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第144話 作り忘れた出入り口
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クウネルが城壁を作り始めてから数時間が経過した頃、遂に3つ目の城壁まで作り終えたクウネルは大きく伸びをしていた。
「んー! やっと全部作れたよ~。 疲れたぁ~……どれぐらい経ったのかな? あ、鑑定さんに聞けば良くね? 鑑定さん、今何時?」
«――時報。 現在11時です»
「おー! 私すげぇぇ! 6時間で城壁作り終わったじゃーん! よーし、ご飯だ!」
«――制止。 クウネルまだ――「やだー! お腹減ったー!」
クウネルは鑑定の制止を無視し、キャンプ地へと走り出した。
「むふふ、地竜のお肉を沢山干し肉にしてるのよ! あ~、お腹減った~!」
グギュルルと腹の虫の大合唱を聞きながらクウネルはキャンプ地へと戻り、お手製の干し肉に齧り付いた。
クウネルにとっては片手で持てるお手軽な干し肉だが、ゴブリンからすると完食するのに数ヶ月はかかる大きさである。
「ミッチィ……ミチミチミチミチ、ブチッ! もにゅもにゅもにゅ……んぐ! おいしー!」
クウネルは口いっぱいに干し肉を頬張り、小腹が満たされた所でふと気づく。
「あれ? そういえば、見学してたゴブリンさん達って見なくなったよね。 私が城壁作ってるのを見るのに飽きたのかな……確か、第2城壁を作った後ぐらいから見てないぞ? 張り切ったのにな~……」
張り切っていたクウネルがまさかの仕打ちに落ち込んでいるとキュウベイの声が聞こえた。
「姉御ー! クウネルの姉御ー!!」
「あ、キュウベイだ~!」
遠くから走ってくるキュウベイは、モロに作ってもらった毛皮の服を着ているので全裸では無い。
「うんうん、良かった良かった。 また逮捕案件になる所だったよ。 にしても、キュウベイの着ている毛皮の服クオリティ高くね?」
キュウベイは熊のような茶色の毛皮で作られた半袖の服に、長ズボンぐらいの丈の毛皮のズボンを履いている。
見た目は狩人のようで、キュウベイによく似合っていた。
「ほいほーい! ここだよキュウベイ。 どしたの、そんなに急いで。 あ、服似合ってるじゃん」
「へ、へい! ありがとうございやす。 あ、そうじゃなくてですね。 クウネルの姉御、今日は朝から城壁作りに行くってモロ殿から聞いてたんですが……」
「んー? 城壁なら第3までちゃんと作ったよ?? だから、今はお昼タイム。 キュウベイも食べる?」
クウネルは手で裂いて渡そうとするが、キュウベイはそれどころではない様子だ。
「それはお疲れ様っす! 美味しそうな干し肉ですね……じゃなくて! 第2城壁の外側で王やゴブリン達が立ち往生してたんですが、城壁に作る予定の門は……まだ作って無いですよね?」
キュウベイの言葉にクウネルは干し肉を口にしたまま固まった。
「…………ん? あむっ! もにゅもにゅもにゅ……ごくんっ。 忘れてた! あ~、だからゴブリンさん達見なかったのか」
クウネルは合点がいったと手を叩く。
「やれやれ、私のうっかりを計算して無かったとは……鑑定さんもまだまだよのぅ」
«――落胆。 言い掛けたらクウネルに遮られたのですが?»
