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第164 話 新たな邪神
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(灰色の肌……? 亜人か? いや、山羊みたいな角が有るぞ。 なら、魔族か……? もしかして、あのベータさんと同じ??)
現れた魔族らしき男は目元まで伸びた青髪を掻き上げオールバックにしており、灰色の肌に頭からは山羊似た角が左右から生えていた。
そして何故か腹の所が大きく破けたダボダボの服を着ている。
赤髪のクウネルは現れた相手が敵かどうか見極めるべく、質問をする事にした。
「貴方は誰? 魔族? もしかして……ベータさんの知り合いなの?」
「……」
赤髪のクウネルの問いに魔族らしき男は答えない。 代わりに、その小さな体から凄まじい殺気を放ち始めた。
「姉御?! いつでもいけます!」
殺気に反応したキュウベイは大弓を引き絞り、いつでも矢を放てる体勢をとっている。
「待ってね、キュウベイ。 焦ったら負けるよ」
(凄い殺気……怖いし、早く逃げたい。 でも、ベータさんの知り合いなら魔族は敵じゃないかも)
赤髪のクウネルは亜人達や元クラスメイト達に襲われた誕生日で、魔族であるベータだけは唯一トール達を裏切らずに最後まで戦っていた姿を思い出していた。
魔族らしき男は頭をボリボリと掻き、気だるそうに口を開く。
「あのさぁ~……折角だから聞きたいんだけど。 赤髪の巨人ちゃん、どうやってアレを倒した?」
(アレ? アレって? 動く死体になってた狼達の事? それなら私が倒したけど……どのみち、無視する奴に教える義理はないもんねー!)
「アレって何よ。 っていうか、こっちの質問は無視なのによく平然と聞いてくるわね。 そんな相手に正直に答えるわけ無いじゃない。 べーー!」
「姉御、あまり挑発はしない方が……」
「良いの。 失礼な奴には失礼で返す!」
赤髪のクウネルが舌を出し挑発していると、魔族らしき男はため息を吐いた。
「はぁー……その様子だと本当にベルじゃないんだ。 アレを倒せるならベルだと思ったのにな~……あーあ、面倒くさい。 おっと、ごめんごめん。 違うなら君に用は無いよ。 眠いし、面倒くさいし、じゃあね~」
魔族らしき男は一方的に会話をした後、突如として足下に現れた暗闇の中に消えていった。
«――反応消失。 あれは……見た目は魔族ですが、中身が違いました。 恐らくですが……暴食の邪神に似た存在だと推測します»
「はぁ? 邪神?? 何よそれ、意味分かんない! それに、アイツの目見た? 本当に腹立つー!!」
小さい身体でありながら、まるで虫けらの様に見下してきていた事を察した赤髪のクウネルはその場で地団駄を踏み怒り散らす。
「あ、姉御! 落ち着いて下さい! とりあえず……戦闘にならなくて良かったですね……。 俺なんか何時でも殺せるって……殺意の強さで分かってしまいやした。 不甲斐ないです……」
キュウベイも、眼中にすら無かった事を察し落ち込む。
それ程に、先程現れた邪神らしき存在は桁違いの強さを持っていたのだ。
「あんな奴よりキュウベイの方が強いよ! 絶対絶対にそう! 今、もしそうでも強くなれば良いの!!」
「姉御……ありがとうございやす」
「ん!」
キュウベイを元気付けた赤髪のクウネルはいつの間にか怒りを忘れ、笑うキュウベイを見て嬉しそうに微笑んだ。
「さて、モロとかお婆ちゃん達とか心配してるだろうし……穴を埋めたら帰ろ……お?」
立ち上がろうとしたが、突如として身体の力が抜け赤髪のクウネルは地面に倒れた。
「姉御!? 大丈夫ですか?! 姉御!」
キュウベイは咄嗟に肩から飛び降りる、赤髪のクウネルの頬を揺らすが顔を顰めるばかりで返答が無い。
(気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い。 頭の中がぐちゃぐちゃする、吐き気もヤバい。 さっきの変な魔族みたいな邪神に何かされた?)
