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第六章 赤髪のクウネル編
第184話 第2回お母さんと私の質問ターイム
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◆黒髪のクウSide◆
「ありがとう、もう大丈夫よ」
母はようやく泣き止み、クウは照れながら離れる。
「ん、なら良かったよ……その、あはは」
「クウちゃんは優しいね……。 そうだ! 火事を消さなきゃ。 ちょっと離れててね」
母から黒色の靄が溢れ出すと、周囲の眷属達も一斉に後退して距離をとり始めた。
「え? なに? なにが起きるの?」
「よいしょっ! 暴食の食卓!!」
母が両手を燃え盛る家に向けると、一瞬で家が元に戻りクウは目を見開いて驚く。
倒壊した瓦礫どころか焼けた屋根も、真っ黒な壁も、空を覆う黒い煙すら跡形もなく消えたのだ。
「……は? ……え?」
復元等と云うそんな次元では無く、火事が起きたという事自体が消えてしまったかのようだった。
クウが驚いている間に、周囲の眷属達は何事も無かった様に普段の生活に戻り消防士達も撤収を始めた。
すると、1匹の消防士がクウを見つめて立ち止まる。
「あ……多分、私がぶん殴った消防士かも」
クウが謝罪の気持ちを込めて会釈をすると、許してくれたのか直ぐに消防車に乗り込みそのまま去った。
「本当にすみませんでしたー!」
走り去る消防車に謝っていると、エプロンを付けた眷属が何やら近寄り奇声を上げる。
「ゴルギャ、ゴルギャギャギャギャ」
「あ、田所さん。 本当にお世話になりました、ありがとうございます!」
「ゴルギャギャ~」
田所は気にするなと云わんばかりに触手を振って、直ぐ隣の家に向かう。 玄関には田所の子供なのか、小さな丸い眷属が跳ね回っていた。
「ん……? あの小さな眷属見たことあるぞ? 何処だっけ? ダメだ、思い出せん」
「ふ~~、クウちゃんお待たせ。 家に入って休みましょ、お母さんもう身体も精神もクタクタよ~」
母が放り投げた買い物袋を回収し戻って来た。 クウは首を傾げながら返事をし、母と共に自宅へと戻る。
「ん、わかったよお母さん」
「……大丈夫?」
「大丈夫、ちょっと思い出せないだけだから」
◆◇◆
クウと母が家の中に入ると本当に全てが元に戻っており、台所にも行ってみると飛び散ったホルモンの後も無く綺麗なままだった。
クウと母は居間の椅子に座り一息つく。
「良かった~……。 もう、二度とホルモンは焼かないぞ! ねぇ、お母さん。 火事で倒壊した家を戻したのはどうやったの?」
「あらあら、えっと~……さっきのはお母さんの権能なんだけど、多分クウちゃんも使えるようになるわよ?」
「え?! 本当に!?」
「ふふっ、本当よ~。 なんたって、クウちゃんはお母さんの娘なんだもん」
「いや、えっと……うん、照れるやん」
喧嘩し、仲直り出来た後に改めて娘だと言われたクウは顔を赤くし俯いた。
「照れるクウちゃんも可愛いわねえ♪」
「や、やめてー! で、で?! 権能ってなに!?」
「はいはい、えっとね~……権能は専門の神が使う専用スキル的な? 創造神なら万物を創れるし、軍神なら自分の軍隊を創れるのね」
母からの説明を聞き、クウは納得する。
「なるへそね。 じゃあ暴食の邪神のお母さんは食べる専用スキルが有るってことか」
「ええ、そうよ。 暴食の権能は、全てを食べる事。 それは物だけじゃないの。 時間や概念、記憶や事実もね」
「すっっご! え、じゃあさっきの火事は……」
「火事が起きた事実と、時間を食べたの。 だから、無かった事になったのよ」
母の言葉にクウは驚き椅子から立ち上がった。
「待って、待って! ってことは、その権能を私が使えるようになったら……巨人の祖父と両親が死んだ事実も無かった事に出来るってこと?!」
興奮するクウは気付かない。
母が少し表情を曇らせた後に、寂しそうに微笑むのを。
「……ごめんなさい、期待させたわね。 時間が経過し過ぎたのは無理なの」
「……そっか。 そうだよね、そんな……都合良くいかないよね」
クウは自分でも驚く程に落胆し、力無く椅子へと腰掛けた。