クウネルの小さな呟きに鑑定からの冷たい反応が脳内に響いた。
「ひぇっ! す、すぐに行きまーす! ん? でも、何でキュウベイはそれを知ってるんだ? 出入り口が無いんでしょ?? ねぇ、キュウベイは何で知ってるの?」
「クウネルの姉御に会いに行ったんですが、城壁に門が見当たらなかったのでジャンプして飛び越えやした」
キュウベイの眩しい笑顔に、クウネルは苦笑いする。 城壁の高さは以前の倍以上にしているので、クウネルでも足を引っ掛けないように注意する程なのだ。
「あの小さかったゴブリン弓兵長はもう居ないんだね。 強くなったね~キュウベイ。 姉御は嬉しいよ。 さて行くか~、キュウベイはどうする?」
「もちろんお供しやす!」
「うむ、1人じゃないってやっぱり良いね。 よし、一緒に行こ~う!」
クウネルはキュウベイと2人で走り出した。
◆◇◆
「お、第2城壁が見えてきたぞ~」
第2城壁は、予定通り大きな城と繋がる形で建っている。
第1城壁とは違い、第2城壁には城壁の間隔を空けて石の櫓をモデルにした塔を大量に付属してある。
もし、仮に第1城壁が突破されても城と塔から矢を射れば守り切れるだろうとクウネルが思い付き序に建てたのだ。
クウネルは第1城壁にも付けたかったのだが、残念ながらゴブリン王から許可が降りなかった。 それは、他の2足型種族が王国に来た際に敵対心を煽るからと云う政治的な理由である。
「本当はこの塔、第1城壁にも沢山建てたかったのにな。 格好いいし」
第2城壁には遠くからでも見える程に巨大な城が聳え立っている。 強固な石で作られた城の見た目は、地球の中世に建てられた城砦をイメージして建てたものだ。 3階建てで、大工のゴブリンと話しながら部屋の枠を作ってある。
当然、巨大な城の中はまだ空っぽで何も無く。 それらは大工達の仕事だとクウネルは割り切った。
そんな立派な城を眺め、クウネルは満足気に頷く。
「うん、やっぱりこう……砦って感じが堪らないよね。 オタク心をくすぐる!」
強度はクウネルが殴って確認しており、かなり頑丈で地竜でも破壊出来ない程の強度を誇る。
当然、王国を守る城よりも重要な城壁は更に頑丈だ。
城壁の見た目は石を積み上げた一見脆そうな城壁に見えるが、実際は地下深くの巨大な岩盤をそのまま地面から突き出して城壁に加工している為あり得ない程に頑丈である。
クウネルが本気で蹴ってもびくともしなかった城壁は誰にも崩せないだろう。
また地竜の大群が襲って来ても、第1城壁で難なく止めれる筈だ。
「で~? 王様達は何処かな?」
クウネルが城壁を跨いで第2城壁の外側の領土に入ると、直ぐにゴブリン王達を見つける事が出来た。
少し離れた場所に居るが、巨人であるクウネルの事は見えているだろう。
「良かった~、第1と第2の城壁の間が1番広いからね。 うろうろされてたら、見つけるのに苦労する所だったよ。 おろ? そういえばキュウベイは?」
後ろを振り返ると、キュウベイが城壁を軽々と飛び越えてクウネルの側に着地した。
「おー! キュウベイかっこいー! ん? ……キュウベイぐらいの大きさで強かったら頑丈な城壁が有っても意味なくね? それか、私ぐらいの大きさだったら跨げるよね。 ……いや、考えないでおこう。 後は、この国のゴブリン達の仕事だ」
クウネルはキュウベイとゴブリン王達の下へと歩くが、何故か巨大な城を見上げたまま呆然としている。
「んー? キュウベイ、どうしたのか聞いて来てくれる? 私はとっとと門作るから」
「へい! 直ぐに戻りやす」
颯爽と駆けていくキュウベイを見送り、クウネルは城の近くの城壁に出入り口を作り始めるのであった。
「んー! やっと全部作れたよ~。 疲れたぁ~……どれぐらい経ったのかな? あ、鑑定さんに聞けば良くね? 鑑定さん、今何時?」
«――時報。 現在11時です»
「おー! 私すげぇぇ! 6時間で城壁作り終わったじゃーん! よーし、ご飯だ!」
«――制止。 クウネルまだ――「やだー! お腹減ったー!」
クウネルは鑑定の制止を無視し、キャンプ地へと走り出した。
「むふふ、地竜のお肉を沢山干し肉にしてるのよ! あ~、お腹減った~!」
グギュルルと腹の虫の大合唱を聞きながらクウネルはキャンプ地へと戻り、お手製の干し肉に齧り付いた。
クウネルにとっては片手で持てるお手軽な干し肉だが、ゴブリンからすると完食するのに数ヶ月はかかる大きさである。
「ミッチィ……ミチミチミチミチ、ブチッ! もにゅもにゅもにゅ……んぐ! おいしー!」
クウネルは口いっぱいに干し肉を頬張り、小腹が満たされた所でふと気づく。
「あれ? そういえば、見学してたゴブリンさん達って見なくなったよね。 私が城壁作ってるのを見るのに飽きたのかな……確か、第2城壁を作った後ぐらいから見てないぞ? 張り切ったのにな~……」
張り切っていたクウネルがまさかの仕打ちに落ち込んでいるとキュウベイの声が聞こえた。
「姉御ー! クウネルの姉御ー!!」
「あ、キュウベイだ~!」
遠くから走ってくるキュウベイは、モロに作ってもらった毛皮の服を着ているので全裸では無い。
「うんうん、良かった良かった。 また逮捕案件になる所だったよ。 にしても、キュウベイの着ている毛皮の服クオリティ高くね?」
キュウベイは熊のような茶色の毛皮で作られた半袖の服に、長ズボンぐらいの丈の毛皮のズボンを履いている。
見た目は狩人のようで、キュウベイによく似合っていた。
「ほいほーい! ここだよキュウベイ。 どしたの、そんなに急いで。 あ、服似合ってるじゃん」
「へ、へい! ありがとうございやす。 あ、そうじゃなくてですね。 クウネルの姉御、今日は朝から城壁作りに行くってモロ殿から聞いてたんですが……」
「んー? 城壁なら第3までちゃんと作ったよ?? だから、今はお昼タイム。 キュウベイも食べる?」
クウネルは手で裂いて渡そうとするが、キュウベイはそれどころではない様子だ。
「それはお疲れ様っす! 美味しそうな干し肉ですね……じゃなくて! 第2城壁の外側で王やゴブリン達が立ち往生してたんですが、城壁に作る予定の門は……まだ作って無いですよね?」
キュウベイの言葉にクウネルは干し肉を口にしたまま固まった。
「…………ん? あむっ! もにゅもにゅもにゅ……ごくんっ。 忘れてた! あ~、だからゴブリンさん達見なかったのか」
クウネルは合点がいったと手を叩く。
「やれやれ、私のうっかりを計算して無かったとは……鑑定さんもまだまだよのぅ」
«――落胆。 言い掛けたらクウネルに遮られたのですが?»
