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第167話 母との喧嘩
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「いやぁ……そりゃ邪神認定されるよ、お母さん」
「えーーー? でもぉ、代わりに新しく創造した最下級神の眷属達を住まわせて誤魔化したのよ? 最高神にバレて滅茶苦茶怒られたけどね~」
まるでイタズラがバレた子供のように笑う暴食の邪神にクウネルは苦笑いをするしか無い。
「あはは……ダメやん。 ……直ぐにバレたならダメやん。 ん? もしかして、この間来た田所さんや外にいるのがその眷属なの?」
「そうよ~♪ 私の創造する眷属は、何故か皆あんな見た目になるのよね~。 邪神に堕ちる前はそんな事無かったんだけどね~」
「ふ~ん……じゃあ、今居るこの世界はお母さんの管理してた異世界って事なの? でも、この家もそうだけど……外の街並みも完全に地球だよね?」
「ふふ♪ クウちゃんは、よく周囲を観察してるのね。 でも、残念。 お母さんが管理してた世界はもう無いの。 邪神戦争の時にね……。 自然豊かな世界だったのだけど」
暴食の邪神は寂しげに微笑む。
その笑みを見たクウネルは全てを察した、
「そっか……もう滅ぼされたのか。 ごめんなさい、悪い事聞いちゃったかも」
「ふふ、大丈夫よ~? もうずっと昔の話だし、眷属の殆どはこの世界に避難してるから」
暴食の邪神はクウネルを慰めるように頭を優しく撫でる。
「そうなの?? ならいいのか……? ん? じゃあ、なんでこの世界は地球の街並みにそっくりなんだ? だって、この家も私が中学生の時に住んでた家だよね?」
「それはね、クウちゃんの一番記憶に残ってた時間軸の地球を複製して創ったからよ♪」
クウネルは想像にも及ばないスケールの話に困惑する。
「複製した……? 惑星を? お母さん、凄すぎるでしょ! 流石は元創造の女神って事か」
「あ、ごめんなさい。 お母さんの説明が下手だったわね。 この、地球そっくりの世界はクウちゃんの中に創られてるの。 だから、完全に別次元の異世界だから可能なのよ♪」
「なるへそね~、私の中にあるんだ~。 へ~、うんうん、そっかそっか……なんてぇぇぇぇぇぇぇ!??」
理解の範疇を完全に超えた暴食の邪神の説明に、遂にキャパオーバーしたクウネルは叫んだ。
◆◇◆
「はぁ……えっと、順番に整理するよ?」
「勿論良いわよ♪ どんと来いね♪」
クウネルは改めて情報の整理を始めた。
「今居るこの世界は、私の精神の中に存在するんだよね。 それは現実とは違うの?」
「んー、お母さん達からすると一応現実扱いになるわね~」
意味深な解答にクウネルは頬を引くつかせるが、とりあえず今はスルーして次に移る。
「えっと、この世界は何時から有るの?」
「説明が難しいんだけど、クウちゃんが異世界に巨人として転生したタイミングでお母さんの意識が覚醒したの。 その時にこの世界も一緒に目覚めたって感じかな?」
「おぉぉ?! ちょっとお母さん、情報の整理してるのに新しい情報出さないでよ! 頭パンクしちゃう!」
頭を抱えて悶えるクウネルを見て、暴食の邪神は何が嬉しいのか幸せそうに微笑む。
まるで、この時間がとても愛おしいかの様に。
「んっと……なんで私の記憶から複製したの? 別にお母さんが元々管理してた世界と同じでも良かったでじゃん」
「正確には、この世界を生み出したのは今のお母さんじゃないんだ。 えっと、記録によると……クウちゃんの一番鮮明に残ってた記憶の時間軸から自動生成される様にプログラムしてたみたいね」
暴食の邪神は何もない筈の空間を触りながら答える。
「今のって事は、どういう意味?」
「それは……今は言えない。 また色々と分かり合えたらちゃんと話すね」
まだ話せないと云う固い意志を感じたクウネルは、それ以上は聞かない事にし別の話題を出す。
「……分かった。 じゃあ、お母さん達が何で私の中で休眠してたのかは聞いても良い?」
しかし、この話題も暴食の邪神にとっては不都合があるのか少し悩んだ後に話しだした。
