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第7話 Let's 街へ視察へ
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メリーに連れられ、マリは初めて王城を出た。
「ふわー! メリーさん、凄いね! とっても大きな街だ~」
まるで他人事のマリにメリーは苦笑いだ。
「ふふ、全てマリ陛下が治めてる街ですからね~? あ、馬車から顔を出すと危ないですよ!」
マリは大はしゃぎで、豪華な馬車から顔を出し風景を楽しむ。
道行く人々が足を止め、王城から出てきた馬車を見ていた。
「大丈夫だもーん! 皆、おはよーー! 女王のマリでーす! よろしくねー!」
気さくに手を振ってくる新たな女王に戸惑いながら振り返す民達。
「なんか活気があるね~。 メリーさん、税率の軽減から結構景気は変わってる?」
正面に座るメリーが羊皮紙をめくりながら答える。
「すっっっごく良くなってますね。 消費も売りも、全て上がってますよ? そのお陰で、隣国の国とも活発に様々な輸入がされ豊かになっています」
答えながら、メリーは外を見る。
「マリ陛下……貴女は素晴らしい女王です。 自信を持って下さい。 ほんの7日前までは、うつむき……生きていくのすら厳しかった民達があんなに笑って道を歩いてるのです。 だから……元気を出して下さいませ」
メリーはマリを決して見ず、懇願するように伝える。
空元気のマリに。
多くの元貴族を処刑させた罪悪感で潰れそうなマリ陛下に。
「メリーさん……ありがとう。 大丈夫よ、私は決して止まらない。 膿を出し、この王国が永く、長く繁栄出来るように血を流すと決めたから。あはは……ごめんね。 あ! 其処の広場で止めてー!」
メリーは強がるマリを心配そうに見ていた。
当然、マリが平気な筈が無い。
ほんの7日前までは、普通のOLだったのだ。
昨日メリーから、粛清対象の貴族全員に謀反の証拠と帝国への奴隷横流しの証拠が見つかった為、処刑のサイン求められた時からマリの様子はおかしかった。
震える手でサインをし、メリーが執務室から出ていった後……嘔吐が止まらず夜まで吐き続けていた。
弟の為だと、王国の為だと、民の為だと言い聞かせながら酒を煽るように飲み潰れた。
心配したルーデウスにウザ絡みをして、夜添い寝をしてもらっていたのだ。
マリの心が壊れないように。
「かしこまりました。 すみません、止めて下さい」
馬車が止まり、街の広場に降り立つ。
どうやら、この広場は市場の様だ。
凄い数の店が出ており、活気が凄い。
「わー! 凄い! メリーさん、買い食いしよう! ね? ね? お願い!」
女王がメイドに買い食いを頼む姿を見られるのは世界広しといえど、このエントン王国だけだろう。
「ふふ、良いですよ。お好きなのを買われて下さい」
「よし! 決定! メリーさん、行こう行こう! パン! あ~……あのお肉も美味しそう!」
目移りしながら買い食いを始める女王に、周囲の民達は苦笑いで見ていた。
◆◇◆
視察の名目で買い食いをしていると、マリの側に1人の子供がトテトテと近寄ってきた。
「んぐんぐ、ごくんっ! ぷはぁ! おろ? どうしたの? 迷子?」
市場には多くの民がごった返しているせいで、側にメリーは居なかった。
近寄ってきた子供はずっとマリを見つめてくる。
「んー、お父さんかお母さんは一緒じゃないの?」
腰を下げて、同じ視線で会話を試みる。
その時にマリはようやく気付いた。
近寄ってきた子供は、女の子で猫耳が生えている。
短い茶髪で、全身汚れているが間違いなく美少女だ。
エルフのキサラギとは別の亜人、獣人だった。
着ている服もボロボロで、足も裸足だ。
「ちょっ!? 貴女、裸足じゃない! 大丈夫? ちょっと待ってね」
ずっと見つめてくる猫耳少女にマリはドレスの端を千切り、少女の足に巻く。
少女の足は石で切れ、怪我だらけだったからだ。
「ん……」
呻く少女にマリは更に慌てる。
「あ! 痛かった?! ごめんね、メリーさんが居たらちゃんと手当てしてくれるのに!」
メリーが側に居ないのは、人混みを勝手に進みはぐれたマリが悪いのだが……。
足に布を巻いた後……事件が起きた。
ヒュ――ガッ!