「それでも、この権能を使用できる様になったら便利なのは事実よ? 誰かの死を無かった事にするのはまだまだ無理だけどね」
「確かに! ちなみに、その権能はどうやって覚えるの?」
「あら? もう、クウちゃんには切っ掛けになるプレゼントを上げたわよ? ほら、暴食の大口」
クウはモロの住処である洞窟近くの湖で放ったスキルの事を思い出す。
「あ、あぁー! あれか、いや危険すぎて無理だよ。 一回だけ使ったけど、湖の水が全部消えたし私のFPも空になったから普段使いするのは無理かな~」
「ふふ♪ 田所さんの息子君が喚んでもらたって大喜びしてたから、きっと嬉しすぎて我を忘れちゃったのね」
母の言葉に、先程見た小さな眷属を思い出したクウは手を叩いて納得した。
「そうだ! あの時の口だけお化け、さっきのあの子か! 思い出したよー! あれ? 待てよ? でも、暴食の大口の鑑定結果では暴食の邪神の口を召喚する的な説明文じゃなかったっけ?」
「あってるわよ? 眷属達は、お母さんの一部だから。 正確には、お母さんの底無しの空腹を和らげる為に眷属達の胃袋とお母さんは繋がってるの。 だから、暴食の大口を使用すると眷属の誰かが召喚される仕組みね」
「ほー……なるへそね。 じゃあ、その暴食の大口をたくさん使えば出来る事が増える感じ?」
「概ねあってるわ~。 それと、もっとたくさん食べて強くならないとね」
クウは母からの説明を一通り聞き、元の世界に戻った時にやるべき事を見つけ必ず使えるようになると意気込む。
本当にその権能を使いこなせる様になれば、大切な誰かを失わないで済むからである。
「あいあいさー! 向こうに戻ったら使ってみるよ。 そっかぁ、自分で食べて強化もしないといけないし暴食の大口も使わないといけないのか、大変だな」
「ふふ、ゆっくりね。 そうだ! 昨日の続き……聞いてくれるかしら? お昼食べながらでいいから」
「ん、もちろんだよ~。 それと……昨日はごめんなさい」
「そんな! いいのよ、お母さんの伝え方が悪かったの。 でも……仲直りできて良かった」
優しく微笑む母を見て、クウも嬉しくなり笑った。
「うん、私も仲直り出来て良かったよお母さん」
クウはまだ気付かない。
自分の何かが変えられている事に。
「ありがとう、もう大丈夫よ」
母はようやく泣き止み、クウは照れながら離れる。
「ん、なら良かったよ……その、あはは」
「クウちゃんは優しいね……。 そうだ! 火事を消さなきゃ。 ちょっと離れててね」
母から黒色の靄が溢れ出すと、周囲の眷属達も一斉に後退して距離をとり始めた。
「え? なに? なにが起きるの?」
「よいしょっ! 暴食の食卓!!」
母が両手を燃え盛る家に向けると、一瞬で家が元に戻りクウは目を見開いて驚く。
倒壊した瓦礫どころか焼けた屋根も、真っ黒な壁も、空を覆う黒い煙すら跡形もなく消えたのだ。
「……は? ……え?」
復元等と云うそんな次元では無く、火事が起きたという事自体が消えてしまったかのようだった。
クウが驚いている間に、周囲の眷属達は何事も無かった様に普段の生活に戻り消防士達も撤収を始めた。
すると、1匹の消防士がクウを見つめて立ち止まる。
「あ……多分、私がぶん殴った消防士かも」
クウが謝罪の気持ちを込めて会釈をすると、許してくれたのか直ぐに消防車に乗り込みそのまま去った。
「本当にすみませんでしたー!」
走り去る消防車に謝っていると、エプロンを付けた眷属が何やら近寄り奇声を上げる。
「ゴルギャ、ゴルギャギャギャギャ」
「あ、田所さん。 本当にお世話になりました、ありがとうございます!」
「ゴルギャギャ~」
田所は気にするなと云わんばかりに触手を振って、直ぐ隣の家に向かう。 玄関には田所の子供なのか、小さな丸い眷属が跳ね回っていた。
「ん……? あの小さな眷属見たことあるぞ? 何処だっけ? ダメだ、思い出せん」
「ふ~~、クウちゃんお待たせ。 家に入って休みましょ、お母さんもう身体も精神もクタクタよ~」
母が放り投げた買い物袋を回収し戻って来た。 クウは首を傾げながら返事をし、母と共に自宅へと戻る。
「ん、わかったよお母さん」
「……大丈夫?」
「大丈夫、ちょっと思い出せないだけだから」
◆◇◆
