ていき、マリは追い掛けて出ていった。
医務室には、治療をしているメリーと保護した兄妹にキサラギの4人だけだ。
「治療が終わりましたよ。 どうですか? まだ痛みますか?」
メリーに問い掛けられた兄妹は黙って首を横に振る。
「ふー……では、キサラギ。 すみませんが、少しの間2人を頼みます。 私は……頭を冷やしてきますので」
「……了解だよ。 任せてくれ」
普段の様子と違うメリーに気付いたキサラギは、ふたつ返事で了承する。
メリーが医務室を出ていき、兄妹はキサラギを警戒して近付こうとはしない。
「ん~……やぁ、亜人の同胞よ。 私はキサラギ、見ての通りエルフだ。 この国で税務管をやっている。 君の名は? 少年」
「……ルキ。 こっちは妹のミケルだ……です」
妹のミケルは黙って頭を下げる。
「よろしくねルキ。 で……その角は自分で折ったのかい?」
「なっ!? ……なんでそれを」
驚き警戒したルキは、頭を抑えながら後ろに下がる。
「警戒しなくて大丈夫だよ、こう見えて長生きしてるからね。 我が主……マリ女王陛下は君が鬼人だと知ってるのかな?」
首を振るルキに、キサラギはため息を吐く。
「ふー……よし、我が主が戻ったら話をするよ。 君達が、自分の国に帰れる様に」
「ありがとう……ござます」
兄に続いて妹のミケルも頭を下げ、感謝を伝えるのをキサラギは笑顔で受けた。
キサラギは考える。
きっと、あのマリ陛下なら直ぐに動いてくれるだろうと。
◆◇◆
暫くすると。
半べそをかいているマリと、疲れた顔のメリーが戻ってきた。
「お帰り2人共。 我が主は色々と平気かい?」
「うーーー! キサラギさん、ルーたんが自室に引きこもっちゃったのー! どうしよー! 嫌われるー!!」
「はいはい、大丈夫ですよマリ陛下。 1日経てば、殿下も許して下さいますよ」
半べそのマリはメリーに優しく撫でられながら、意気消沈している。
キサラギが話すタイミングを窺っていると、猫耳獣人のミケルがトテトテとマリに近付き徐に頭を撫で始めた。
「女……王様。 いたくなーい……いたくなーい」
天使の様な可愛さに、マリの感情は天元突破する。
「ミ、ミケルちゃぁぁぁぁんっ! ありがとー! 私頑張るーーー!!」
自分よりも小さなミケルに抱き付き泣く姿は、キサラギにも兄のルキにも衝撃を与えた。
(ふふふ、私の主は本当に面白いね)
「ミケルが……喋った!? 無理矢理、奴隷にされてから……1度も喋らなかったのに……」
「ふふ、獣人は良き人の匂いに敏感だからね。 ミケルちゃんには分かるのさ、我が主が信用たる人間だと」
ルキの心に罪悪感と期待が生まれる。
この人間の女王は、亜人達を虐げ奴隷とした奴等とは違うんじゃないかと。
そう思うと、石を投げて怪我を負わせてしまった事に対する罪悪感で押し潰されそうになる。
ルキは意を決して、笑顔で妹を抱き締めるマリの元へと歩くのであった。
「あ、あの女王……陛下様」
ルキが近付こうとしただけで、怖いメイドのメリーが身構え一瞬空気がピリつく。
「むむむー! 可愛いぃーー! あ、兄! もう怪我は平気? メリーさんが良くしてくれた?」
ミケルに頬擦りするマリがルキに気付き、怪我を心配する。
自分は頭に血の滲む包帯をしているのに。
「大丈夫だ……です。 その、俺はルキだ……です。 本当にごめん……なさい」
ルキの泣きそうな謝罪に、マリは抱き締めて答える。
「私こそ、ごめんなさい。 私の国が、本当にごめんね。 もう2度と、奴隷なんかにさせないから! キサラギさん、税務管に聞く事じゃないけど何か良い方法が無い?」
