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第142話 勇者カズキの誤算
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――以上が計画の全容です。 何か質問はございますか?」
言い終えると同時に、剣の王グラマンが立ち上がる。
「おう、俺様からあるぜ。 お前が王になろうがなるまいが、どうでもいい事だ。 だがよ、亜人達を滅ぼして奴隷にした後の領地はどう分配すんだよ」
獰猛に笑うグラマンに、カズキは内心でほくそ笑む。
(お、剣の王は好戦的だな。 これなら、もう少し餌をやれば食い付くか?
「攻め落とした国が統治する事と致しましょう。 つまり……早いもの勝ちですね」
剣の王グラマンが獣のような笑み浮かべ、盾の王マガンはまだ思案中なのか押し黙る表情からは真意を読みとれない。
商人連合国のダガマスは笑顔から変化が無く、どのみち同盟に合意したので了承したと考えてもいいだろうとカズキは笑みを返す。
ジンネル王は、最初から今に至るまでカズキを睨んだままだ。
(何だ? 将軍を俺が殺害したのはバレてない筈だが……魔法の投影なのに殺気すら感じるぞ?)
「勇者……カズキと言ったな。 1つ聞こう、聖王国に晒されている首は誰だ?」
ジンネル王が口を開くと、一瞬で場の空気が固まった。
(何故それを聞く? 亜人の首に、しかも魔王の首だぞ? なんの確認だよ。 面倒くせぇな)
悪態をつきながらも笑顔でカズキは返答する。
「はて、聖王国から発表した筈ですが? 極秘に、魔王となる亜人を討伐したと。 勿論、国民達に広めるために晒している首はその魔王の首ですよ?」
「そうか……では、もう1つ聞こう。 その、魔王とやらは齢2才の巨人の少女ではないのか? はっきりと言おう……部下に直接見に行かせたのだ。 晒されている首は我が国の恩人、巨人トール殿の孫だと! 貴様のような少女を平気で殺害する鬼畜と、何故同盟等結べようかぁ!!」
ジンネル王は凄まじい気迫で怒鳴り散らし、立ち上がった。
(ちっ、そういう事か。 ……そういえば、あの将軍も誕生会に向かってるとかどうとか言ってたな。 くそ、ここにきて面倒な事になったな)
「更に、現在我が国の将軍が行方不明となっておる。 トール殿の孫に祝いの贈り物を渡しに向かった後から、消息が分からぬ。 そして……首の無いトール殿の遺体を発見し、村は完全に滅びておった。 貴様は、これをどう説明する? 最早、下手な言い訳は聞かんと思え」
(くそ、こいつ最初から俺に難癖付けに参加したのか。 他の王達も怪訝な顔をしてんじゃねぇか。 ……ダガマスだけは嫌な笑顔のままだが。 適当にでっちあげるしか無いな……)
「分かりました、これは極秘でしたがお話ししましょう。 私達が巨人の村に着いた時には、大勢の亜人達が魔王になると予言された少女によって操られ殺し合っていたのです! もし、ジンネル王の将軍がその場に居たなら残念ですが巻き込まれ死亡しているかと……」
カズキは手振り身振りで大げさに事の真実を話しだした。 だが、ジンネル王の瞳は冷たい。
(苦しい言い訳だが、何とか乗り気ってやる! お前の国以外が納得すれば良いんだからな!)
「そして、私達が魔王と対峙し勝利した時には村に生存者は居ませんでした。 操られた亜人達は正気を取り戻し、自国へと帰ったと思われます。 ……以上が事の顛末です」
カズキが話し終えると同時にジンネル王が怒鳴り散らす。
「ふざけるな! それを貴様は信じろと申すか!」
ジンネル王は顔を真っ赤にして怒り狂った。
「ふ~ん、まぁ滅ぼす亜人の村がどうなろうと知ったこっちゃねぇわな。 なぁ? 兄者」
「そうだな。 もちろん……ジンネル王国の将軍殿殺害に、カズキ殿が本当に関与して無ければだがな」
剣の王グラマンはどうでも良さげだが、盾の王マガンは鋭い視線をカズキに送り意味深な言葉を呟いた。
(ちっ、脳筋の弟と違って兄は扱い難いな)
「ひっひっひっ、私達は事実がどうであれカズキ氏と同盟を結ぶ事に変わりはございません」
ダガマスは嫌な笑顔を顔に貼り付けたまま好意的な意見を述べる。 まだダガマスを信用できないが、この場では助け舟を出してくれた事にカズキは感謝した。
「ダガマス殿、感謝します。 そもそも、私は将軍のお顔すら知りません。 殺害に関与等、あり得ませんよジンネル王」
「ぬぐぐぐ……貴様ぁぁ!」
(お~お~、苦虫を噛み潰したようなお顔ですなぁ。 くっくっくっ、俺の勝ちだな)
場の空気が風向きを変え、カズキが有利になった。 その事にカズキは勝ちを確信する。
しかし、計画とは何時も上手くいかない物なのだ。
カズキが追い討ちをかけようと口を開き掛けたその時、突如として会議室の扉が開いた。
「カズキー? ここに居るのー?」
何故か入って来たのは、サド聖女ユズキだった。 嫌な予感にカズキは顔を顰める。
(げ!? なんてタイミングの悪い時に! 頼むから要らない事を口にするなよ!?)
