真巨人転生~腹ペコ娘は美味しい物が食べたい~

秋刀魚妹子

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第156話 迫る死

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 「グルル? ガァッ! ガギンッ?!」

 キュウベイは自身の腕を噛んだゾンビ狼の首を引き千切り、頭を放り捨てる。

 「あぐっ!! 族長! 早く確認を!!」

 キュウベイの腕からは血がボタボタと流れ出し、瞬く間に侵食が進む。

 (キュウベイ!? なに考えてんのよ! 馬鹿馬鹿馬鹿! そんなことしたら、キュウベイも死んじゃうじゃんか!)

 赤髪のクウネルは這いずりキュウベイの下に向かおうとするが、下半身は微動だにしない。 それに、侵食が進み過ぎたせいか激痛すら麻痺し何も感じなくなってきていた。

 「ギガ! 女神様は動かないで下さい! す、直ぐに確認するから動かないで……本当に無茶苦茶ね。 私が何とか出来なかったら、貴方も女神様も死ぬのよ?」

 癒しの族長はキュウベイの腕を侵食する何かを診始める。

 「うぐぐぐ……もし、姉御を守れないなら、俺の命なんか要りません!」

 痛みに苦しみながらも、キュウベイは赤髪のクウネルに微笑みかける。

 「キュウベイ……」

 キュウベイの微笑む顔を見て、赤髪のクウネルは思い出した。

 (思い出した……死に別れる前の……お祖父ちゃんや、お父さんお母さんと同じ優しい瞳。 守りたい者の為なら、死んでもいいって本当に思ってる瞳だ)

 赤髪のクウネルは拳を握り締め、必死にキュウベイの下に行こうと身を捩る。

 (やだ、やだよ! 私を大切に思ってくれる人を失うのはもう嫌だ! 嫌だ!! どうしたらいい? 何が出来る?)

 「ギガ……分かったわ、呪いよ。 それもかなり強い呪い。 効果が有るのは……聖木の葉だけど希少だから手持ちには無いわ。 急いで探さないと……青い葉を探して!」

 癒しの族長による触診が終わり、直ぐにゴブリン達は周囲の木を探し始めた。

 (聖木の葉? ダメだ、聞いた事ないよ。 偽者の中で見てた時もそんな名前の葉は出てこなかった……どうしよう)

 ゴブリン兵士達は急いで辺りを探しているが、キュウベイの侵食速度は早く間に合うかすら分からない。

 (体格が違うから、侵食の速度が全然違うんだ。 このままじゃ、私より先にキュウベイが死ぬ。 あがっ!? 何で、さっきまで痛く無かったのに! 痛い、痛い痛い痛い!)

 腹這いになり、赤髪のクウネルは帰って来た激痛にのたうち回る。

 「鑑定、鑑定! ごめんなさい、ごめんなさい、助けて、どうしたらいい? どうしたらキュウベイを助けれる?!」

 «――ステータスを確認し、該当する状態異常を鑑定して下さい。 そうすれば、データが更新され対策が打てます。 早く!»

 鑑定からの激に急かされ、ようやく赤髪のクウネルはステータスを表示した。

 「わ、分かった。 ステータス、オープン!」

 ステータス画面

 名前 クウネル

 年齢 2

 職業 %$#€の女神

 種族 女巨神

 レベル 261

 HP 6450/156225

 FP 4190/52645

 攻撃力 102110+1000

 防御力 84260+500

 知力 52107

 速力 252402

 スキル 鑑定.  竜鱗LvMax.  火耐性Lv4. 竜殺しLvMax. 魔物食らい. 気配察知Lv2. 連携Lv1. 酸耐性LvMax. 即死耐性LvMax. 隠密Lv2. Hey鑑定. 錬金術Lv3. 土耐性LvMax. 亜神に到達せし者

 魔法 火炎Lv3. 土魔法LvMax. 水魔法Lv1

 戦技 叩き割りLv3. 槍突きLv2(up). 噛み付きLvMax

 状態異常 混乱.  死体化の呪い

 加護 %$#€の女巨神の恩恵Lv1

 「はぁ!? 滅茶苦茶ステータス上がってるじゃん! うぐっ、痛い、でも! 今は集中よ! えっと、えっと~……これだ! 鑑定!」

 赤髪のクウネルは、誕生日前に確認したステータスから大幅に上がったステータスを見て驚く。 そして、状態異常の欄を確認し原因を見つけた。

 『死体化の呪い 生きとし生ける者全てを恨み憎む呪い この呪いを受けしも――ガガガガピーーーーーーーーーー!!

 目の前に鑑定結果が映し出されたが、直ぐに雑音とエラーで全てを確認できなかった。

 «――鑑定のLvが不足している為表示出来ませんでした。 緊急措置を発動 データの更新を確認……これは!? この死体化の呪いもアンデッド同様、この世界には該当例無し 何故この世界に……いえ、後です。 データを分析――照合……判明»

 (うぐぐぐ、早く! 早く!! キュウベイが、キュウベイが死んじゃう!)

 «確かに聖木の葉が効果有り、しかし既存の呪いに効果は有るものの、この呪いに効果が有るかは不明――ガガガガ――新たなるデータを暴食の邪神より受信――確認。 マンドラゴラと調合する事で確実に治せる? 検証――確認、聖木の葉とマンドラゴラを調合した薬を服用して下さい»

 (暴食の邪神!? いや、今はどうでもいい! その聖木の葉は何処に生えてるの!?)

 «――生息地域を検索。 発見――クウネルが落ちてきた背の低い森に生息してます。 背の低いゴブリン達でも採取は容易でしょう。 向かって右を真っ直ぐです。 知識の有る族長を向かわせて下さい»

 (声が出ない……でも、伝えなきゃ! キュウベイがキュウベイ死んじゃう)

 肺まで侵食が進んだのか、声を出そうとしただけで痛みが増す。 それでも、赤髪のクウネルは血を吐きながら叫んだ。

 ――っていう所に生えてるから、早く! 急いで! がほっ!」

 「ギガ、分かりました! 私より知識有る女神様を信じましょう。 皆、急いで!」

 兵士達が癒しの族長を担いで駆けて行く。

 その間にもキュウベイの侵食は進み、既に首から下は真っ黒に変色していた。 今も痛みに苦しんでいる。

 それも、キュウベイは死ぬ程の痛みの最中。 赤髪のクウネルに心配を掛けまいと呻き声も上げずに耐えていた。

 そんな姿を見ながら赤髪のクウネルは歯を食いしばる。

 (私が、私が早く鑑定に頼ってたら、初めから鑑定してたらこんな事にならなかったのに。 私のせいだ! 私のせいだ!)

 黒髪のクウネルを見ながら、何時も自分ならもっと上手く出来ると思い込んでいた赤髪のクウネルは自身の未熟さと愚かさを腸が引き千切れる程に悔いる。

 少なくとも、幼さが残る赤髪のクウネルはプライドの塊で全て己で出来ると思い込みたかったのだろう。

 じゃないと、偽者と呼ぶ黒髪よりも自身の方が偽者なのではと心が揺らぐから。

 今はそんな驕りは、プライドは消え去りひたすらに自身を命がけで助けようとしてくれたキュウベイの無事を祈った。

 (私はもう死んでもいい、私を大切にしてくれる人が死ぬぐらいなら助からなくてもいい! アスカガルドになんて行けなくてもいい! 巨神様、助けて! お願い、お婆ちゃん達、間に合って!!)

 刻一刻とキュウベイと赤髪のクウネルに死が迫る。
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