「いっっっっったぁ!!」
しゃがんでいたマリの頭に石が直撃する。
マリが女王らしくない悲鳴を上げた。
「おい! お前、妹になにしてやがる! 離れろ!!」
石を投げてきたのは、猫耳少女の兄の様だ。
「ちょ! 其処の兄! 妹ちゃんに当たったらどうすんの!!」
マリは頭から血を流しているが、そんな事はお構い無しに少年に激怒する。
「うるさい! ミケル、早く兄ちゃんの所に来い! おい、お前離れろ!」
ミケルという名の少女の兄は、獣人では無く普通の人間の様だ。 短い赤髪で額に古傷がある。
少女と同じく衣服も身体も汚れているので、同じく劣悪な環境で生活しているのだろう。
「離れません! 傷口から菌が入ったら病気になるでしょ! ミケルちゃん。 メイドのメリーさんと合流出来たら、手当てしてもらえるから一緒に居てくれる?」
マリがミケルに優しく話しかけると、ミケルは頷きマリを抱き締めた。
周囲の人混みも事態に気付き、頭から血を流す女王を見て大騒ぎになり始める。
「陛下! マリ陛下!? あぁ、血が! 誰に、誰にやられたのですかっ!!!!」
その騒ぎでようやくマリを見つけたメリーが凄まじい速度で走ってきて、マリの血を見た瞬間に顔が豹変した。
まるで般若だ。
周囲の民達が怯え、この事態の犯人へ指を差す。
その先にいるのは、ミケルの兄だ。
「お前か、お前がマリ女王陛下に危害を加えたのか! こんなに優しい陛下を! 許さない! 許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない! 今すぐその命を――メリーさん! ダメ!!! 止めなさい!」
メリーが見えない速度で、少年の首を手刀で刈ろうとした瞬間マリが叫んだ。
「へ……陛下? 何故お止めに……」
怯える少年の首近くには、メリーの手刀が迫っている。
後数秒遅かったら、少年の首は飛んでいただろう。
「私の事は問題無い。 その少年を罰するつもりも無い! この少女も少年も傷だらけなの。 手当てをしたげて、必要なら王城に連れて帰ります」
「ですが! この者は……」
「しつこい! 私は民の為にいる女王です! ならば、心配すべきは私の街にボロボロの子供達が居る事です! メリー、今すぐに動きなさい!」
凄まじい気迫のマリに押され、メリーは殺意を抑える。
「申し訳ございません……かしこまりました。 此処では手当ては難しいです、直ぐに王城の医務室に」
メリーが手配をしに行くのを見送った後、マリは少年の元へ向かう。
「メリーさんがごめんね、大丈夫だった? 妹ちゃんも、兄も直ぐに手当てしたげるからね」
怯える少年を抱き締め、優しく語りかける。
「お前……貴女は女王なん……ですか? なら、妹を……ミケルを王城に連れて行って大丈夫なの、ですだ?」
「あはは、慣れない敬語なんて使わなくていいよ? 大丈夫、さっきも言ったでしょ? 私はこの王国に住む民の為の女王よ? 種族もそんなの関係無い」
近寄ってきたミケルを優しく撫でる。
その光景を見ていた民達は、ようやく確信した。
この国は変わるのだと。
重い税も変わり、亜人への差別も減りつつある。 近いうちに奴隷制度も撤廃される。
きっと、凄く良い方向へ変わるのだ。
それから、馬車を引き連れたメリーがマリと浮浪者だった兄妹を回収し王城に向かうのを民達は敬愛を胸に見送っていた。
「マリ陛下!! 貴女は本当に! いつもいつもガミガミガミガミ――
王城に戻ってから、怪我を見つかったマリがジャックに死ぬ程怒られたのは御愛嬌だ。
「ふわー! メリーさん、凄いね! とっても大きな街だ~」
まるで他人事のマリにメリーは苦笑いだ。
「ふふ、全てマリ陛下が治めてる街ですからね~? あ、馬車から顔を出すと危ないですよ!」