だが、カズキの願いは虚しくユズキの口から爆弾が投下された。
「あ! 居た居たー! もぉ、探してたのよー? 前にどっかの国の将軍殺して奪った魔法の鏡が有るじゃない? 最近、全然動かないのよー。 ちょっと見てよ……あれ? このオッサン達誰?」
「あ……終わった」
ユズキの言葉に王達の顔色が変わった。
「あん? おいおい、さっきそのマブイ姉ちゃん何て言った? 兄者」
「確か、どっかの将軍を殺して奪ったと言ったな。 これはどういう事だ? カズキ殿。 曲がりなりにも同盟を持ち掛けた国の将軍を殺害し、更に隠蔽しようとは」
「え、いや、これは……違」
カズキがしどろもどろに言い訳を考えるが、無情にも仲間の筈であるユズキが止めをさした。
「は~? 何なのよオッサン、私達があんた等なんかと同盟結ぶ訳ないじゃない! 私達は、オリジン様からの使命を帯びてこの世界に来たのよ? 聖王国以外は滅ぼして統一しろってね。 だから、同盟なんかする訳ないでしょ? このバーーーーカ!」
カズキの頭が真っ白になる。
(え? 何こいつ? 一応仲間だよな? 何で俺の止めさした?)
カズキが放心していると、剣の王グラマンが額に青筋を浮かべてキレた。
「へっ、そうかい! おいカズキ! こりゃ、お前からの宣戦布告と取ったからな! てめぇが、王になったら直ぐに滅ぼしてやる! 覚悟しとけ!!」
「ここまで言われたなら、仕方あるまい。 カズキ殿、この同盟の件は無かった事にする。 もし、本当に我等を滅ぼさんとするならその時は覚悟してもらおう。 さらばだ」
剣と盾の王が捨て台詞を吐いた後、魔道具を切ったのか席から消えた。
「ぐぬぅぅっ! おのれぇ! やはりかぁ!! この鬼畜共がぁ! またあの地獄の戦争を起こすつもりかぁっ! 許さん! 必ず殺してやる、滅ぼしてやるからなぁぁぁぁっ!! おいっ?! やめろ、離せ! 我は正気だ! カズキ! カズキィィィィィッ!!」
投影された向こう側で部下に乱心されたと思われたのか、恨み言を言っている最中にジンネル王は忽然と消えた。
「終わった……俺の、俺の計画が……」
「ひっひっひっ、カズキ氏御安心を。 我等商人連合国は貴方の味方ですよ。 計画を実行されるなら、また連絡を」
ダガマスは最後まで笑みを絶やさず、カズキの味方だと告げると消えていった。
「ははっ……商人連合国が味方になっただけよしとするか? いや……ダメだろ」
カズキは椅子に崩れるように座り、机に項垂れる。
「あ、オッサン達消えた。 ねぇ、カズキ! 終わったなら魔法の鏡見てよ~」
(休もう。 残りの休暇はとりあえず休もう)
「なぁ……ユズキ」
「はーやーくー! え? 何よ?」
「俺……勇者止めるわ」
「えぇ!? マジで?! やったー! じゃあ、リーダーは私ね? みんなー! カズキが勇者止めるってーーーー!!」
カズキの計画をぶち壊した犯人は、意気揚々と会議室を飛び出し走って行った。
「何も考えたく無い……部屋に帰って寝よ」
誰も気付く事は無かったが、会議室の隠し穴から微笑む聖王がずっと見つめていたのであった。
「ふふ、貴様の思い通りにはさせんよ。 神の人形めが」
言い終えると同時に、剣の王グラマンが立ち上がる。
「おう、俺様からあるぜ。 お前が王になろうがなるまいが、どうでもいい事だ。 だがよ、亜人達を滅ぼして奴隷にした後の領地はどう分配すんだよ」
獰猛に笑うグラマンに、カズキは内心でほくそ笑む。
(お、剣の王は好戦的だな。 これなら、もう少し餌をやれば食い付くか?