「えっと……なんでかって言うとね。 戦争に負けそうになって、眷属達をまずお母さんの中に避難させたの。 で、世界が滅びたタイミングでお母さんもかなりの重傷を負ったのね」
少し躊躇しながら話し始めた暴食の邪神の様子にクウネルは首を傾げながらも耳を傾ける。
「ふむふむ、眷属を守ろうとするなんて、お母さんは優しいんだね。 まぁ……管理してる世界の生物全部食べてるけど」
「他の七欲の邪神達も皆負けてて、ボロボロだったのね。で、なんとか合流した時に話し合って計画を実行したの」
「……計画?」
「そう、敗北した時に生き残る為の計画よ。 邪神である事を悟られないように、身代わりの分身を創造してその中で休眠するの。 で、その分身を適当な異世界の転生システムに詰め込んで分身が輪廻転生を繰り返している間に傷を癒す。 確か、最初の計画はそんな感じだったかな~。 でもお母さんは「……分身? あれ? 私、完全に身代わりじゃ……」
まだ暴食の邪神は何やら話していたが、クウネルの頭の中で何かが燃え始めた。
「……つまり、私はお母さんが創った分身ってこと? 娘じゃなくて、傷が癒える迄の身代わりってこと?!」
前世の人生で起こった出来事がクウネルの頭の中を駆け巡り始めた。
「クウちゃん?! 待って、違うの! お願い聞いて!」
嫌な思い出も、良い思い出も、全てがゴミのように思えてくる。 自分という存在が、ただの邪神の身代わりとしての分身だったという事に頭の中が真っ赤に染まる。
それは、今までクウネルが経験した事の無い程の怒りだった。
「ふざけないでよ! なにがお母さんだ! あれでしょ? 適当に選んだ異世界が地球だったんでしょ? それで、私が他の異世界に転生したから、好機だ~って、出てきたんでしょ?! お母さんお母さんって呼んでた私、ばっっっかみたいじゃん!」
自分をコントロールする事が出来ない凄まじい怒りがクウネルの頭の中を焼く。 その怒りはクウネルの口から火山の噴火の如く、母を名乗る暴食の邪神への罵倒として吹き出た。
「違うの! 違うのよクウちゃん!! お願いだから聞いて!」
「嫌だ! 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ! 何も聞きたくない! もういい! 知らない、知らない知らない知らない知らない!!」
クウネルの頭の中がぐちゃぐちゃになり、怒りで気が狂いそうになるのを落ち着かせる為に2階へと向かってふらふらと歩き始めた。
「……部屋に戻る。 絶対に入って来ないで……暴食の邪神」
冷たく暴食の邪神と言い放たれたお母さんは唇を噛み締めながら、寂しく微笑んだ。
「っ……クウちゃん。 ……分かったわ」
クウネルは2階の部屋に足早で戻り、怒りの熱でのぼせた頭を冷たい窓ガラスに当てる。
「頭が熱い……こんな怒りと悲しみが押し寄せて来るなんて初めての経験だよ」
冷たい窓ガラスが頭を冷まし、いくばくか冷静になったクウネルは先程迄の自分を思い出していた。
「……おかしい、私はこんなに怒りっぽく無いでしょ? いつもなら、冷静に最後まで話をちゃんと聞けてた筈じゃん。 暴食の……お母さんも、まだ何か言い掛けてたし」
明らかに異常な程の怒りを覚えた自分が怖くなり、クウネルはため息を吐く。
「はぁ……本当にどうしたんだろ。 あんなに怒り狂うなんて……赤髪の私みたいじゃんか」
そして、ふと窓ガラスに写る自分が視界に入った。
視界に入ったガラスに写るクウネルの瞳は……真っ赤だった。
◆◇◆
お母さんは、足早に2階の自室に向かう愛娘を見送る。
「あぁ……クウちゃんを怒らしてしまった。 私が……上手く説明出来なかったからだ。 やっと、やっと会えたのに……」
ショックからテーブルに倒れ込みそうになるのをお母さんは何とか耐えた。
「ダメ、私は母親! 諦める訳にはいかないの! 大丈夫、まだ時間はある。 きっと、次はちゃんと話せる。 ふふ……でも、あの怒った顔あなたそっくりだったわね」
お母さんはテーブルに添えられている椅子を撫でる。
それは一度も使われてない椅子だ。
「必ず伝えるわ……私とあなたが、どれほどあの娘を愛しているか」
呟くように、囁くように、椅子を撫でながら決意を口にする。
「どれほど会いたかったかを……」