エルフのキサラギを当たり前に頼るマリに、長く生きてきたキサラギは自身も気付かない内にマリに惹かれていた。
「ふふ、勿論有るよ? 我が主よ。 その前に質問だ。 先の会議にて奴隷解放作戦を任せた者が居ると言っていたが進歩はどうなってるんだい?」
「え? あ~、メリーさん。 任せてる侯爵のリアンさんから報告は?」
「報告はきておりますが、殆んど進んでおりません。 奴隷を労働力としている商会等が激しく抵抗している様です」
「あらま。 で? リアンさんから、対策と実施内容は何て?」
メリーはマリのイラつきに気付き、報告の羊皮紙を慌てて確認するがその様な事は書かれてなかった。
「確認する限りは……何も」
マリは頭を抱える。
(嘘でしょ? 出来ませんでしたって報告してるだけ? めちゃくちゃ無能やん! あちゃー、こりゃ人選ミスったな)
頭を抱えるマリをメリーは心配しながら恐る恐る聞く。
「あの……マリ陛下?」
「メリーさん、明日リアン侯爵に会いに行きます。 明日中で奴隷解放作戦を終わらさないと爵位没収って伝えて。 この国に、口だけの者は要らない」
メリーは、普段と全然違うマリの冷酷な瞳に背筋を凍らす。
「……かしこまりました」
一礼したメリーが出ていくのを確認してから、マリは普段通りに戻る。
「ごめんね、キサラギさん。 明日には終わらせるから……で? それが2人に関係が有るんだよね?」
「スゴいね……あのメリーが怯えていたよ、我が主。それに、ありがとう……亜人を代表して礼を言うよ。 なに、解放した亜人達を自国に帰す時に2人も一緒に帰してやりたいのさ」
マリはキサラギの話に首を傾げる。
「ん……? いや、まだ出来てないし。 お礼には早いし、そもそも私の国が悪いからね。 それに……何故2人? ミケルちゃんは獣人だけど、ルキは人間だよね??」
マリに視線を送られたルキは、身体を震わせた。
「我が主、ルキは人間では無い。 角を自ら折った……鬼人だ。 亜人だよ」
「えぇぇぇ!? 自分で折った!? なんで? 」
「え? あ、そこかい? 恐らく、人間の振りをしないと生きられなかったのだろう」
マリはルキの頭を優しく撫でる。
「頑張ったんだね、ルキ。 ミケルちゃんの為に頑張ったんだね」
「ん……なぁ、女王様。 俺が……鬼人なの知って怖く無いの……か、です?」
「え? なんで?? 私は、ルキもミケルも今日会ったばかりだけど……好きよ?」
ルキの隣にミケルもトテトテとやって来て、マリは2人を同時に撫で回し堪能する。
ルキは目を見開き、頬に涙が伝う。
鬼人と知っても、怖がられずに好きと言われた。
少年ルキは、この時からマリに恋をした。
「はぁ……はぁ……ねぇ、3人でお風呂入ろ? ね? 良いよね? 洗ってあげるから! 大丈夫大丈夫、何もしないよ? たくさん洗ってあげる! 先っちょ、先っちょだけだからー!」
突然息を荒げるマリを見て、その恋を少し後悔していたが。
人間の女王と、獣人と鬼人の3人が仲良くじゃれ合う。
その光景を、キサラギは微笑ましく見ていた。
ルーデウスがエルフのキサラギと共に医務室へと駆けてきた。
マリの頭に巻かれた血の滲む包帯を見て、ルーデウスの血の気が引く。
「あはは、ルーたん大丈夫だよ~。 こんなの平気、ありがとう」
笑うマリにルーデウスは怒る。
「平気じゃないですよ! 急に王としての執務の勉強を始めさせたと思ったら、怪我をして帰ってくるなんて! 」
ルーデウスの初めて怒る顔を見て、さすがのマリも反省……
(くっふ! 推しの怒り顔貴重! 天然記念物に指定しなきゃ!!)