クウネルの小さな呟きに鑑定からの冷たい反応が脳内に響いた。
「ひぇっ! す、すぐに行きまーす! ん? でも、何でキュウベイはそれを知ってるんだ? 出入り口が無いんでしょ?? ねぇ、キュウベイは何で知ってるの?」
「クウネルの姉御に会いに行ったんですが、城壁に門が見当たらなかったのでジャンプして飛び越えやした」
キュウベイの眩しい笑顔に、クウネルは苦笑いする。 城壁の高さは以前の倍以上にしているので、クウネルでも足を引っ掛けないように注意する程なのだ。
「あの小さかったゴブリン弓兵長はもう居ないんだね。 強くなったね~キュウベイ。 姉御は嬉しいよ。 さて行くか~、キュウベイはどうする?」
「もちろんお供しやす!」
「うむ、1人じゃないってやっぱり良いね。 よし、一緒に行こ~う!」
クウネルはキュウベイと2人で走り出した。
◆◇◆
「お、第2城壁が見えてきたぞ~」
第2城壁は、予定通り大きな城と繋がる形で建っている。
第1城壁とは違い、第2城壁には城壁の間隔を空けて石の櫓をモデルにした塔を大量に付属してある。
もし、仮に第1城壁が突破されても城と塔から矢を射れば守り切れるだろうとクウネルが思い付き序に建てたのだ。
クウネルは第1城壁にも付けたかったのだが、残念ながらゴブリン王から許可が降りなかった。 それは、他の2足型種族が王国に来た際に敵対心を煽るからと云う政治的な理由である。
「本当はこの塔、第1城壁にも沢山建てたかったのにな。 格好いいし」
第2城壁には遠くからでも見える程に巨大な城が聳え立っている。 強固な石で作られた城の見た目は、地球の中世に建てられた城砦をイメージして建てたものだ。 3階建てで、大工のゴブリンと話しながら部屋の枠を作ってある。
当然、巨大な城の中はまだ空っぽで何も無く。 それらは大工達の仕事だとクウネルは割り切った。
そんな立派な城を眺め、クウネルは満足気に頷く。
「うん、やっぱりこう……砦って感じが堪らないよね。 オタク心をくすぐる!」
強度はクウネルが殴って確認しており、かなり頑丈で地竜でも破壊出来ない程の強度を誇る。
当然、王国を守る城よりも重要な城壁は更に頑丈だ。
城壁の見た目は石を積み上げた一見脆そうな城壁に見えるが、実際は地下深くの巨大な岩盤をそのまま地面から突き出して城壁に加工している為あり得ない程に頑丈である。
クウネルが本気で蹴ってもびくともしなかった城壁は誰にも崩せないだろう。
また地竜の大群が襲って来ても、第1城壁で難なく止めれる筈だ。
「で~? 王様達は何処かな?」
クウネルが城壁を跨いで第2城壁の外側の領土に入ると、直ぐにゴブリン王達を見つける事が出来た。
少し離れた場所に居るが、巨人であるクウネルの事は見えているだろう。
「良かった~、第1と第2の城壁の間が1番広いからね。 うろうろされてたら、見つけるのに苦労する所だったよ。 おろ? そういえばキュウベイは?」
後ろを振り返ると、キュウベイが城壁を軽々と飛び越えてクウネルの側に着地した。
「おー! キュウベイかっこいー! ん? ……キュウベイぐらいの大きさで強かったら頑丈な城壁が有っても意味なくね? それか、私ぐらいの大きさだったら跨げるよね。 ……いや、考えないでおこう。 後は、この国のゴブリン達の仕事だ」
クウネルはキュウベイとゴブリン王達の下へと歩くが、何故か巨大な城を見上げたまま呆然としている。
「んー? キュウベイ、どうしたのか聞いて来てくれる? 私はとっとと門作るから」
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