まるで、頭の中を掻き回される様な感覚に赤髪のクウネルの意識は混濁し始める。
(私は、私はクウネル、クウネル? 間違いない、私はクウネル。 お父さんとお母さんの娘。 お祖父ちゃんの孫。 うん、ちゃんと覚えてる。 前世の記憶だって……あれ? 前世の私の名前……なんだっけ?)
赤髪のクウネルの意識はそのまま途絶えてしまった。
◆◇◆
◆ ????side◆
暗い闇の中を進む何かは上機嫌で鼻歌を歌っていた。
ふ~ん♪ ふふ~ん♪
久し振りの娑婆だ。
気だるい身体にも、力が漲る。
しかし、本当にどうやってあのアンデッドを倒したのかね~?
この世界にしちゃ、結構強そうなドラゴンをアンデッドにしたが……まさか、あの赤髪の巨人ちゃんが本当に倒したのか?
いや、あの娘は違う。 亜神みたいだったが、正直雑魚だ。
他にアレを倒せそうな奴が居たのか?
どっちにしても、ベルじゃないなら俺の敵じゃないが……あぁ、考えると身体がだるい。
だるい体に鞭打って、どれだけ生き物を殺したか確認しに行ったら消滅してたのには驚いちまったな~。
久し振りだから、結構気合い入れて作ったのによ……まぁ、これ以上は考えるの面倒くさいからいいか。
さて、久し振りにアイツ等に会いに行って……その後は何して遊ぶかね。
そうだ、一応は仇討ちにもなるし……あの半トカゲ共をアンデッドにして遊ぶか。
ははっ、いいね。
たくさん遊んで、たくさん寝るとしよう。
せっかく復活出来たんだ。 せいぜい怠惰の邪神様である俺を楽しませてくれよ?
怠惰の邪神はそのまま闇の中を聖王国に向けて進むのであった。
現れた魔族らしき男は目元まで伸びた青髪を掻き上げオールバックにしており、灰色の肌に頭からは山羊似た角が左右から生えていた。
そして何故か腹の所が大きく破けたダボダボの服を着ている。
赤髪のクウネルは現れた相手が敵かどうか見極めるべく、質問をする事にした。
「貴方は誰? 魔族? もしかして……ベータさんの知り合いなの?」
「……」
赤髪のクウネルの問いに魔族らしき男は答えない。 代わりに、その小さな体から凄まじい殺気を放ち始めた。
「姉御?! いつでもいけます!」
殺気に反応したキュウベイは大弓を引き絞り、いつでも矢を放てる体勢をとっている。
「待ってね、キュウベイ。 焦ったら負けるよ」
(凄い殺気……怖いし、早く逃げたい。 でも、ベータさんの知り合いなら魔族は敵じゃないかも)
赤髪のクウネルは亜人達や元クラスメイト達に襲われた誕生日で、魔族であるベータだけは唯一トール達を裏切らずに最後まで戦っていた姿を思い出していた。
魔族らしき男は頭をボリボリと掻き、気だるそうに口を開く。
「あのさぁ~……折角だから聞きたいんだけど。 赤髪の巨人ちゃん、どうやってアレを倒した?」
(アレ? アレって? 動く死体になってた狼達の事? それなら私が倒したけど……どのみち、無視する奴に教える義理はないもんねー!)