「攻め落とした国が統治する事と致しましょう。 つまり……早いもの勝ちですね」
剣の王グラマンが獣のような笑み浮かべ、盾の王マガンはまだ思案中なのか押し黙る表情からは真意を読みとれない。
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ジンネル王は、最初から今に至るまでカズキを睨んだままだ。
(何だ? 将軍を俺が殺害したのはバレてない筈だが……魔法の投影なのに殺気すら感じるぞ?)
「勇者……カズキと言ったな。 1つ聞こう、聖王国に晒されている首は誰だ?」
ジンネル王が口を開くと、一瞬で場の空気が固まった。
(何故それを聞く? 亜人の首に、しかも魔王の首だぞ? なんの確認だよ。 面倒くせぇな)
悪態をつきながらも笑顔でカズキは返答する。
「はて、聖王国から発表した筈ですが? 極秘に、魔王となる亜人を討伐したと。 勿論、国民達に広めるために晒している首はその魔王の首ですよ?」
「そうか……では、もう1つ聞こう。 その、魔王とやらは齢2才の巨人の少女ではないのか? はっきりと言おう……部下に直接見に行かせたのだ。 晒されている首は我が国の恩人、巨人トール殿の孫だと! 貴様のような少女を平気で殺害する鬼畜と、何故同盟等結べようかぁ!!」
ジンネル王は凄まじい気迫で怒鳴り散らし、立ち上がった。
(ちっ、そういう事か。 ……そういえば、あの将軍も誕生会に向かってるとかどうとか言ってたな。 くそ、ここにきて面倒な事になったな)
「更に、現在我が国の将軍が行方不明となっておる。 トール殿の孫に祝いの贈り物を渡しに向かった後から、消息が分からぬ。 そして……首の無いトール殿の遺体を発見し、村は完全に滅びておった。 貴様は、これをどう説明する? 最早、下手な言い訳は聞かんと思え」
(くそ、こいつ最初から俺に難癖付けに参加したのか。 他の王達も怪訝な顔をしてんじゃねぇか。 ……ダガマスだけは嫌な笑顔のままだが。 適当にでっちあげるしか無いな……)
「分かりました、これは極秘でしたがお話ししましょう。 私達が巨人の村に着いた時には、大勢の亜人達が魔王になると予言された少女によって操られ殺し合っていたのです! もし、ジンネル王の将軍がその場に居たなら残念ですが巻き込まれ死亡しているかと……」
カズキは手振り身振りで大げさに事の真実を話しだした。 だが、ジンネル王の瞳は冷たい。
(苦しい言い訳だが、何とか乗り気ってやる! お前の国以外が納得すれば良いんだからな!)
「そして、私達が魔王と対峙し勝利した時には村に生存者は居ませんでした。 操られた亜人達は正気を取り戻し、自国へと帰ったと思われます。 ……以上が事の顛末です」
カズキが話し終えると同時にジンネル王が怒鳴り散らす。
「ふざけるな! それを貴様は信じろと申すか!」
ジンネル王は顔を真っ赤にして怒り狂った。
「ふ~ん、まぁ滅ぼす亜人の村がどうなろうと知ったこっちゃねぇわな。 なぁ? 兄者」
「そうだな。 もちろん……ジンネル王国の将軍殿殺害に、カズキ殿が本当に関与して無ければだがな」
剣の王グラマンはどうでも良さげだが、盾の王マガンは鋭い視線をカズキに送り意味深な言葉を呟いた。
(ちっ、脳筋の弟と違って兄は扱い難いな)
「ひっひっひっ、私達は事実がどうであれカズキ氏と同盟を結ぶ事に変わりはございません」
ダガマスは嫌な笑顔を顔に貼り付けたまま好意的な意見を述べる。 まだダガマスを信用できないが、この場では助け舟を出してくれた事にカズキは感謝した。
「ダガマス殿、感謝します。 そもそも、私は将軍のお顔すら知りません。 殺害に関与等、あり得ませんよジンネル王」
「ぬぐぐぐ……貴様ぁぁ!」
(お~お~、苦虫を噛み潰したようなお顔ですなぁ。 くっくっくっ、俺の勝ちだな)
場の空気が風向きを変え、カズキが有利になった。 その事にカズキは勝ちを確信する。
しかし、計画とは何時も上手くいかない物なのだ。
カズキが追い討ちをかけようと口を開き掛けたその時、突如として会議室の扉が開いた。
「カズキー? ここに居るのー?」
何故か入って来たのは、サド聖女ユズキだった。 嫌な予感にカズキは顔を顰める。
(げ!? なんてタイミングの悪い時に! 頼むから要らない事を口にするなよ!?)