お母さんの呟きには当然ながら、誰からも返答は無い。
その椅子には誰も座っていないのだから。
「えーーー? でもぉ、代わりに新しく創造した最下級神の眷属達を住まわせて誤魔化したのよ? 最高神にバレて滅茶苦茶怒られたけどね~」
まるでイタズラがバレた子供のように笑う暴食の邪神にクウネルは苦笑いをするしか無い。
「あはは……ダメやん。 ……直ぐにバレたならダメやん。 ん? もしかして、この間来た田所さんや外にいるのがその眷属なの?」
「そうよ~♪ 私の創造する眷属は、何故か皆あんな見た目になるのよね~。 邪神に堕ちる前はそんな事無かったんだけどね~」
「ふ~ん……じゃあ、今居るこの世界はお母さんの管理してた異世界って事なの? でも、この家もそうだけど……外の街並みも完全に地球だよね?」
「ふふ♪ クウちゃんは、よく周囲を観察してるのね。 でも、残念。 お母さんが管理してた世界はもう無いの。 邪神戦争の時にね……。 自然豊かな世界だったのだけど」
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その笑みを見たクウネルは全てを察した、
「そっか……もう滅ぼされたのか。 ごめんなさい、悪い事聞いちゃったかも」
「ふふ、大丈夫よ~? もうずっと昔の話だし、眷属の殆どはこの世界に避難してるから」
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「そうなの?? ならいいのか……? ん? じゃあ、なんでこの世界は地球の街並みにそっくりなんだ? だって、この家も私が中学生の時に住んでた家だよね?」
「それはね、クウちゃんの一番記憶に残ってた時間軸の地球を複製して創ったからよ♪」
クウネルは想像にも及ばないスケールの話に困惑する。
「複製した……? 惑星を? お母さん、凄すぎるでしょ! 流石は元創造の女神って事か」
「あ、ごめんなさい。 お母さんの説明が下手だったわね。 この、地球そっくりの世界はクウちゃんの中に創られてるの。 だから、完全に別次元の異世界だから可能なのよ♪」
「なるへそね~、私の中にあるんだ~。 へ~、うんうん、そっかそっか……なんてぇぇぇぇぇぇぇ!??」
理解の範疇を完全に超えた暴食の邪神の説明に、遂にキャパオーバーしたクウネルは叫んだ。
◆◇◆
「はぁ……えっと、順番に整理するよ?」
「勿論良いわよ♪ どんと来いね♪」
クウネルは改めて情報の整理を始めた。
「今居るこの世界は、私の精神の中に存在するんだよね。 それは現実とは違うの?」
「んー、お母さん達からすると一応現実扱いになるわね~」
意味深な解答にクウネルは頬を引くつかせるが、とりあえず今はスルーして次に移る。
「えっと、この世界は何時から有るの?」
「説明が難しいんだけど、クウちゃんが異世界に巨人として転生したタイミングでお母さんの意識が覚醒したの。 その時にこの世界も一緒に目覚めたって感じかな?」
「おぉぉ?! ちょっとお母さん、情報の整理してるのに新しい情報出さないでよ! 頭パンクしちゃう!」
頭を抱えて悶えるクウネルを見て、暴食の邪神は何が嬉しいのか幸せそうに微笑む。
まるで、この時間がとても愛おしいかの様に。
「んっと……なんで私の記憶から複製したの? 別にお母さんが元々管理してた世界と同じでも良かったでじゃん」
「正確には、この世界を生み出したのは今のお母さんじゃないんだ。 えっと、記録によると……クウちゃんの一番鮮明に残ってた記憶の時間軸から自動生成される様にプログラムしてたみたいね」
暴食の邪神は何もない筈の空間を触りながら答える。
「今のって事は、どういう意味?」
「それは……今は言えない。 また色々と分かり合えたらちゃんと話すね」
まだ話せないと云う固い意志を感じたクウネルは、それ以上は聞かない事にし別の話題を出す。
「……分かった。 じゃあ、お母さん達が何で私の中で休眠してたのかは聞いても良い?」
しかし、この話題も暴食の邪神にとっては不都合があるのか少し悩んだ後に話しだした。
「えっと……なんでかって言うとね。 戦争に負けそうになって、眷属達をまずお母さんの中に避難させたの。 で、世界が滅びたタイミングでお母さんもかなりの重傷を負ったのね」