マリは大はしゃぎで、豪華な馬車から顔を出し風景を楽しむ。
道行く人々が足を止め、王城から出てきた馬車を見ていた。
「大丈夫だもーん! 皆、おはよーー! 女王のマリでーす! よろしくねー!」
気さくに手を振ってくる新たな女王に戸惑いながら振り返す民達。
「なんか活気があるね~。 メリーさん、税率の軽減から結構景気は変わってる?」
正面に座るメリーが羊皮紙をめくりながら答える。
「すっっっごく良くなってますね。 消費も売りも、全て上がってますよ? そのお陰で、隣国の国とも活発に様々な輸入がされ豊かになっています」
答えながら、メリーは外を見る。
「マリ陛下……貴女は素晴らしい女王です。 自信を持って下さい。 ほんの7日前までは、うつむき……生きていくのすら厳しかった民達があんなに笑って道を歩いてるのです。 だから……元気を出して下さいませ」
メリーはマリを決して見ず、懇願するように伝える。
空元気のマリに。
多くの元貴族を処刑させた罪悪感で潰れそうなマリ陛下に。
「メリーさん……ありがとう。 大丈夫よ、私は決して止まらない。 膿を出し、この王国が永く、長く繁栄出来るように血を流すと決めたから。あはは……ごめんね。 あ! 其処の広場で止めてー!」
メリーは強がるマリを心配そうに見ていた。
当然、マリが平気な筈が無い。
ほんの7日前までは、普通のOLだったのだ。
昨日メリーから、粛清対象の貴族全員に謀反の証拠と帝国への奴隷横流しの証拠が見つかった為、処刑のサイン求められた時からマリの様子はおかしかった。
震える手でサインをし、メリーが執務室から出ていった後……嘔吐が止まらず夜まで吐き続けていた。
弟の為だと、王国の為だと、民の為だと言い聞かせながら酒を煽るように飲み潰れた。
心配したルーデウスにウザ絡みをして、夜添い寝をしてもらっていたのだ。
マリの心が壊れないように。
「かしこまりました。 すみません、止めて下さい」
馬車が止まり、街の広場に降り立つ。
どうやら、この広場は市場の様だ。
凄い数の店が出ており、活気が凄い。
「わー! 凄い! メリーさん、買い食いしよう! ね? ね? お願い!」
女王がメイドに買い食いを頼む姿を見られるのは世界広しといえど、このエントン王国だけだろう。
「ふふ、良いですよ。お好きなのを買われて下さい」
「よし! 決定! メリーさん、行こう行こう! パン! あ~……あのお肉も美味しそう!」
目移りしながら買い食いを始める女王に、周囲の民達は苦笑いで見ていた。
◆◇◆
視察の名目で買い食いをしていると、マリの側に1人の子供がトテトテと近寄ってきた。
「んぐんぐ、ごくんっ! ぷはぁ! おろ? どうしたの? 迷子?」
市場には多くの民がごった返しているせいで、側にメリーは居なかった。
近寄ってきた子供はずっとマリを見つめてくる。
「んー、お父さんかお母さんは一緒じゃないの?」
腰を下げて、同じ視線で会話を試みる。
その時にマリはようやく気付いた。
近寄ってきた子供は、女の子で猫耳が生えている。
短い茶髪で、全身汚れているが間違いなく美少女だ。
エルフのキサラギとは別の亜人、獣人だった。
着ている服もボロボロで、足も裸足だ。
「ちょっ!? 貴女、裸足じゃない! 大丈夫? ちょっと待ってね」
ずっと見つめてくる猫耳少女にマリはドレスの端を千切り、少女の足に巻く。
少女の足は石で切れ、怪我だらけだったからだ。
「ん……」
呻く少女にマリは更に慌てる。
「あ! 痛かった?! ごめんね、メリーさんが居たらちゃんと手当てしてくれるのに!」
メリーが側に居ないのは、人混みを勝手に進みはぐれたマリが悪いのだが……。
足に布を巻いた後……事件が起きた。
ヒュ――ガッ!