「アレって何よ。 っていうか、こっちの質問は無視なのによく平然と聞いてくるわね。 そんな相手に正直に答えるわけ無いじゃない。 べーー!」
「姉御、あまり挑発はしない方が……」
「良いの。 失礼な奴には失礼で返す!」
赤髪のクウネルが舌を出し挑発していると、魔族らしき男はため息を吐いた。
「はぁー……その様子だと本当にベルじゃないんだ。 アレを倒せるならベルだと思ったのにな~……あーあ、面倒くさい。 おっと、ごめんごめん。 違うなら君に用は無いよ。 眠いし、面倒くさいし、じゃあね~」
魔族らしき男は一方的に会話をした後、突如として足下に現れた暗闇の中に消えていった。
«――反応消失。 あれは……見た目は魔族ですが、中身が違いました。 恐らくですが……暴食の邪神に似た存在だと推測します»
「はぁ? 邪神?? 何よそれ、意味分かんない! それに、アイツの目見た? 本当に腹立つー!!」
小さい身体でありながら、まるで虫けらの様に見下してきていた事を察した赤髪のクウネルはその場で地団駄を踏み怒り散らす。
「あ、姉御! 落ち着いて下さい! とりあえず……戦闘にならなくて良かったですね……。 俺なんか何時でも殺せるって……殺意の強さで分かってしまいやした。 不甲斐ないです……」
キュウベイも、眼中にすら無かった事を察し落ち込む。
それ程に、先程現れた邪神らしき存在は桁違いの強さを持っていたのだ。
「あんな奴よりキュウベイの方が強いよ! 絶対絶対にそう! 今、もしそうでも強くなれば良いの!!」
「姉御……ありがとうございやす」
「ん!」
キュウベイを元気付けた赤髪のクウネルはいつの間にか怒りを忘れ、笑うキュウベイを見て嬉しそうに微笑んだ。
「さて、モロとかお婆ちゃん達とか心配してるだろうし……穴を埋めたら帰ろ……お?」
立ち上がろうとしたが、突如として身体の力が抜け赤髪のクウネルは地面に倒れた。
「姉御!? 大丈夫ですか?! 姉御!」
キュウベイは咄嗟に肩から飛び降りる、赤髪のクウネルの頬を揺らすが顔を顰めるばかりで返答が無い。
(気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い。 頭の中がぐちゃぐちゃする、吐き気もヤバい。 さっきの変な魔族みたいな邪神に何かされた?)
まるで、頭の中を掻き回される様な感覚に赤髪のクウネルの意識は混濁し始める。
(私は、私はクウネル、クウネル? 間違いない、私はクウネル。 お父さんとお母さんの娘。 お祖父ちゃんの孫。 うん、ちゃんと覚えてる。 前世の記憶だって……あれ? 前世の私の名前……なんだっけ?)
赤髪のクウネルの意識はそのまま途絶えてしまった。
◆◇◆
◆ ????side◆
暗い闇の中を進む何かは上機嫌で鼻歌を歌っていた。
ふ~ん♪ ふふ~ん♪
久し振りの娑婆だ。
気だるい身体にも、力が漲る。
しかし、本当にどうやってあのアンデッドを倒したのかね~?
この世界にしちゃ、結構強そうなドラゴンをアンデッドにしたが……まさか、あの赤髪の巨人ちゃんが本当に倒したのか?
いや、あの娘は違う。 亜神みたいだったが、正直雑魚だ。
他にアレを倒せそうな奴が居たのか?
どっちにしても、ベルじゃないなら俺の敵じゃないが……あぁ、考えると身体がだるい。
だるい体に鞭打って、どれだけ生き物を殺したか確認しに行ったら消滅してたのには驚いちまったな~。
久し振りだから、結構気合い入れて作ったのによ……まぁ、これ以上は考えるの面倒くさいからいいか。
さて、久し振りにアイツ等に会いに行って……その後は何して遊ぶかね。
そうだ、一応は仇討ちにもなるし……あの半トカゲ共をアンデッドにして遊ぶか。
ははっ、いいね。
たくさん遊んで、たくさん寝るとしよう。
せっかく復活出来たんだ。 せいぜい怠惰の邪神様である俺を楽しませてくれよ?
怠惰の邪神はそのまま闇の中を聖王国に向けて進むのであった。
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