少し躊躇しながら話し始めた暴食の邪神の様子にクウネルは首を傾げながらも耳を傾ける。
「ふむふむ、眷属を守ろうとするなんて、お母さんは優しいんだね。 まぁ……管理してる世界の生物全部食べてるけど」
「他の七欲の邪神達も皆負けてて、ボロボロだったのね。で、なんとか合流した時に話し合って計画を実行したの」
「……計画?」
「そう、敗北した時に生き残る為の計画よ。 邪神である事を悟られないように、身代わりの分身を創造してその中で休眠するの。 で、その分身を適当な異世界の転生システムに詰め込んで分身が輪廻転生を繰り返している間に傷を癒す。 確か、最初の計画はそんな感じだったかな~。 でもお母さんは「……分身? あれ? 私、完全に身代わりじゃ……」
まだ暴食の邪神は何やら話していたが、クウネルの頭の中で何かが燃え始めた。
「……つまり、私はお母さんが創った分身ってこと? 娘じゃなくて、傷が癒える迄の身代わりってこと?!」
前世の人生で起こった出来事がクウネルの頭の中を駆け巡り始めた。
「クウちゃん?! 待って、違うの! お願い聞いて!」
嫌な思い出も、良い思い出も、全てがゴミのように思えてくる。 自分という存在が、ただの邪神の身代わりとしての分身だったという事に頭の中が真っ赤に染まる。
それは、今までクウネルが経験した事の無い程の怒りだった。
「ふざけないでよ! なにがお母さんだ! あれでしょ? 適当に選んだ異世界が地球だったんでしょ? それで、私が他の異世界に転生したから、好機だ~って、出てきたんでしょ?! お母さんお母さんって呼んでた私、ばっっっかみたいじゃん!」
自分をコントロールする事が出来ない凄まじい怒りがクウネルの頭の中を焼く。 その怒りはクウネルの口から火山の噴火の如く、母を名乗る暴食の邪神への罵倒として吹き出た。
「違うの! 違うのよクウちゃん!! お願いだから聞いて!」
「嫌だ! 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ! 何も聞きたくない! もういい! 知らない、知らない知らない知らない知らない!!」
クウネルの頭の中がぐちゃぐちゃになり、怒りで気が狂いそうになるのを落ち着かせる為に2階へと向かってふらふらと歩き始めた。
「……部屋に戻る。 絶対に入って来ないで……暴食の邪神」
冷たく暴食の邪神と言い放たれたお母さんは唇を噛み締めながら、寂しく微笑んだ。
「っ……クウちゃん。 ……分かったわ」
クウネルは2階の部屋に足早で戻り、怒りの熱でのぼせた頭を冷たい窓ガラスに当てる。
「頭が熱い……こんな怒りと悲しみが押し寄せて来るなんて初めての経験だよ」
冷たい窓ガラスが頭を冷まし、いくばくか冷静になったクウネルは先程迄の自分を思い出していた。
「……おかしい、私はこんなに怒りっぽく無いでしょ? いつもなら、冷静に最後まで話をちゃんと聞けてた筈じゃん。 暴食の……お母さんも、まだ何か言い掛けてたし」
明らかに異常な程の怒りを覚えた自分が怖くなり、クウネルはため息を吐く。
「はぁ……本当にどうしたんだろ。 あんなに怒り狂うなんて……赤髪の私みたいじゃんか」
そして、ふと窓ガラスに写る自分が視界に入った。
視界に入ったガラスに写るクウネルの瞳は……真っ赤だった。
◆◇◆
お母さんは、足早に2階の自室に向かう愛娘を見送る。
「あぁ……クウちゃんを怒らしてしまった。 私が……上手く説明出来なかったからだ。 やっと、やっと会えたのに……」
ショックからテーブルに倒れ込みそうになるのをお母さんは何とか耐えた。
「ダメ、私は母親! 諦める訳にはいかないの! 大丈夫、まだ時間はある。 きっと、次はちゃんと話せる。 ふふ……でも、あの怒った顔あなたそっくりだったわね」
お母さんはテーブルに添えられている椅子を撫でる。
それは一度も使われてない椅子だ。
「必ず伝えるわ……私とあなたが、どれほどあの娘を愛しているか」
呟くように、囁くように、椅子を撫でながら決意を口にする。
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