クウと母が家の中に入ると本当に全てが元に戻っており、台所にも行ってみると飛び散ったホルモンの後も無く綺麗なままだった。
クウと母は居間の椅子に座り一息つく。
「良かった~……。 もう、二度とホルモンは焼かないぞ! ねぇ、お母さん。 火事で倒壊した家を戻したのはどうやったの?」
「あらあら、えっと~……さっきのはお母さんの権能なんだけど、多分クウちゃんも使えるようになるわよ?」
「え?! 本当に!?」
「ふふっ、本当よ~。 なんたって、クウちゃんはお母さんの娘なんだもん」
「いや、えっと……うん、照れるやん」
喧嘩し、仲直り出来た後に改めて娘だと言われたクウは顔を赤くし俯いた。
「照れるクウちゃんも可愛いわねえ♪」
「や、やめてー! で、で?! 権能ってなに!?」
「はいはい、えっとね~……権能は専門の神が使う専用スキル的な? 創造神なら万物を創れるし、軍神なら自分の軍隊を創れるのね」
母からの説明を聞き、クウは納得する。
「なるへそね。 じゃあ暴食の邪神のお母さんは食べる専用スキルが有るってことか」
「ええ、そうよ。 暴食の権能は、全てを食べる事。 それは物だけじゃないの。 時間や概念、記憶や事実もね」
「すっっご! え、じゃあさっきの火事は……」
「火事が起きた事実と、時間を食べたの。 だから、無かった事になったのよ」
母の言葉にクウは驚き椅子から立ち上がった。
「待って、待って! ってことは、その権能を私が使えるようになったら……巨人の祖父と両親が死んだ事実も無かった事に出来るってこと?!」
興奮するクウは気付かない。
母が少し表情を曇らせた後に、寂しそうに微笑むのを。
「……ごめんなさい、期待させたわね。 時間が経過し過ぎたのは無理なの」
「……そっか。 そうだよね、そんな……都合良くいかないよね」
クウは自分でも驚く程に落胆し、力無く椅子へと腰掛けた。
「それでも、この権能を使用できる様になったら便利なのは事実よ? 誰かの死を無かった事にするのはまだまだ無理だけどね」
「確かに! ちなみに、その権能はどうやって覚えるの?」
「あら? もう、クウちゃんには切っ掛けになるプレゼントを上げたわよ? ほら、暴食の大口」
クウはモロの住処である洞窟近くの湖で放ったスキルの事を思い出す。
「あ、あぁー! あれか、いや危険すぎて無理だよ。 一回だけ使ったけど、湖の水が全部消えたし私のFPも空になったから普段使いするのは無理かな~」
「ふふ♪ 田所さんの息子君が喚んでもらたって大喜びしてたから、きっと嬉しすぎて我を忘れちゃったのね」
母の言葉に、先程見た小さな眷属を思い出したクウは手を叩いて納得した。
「そうだ! あの時の口だけお化け、さっきのあの子か! 思い出したよー! あれ? 待てよ? でも、暴食の大口の鑑定結果では暴食の邪神の口を召喚する的な説明文じゃなかったっけ?」
「あってるわよ? 眷属達は、お母さんの一部だから。 正確には、お母さんの底無しの空腹を和らげる為に眷属達の胃袋とお母さんは繋がってるの。 だから、暴食の大口を使用すると眷属の誰かが召喚される仕組みね」
「ほー……なるへそね。 じゃあ、その暴食の大口をたくさん使えば出来る事が増える感じ?」
「概ねあってるわ~。 それと、もっとたくさん食べて強くならないとね」
クウは母からの説明を一通り聞き、元の世界に戻った時にやるべき事を見つけ必ず使えるようになると意気込む。
本当にその権能を使いこなせる様になれば、大切な誰かを失わないで済むからである。
「あいあいさー! 向こうに戻ったら使ってみるよ。 そっかぁ、自分で食べて強化もしないといけないし暴食の大口も使わないといけないのか、大変だな」
「ふふ、ゆっくりね。 そうだ! 昨日の続き……聞いてくれるかしら? お昼食べながらでいいから」
「ん、もちろんだよ~。 それと……昨日はごめんなさい」
「そんな! いいのよ、お母さんの伝え方が悪かったの。 でも……仲直りできて良かった」
優しく微笑む母を見て、クウも嬉しくなり笑った。
「うん、私も仲直り出来て良かったよお母さん」
クウはまだ気付かない。
自分の何かが変えられている事に。
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