だが、カズキの願いは虚しくユズキの口から爆弾が投下された。
「あ! 居た居たー! もぉ、探してたのよー? 前にどっかの国の将軍殺して奪った魔法の鏡が有るじゃない? 最近、全然動かないのよー。 ちょっと見てよ……あれ? このオッサン達誰?」
「あ……終わった」
ユズキの言葉に王達の顔色が変わった。
「あん? おいおい、さっきそのマブイ姉ちゃん何て言った? 兄者」
「確か、どっかの将軍を殺して奪ったと言ったな。 これはどういう事だ? カズキ殿。 曲がりなりにも同盟を持ち掛けた国の将軍を殺害し、更に隠蔽しようとは」
「え、いや、これは……違」
カズキがしどろもどろに言い訳を考えるが、無情にも仲間の筈であるユズキが止めをさした。
「は~? 何なのよオッサン、私達があんた等なんかと同盟結ぶ訳ないじゃない! 私達は、オリジン様からの使命を帯びてこの世界に来たのよ? 聖王国以外は滅ぼして統一しろってね。 だから、同盟なんかする訳ないでしょ? このバーーーーカ!」
カズキの頭が真っ白になる。
(え? 何こいつ? 一応仲間だよな? 何で俺の止めさした?)
カズキが放心していると、剣の王グラマンが額に青筋を浮かべてキレた。
「へっ、そうかい! おいカズキ! こりゃ、お前からの宣戦布告と取ったからな! てめぇが、王になったら直ぐに滅ぼしてやる! 覚悟しとけ!!」
「ここまで言われたなら、仕方あるまい。 カズキ殿、この同盟の件は無かった事にする。 もし、本当に我等を滅ぼさんとするならその時は覚悟してもらおう。 さらばだ」
剣と盾の王が捨て台詞を吐いた後、魔道具を切ったのか席から消えた。
「ぐぬぅぅっ! おのれぇ! やはりかぁ!! この鬼畜共がぁ! またあの地獄の戦争を起こすつもりかぁっ! 許さん! 必ず殺してやる、滅ぼしてやるからなぁぁぁぁっ!! おいっ?! やめろ、離せ! 我は正気だ! カズキ! カズキィィィィィッ!!」
投影された向こう側で部下に乱心されたと思われたのか、恨み言を言っている最中にジンネル王は忽然と消えた。
「終わった……俺の、俺の計画が……」
「ひっひっひっ、カズキ氏御安心を。 我等商人連合国は貴方の味方ですよ。 計画を実行されるなら、また連絡を」
ダガマスは最後まで笑みを絶やさず、カズキの味方だと告げると消えていった。
「ははっ……商人連合国が味方になっただけよしとするか? いや……ダメだろ」
カズキは椅子に崩れるように座り、机に項垂れる。
「あ、オッサン達消えた。 ねぇ、カズキ! 終わったなら魔法の鏡見てよ~」
(休もう。 残りの休暇はとりあえず休もう)
「なぁ……ユズキ」
「はーやーくー! え? 何よ?」
「俺……勇者止めるわ」
「えぇ!? マジで?! やったー! じゃあ、リーダーは私ね? みんなー! カズキが勇者止めるってーーーー!!」
カズキの計画をぶち壊した犯人は、意気揚々と会議室を飛び出し走って行った。
「何も考えたく無い……部屋に帰って寝よ」
誰も気付く事は無かったが、会議室の隠し穴から微笑む聖王がずっと見つめていたのであった。
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