「いっっっっったぁ!!」
しゃがんでいたマリの頭に石が直撃する。
マリが女王らしくない悲鳴を上げた。
「おい! お前、妹になにしてやがる! 離れろ!!」
石を投げてきたのは、猫耳少女の兄の様だ。
「ちょ! 其処の兄! 妹ちゃんに当たったらどうすんの!!」
マリは頭から血を流しているが、そんな事はお構い無しに少年に激怒する。
「うるさい! ミケル、早く兄ちゃんの所に来い! おい、お前離れろ!」
ミケルという名の少女の兄は、獣人では無く普通の人間の様だ。 短い赤髪で額に古傷がある。
少女と同じく衣服も身体も汚れているので、同じく劣悪な環境で生活しているのだろう。
「離れません! 傷口から菌が入ったら病気になるでしょ! ミケルちゃん。 メイドのメリーさんと合流出来たら、手当てしてもらえるから一緒に居てくれる?」
マリがミケルに優しく話しかけると、ミケルは頷きマリを抱き締めた。
周囲の人混みも事態に気付き、頭から血を流す女王を見て大騒ぎになり始める。
「陛下! マリ陛下!? あぁ、血が! 誰に、誰にやられたのですかっ!!!!」
その騒ぎでようやくマリを見つけたメリーが凄まじい速度で走ってきて、マリの血を見た瞬間に顔が豹変した。
まるで般若だ。
周囲の民達が怯え、この事態の犯人へ指を差す。
その先にいるのは、ミケルの兄だ。
「お前か、お前がマリ女王陛下に危害を加えたのか! こんなに優しい陛下を! 許さない! 許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない! 今すぐその命を――メリーさん! ダメ!!! 止めなさい!」
メリーが見えない速度で、少年の首を手刀で刈ろうとした瞬間マリが叫んだ。
「へ……陛下? 何故お止めに……」
怯える少年の首近くには、メリーの手刀が迫っている。
後数秒遅かったら、少年の首は飛んでいただろう。
「私の事は問題無い。 その少年を罰するつもりも無い! この少女も少年も傷だらけなの。 手当てをしたげて、必要なら王城に連れて帰ります」
「ですが! この者は……」
「しつこい! 私は民の為にいる女王です! ならば、心配すべきは私の街にボロボロの子供達が居る事です! メリー、今すぐに動きなさい!」
凄まじい気迫のマリに押され、メリーは殺意を抑える。
「申し訳ございません……かしこまりました。 此処では手当ては難しいです、直ぐに王城の医務室に」
メリーが手配をしに行くのを見送った後、マリは少年の元へ向かう。
「メリーさんがごめんね、大丈夫だった? 妹ちゃんも、兄も直ぐに手当てしたげるからね」
怯える少年を抱き締め、優しく語りかける。
「お前……貴女は女王なん……ですか? なら、妹を……ミケルを王城に連れて行って大丈夫なの、ですだ?」
「あはは、慣れない敬語なんて使わなくていいよ? 大丈夫、さっきも言ったでしょ? 私はこの王国に住む民の為の女王よ? 種族もそんなの関係無い」
近寄ってきたミケルを優しく撫でる。
その光景を見ていた民達は、ようやく確信した。
この国は変わるのだと。
重い税も変わり、亜人への差別も減りつつある。 近いうちに奴隷制度も撤廃される。
きっと、凄く良い方向へ変わるのだ。
それから、馬車を引き連れたメリーがマリと浮浪者だった兄妹を回収し王城に向かうのを民達は敬愛を胸に見送っていた。
「マリ陛下!! 貴女は本当に! いつもいつもガミガミガミガミ――
王城に戻ってから、怪我を見つかったマリがジャックに死ぬ程怒られたのは御愛嬌だ。
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