……していなかった。
「おいおい、我が主。 笑みがこぼれてるぞ?」
キサラギの指摘に、ルーデウスが更に顔を真っ赤にして激怒する。
「姉上ぇぇぇぇぇ!!?」
「ごめぇぇぇぇん!!」
2人のやり取りを、治療を受けていたミケルとその兄がなんとも言えない顔で見ていた。
◆◇◆
怒りの収まらないルーデウスが医務室を出ていき、マリは追い掛けて出ていった。
医務室には、治療をしているメリーと保護した兄妹にキサラギの4人だけだ。
「治療が終わりましたよ。 どうですか? まだ痛みますか?」
メリーに問い掛けられた兄妹は黙って首を横に振る。
「ふー……では、キサラギ。 すみませんが、少しの間2人を頼みます。 私は……頭を冷やしてきますので」
「……了解だよ。 任せてくれ」
普段の様子と違うメリーに気付いたキサラギは、ふたつ返事で了承する。
メリーが医務室を出ていき、兄妹はキサラギを警戒して近付こうとはしない。
「ん~……やぁ、亜人の同胞よ。 私はキサラギ、見ての通りエルフだ。 この国で税務管をやっている。 君の名は? 少年」
「……ルキ。 こっちは妹のミケルだ……です」
妹のミケルは黙って頭を下げる。
「よろしくねルキ。 で……その角は自分で折ったのかい?」
「なっ!? ……なんでそれを」
驚き警戒したルキは、頭を抑えながら後ろに下がる。
「警戒しなくて大丈夫だよ、こう見えて長生きしてるからね。 我が主……マリ女王陛下は君が鬼人だと知ってるのかな?」
首を振るルキに、キサラギはため息を吐く。
「ふー……よし、我が主が戻ったら話をするよ。 君達が、自分の国に帰れる様に」
「ありがとう……ござます」
兄に続いて妹のミケルも頭を下げ、感謝を伝えるのをキサラギは笑顔で受けた。
キサラギは考える。
きっと、あのマリ陛下なら直ぐに動いてくれるだろうと。
◆◇◆
暫くすると。
半べそをかいているマリと、疲れた顔のメリーが戻ってきた。
「お帰り2人共。 我が主は色々と平気かい?」
「うーーー! キサラギさん、ルーたんが自室に引きこもっちゃったのー! どうしよー! 嫌われるー!!」
「はいはい、大丈夫ですよマリ陛下。 1日経てば、殿下も許して下さいますよ」
半べそのマリはメリーに優しく撫でられながら、意気消沈している。
キサラギが話すタイミングを窺っていると、猫耳獣人のミケルがトテトテとマリに近付き徐に頭を撫で始めた。
「女……王様。 いたくなーい……いたくなーい」
天使の様な可愛さに、マリの感情は天元突破する。
「ミ、ミケルちゃぁぁぁぁんっ! ありがとー! 私頑張るーーー!!」
自分よりも小さなミケルに抱き付き泣く姿は、キサラギにも兄のルキにも衝撃を与えた。
(ふふふ、私の主は本当に面白いね)
「ミケルが……喋った!? 無理矢理、奴隷にされてから……1度も喋らなかったのに……」
「ふふ、獣人は良き人の匂いに敏感だからね。 ミケルちゃんには分かるのさ、我が主が信用たる人間だと」
ルキの心に罪悪感と期待が生まれる。
この人間の女王は、亜人達を虐げ奴隷とした奴等とは違うんじゃないかと。
そう思うと、石を投げて怪我を負わせてしまった事に対する罪悪感で押し潰されそうになる。
ルキは意を決して、笑顔で妹を抱き締めるマリの元へと歩くのであった。
「あ、あの女王……陛下様」
ルキが近付こうとしただけで、怖いメイドのメリーが身構え一瞬空気がピリつく。
「むむむー! 可愛いぃーー! あ、兄! もう怪我は平気? メリーさんが良くしてくれた?」
ミケルに頬擦りするマリがルキに気付き、怪我を心配する。
自分は頭に血の滲む包帯をしているのに。
「大丈夫だ……です。 その、俺はルキだ……です。 本当にごめん……なさい」
ルキの泣きそうな謝罪に、マリは抱き締めて答える。
「私こそ、ごめんなさい。 私の国が、本当にごめんね。 もう2度と、奴隷なんかにさせないから! キサラギさん、税務管に聞く事じゃないけど何か良い方法が無い?」
エルフのキサラギを当たり前に頼るマリに、長く生きてきたキサラギは自身も気付かない内にマリに惹かれていた。
「ふふ、勿論有るよ? 我が主よ。 その前に質問だ。 先の会議にて奴隷解放作戦を任せた者が居ると言っていたが進歩はどうなってるんだい?」
「え? あ~、メリーさん。 任せてる侯爵のリアンさんから報告は?」
「報告はきておりますが、殆んど進んでおりません。 奴隷を労働力としている商会等が激しく抵抗している様です」
「あらま。 で? リアンさんから、対策と実施内容は何て?」
メリーはマリのイラつきに気付き、報告の羊皮紙を慌てて確認するがその様な事は書かれてなかった。
「確認する限りは……何も」
マリは頭を抱える。
(嘘でしょ? 出来ませんでしたって報告してるだけ? めちゃくちゃ無能やん! あちゃー、こりゃ人選ミスったな)
頭を抱えるマリをメリーは心配しながら恐る恐る聞く。
「あの……マリ陛下?」
「メリーさん、明日リアン侯爵に会いに行きます。 明日中で奴隷解放作戦を終わらさないと爵位没収って伝えて。 この国に、口だけの者は要らない」
メリーは、普段と全然違うマリの冷酷な瞳に背筋を凍らす。
「……かしこまりました」
一礼したメリーが出ていくのを確認してから、マリは普段通りに戻る。
「ごめんね、キサラギさん。 明日には終わらせるから……で? それが2人に関係が有るんだよね?」
「スゴいね……あのメリーが怯えていたよ、我が主。それに、ありがとう……亜人を代表して礼を言うよ。 なに、解放した亜人達を自国に帰す時に2人も一緒に帰してやりたいのさ」
マリはキサラギの話に首を傾げる。
「ん……? いや、まだ出来てないし。 お礼には早いし、そもそも私の国が悪いからね。 それに……何故2人? ミケルちゃんは獣人だけど、ルキは人間だよね??」
マリに視線を送られたルキは、身体を震わせた。
「我が主、ルキは人間では無い。 角を自ら折った……鬼人だ。 亜人だよ」
「えぇぇぇ!? 自分で折った!? なんで? 」
「え? あ、そこかい? 恐らく、人間の振りをしないと生きられなかったのだろう」
マリはルキの頭を優しく撫でる。
「頑張ったんだね、ルキ。 ミケルちゃんの為に頑張ったんだね」
「ん……なぁ、女王様。 俺が……鬼人なの知って怖く無いの……か、です?」
「え? なんで?? 私は、ルキもミケルも今日会ったばかりだけど……好きよ?」
ルキの隣にミケルもトテトテとやって来て、マリは2人を同時に撫で回し堪能する。
ルキは目を見開き、頬に涙が伝う。
鬼人と知っても、怖がられずに好きと言われた。
少年ルキは、この時からマリに恋をした。
「はぁ……はぁ……ねぇ、3人でお風呂入ろ? ね? 良いよね? 洗ってあげるから! 大丈夫大丈夫、何もしないよ? たくさん洗ってあげる! 先っちょ、先っちょだけだからー!」
突然息を荒げるマリを見て、その恋を少し後悔していたが。
人間の女王と、獣人と鬼人の3人が仲良くじゃれ合う。
その光景を、キサラギは微笑ましく見ていた。
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